普通のありすが登場します。
害獣的な表現があります。





都心から遠くはなられた地方の村の山の向こうにある村に一匹のゆっくりアリスがいた。
そのアリスは一人の女性と暮らしている。
女性とは一緒に暮らしているのであって飼われている訳ではない。
ルームシェアと呼ばれる一つの家にお互いの部屋を分けて一緒に暮らしているのだ。

その女性との生活は特になに不自由なく平穏な生活だった。
料理の得意なその女性はありすが持ってきた食材を、どうやったのかありすには判らないほど美味しく料理してくれる。
ありすが食材を集め、お姉さんが調理し、一緒に食べる、そんな毎日を送っていた。

しかしありすには一つだけ不満があった。
ありは都会に行きたかった。ありすは都会で暮らしてみたかった。
都会派の自分にはこの田舎村は似合わないと思っていた。

しかし都会は遠い、一度歩いて行ってみようとした事があったが
朝から日が暮れるまで歩いても都会のとの字も見えなかった。

行き倒れそうになった所をお姉さんが迎えに来てくれてなんとか一命を取り留める事ができたが
それ以降、自分の足で都会へ行こうなどという馬鹿な事をするのはやめよう。
第一、歩いていくなんて都会派らしくない、そんな事は田舎物がやることだ。

ありすは都会に行く方法を探すことにした。
手っ取りばやくお姉さんに連れて行って欲しいと頼んで見たが、
お姉さんは都会は危険、都会は危ない、都会は安全じゃない、都会にいっちゃダメ、絶対と言って聞く耳を持たなかった。

きっとお姉さんは田舎物だからそんな事を思うんだろう、
ありすはすこしお姉さんが可哀想になった。

しかし、ありすの都会への思いは積もる一方で、
帰省してきた人に話を聞いたりして気を紛らわしてはいても、
どうしても都会に行きたいという思いは積もっていった。。


そんなありすにある日転機が訪れた。

村で暮らしていた若者が引越しの準備をしていたのだ。
ありすが何処に行くのかと聞くと都会へ出稼ぎに行くと答えた。

「と!とかいはだわー!!!」

ありすは早速、その若者に自分も連れて行って欲しいと願い出た。
しかし、若者にはあっさりと断られてしまう。

若者は、ありすがある女性と一緒に暮らしているのをしっていたし、
都会でゆっくりを飼うつもりも余裕も無いのだ。

ありすは何度もお願いしたが結局その若者は受け入れてくれなかった。
ありすは考えた。別に連れて行ってもらわなくてもいい、様は都会まで行けるだけでいい。
そう思ってありすはコッソリと引越し用のトラックの荷台に乗り込んだ。

見つからないように奥のほうのダンボールの影に隠れトラックの出発を待った。
程なくしてトラックは出発、ゴトゴトと舗装されていない道を走る振動を感じながらありすは都会への思いに胸をはせた。



数時間後、トラックの荷台に乗っていたありすはいつの間にか眠っていて、
なにやらガタガタとうるさい物音がして目を覚ますした。
トラックは既に目的地に付いており荷台の荷物が運び出されていた。

ありすは荷物が運び出される隙を見て、誰にも見つからないようにトラックを降りた。
トラックを降りたありすの目に飛び込んだのは右と左に壁と壁、正面はしばらくまっすぐ行った所で壁、
空は見えていてもまるで家のなかにいる様な圧迫感を感じながらも、とりあえずその場を後にした。

周りをキョロキョロと見回しながら歩き回るありす。
見るもの全て珍しく、これが都会なのかと感心しきりだったが不思議と気分はあまりよくなかった。
しかし、それは天気がちょっと曇っているのと長旅で疲れているんだろうと思い、まず休めるところを探すことにした。

休めるところを探していると、電信柱の脇に雑草を見つけた。
そういえばお腹もすこし減っているし、今日はこれをご飯にしよう。

ありすはそう思ってその雑草を口へと運んだ。

「む~しゃ♪む~しゃ♪ま゛す゛い゛!!」

信じられない程のまずさにありす思わず雑草を吐き出してしまった。

なぜこんなにまずいのか、前に食べた時はあんなに美味しかったのに……。
良く判らないがとにかく食べれる物を探そう。

しかし、ありすはようやく気づく、都会に来てみて感じた違和感、
それは都会には緑が圧倒的に少ない、見渡す限り灰色のコンクリートジャングル。
それがなんだかゆっくり出来ない原因だった。

ありすは食べ物を探して彷徨った。
都会に付いてから更に数時間、道端で見かける雑草はどれもまずい、どこかに食べ物はないのか…
あたりが暗くなっていく中で、ふらふらと彷徨ううちに人通りの多い大通りの前を通りかかった。

街頭に照らされたその通りは夜とは思えないほど明るかった。
なんとなく興味を引かれてその通りを進んでいくと、どこからともなくいい匂いが漂ってくる。

タイヤキ屋
その匂いはそこからもれてくるものだった。
店の前の台には作り置きのタイヤキが並んでいる。

ありすは、そのタイヤキ屋とその建物の影に隠れてコソコソしている一匹のまりさの姿を発見した。
まりさはなにやら辺りの様子を気にしており、その動きが止まったと思った瞬間、
目にも留まらぬ速さでタイヤキ屋の店の台に上りそこに置いてあった作り置きのタイヤキを一つ盗み取った。

あまりの速さにありすは自分の目を疑った。
動いたように見えて本当は動いてないんじゃないだろうかと、
しかし、まりさの口にはタイ焼きがしっかりと咥えられており見間違いではなかった。

初めての都会のゆっくりに、ありすはすこし緊張しながらも声を掛けた。

「ゆ……ゆっくりしていってね!」

「………………」

まりさは答えなかった。
ありすの声が小さすぎて聞こえなかったわけではない、
その証拠にゆっくり特有の声を不振に思った店主が様子を見に来ていた。

「この糞饅頭!!」

その声が聞こえるや否やまりさは、ありすの目の前から一瞬で消えうせた。
カサカサと風を切るように地を這い、塀をすべる様に登り、あっという間に見えなくなってしまった。

呆気に取られるありすと、鼻息を荒くしてまりさを探す店主、
まりさを諦めた店主の怒りはありすに向けられた。

「ゆ……ゆっくりしていって……ね?」

店主の顔は、ありすがそれまで見たことの無い様な顔だった。
歯を食いしばり、眉間にしわを寄せ、冷たい目をした店主にありすは声を詰まらせた。

「ちっ、どっかのペットか……、シッシッとっととうせろ」

そういって店主は店の奥へと戻っていった。


ありすは一人置いてけぼりを食らっていた。
残されたのはありすと食べ残しのタイヤキだけ、
お腹の空いていたありすは、ためらいながらもそのタイヤキに口を伸ばそうとしたその時、
ありすは背後から強烈な体当たりを受けた。
弾き飛ばされて引っくり返ったありすの目に移ったのは、先ほどのまりさの姿だった。
まりさは食べ残しのタイヤキを咥えると再び姿を消した。

ありすには何が何だかわからなかった。
とにかく疲れた、お腹は空いているけど今日はもう寝よう。
ありすはタイヤキ屋の隅で眠りについた。

ありすの都会での1日目はこうして終わった。
次の日からありすの本格的な都会での生活が始まる。

まず、都会で生きる術を学ぶ必要があった。
そしてゆっくり霊夢の家族と知り合い一緒にゴミ漁りを覚えた。
ありすはこの家族としばらく一緒に過ごしていたが、ある日れいむ一家はゴミと一緒に回収された。
何とか逃げ延びたありすは、次に物知りなゆっくりパチュリーと出会った。
元々は人間に飼われていたが、邪魔に鳴ったからとその人間んに捨てられぱちゅりーだ。
ありすはその知識が豊富なぱちゅりーから様々な事を聞き出した。

都会について、都会で暮らすゆっくりについて、以前出会ったまりさについて

ぱちゅりーの話からありすは都会で暮らすゆっくりの真実をしった。
そして都会が全然ゆっくり出来ないところである事をしった。

ぱちゅりーはまりさについても知っていた。

『すーぱーゆっくり』
都会に適応し野生化したゆっくり
栄養価の高い残飯を糧に通常のゆっくりの何倍もの身体能力を手にしたゆっくり
単純に素早いだけでなく垂直の壁上る能力や、数センチの隙を体を変形させすり抜ける能力をもち、
わさびやからしといった毒薬にも高い耐性を持ったゆっくりのことである。
さらに野生化した事で人語を話すことも鳴き声を揚げる事も無くなり発見も難しい。

最近、都会ではこれらのゆっくりによる被害が後を絶たないという。
捕まえるにも知能が高く、ネズミ捕りの様な単純な罠には引っかからず、
粘着シートを引いても隙間を見つけて飛び越えてしまい専門の業者でも手を焼いている。


数日後、ぱちゅりーは死んだ。
飼われていたというプライドからだろうか。
ゴミ漁りやありすの差し出した残飯に手を付けず衰弱死した。

「くににかえるのね……あなたにもかぞくがいるでしょう……」

それがぱちゅりーの最後の言葉だった。
ありすも帰りたかった。今すぐにでもお姉さんの下に帰りたかった。

ありすの都会での生活は続く




1ヵ月後

「はー、とかいはひとがおおいとねー」

田舎で暮らしていたお姉さんは、出稼ぎにでた若者のいる都会を訪れていた。
ありすが居なくなった後、お姉さんはありすの事を村中探し回った。
しかし、ありすの姿を見たという人は誰も居なかった。
お姉さんはきっと森のゆっくりの群れにでも加わったのだろうと思い諦めることにした。
すこし寂しくはあるが、元々一人で暮らしていたのだし、元にもどっただけだと。

しかし、数日前、村から引っ越した若者の母親がこの事を息子への手紙に書いており、
その返事に引越しの当日にありすを見かけていたと返したのだ。

それを聞いたお姉さんは、まさかと思いながらも都会までありすを探しに来ていた。
こっちに来ていたにしても1ヶ月もたっていては見つかる分けない。

「いないとねー……」

そんな事を思いながらありすを探しているとおいしそうなタイヤキ屋の前に差し掛かった。
匂いに誘われる様にタイヤキを注文するおねえさん

都会は物価が高い……と思いながらタイヤキを口に運ぼうとしたその時、
目の前を丸い物体がスッと通り過ぎ、手に持っていたタイヤキがなくなっている。

丸い物体が通り過ぎた方を見ると、そこにはありすとまりさのつがいが居た。
ありすの口にはお姉さんから奪い取ったタイ焼きが加えられ、
それをまりさと二人で分け合って食べていた。

「「…………………………」」

黙々と食べるを二人を見てお姉さんは感心していた。

「とかいのゆっくりはおぎょうぎがよかとねー」

タイヤキを食べる二人をお姉さんは静かに見守った。
良く見るとまりさは左目のあたりが抉り取られた様に窪んでいた。
なにか事故にでもあったのだろうか。
ありすは良く見ると一緒に暮らしていたありすに似ていた。
まさかと思いながらありすに話しかける。

「ありす……、ありす……、あたいのことおぼえとると?」

ありすは答えない

「「…………………………」」

ありすとまりさは黙々とタイヤキを食べ続けていた。

「ちがうかー……」

「「…………………………」」

「あたいはもういくけん、……じゃーのー二人とも」


お姉さんはもうしばらくありすを探し諦めた田舎へと帰っていった。



作者:ありす大好きあき

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最終更新:2022年05月19日 11:33