「たいようさんはすごくおおきいね!! すごくゆっくりしてるね!!」

太陽に向かって、挨拶をするのは、最近生まれた新小惑星のれいむだ。
れいむは、お星様になったゆっくりだった。比喩ではなく、現実に星になっている。
「おそらをとんでるみたい!!」と幸せそうな顔で空を飛んだ事で、れいむは小惑星に転生できたのである。






幼いれいむは、生まれてすぐに親とはぐれてしまい、孤独なゆん生を送っていた。
他のゆっくりとも滅多に出会わなかったし、出会ったとしても親しい関係にはなれなかった。
山奥であるならば、群を見つけて其処に所属し、幸せなゆっくり生活を送れたかもしれないが、町の中ではそうもいかない。
すべてのゆっくりが生きることに必死で、他のゆっくりに優しくする余裕がないからだ。


ある日の事、れいむは、河原で遊んでいた少年達のお弁当をむーしゃむーしゃしてしまい、現行犯逮捕された。
すぐさま裁判が執り行われ、判決は死刑。開始より2分で閉廷のスピード判決となる。

ただ、「ごべんなざい! もうみっかもなにもだべでないんでず!!」の声に心動かされた少年が弁護側に回っていた事で
潰されたノチ、介錯を与えられズ。の極刑は回避され、空流しの刑に落ち着いた。

情状酌量の余地があったれいむは、夏休みの自由研究であるペットボトルロケットに搭乗する事を許され、
生きて帰って着た暁には、名誉ゆっくり賞を与えると約束された。れいむは感激し、涙を流しながらお礼を述べる。

「おにいさんたち、ありがとう゛! れいむはぜったいかえってくるよ! そしておにいさんたちにおそらのようすをつたえるよ!
 おべんとうはとってもおいしかったから、そのおれいにおそらのくもさんをとってくるよ! まっててね!!」

ロケットの先端にくくりつけられ、食料として和菓子が振る舞われた。破格の扱いである。

「ぜったいにごじゅうまいるをこえてくるよ! れいむはうちゅうにぜったいいくよ!!」
「更に宇宙の果てに行くと、相対性理論でお母さんに会えるよ。光速を超える事でお母さんとすーりすーり出来る訳だね。」
「ゆゆーーん♪ おかーしゃんにあえるなんて、うちゅうさんはすごいよぉお~♪」

準備が整うまでの間に、少年のうちの一人が、れいむに宇宙的な知識を吹き込んでいた。
仲間からは、「無駄な事はするなよなー」と咎められていたが、気にせずにれいむと話している。

「あの明るい太陽さんだって、本当は大きいんだ。太陽さんに近づいたら『大きいね』って誉めるとお友達になれるらしいよ。」
「しゅごいね! おにーさんはなんでもしってるね! たいようさんとおともだちになったらおにーさんをしょうかいするよ!!」

少年の言葉を聞く度に、宇宙すごい。と返すれいむ。目をキラキラと輝かせ、早く宇宙に行きたいと少年にねだる。

「おし、こんなもんだろ。ちょっと離れようぜ、重心が変わったから危ないかもしれないし。」

準備が整った少年達は、ロケットとれいむの傍から距離を取り始めた。
ロケットから離れる少年達に、れいむは懇願する。
「ゆゆゆ!? おにーさんたちどこいくの? れいむをうちゅうにつれていってね!!?」

「大丈夫だよ、あと1分でそのロケットは空に行くよ。ゆっくりお星様になるんだぜ?」
「? ・・・・・なにいってるの? れいむはおほしさまになるんじゃないよ? おかあさんとたいようさんにあいにいくんだよ?」

ぽかん、とした表情のれいむに、少年の一人が人差し指を立てながら説明する。

「そのロケットは、すごい速さが出るんだ。れいむはすごくゆっくりできなくなりながら、空を飛ぶんだよ。
 きっと、お空を飛んでるみたい。なんて言えないくらいにね。速すぎてておめめが飛び出して無くなっちゃうかもね。」
「ゆ?」

他の少年もそれに続いて口を開く。

「だいたい、そのロケット宇宙にいける訳がねーんだよ。すげぇ速さで空に飛んで、すげぇ速さで地面に落ちる。
 地面に叩き付けられる時は、すっげー痛いだろーなー。」
「ゆゆ!!?」
「れいむ、君は宇宙学校を卒業したんだ。今から苦しくて、痛くて辛い目に遭うかもしれない。
 けど、空を飛べるんだ。満足だろう?」

「・・・・・・れ!! れいむをだましたの!? うそだったの!?」

れいむは、ようやく自分が騙されている事に気づいたのか、涙をこぼし身体を震わせ始めた。
口からはゆーんゆーん、という奇声が漏れている。

「うそじゃあ無いよ。れいむ。」

泣き始めたれいむに、宇宙の知識を吹き込んでいた少年が、れいむに笑いかける。

「ゆ?おにーさん?」
「嘘じゃない。君は宇宙に行けるよ。」
「ほんとう? おにーさん、うそじゃないよね!!」
「嘘じゃないよ」

れいむの顔が、瞬く間に弛緩する。れいむはふにゃりとした笑顔を少年に向けた。
周りの少年達が、「おいおい最後まで嘘を付くのかよ、性格わりぃーなー」と笑い合っているが、れいむには聞こえない。

「ああ・・・・・・嘘じゃない・・・・・・」少年がもう一度言った所で、れいむを乗せたロケットは、地を離れた。
重心が滅茶苦茶なペットボトルは、不可思議な軌跡を描きつつも、青と白の宙に消える。

「すっげーーー飛んだな!!」
「やべー! あのれいむ、マジ特等席だったんじゃね!!?」
「流石にお兄さんのロケットは飛ぶなぁー。つーーか、誰かビデオに撮ってたっけ?」
「あ、忘れてた・・・・・・」
「おいいい! せっかく俺の兄貴が作ってくれたロケットだったのに!!」
「悪かったって! でも、野良ゆっくりを捕まえて持ってけば、また作ってくれるだろ!?」

少年達は、誰もレポート等を書こうとはせずに、「野良ゆっくりを探そうぜ」とはしゃいでいた。
彼らは、飛んでいったペットボトルを回収しようとも思わなかったし、
先端にくくりつけたれいむがどうなったかを心配もしていない。

ただ、れいむに宇宙知識を吹き込んだ少年だけは、空を見上げたままだった。

「人間が死ぬと、お星様になるって良く言うんだよ。れいむ。」

そう呟いた後、少年は野良ゆっくり探検隊の輪に溶け込んだ。
広場には、ロケットの噴出した水滴だけが残される。






小惑星れいむは、極小惑星まりさに、すーりすーりをしようと近づいていた。

「こないでね! ゆっくりこないでねぇえええええ!!?」
「れいむはこわくないよ! まりさとすーりすーりしたいだけだよ! ゆっくりちかづいてきてね!」
「いやだあああ!!すーりすーりじだぐないいいいい゛い゛い゛い゛い゛!!!!」
「そんなことないよ! すーりすーりはすごくゆっくりできるよ! ほらまりさ、すーりすーーり!!」

れいむとまりさの距離がついにゼロになる。れいむはすりすりをする為に全身を震わせた。

「ゆぎゃああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

まりさは、れいむとのすりすりで、粉々に砕け散った。そして、幾つかの破片はれいむの一部になっていく。

「あれ? まりさ?? どこいったの? ゆっくりしてないで、でてきてね!?」

れいむは、自分がまりさを木っ端微塵に粉砕した事に気づいていない。
生まれてから、他者との触れ合いを殆ど知らなかったので、お星様になった後も他人との付き合い方がわからないのだ。

「ゆぅー・・・・・・。しょうがないね! それじゃあ、たいようさんとおともだちになるよ!!」

れいむは、軌道を少しづつ変え、太陽に向かい始めた。

お兄さんの言ったとおりにやれば、太陽さんとお友達になれるはず。
お友達になったら、すーりすーりしてもらおう。そして、お兄さんに紹介しよう。
あんなにおっきくて、ピカピカで、綺麗な太陽さんと仲良くなったら、きっとお兄さんも喜ぶはずだ。

「ゆっゆーーん♪ たいようさん、ゆっくりしていってねーー♪」














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ぱちゅりーとおにーさん
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転校生とゆっくり

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最終更新:2022年05月19日 13:23