~プロローグ~

やあ!僕は虐待お兄さん!
でも最近は仕事が忙しくてあんまりゆっくりを虐待できなくてストレスがマッハなんだ。
だから今日は山までゆっくり達を探しに行こうと思う!

「…居ないなぁ」
山に入って早三時間。因みにこのお兄さん、午前4時から捜索中だ。
巣がありそうな場所や、以前ゆっくりの群れがあった場所を回ってみたが、ゆっくりは一匹も見つからなかった。
「やっぱりもう皆冬篭りを始めちゃってるのかなぁ?」
そう、実はもうそろそろコタツを出さなきゃ辛くなってくる時期なのだ。そんな時期にゆっくりを探そうというのが無茶だったのかもしれない。
「帰って湯豆腐でも食いますかー…」
そう言って元来た道を引き返そうとするお兄さんの耳に、かすかに聞こえるものがあった。
「………っり…ね!」
「も、もうす……ぜ!」
「こ、これは…!!」
途端に表情が変わるお兄さん。お兄さんは即座に物音を極限まで抑え、呼吸を止め、まるで肉食獣が獲物を駆るときのように気配を消した。
余談だがこれはお兄さんが長年虐待用ゆっくりを探しているうちに身に付いた「ゆっくりに気配を悟らせない程度の能力」らしい(本人談)。
「むきゅぅー!まりさ!ゆっくりがんばってね!」
「ゆぅーっ!ゆぅーっ!!も、もうすぐうまれるんだぜ!!」
どうやらこの近くに今まさに出産の時を迎えようとしているゆっくりのつがいが居るようだ。
「これは僥倖…!!」
お兄さんは気配を消したままそのゆっくり達の声がするほうへ歩き出した。


「ゆぅーっ!ゆぅっ!」
「むきゅ!まりさもうすこしよ!」
さっきまでお兄さんが居たところからおよそ三歩。朽ち果てた木の根元に開いた穴にそのゆっくりのつがいはいた。
この木、元は相当大きな木だったらしく、その根元に開いた穴がゆっくり達にはちょうどいい巣穴となったようだ。
おまけにこの木、なかなか見つけにくい場所にあるため、れみりゃやふらんなどにも襲われることはないようだ。
その証拠に、この巣穴には親まりさと親ぱちゅりーの他に子まりさが二匹と子ぱちゅりーが一匹いる。三匹とも新たに生まれてくる妹が楽しみでたまらないという表情をしていた。
「ヒャッホウ!!たまら…ん?」
その様子を一通り観察したお兄さんが虐待を始めようとして、あることに気がついた。

…そういえば受胎型でにんっしんっした帽子付きゆっくりの帽子ってなんで産まれてくるときに取れないんだろう?

「…」
しばらくその場で考え込むお兄さんだったが、さっぱり分からない。
そこでこのゆっくり親子を使って実験してみることにした。


「赤ゆっくりの帽子が取れない謎を解明してみた」

「ゆっくりしていってね!!」
「「「「「ゆ!ゆっくりしていってね!」」」」」
まずはお決まりの挨拶から。言った後に返事をした相手が人間だと気付いたのか、親ぱちゅりーと親まりさは物凄い表情で固まっている。
子供達は無邪気(?)に
「ゆ~!おきゃあしゃんはいまかりゃまりしゃたちのいみょーとをうむんだからおじしゃんはゆっくりはやくでていってね!」
「でていくなりゃあまあまもおいてっちぇね!」
「むきゅ!あまあまおいてでてってっていっちぇるのよ?にゃんなの?ばかにゃの?」
と可愛い挨拶をしてくれた。おお、うざいうざい。あと俺はまだ22だこのやろう。
「むきゅ…い、いまからまりさがこどもをうむからおにいさんはそこにいてもいいけどじゃましないでね!!」
「そ、そうなんだぜ!なにもしないならおにいさんはそこにいてもいいんだぜ!」
対して親のほうは過去に人間に虐められたのか、出て行けとは言わなかった。
ま、どっちにしても出て行かないし、お前達は最後には地獄行き確定済みなんだけどね。
だが帽子の謎を解明するまでは生かしてやろうではないか。いまのお兄さんは虐待(兼研究者)お兄さんだからね!
「ああ、君達には何もしないよ。お兄さんはここでゆっくりしていくね!」
そう言うとほっとした顔になる親ゆっくり達。
子供も最初は不満そうだったが俺が特に何もせずにゆっくりとしているのを見ると、次第に俺に近寄ってきた。
…さて、そろそろ帽子の謎を調べてみますか。
俺は近くに居たまりさ種を手にとってみた。
ふむ、二匹ともどうやら帽子は髪にくっついているわけではないようだ。
次にぱちゅりーを調べる。
やっぱり帽子がくっついてたりしている様子はない。
しかし、受胎型ゆっくりは子供を産む産道が狭い。その為産まれてきた子供はビー○マンのビー玉のように吐き出され、産む場所によっては産まれてすぐ死亡、何てことも有り得るのだ。
そんな狭さの産道を通って産まれるのに、何故帽子は取れずにそのまま産まれてくるのだろうか?
もしくは子供→帽子の順番に産まれ、後から親が被せてやるのだろうか?
「う~ん…ますます謎は深まるばかりだ」
そう呟きながら持ち上げたぱちゅりーを降ろしてやる。


と、しばらく座り込んで考えていると突然親まりさが妙な声を上げた。
「ゆっ!!う、うまれるんだぜぇぇぇぇぇぇ!!」
大きく膨らんだあごの辺りからちっこいまりさの顔が見え始める。
こ、これは一気に謎を解明できるチャンスか!?
「ゆぐぐぐぐ…うまれるうぅぅぅぅぅ!!」
すっぽーーん!!と間抜けな擬音が聞こえそうな感じで子供が親まりさから産み落とされた。
早速帽子の確認をっと…
「ゆ!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」
…ある。帽子は、きちんと産まれたばかりの赤ゆっくりにも付いていた。
「むきゅ!やったわまりさ!げんきなあかちゃんよ!」
ぱちゅりーがいそいで赤ゆっくりに駆け寄り、その小さな頬にすりすりをした。
その光景は、家族の温かみを感じることができる、とても素晴らしいものだった。
「だがそんなことより俺は帽子の謎が気になる」
そう言って親ぱちゅりーとすりすりしている赤ゆっくり…帽子が黒いので赤まりさだろう。を持ち上げる。
ぱちゅりーが「むきゅー!なにするの!おにいさんはゆっくりあかちゃんをかえしてぇぇぇ!!」とか言って足にくっついてきたのでとりあえず蹴り飛ばしておいた。
「……ってやべ、死んだかな?」
虐待分が減ったと思いきや、蹴り飛ばされたぱちゅりーは壁に激突したがなんとか生きていた。ぱちゅりーのくせにしぶといな。あいつは捕獲して加工所に売るか。
さて、ぱちゅりーも生きていたので早速赤まりさの帽子を調べようと思う。
「…って、ん?これ取れないぞ?」
赤まりさの帽子を取ろうとしたが、まるで貼り付けてあるかのように赤まりさの髪が引っ張られるだけで帽子は取れなかった。
おかしいな、さっきの子まりさは普通に取れたのに…
「おじさん!いもーちょをゆっくりかえしちぇね!」
「いもうちょをはなしてじじいはゆっくりしねっ!!」
「むきゅー!!はなさないとひどいめにあうわよっ!!!」
足元に群がる子ゆっくり達を親ぱちゅりーのとこまで蹴り飛ばし(流石に子ゆっくりは蹴りに耐え切れず死ぬかもしれないので加減はした)、まだ産気付いている親まりさの目の前に陣取る。
親まりさは「ゆっくりやめるんだぜ!おちびちゃんもゆっくりうまれちゃだめなんだぜ!!」とか言って逃げようとしたので、片手で押さえ込んで産まれてくる子供を片っ端から調べてみた。
しかし、後から産まれてきた赤ゆっくりたちも一匹として帽子が取れる個体は居なかった。別に最初のまりさが奇形だったというわけでもなさそうだ。
「う~~ん…?」
しばらく親から取り上げた赤ゆっくりと子ゆっくり達の死体を交互に眺め、考える。
と、そこで一つの仮説が浮かんだ。
「おい、ぱちゅりー!」
「むきゅ!?」
いきなり話しかけられて驚いたのか、俺の足元で泣いていたぱちゅりーは涙でややふやけた顔をこちらに向けた。
「赤ちゃんを無事に返してほしかったら、俺の問いに答えろ」
俺がそう言うと必死に体を縦に振るぱちゅりー。頷いて…るんだよな?
「なあ、もしかしてお前達の帽子って、最初は皆頭にくっついてるのか?」
身体を縦に振る。どうやらこれは合っているようだ。…つかなんでしゃべらないかと思ったらさっき蹴ったときに歯が折れたのか。そりゃ痛くて喋れないな。
「じゃあ、どうしてさっきの子供達は取れるんだ?無理矢理剥がしたんじゃないんだろ?」
ぱちゅりーは少し考えるようなそぶりをみせると、やがて近くから木の枝を持ってきて地面に何かを書き出した。
「何々…?せりさょろすぬととねる…?」
なんじゃそら?
ぱちゅりーを見ると身体を必死で横に振っていた。
「もしかして読み方が違うのか?」
再び身体のシェイクが縦になる。どうやらそのようだ。
そこからが大変だった。一文字一文字をこれか?これか?これか?とひたすら聞き続け、それにぱちゅりーが縦に身体を振るか、横に振るかで正解か否かを見極める。
そんな作業が延々と続き、すべてを解読し終わる頃には夕方になっていた。こんな短い文なのにな。
「これで、全部だな?」
俺の問いに、力強く身体を縦に振るぱちゅりー。
「せ、い、ち、ょ、う、す、る、と、と、れ、る…せいちょうすると、とれる…!!成長すると取れる!そうなんだな!ぱちゅりぃぃぃぃぃ!!!」
感動の涙を流しながらぱちゅりーを見ると、ぱちゅりーも涙を流しながら頷いた。
「そうか!やはり帽子付きゆっくりの帽子は産まれるときは頭にくっついていて、ある程度成長すると取れるんだな!!ありがとう!!本当にありがとうぱちゅりー!そして皆!!俺はこの事実を村のっ皆にっ!!伝えるよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
感動の涙を流しながら去っていく俺。
それをぱちゅりーはずっとずっと見送っていた。
ははは。そんなに跳ねて普通のぱちゅりーなら無理だろうに、本当にあのぱちゅりーは強いやつだなぁ!!
俺は謎が解けた達成感に包まれながら、村への帰り道を急いだ。

…奪った赤ゆっくりを返し忘れたことと、村の皆に帽子の新事実を話したところ、「え?常識でしょ?」と冷静に返されるのはもう少し先の話だ。




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最終更新:2022年06月03日 22:06