ドスまりさの哀しみ




暖かな日差しが差し込む山の中
ゆっくり達は精を出して狩りを行っていた
それぞれ木の実を取り、虫を捕まえては葉っぱでくるみ巣に持ち帰る
巣に持ち帰るとこの日食べる分といざというときの備えとを分ける
備えは先日この群のリーダーとなったドスまりさの住かである洞窟へと保存される
「ふゆにそなえてたくさんあつめないとね!」
ドスまりさが来る前のリーダーであったぱちゅりー
彼女は冬に備えて早々と食糧を溜めることを提案した
始めは今をゆっくりしたいと言うゆっくり達が反発を起こしたが、それでも越冬の厳しさを思い出しぱちゅりーに賛成をするようになった
あるゆっくりがいつもより離れた場所で狩りを行っているととても大きなまりさと出会った
始めは食べ過ぎてデブまりさになってしまったのかと思っていた
しかし、その寂しげな顔はデブゆっくりのように大きさと顔の比率がおかしいわけではなかった
その大きな体に見合った顔、そのゆっくりは気付いた。
このゆっくりはドスまりさだと。
ドスまりさはまりさ種が突発的に変異を起こした上位種だ
変異条件は不明だが、ドス化すると茸を使った能力を身につけることが出来る
また、成体ゆっくりを超える巨体を誇り群を守ることで知られている
だが、ドスまりさは一匹だった
それを見たゆっくりは群の仲間を呼び寄せた
ドスまりさを見たゆっくり達はその大きさに驚くと同時に歓喜し、ぱちゅりーが群のリーダーとなってくれるように頼んだ
ドスまりさは承諾したわけではなかったが、済し崩しにこの群のリーダーとされてしまった
「ドス、あなたはこのむれのりーだーよ!しっかりしないと!」
「……そうだね」
ぱちゅりーから見てもこのドスまりさは覇気がなかった
いつも寂しそうな顔でどこか遠くを見つめている
ぱちゅりーはそれについて深く考えなかった
そして1日でも早くリーダーとしての貫禄を身につけてもらおうと思った

ある日、大雨が降った
ゆっくり達は急いで巣に避難し雨が止むのを待った
梅雨ではないので雨はじきに止むだろう
が、ドスまりさは大雨に打たれていた
実はドスまりさの住かである洞窟は見かけほど広くはなかったのだ
そのためどうしてもドスまりさの体がはみ出してしまう
帽子があるがそれでもはみ出た分だけ、ドスまりさは雨に打たれて濡れてしまう
ドスまりさは涙を流した
しかし、その涙も大雨に流されていった

雨が開けて数日
再びゆっくり達は狩りをしていた
今日はドスまりさも混じって狩りである
しかし、ドスまりさはその巨体故に足元の花が見えない
そうしていくつかの花を踏み潰してしまった
「どす!おはなさんをふまないでね!」
一匹のれいむに注意されてしまった
このれいむはしっかり者でぱちゅりーの幼馴染みだ
れいむとぱちゅりー。二人は協力して群をまとめていた
「ゆっくりごめんね。まりさは大きいからじめんのお花さんがみえないんだよ」
ドスまりさはその後花が取れないので木の実を取ることにした
しかし、巨体が災いして木の実は中々見つけられない
終わってみれば子ゆっくりと同じくらいしか見つけていなかった
これを見た群のゆっくりはドスまりさを群れのリーダーに相応しくないと思い始めた
だが、ぱちゅりーはドスまりさの凄さを知っていたためゆっくり達を説得した
そしてドスまりさは狩りが上手くできなかったから今日のご飯は少なくされてしまった
元々1日の食事はドスまりさからすれば満腹にはほど遠い
その巨体故に摂取しなければならない量も多いからだ
「む〜しゃむ〜しゃ…ふしあわせ…」
雀の涙ほどの食事を終えてドスまりさは洞窟に戻ろうとした
せめて自分の住かをもう少し広くしようと思ったのだが
「「「ふらんだあああああ!!!」」」
しかし、ふらんの襲来のよってそれは阻まれた
胴体無しふらんが2匹、群のゆっくりを襲い始めた
「うー!あまあま♪」
手近な場所にいたありすにかぶりつくとふらんは素の中身を吸い出し始めた
「いやぁあぁああ!!ありすはもっどゆっぐりじだいいいいい!!!!」
「うー♪あまあまおいしい♪」
そのありすはカスタードを全て吸い取られてデスマスクと化してしまった
混乱は加速しゆっくり達は逃げまどう
「むきゅ!いまこそどすのちからをみせるときよ!」
いつの間にかドスまりさの傍らにはぱちゅりーがおり、ふらんを倒せと言い出した
ドスまりさは茸を使ったドススパークという必殺技を持っている
これを受ければ捕食種と言えでも忽ちに焼けこげてしまう
しかし、ドスまりさはスパークを使わなかった
「どす!ゆっくりしてないでみんなをたすけてね!」
れいむも一緒になってドスを急かす
れいむとぱちゅりーが二匹で騒ぎ出し、ふらんがそちらに気が付いた
「どすのちからをみんなにしめすのよ!」
「ゆっくりはやくふらんをたおしてね!」
ふらんが来ると二匹はスタコラサッサと逃げ出してしまう
一匹になったドスまりさの元へふらんが飛んでくる
そしてドスまりさのほっぺたに噛みついた
「ゆぎぃいぃぃぃぃぃぃ!!」
噛みつかれたドスまりさは悲鳴を上げのたうち回る
あまりの痛さに我も忘れて
だがそれが功を奏してもう一匹のふらんを潰すことが出来た
反対側に回り込んでいたふらんはドスまりさが暴れたため下敷きとなった
「うー!うー!」
それをみたふらんはさらに噛みついた口に力を込め、頬の一部を引きちぎる
「ゆぎゃああああああああああああああ!!!」
いかにドスまりさといえど頬を引きちぎられては激痛が体を襲う
皮が分厚かったために餡子は漏れだしてはいない
ふらんはそれに気を悪くし再度攻撃を仕掛けようと近づく
が、ドスまりさも痛みを回避するためにふらんに立ち向かった
そしてその巨体でジャンプするとふらんを踏み潰した
踏み潰されたふらんの餡子があんよに付いてしまったが群を守ることができた
とにかくドスまりさはホッとした
「どすはおそいよ!どうしてふらんをすぐにたおしてくれないの!?」
「とかいはのありすのいもうとがたべられちゃったのよ!どおじでぐれるのよおおお!!」
群の仲間からは罵声を浴びせられた
ドスまりさなら一瞬のうちにふらんを倒せると思いこんでいるのか
先ほどのドスの対応に不満を爆発させている
「まりさはふらんをたおしたよ!」
ドスが抗議するもそれを聞き入れるようなゆっくりはいなかった
その後、傷を負ったゆっくり達は互いに傷をぺろぺろとなめて傷を癒やしていく
ドスまりさも頬に傷を負った
しかし、誰もぺろぺろしてくれなかった
ドスまりさに見合うだけの大きさのゆっくりはいない
そのためドスまりさは一人寂しそうにぺろぺろしているゆっくりを眺め続けた

このドスまりさはまだドスに成り立てだった
しかも、胎児型出産で産まれたため見かけによらずまだ精神は子どもなのだ
ドスになる前のまりさはとてもゆっくりしていた
幼馴染みのれいむと親友のだぜ口調が特徴的なだぜまりさ
そして4匹の妹と両親に囲まれて幸せだった
れいむとだぜまりさ、三人でよく遊び将来のことを話し合った
だぜまりさは大人になったら自分だけのゆっくりプレイスを探しに行きたいと言い、れいむはゆっくりとして赤ちゃんが欲しいと言った
まりさはまだ将来について深く考えていなかった
ただ、今のようにみんなでゆっくり出来る生活がしたいと思っていた
しかし、ドス化したことでその希望は打ち砕かれた
まりさが目覚めると急に体が大きくなっていた
妹たちも自分もとても驚いていたが両親は祝福してくれた
「まりさはドスになれたのよ!」
まりさもドスのことは知っていた
だが、自分がドスになるなどとは考えたことがなかった
れいむとだぜまりさも驚いていたが共に祝福してくれた
始めはまりさも嬉しかった。しかし、ドス化したことで弊害が発生した
いつものようにれいむにスリスリをしようとしたところれいむに止められてしまった
「ドスになったまりさとすりすりしたられいむがつぶれちゃうよ!」
そう、その巨体ですりすりをしたら加重を誤れば潰れてしまう
しかし、すりすりは拒否されたがそれ以外は普通に接してくれていた
それが余計にまりさには堪えた
すりすりはゆっくりにとって敬愛を示す行為だ
それを幼馴染みであるれいむにできなくてとても悲しんだ
そしてもう一つ。
まりさはいつかれいむに告白しようと思っていた
れいむは赤ちゃんが欲しいと言っていたから子供を作りゆっくり育てようと考えていた
だが、ドスになったまりさとれいむの結婚は叶わない
そもそもすっきりーしないと子どもが出来ないのだが、まりさが大きすぎてすっきりーできない
まりさの哀しみは積もる一方だった
そんなある日、だぜまりさが大人となり独り立ちをした
両親とれいむ、まりさに見送られて自分のゆっくりプレイスを探しに行くのだ
「ゆっくりいってくるんだぜ!まりさがゆっくりプレイスをみつけたられいむとまりさもあそびにくるんだぜ!」
そういってだぜまりさは旅立った
その姿がまりさには羨ましかった
だぜまりさは自分の夢を叶えようとしている
それに比べ、自分はドスとなったことで夢叶わぬこととなった
人知れずまりさは涙を流した

だぜまりさが旅立って数日立ったある日のこと
まりさ達の元へれみりゃの群がやってきた
胴付きのれみりゃに次々と仲間が食べられた
あまりの恐怖にまりさは白目をむいて気絶してしまった
目が覚めるとそこには地獄が広がっていた
れみりゃに食べられて体が半分になったゆっくりやデスマスクと化したもの
必死に妹たちや両親の名を呼ぶが、答えるものはいなかった
生きているゆっくりはまりさだけだった
哀しみのあまりまりさはその場を離れた
そうして、現在に至る
結局まりさの哀しみは深まる一方だった
「まりさはドスになんてなりたくなかったよ…ドスじゃなくてまりさってよんでほしいよ…」
ドスまりさと言えばゆっくり達の憧れの的だ
しかし、ドスまりさからしてみれば、普通のゆっくりの方がとても素晴らしいものだった
ドスとなったことで群のことを第1に考えさせられる
群をまとめられて当たり前、それができないと批難させられる
愛情を表現できる相手もいない
「まりさはもっとゆっくりしたいよ…」
だが、ドスまりさの孤独を理解できるものはこの群には一人もいなかった…

by お題の人

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最終更新:2022年05月19日 14:28