※一部東方以外のパロディです
※独自の設定があります
※虐待成分がおまけに過ぎません
※原作キャラ等の不明点を想像で補完しております。 実物とは異なる可能性があります。
※ゆっくりの喋り方等も適当に考えてあります。

※お兄さん強化キャンペーン継続中!

※短いエピソードの集合作です。 ネタ色が濃くなっております。





「その不気味な顔を吹き飛ばしてやる!」

俺は狙撃銃を肩越しに構える。
銃にスコープは付いていない筈なのだが、俺の目には照準がしっかりと見えている。
俺は十字の中心に奴の額を捕らえて、引き金を引いた…。



話は前回の蜘蛛饅頭との死闘より少し前に遡る…。
いつも、いつでも、いつまでも待ち伏せされ続ける俺。
絶対どこからか情報が漏れているとしか思えない。
そもそも、敵陣の真っ只中で、どんな状況下でも通信出来るというのがおかしい。
スパイの可能性を疑うまでも無く、無線を傍受されているのだろう…。
今俺は、敵の倉庫と思しき場所の近くに潜入している。
だが、今回ばかりは事情が違う。
ここ暫く完全に見方との通信を遮断していた。 所謂通信拒否って奴だ。
そのお陰か、敵は俺の足取りが全く掴めていない様だ。
あろう事か、戦場の真っ只中で昼寝をしている奴までいるではないか!
そいつは年老いていて、元が何の種類だったのかも分からない。
放っておいても一週間位で天寿を全うしそうだが、今ここで俺が引導を渡してやる。
奴も戦士である以上、戦士できれば本望だろう…。
だが、俺の行く手を遮る奴は容赦しない!
俺が先へと進む為に、お前の屍を踏み越えて行く!



「しまったっ!!?」

狙い澄ました筈の一撃は、僅かに逸れて隣の兵士に当たった。
その騒ぎで奴は目を覚まし、自分の置かれている状況に気付いて慌てて逃げ出した。
急いで二発目を構えるが、この持ち難い構えの所為で狙いが定まらない。
全く…、この構えを教えてくれた奴、プロの殺し屋だと言っていたが本当か?
よく考えてみたら、あいつは狙撃にアサルトライフルを使っていなかったか…?

「まぁ、良い…。 蛇は一度獲物を逃がし、弱るのを待って止めを刺す…。
今度また会う時、それが奴の命日だ!」

どうも、しつこい山猫モドキの口調がうつってしまった様だ…。



そして時間軸は現在に戻る。
ここは深い森の中…。
雨が降ったかと思えば濃い霧に包まれ、霧が晴れると強い日差しが照り付ける…。
目まぐるしく環境が変化する森である。 ここに奴が待ち伏せていた。

「ゆっ!!?」

奴は深い眠りから目覚めた。 何かの気配を感じ取ったのだろう。

「ゆはあっ! ゆぅ…、ゆぅ…っ!!」

奴は考える…。
危ないところだった。 もしかすると、もう二度と目覚められなかったかも知れない。
最早余命が残されていないのは、自分でも良く分かっている…。
最後の獲物を狩る為に、もう少しだけこの世に留まらせて欲しい…!



「そうだ。 それでいい。 まだ逝く必要はない」

俺は、奴の直ぐ近くにまで来ていた。

「また逢えたな、老戦士」
「………!」

俺の姿を確認し、奴はふら付きながらも何とか立ち上がる。
俺達はお互いに銃を構え、警戒しながら睨み合う。
何故、こうなってまで戦おうとするのだ…?
俺の中に、微かな疑問が生まれた。

「……………」
「………!?」

緊張状態の最中、俺は自ら銃を手放し、地面に自然落下させる。
その予想を遥かに超えた俺の行動に、
一瞬奴は戸惑い思わず落ちる銃を追って視線を逸らしてしまう。
その瞬間を俺は見逃さなかった。

「ふっ!!」
「ゆっ!?」

奴の舌を払って銃口を逸らし、その勢いで奴に後ろを向かせて突き飛ばす。
直ぐに振向いて体勢を立て直し、再度銃を構えようとするが、
今度は奴の銃を舌ごと俺の後ろへと逸らす様に引いてやった。
既に立ち上がるだけで精一杯の奴は力の流れに逆らえず前のめりに倒れこむ。
俺は、力無く倒れていく奴を…。



しっかりと受け止めてやった。 何と軽い体だろうか…!?
そんな状態にも関わらず俺と戦おうとする姿に、俺は一つの答えに辿り着いた。
奴は自分の最期を悟り、その上で俺との戦いを望んでいるのだと…!

「もういいんだ、ドスの娘よ。 戦うことはない。
いや、兄弟と言うべきか…」
「なにを…?」
「もうあんたの戦いは終わった。 銃を捨てて生きていいんだ」

そう言うと、俺は奴の舌から銃をゆっくりと奪い取り、分解して放り出した。
何故兄弟と呼んだかというと、俺も奴もドスから技を教わった身、
つまり、奴は俺の兄弟子に当たるからだ。

「俺がこの不毛な争いの最後の火種を消した時、世界は新しく生まれ変わる。
その新たな世界を、戦士としてではなく、ゆっくりとして…、生きろ」
「……………」
「もう、戦いに縛られる必要は無い。 お前は最早戦争の道具ではない。
その目で、外の世界を見ろ。 その身体も、その心も、お前のものだ。
過去の事は忘れて、自分の為に生きろ。 そして、新しい余命を探せ…」

俺とドス達はよく似ている…。
だが、俺とドス達には決定的に違う部分がある。
ドス達は、任務よりも自らの意思に従う事を優先している。
しかし、俺はまだその答えを出せていない…。
それでも、こいつを見ていて自分なりに思う事があった。
俺の言葉は、もしかすると自分自身に向けられていたのかも知れない…。

「……………」

奴の顔が、微かだが、確かに微笑んだ様に見えた。
だが、それも一瞬で消えていった…。
急に奴の身体から力が抜けたかと思うと、ゆっくりと地面に倒れていったのだ。
そしてそのまま、二度と起き上がる事は無かった…。

「“老兵は死なず、唯去るのみ”、か…」

老戦士の顔は、とてもゆっくりとした表情をしていた…。

「ドス…、いつまでこんな不毛な争いを続けるつもりだ?」

俺は、改めてドスとの戦いを決意する…。
俺が、俺自身の答えを出す為にも…!



お姉さんはそこまで読むと、本を一旦閉じて一息吐いた。

「ふぅ…。 あいつが余りに熱心に読んでいるから、
一体どんな内容なのか気になって読んでみたけど、
以外や以外、結構深いお話だったのね…」
「まりさにはなにがなんだかさっぱりわからないよ?」
「あんたなんかに理解出来る様な代物じゃないわよ」
「“ほんをよむってれべるじゃねーぞ!”ってこと?」
「ねぇ、どこでそんな言葉覚えてくるの?」





【俺と彼女とゆっくりと】 ~ゆっくりいーたーさくせん編・裏口~

(1)

「何の御用ですか?」

皆さん始めまして。 私は“春”と申します。
加工所で主にゆっくりの改造を担当している研究員です。
今日は主任に呼ばれて彼女の研究室にお邪魔しています。

「春ちゃん、お久しぶりね。
今日はあなたにお願いがあって来てもらったのよ」
「お願い…、ですか?」
「ええ、いつもの様にゆっくりの改造を行って欲しいの」
「それは良いですけど…。 私より局長に頼んだ方が良くないですか?」
「あの天辺禿の事? あいつは駄目よ」
「てっ、てっぺんはげ…」
「あの禿、前に改造を依頼した時、何て言ったと思う?」

【回想】

「ねぇ、このゆっくりに足を付けて欲しいんだけど?」
「足ぃ…?」
「ええ、簡単に言えば胴付きゆっくりに改造して欲しいんだけど…」
「馬鹿な! ゆっくりに足など付けてどうする!?」
「ば、馬鹿ぁ!? 今馬鹿って言ったでしょ!?」
「部下の小娘もそんな改造をしているが、ゆっくりに足を付けるなど愚の骨頂だ!
何の意味も無い! そんな物より、男は黙ってキャタピラだ!」
「ゆっくりを戦車に!?」
「見よ! この私の最高傑作、“ユゴホッド”を!」

♪つったかー! つったかたー! つたっかつったかつったったー!
つったかー! つったかたー! つたっかつたつたつったたー!

「な、何、この禿饅頭!?」

ノリの良い太鼓のリズムに合わせて姿を現した物体X…。
見た目のインパクトも相俟ってポカンとしていると、局長と一緒に歌いだした!

「♪ゆっくり戦車の心は一つ! ゆっくりしたい! ゆっくりしたい!
胸に刻むはゆっくり魂! 生まれてこのかた動かない!
慧音の正体ほどにもキモくない! (だから、キモイって言うなー!)
三日に一度、仲間が減っている! (れみりゃーっ!)
ゆっくり戦車! ゆっくり戦車! 他の追随を許さぬ弱さ!
指先で突っ付くのは、ゆっくり止ーめーてー!」
「♪ゆっくりやーめーてー!」

「おお、我が作品よ! 今日も完璧だな!」
「ゆっくりしたおうたで、ゆっくりしていってね!」
「……………」
「この素晴らしさが理解できんとは、⑨並みの馬鹿さだな!」
「ばーか、ばーか! ばーか、ば-か! ばーか、ばーか!」
「……………」

“チ…ッ、チ…ッ、チ…ッ、カチッ!”

【回想終了】

「新兵器の演習は大成功に終わったわ」
「以前研究所内で謎の爆発事故がありましたけど、まさかあなたが犯人なんじゃ…」
「あまり深入りし過ぎない事が長生きの秘訣よ?」
「……………」
「まぁ、そんな訳であなたしか頼む人がいないのよ」
「了解しました。 ゆっくりに足を付ければ良いんですね?」
「ええ、素体はこちらが用意したものを使ってね」



そんな事がありまして、本日完成品の発披露となりました。

「こちらがご依頼の品です」
「こっ、これは…!?」
「祖父の友人の原案を本に、私なりのアレンジで完成させました」

「うにゅううううううっ!」

「餡子脳で制御された多砲身機関砲、対地ミサイル、レーザー、
そして“虐”攻撃用のレールガンを装備しています」
「あらゆる状況に対処できそうね…」
「このレールガンを利用する事で、幻想郷中のあらゆる場所から虐待が可能になります。
対象はどこから攻撃されたのかも分からず、報復も不可能です」
「正に究極の兵器ね…」

「なんかあおいのがもれるよ!」

「それだけではありません。 射出する“虐弾頭”に“ステルス機能”を搭載しました。
これにより、発射時も発射後もその姿を捉える事は出来ません。
絶対不可避の最終兵器です。 ゆっくりギアとでも名付けましょうか…」
「これよ! 私が求めていたのは当にこの力なのよ!」
「今の技術ではこれが限界ですが、今後更に研究と開発が進めば、
より強力な第二・第三のゆっくりギアが誕生する事でしょう」

「ゆっくりほろびていってね!」

その触れてはいけない領域の力は、一体どこに向けられるのか!?
この日、幻想郷の“ゆっくり”は完全に崩壊した!





(2)

「おさ、へいしたちのはいびはかんりょうしたよ!」
「ごくろうさま! いつでもたたかえるようにゆっくりたいきしてね!」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「ずいぶんげんじゅうなけいかいだね?」
「ドス!」
「わたしのむすめたちもはいちについたよ」
「やつはかならずもどってくる! ゆだんはできない!」
「おにいさんのことだね…?」

ここはとある山奥のゆっくりの群である。
最近では何かと物騒な動きが見られる。
人間はゆっくりできないとして強硬策をとるゆっくりいくが長を務めているからだ。
先日付近の村を強襲し、別の群から仲間に引き入れたドスの力を借りて壊滅させた。
普通ならば直ぐに報復→制裁→殲滅の流れを辿りそうなものだが、
圧倒的な兵力と罠を駆使して群に近づく人間を撃退している。
またいく自身も高い戦闘能力を持ち、常に1000万ボルトの電流を帯電しており、
電撃を操る事で近づく生物を黒焦げにしてしまう。
(これは幼い頃に雷に打たれ、生死の境目を彷徨った事に起因する)

そんな訳で群の周辺の動きを常に警戒しているのだが、
先日、我らが主人公・加工所のお兄さんがそんな事とは全く知らずに、
ついうっかり群の領域内に侵入してしまった。
当然、外敵排除の為に兵士を派兵したが、全て撃退されてしまった。
(実際には、ゆっくりを捕まえに来たお兄さんに餡子で手懐けられた)
その時はドスがお兄さんを倒す事で終結したかに見えたが、
お兄さんはしぶとく生き残っており、またしても侵入してきたのだ。
その後も幾度と無くドスや兵士達と相対し、未だに排除出来ていない。
日に日にいくの怒りは募る一方で、群のゆっくりに暴力を振るう事など日常茶飯事だ。

「あんまりいらいらしたってしかたがないよ…」
「なぜやつはいまだにつかまらないの!?
せったいにないつうしゃがいるよ!」
「やつはとってもつよいんだねー、わかるよー!」

余計な事を言っていくに睨まれる手下のちぇん。
ばつが悪そうに顔を背け、口笛を吹いたりして誤魔化している。
何度かお兄さんと戦い(遊んでもらい)、いつしか憧れの様な感情さえ抱いている。

「ちぇんはさっさとないつうしゃをあぶりだしてね!」
「わかるよー、とってもむずかしいしごとなんだねー」

そんないく達の会話を影から盗み聞きしているゆっくりがいた。
赤髪に星のマーク付きの緑の帽子、ゆっくりめーりんだ。
めーりんはいくに気に入られて傍に置かれている。
だが、いくの危惧している内通者とはこのめーりんの事である。
めーりんは度々お兄さんの前に現れては、助言をしたりしているのだ。

「じゃおおおおおん!」

但し、お兄さんはめーりんの言っている事がさっぱり分からないので、
時々現れるウザイゆっくりだな位にしか思っていない。

「……………」

そのめーりんの存在に気付きながらも、それをいくに伝えようとしないドス。
様々な思惑の渦巻く中、群のゆっくり達はお兄さんの侵入を待ち構えていた…。





(3)

「いらっしゃいませ~、…ってえええええっ!!?」

所変わって、ここは河代 にとりの工房である。
幻想郷の外部から流れ着いた珍しい品を改造したり、
農具や機械の修理・修復を行っている。
日々幻想郷の各地から色々な物が送られ、様々な客が訪れるが、
今回ばかりは予想を遥かに超える珍客の来店であった。

「きめぇえ」
「たっ、確かに客寄せの招き猫を飾ったけど…、キメラ丸まで招くなんて…」

貧乏神社の脇巫女に強引に買わされた物だったが、
とんでもないご利益があったものだ。

「なっ、何の御用でしょうか…?」

とりあえず、いつもの様に要件を聞いてみる。
尤も、キメラ丸の言葉が理解できる訳が無いのだが…。

「きめぇええ、きめぇきめぇ」
「あはは…、もう少しゆっくり話してもらえますか…?」

やはり要領を得ない。 このままでは埒が明かないので、
駄目本で飼いゆっくりに通訳をさせてみる事にした。

「きめぇえええ、きめぇえきめぇえ」
「きゅ! かいぞうのいらいだよ!」
「えっ! キューちゃん、それ本当?」
「きめぇ、きめぇええ」
「きゅっきゅう! あるひとにおれいがしたいんだって!
かこうじょっていってるけど、なんだかゆっくりできなさそうななまえだきゅ!」
「何かを改造して加工所の誰かに届ければ良いのね?」
「きめぇえ」
「そのとおりっていってるきゅ」
「それで、何を改造すれば良いの?」

すると、キメラ丸はにとりに銃を渡してきた。
実はこのキメラ丸、以前加工所からお兄さんが逃がしたキメラ丸である。
お互いに恩を仇で返された様な結果に終わったが、両者とも感謝はしているのだ。
そこでキメラ丸は、お兄さんの為にプレゼントを贈ろうと思った。
そこで、手下のきめぇ丸を総動員して、何か良い物は無いか探させたのだ。
幻想郷の外部から迷い込んだ品物らしく、米の箱に入っていたらしい。

「きめぇえ」
「さとのそとからはいってきたものだっていってるきゅ!」
「45口径ね」

キメラ丸から銃を受け取る。

「これは…!」

その銃を受け取った瞬間、にとりの職人魂に火が付いた。

「鏡の様に磨き上げられたフィーディングランプ…、強化スライドね。
更にフレームとのかみ合わせをタイトにして精度を上げてあるわ」

にとりは銃を構えて、狙いを付けてみる。

「サイトシステムもオリジナル。
サムセイフティも指を掛け易く延長してある…」

銃を横に倒して、更に特筆すべき点を探す。

「トリガーも滑り止めグルーブのついたロングタイプね」

銃を後部から観察してみる。

「リングハンマーに…、ハイグリップ用に付け根を削りこんだトリガーガード…」

全体を見回して、他にも何か無いかを探す。

「それだけじゃない。
ほぼ全てのパーツが入念に吟味されカスタム化されているわ…」

心からの感想を述べて、引き金を引いてみる。

“カチ…ッ! シュボッ!!”

「……………」

銃口が火を吹いた。
別に弾が発射された訳ではなく、文字通り火が点いたのだ。
予想の遥か斜め上をいく結果に、にとりの表情が強張る。

“カチ…ッ! チャカッ! カチ…ッ! チャカッ!”

引き金を引いたり戻したりする度に火が点いたり消えたりする。

「きめぇえ」
「きにいった? …っていってるきゅ!」
「確かに…、改造すれば良い武器になりそうね…」

期待していた分、その反動でがっかりしているにとり。
何故こんな物を作ったのか、製作者を小一時間問い詰めたい気分であった…。

「まぁ、やるだけやってみるわ…」

半ば諦めにも近い気持ちで、この依頼を引き受ける事にした。
キメラ丸が持って来たこの奇妙な物体を調べてみたい気持ちもあったからだ。
にとりが銃を確かに受け取ったのを確認すると、
キメラ丸は身を翻す様に大空へと飛び立とうとした。

「きめぇええ!」
「あ、ちょっと待って! これは一体誰に贈ればいいの!?」
「きめぇきめぇ」
「“おにいさん”っていってるきゅ!」
「おにいさん? もっと詳しく教えてくれないと…って行っちゃたか…」
「おいしそうなたべものをいっぱいおいていってくれたきゅ!」
「報酬のつもりかしらね? こんなに胡瓜を貰ったら、やらない訳にはいかないわね…。
とりあえず、完成したら加工所に贈っておきましょう…」



後日、お兄さんの下に、にとりの技術の粋を集めた至高の一品が届く。
なお、何故お兄さんに届いたのかと言うと、キメラ丸関連だと説明があった為である。
カスタムは職人芸でも、基本がモデルライターでは使い物にならない為、
造型や機構を大きく変更した結果、完成された銃は最早完全に別物だった。

「何々…? 特殊作戦用消音麻酔銃…??
サプレッサーは付いていませんが、麻酔弾自体に消音機能を持たせているので、
衝撃音を気にする必要はありません…???
またレーザーサイトを装備しているので遠距離での正確な射撃も可能です…????
装備するだけで偽装効果が高く維持され、スタミナも回復します…?????」

原理がさっぱり理解できない上に、意味不明の単語まで羅列されています。
一人で悩んでいてもどうしようもないので、お姉さんに相談してみました。
尚、お姉さんの言葉に相槌を打っているのは貝殻まりさです。

「なぁ、これなんだと思う?」
「えーマジ、イージーモード!?」
「きもーい」
「イージーモードが許されるのは小学生までだよねー」
「きゃはははははは」
「何かこの上無く馬鹿にされている気がするんだが…?」
「あなたの人生、せめてノーマルモード位はチャレンジしたら?」
「……………」





(4)

「こっ、これは…!」

続いて加工所でのお話。
加工所の管理者である、所長の下にあるものが届いた。
以前お兄さんが探索の途中で見つけた奇妙な蛇。
頭部は普通なのだが、その腹部はビール瓶の様に太く、尾部は細く短い姿をしている。

「ツチノコだ! ツチノコは本当に実在していたっ!!」

実は所長は、加工所内で“不思議生物大好きクラブ”を主宰するほどの、
自他共に認める不思議生物大好き人間である。
(そんな人物だからこそ、加工所の所長なんかやっている訳なのだが…)
だからこそ、このツチノコ(?)は最高の贈り物であった。

「彼を雇った甲斐があったというものだ!」

実はこの蛇、ツチノコなどでは勿論ない。
ゆっくりを大量に飲み込んで、消化できない部分が体内に溜まっているだけである。
調べれば直ぐに分かりそうなものだが、
貴重な存在という事で所長が詳しい調査を許可しなかった。
その為、謎は謎のまま、未解決に終わったのである。

「彼には何か褒美を与えないといけないな…。
そうだ、彼に我が家に伝わるありがたい魔除けを教えてやろう!」

後日、お兄さんの顔にはびっしりと謎の文字が書き込まれていたと言う…。



とある日の事、お兄さんは知り合いの猟師と山に狩に来ていた。

「くそう! 弾が足りねぇ!
アパム! 弾を持ってこい!」
「なら、俺の弾を使え。 あと、俺はアパムじゃない」
「お前の弾はどうするんだ!?」
「心配要らん。 無限フェイスペイトだ!」

一見不可能な事に思えても、強く念じれば可能になる! …かも知れない。





(5)

「魔理沙! 私と幻想郷最速を賭けて勝負しなさい!」
「誰かと思えば新聞屋か! 面白い、その勝負乗ったぜ!」

妖怪の住む山上空、する事もなく空の散歩を楽しんでいた魔理沙に、
突然突風が襲い掛かってきた。 攻撃したのは鴉天狗、射命丸 文である。
危うく箒から落ちそうになったが、何とか体制を整えて犯人に振向く。

「丁度暇してたとこなんだぜ! 簡単に終わらないで欲しいんだぜ!」
「それはこっちの台詞よ! 今日という今日は地面へと叩き落してあげるわ!」

言うが早いか、幻想郷最速の座を賭けた弾幕勝負が始まった。
この勝負、特にルールの取り決めがあるわけでもなく、
相手を動けなくなるまで叩きのめさなければ終わりにはならない。
双方相手を一撃で吹き飛ばすほどの力を込めて攻撃を繰り出す訳である。
その余波は凄まじく、光線や突風に巻き込まれて周囲に被害が及ぶなどよくある事だ。
今回もとばっちりを受けて、ゆっくりの群が一つ潰れたとか潰れなかったとか…。

「落ちろ! 蚊蜻蛉!」
「飛べない豚は唯の豚だぜ!」

お互いの弾幕飛び交う最中、ドンドン速度を上げて飛行する二人。
自然と感情が昂ぶり、周囲の様子など全く目に入らなくなっていく。
気が付けば二人は紅魔館の近くまで来ていた。

「あら、ここは…!?」
「喰らうんだぜ! マスタースパーーークッ!!」
「きゃあーっ!? 目がぁ、目がぁあああっ!!?」
「うおっ、まぶしっ!!?」

技を使った本人ですらその余波を受けるほどの高出力の光線。
射命丸は何とか直撃は回避したものの、目が眩んで前が見えない。
何とか体勢を立て直そうとするが、漸く目が見え始めた頃には既に遅かった。

「きゃああああ! 門がぁ、門がぁあああっ!!?」
「おおっとぉ、危ないんだぜ!」

間一髪で魔理沙は回避するが、射命丸は少し気付くのが遅れてしまった。
慌ててブレーキを掛けるが、加速し過ぎた為勢いを殺し切れず、
結果としてかなりの速度で紅魔館の門に衝突してしまった。

「へっへっへ! ちゃんと前を見て飛行しないからそうなるんだぜっ!
幻想郷最速の座はこの魔理沙様がありがたく頂いていくんだぜ!」
「きゅう…」
「さて、折角紅魔館まで来たんだし、図書館の本でも借りていくんだぜ!」

そう言うと、魔理沙は紅魔館の中へと入っていった…。



俺は紅魔館の門前で門番と組み手をしていた。
約束通りゆっくりさくやを引渡し、門番の技を教えてもらっているのだ。
一応メイド長にも話を通し、迷惑料として加工所ギフトを送っている。
メイド長によれば、“仕事をサボるよりマシ”との事で、快く承諾してもらえた。
ゆっくりさくやも沢山のおぜうさまに囲まれて幸せそうだ。 …今は。

「ふっ! うぉりゃあっ!!」
「あまいっ!」

先手を打って掴みかかるが、顔に掌打を受けて怯まされる。
次の瞬間持ち手を外され、俺は地面に投げ付けられていた。

「正面から掴みかかっても、逆に投げ返される事もあるわよ!
気をつけなさい!」
「くそっ! もう一度だ!」

何度も何度も地面に叩き付けられてはその度に起き上がり、
体に徹底的に動きを覚えこませる。
ドスと決着を付ける、その日の為に…!

「ん? 何の音だ…?」

突然、空気を引き裂く様な轟音が遠くから聞こえてくる。
何事かと思って俺は周囲を見回したが、その隙を門番は見逃さなかった。

「ぐはあっ!?」
「戦いの最中に余所見をしない! その油断が命取りになるわよ!」
「い、今攻撃するのは反則だろう!?」
「何寝ぼけた事を言っているの!? 戦場では卑怯も反則も無いのよ!?」
「でもこれは訓練で、…ってそんな事よりアレは何だ!?」
「アレ? どこどこ?」
「隙ありっ!」
「きゃあっ!?」
「油断大敵だ!」
「やるようになったわね…!」

そんな事をしている間にもドンドン音は近くなっていく。
そして、突然俺達を突風が襲った。

「うっ! 砂埃が!?」
「きゃあっ!? 何よ、この風!?」

続いて音が追いかけてくる。
木々を薙ぎ倒しながら進む二つの未確認飛行物体は、
文字通り目にも止まらぬ速度で飛んで行き、紅魔館の門で二手に分かれた。
凄まじい衝撃音を残して片方が停止したからだ。
何事かと思って門に近づいて見ると…。

「親方! 空から女の子が!?」
「ラ○ュタは! ○ピュタは本当に実在したんだっ!
…って、何言わせるのよ!? それと親方じゃなくて師父って呼んでよ!」
「何だぜ? 門番が変な奴と一緒にいるんだぜ?」
「魔理沙! あなたが犯人ね!?」
「ここまで来た事だし、ちょっと本を借りていくんだぜ!
パチュリー達に宜しく言っといて欲しいんだぜ!」
「ちょっと、勝手に入らないでよ! また私が怒られるでしょ!」
「言葉を慎むんだぜ! お前は最速王の前にいるんだぜ!」

そう言うと、どこかで見た事のある様な白黒魔女は、
手に持った板から光を放った。

「見せてやるんだぜ! ラピュ○の雷を!」
「ばるすっ!?」

光線の直撃を受けて門番は大きく吹き飛んだ!
門番は妖怪だからまだしも、俺が受けていたら塵も残らないだろう…。

「あっはっは(笑)! 見るんだぜ、門番がゴミの様なんだぜ!」

そう言うと、そいつは紅魔館の中へと消えていった。
そしてその後直ぐ、内部で弾幕が飛び交うのが見えた。
何かが吹き飛ぶ様な破壊音も聞こえてくる。

「ああもう…、何が何だか…」

門番まで気絶してしまい、どうして良いのかさっぱり分からない俺。
頭を抱えて悩んでいると、空から何かが落ちてきた。

「何だこれ?」

藁で編み上げた蓑の様な物を拾い上げて、俺は驚愕した。
その蓑を拾い上げた途端、俺の腕が消えたからだ。
いや、腕だけじゃない。 足も頭も胴体も、体が全て見えなくなっている。
俺の全身が消え、頭に巻いたバンダナだけが見えているのだ。

「まさか、ステルス迷彩か!?」

お婆ちゃんから聞いた事がある。
人間の目は、物体に当たって反射した光を見ている。
天狗の中には、その物体に向かう光を透過させ、
そこに何も無いかの様に見せる道具を持っている奴がいると…。
恐らくこの門にぶつかった少女、外見からして鴉天狗…、の持ち物なのだろう。

「これは使える!」

俺はしばらく借りておく事に決めた。
全てに決着が付いたら返しに行こうと心に決めて、
とりあえず倒れている二人を館内に運び込む事にした…。





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最終更新:2022年05月19日 14:52