※fuku2788「赤姫」の補足のようなものです。
※個性的な虐待お姉さん注意、
※ドスっぽいでっかいゆっくりがでます。


~まえがき~
虐待分が少ないかもしれませんし、赤姫(オリキャラ)描写が長いかもしれません。
要らないという方はスルーください。これで赤姫作品はお終いです。






爺の死が悲しいのか、爺が殺された事が悔しいのか、皆が私の言う事を妄言だというのが腹立たしいのか、
わたくしは一日中泣き続けました。おかしな事にもう夜には涙が枯れ、頭の中を恨みとか憎しみとか、
そういう悪いものが頭をギリギリ締め付ける。結論に至ったのは明朝でした。
それは今思うと酷く短絡的で生命の尊厳を無視したおよそ人が思いつくような事ではありませんでしたが、
倫理や良心など先日の涙と一緒に流れ出てしまったのでしょう。
わたくしは布団に倒れこみ、結論に対しての過程を考える事にしました。
あれこれ思案しているといつの間にか眠ってしまったのか、
起きる頃にはもう辺りは真っ暗でした。しかし、過程は決まったのです。
わたくしはその準備のために真夜中のお屋敷をあれこれと忙しく走り回りました。
まずは爺の書斎に有るあの刀です。

そして、四日目の朝を迎えます。
わたくしの部屋にはすっかり物が整い。予てよりの思案通り、今日から始める事にします。
着慣れた赤い着物に着替えると、鏡の前で彼是と顔を作ります。
口元を緩め、フフフと笑う。こんなのではない。
口元を歪め、キャハハと笑う。狂うのだからここまでする必要があるだろう。
わたしくは鋏で少し髪を切り、それを小物入れにしまう。
その髪は『わたくし』キャハハハ、今より妾は赤姫キャハハハハハハ


妾はそれまでの倫理だの良心だの足かせになるものは全て殺してやりました。
キャハハハハ。だから、まず最初にキャハハハ親子を殺すのキャハハハ。
だって不愉快なんですものキャハハハ、口に何でも適当に詰め込んで空の腹に水で流し込む。
傍にあった包丁と、手にあった桶をそのままに妾はお勝手の戸を蹴破った。
村の田畑まで走れば整備された農道がある。そこはゆっくりの散歩道となっている。
適当に見つけ、無残に殺せば気が触れたと思われるでしょうキャハハハハハハ。

妾の目に付いたのは忌々しくも散歩しているゆっくりれいむの一家でした。
母れいむが妾に気付き、挨拶のために一度ニコリと微笑みますが、それがコレの弱点です。、
敵意が無い事を示す笑顔、逆に言えば戦う事ができぬ無力さ、こんなものに爺が殺されたと思うと、
包丁を眼球の少し下に刺し込み下まで断ち切る。斬ろうと思って斬るとこんな容易いものなのだ。
「おねーしゃん、なにするの!!」
包丁を斬るから刺すに。頭で用途を切り替えるが、それ以上の早さで狂気が妾の行動を決める。
自分でも知らない内に包丁を手放し、子れいむを鷲掴みにしていた。
ハハハ、狂気でもない乾いた笑いが漏れる。『わたくし』は本当に妾の良心や倫理総てだった。
子れいむを全て母れいむ中に押し込む。中身が増えた分、傷口や口から餡子が漏れる。
中から苦しそうな子れいむの声が聞こえる。それが妾の行動を決めていく。
訳も分からず持ってきた桶だったが、なるほどこうするのか、母れいむをニ、三度殴ってから、
妾は自分の行動に納得する。まるで思考が行動に追いつかないキャハハハ慣れないといけないわキャハハハ



妾は家に戻され部屋に帰ると、敷かれた布団に寝そべり小物入れを開ける。
この時ばかり『わたくし』が返ってくる。
今朝、殺したゆっくりれいむの親子、虐殺は初めてでした。
わたくしは自分で処女を切ったのでございます。
しかし、1日で4匹とはいささか。時間はあとたった30年もありません。
わたくしは爺を殺したゆっくりが憎い。ならば、それを探しましょう。

妾は二つの作業を同時に行っていきます。
一つ目はゆっくりを殺し、村の者に妾が狂人だと思わせる事、
この村はゆっくりと仲が良い者が多いです。しかし、妾は地主の娘。
さらにそれが狂っているともなればうっくりを殺す事に誰も文句は言わないでしょう。
二つ目はゆっくりを捕まえ、爺の薬入れを奪ったものを探す事、
ちょうど森の中に爺の小屋があります。それを使いましょう。
それではおやすみなさい『わたくし』キャハハハハ



「ゆ?ここはどこ?」
眠っていたゆっくりまりさを小屋に連れ帰ります。
少し頬撫でてやると、まだ眠気眼ですが目覚めます。
「お前、この森のゆっくりかえ?」
「ゆ?おねーさんはだれ?」
「誰でもよかろう。お前は妾が名乗ってその名を覚えていられるのかえ?」
「ゆ・・・じゃあ、おねーさんでいいね!!」
「キャハハ素直で愛い奴だの、饅頭食べるか?鶏蛋?の方がいいか?」
「ゆ?!いいの?」
「お菓子ならたくさんあるからお食べ、ところででゆっくりを探しているが、お前知らんかえ?」
「どんなこさがしてるの?!」
そこらに食べかすを散らかしながらむしゃむしゃとお菓子を貪るゆっくりまりさ。
むーしゃ、むーしゃなどとわざわざ口に出して効果音のような事をやっているから余計に癪に障る。
幾度となく胃や腸がぐるぐると動き、傍にある鉈を持ちそうになる。
「人間から何かを奪った者。お前の知る限りにおるか?」
「ゆー?そんなにんげんにすごいことするこはしらないよ」
「凄い事?」
「だって、にんげんからものがうばえるってことはにんげんよりつよいってこだよ!!」
「そう、キャハハハそうだの。お前、どこかの群の者か?」
「ゆ?まりさはどこのむれにもはいってないよ」
「ならば、もう良い。キャハハ殺してあげるぞキャハハハハ」
そうかそうかそうか、群の長だ。ゆっくりの群の長ならば人から物を取り上げる事もできる。
いいや、病を患っていた爺ならば戦わずしても、キャハハハ目標が見えてきたキャハハハ。
気が付くと、ゆっくりまりさは死んでいた。
眼球を奥へ押し込み、口をこじ開け、そのまま身体ごと引き裂いていた。酷く気分が良い。
妾はまた菓子を餌にゆっくりを小屋に呼んでは彼是と聞き出し殺した。
「やめで・・・ごろさないで、おねがい!!」
頭を下げているつもりなのか、必死に上下に動くゆっくりまりさ。
「あなた群のゆっくり?」
「ぢがいます!!」
「ホントウ?ウソをイうとコロすわよ」
「ほんどうでず!!」
「キャハハハ、なら用が無いわ。殺す死ね死ねキャハハハハハ」
うんうん、群じゃないのも多いのね。キャハハハ効率良くとは行かないわ。
でも、どうせ、キャハハ殺してしまうんだから。死体が増えるのは良い事よねキャハハハ。
キャハハ・・・疲れた。少し配分を間違えたかもしれない。キャハハハハ馬鹿ね。
狂っているんですもの仕方ないわ・・・。



「ん、ううん・・・寝て・・・うん」
いつの間にか小屋で眠っていたらしい。
外は暗く雨が降っている。これでは屋敷にも帰れない。
元よりお父様、お母様は妾の事にも『わたくし』の事にも無関心なお二人だから、
そう心配される事はないだろう。妾は大事な小物入れを取り出し、開ける。
『わたくし』の髪が入った、爺に10歳の誕生日に貰った大切なものです。
フフ、お父様もお母様も。わたくしの誕生日を祝ってくれたのはいつまでだったでしょうか、
習字で偉い先生に褒められた時も、女のくせに剣術大会に出て大暴れした時も。
お二人は何もお声をかけてはくれませんでしたね。わたくしと同じ位の子は皆、両親に褒められるために頑張っていたのに。
いつもお仕事に忙しく。一ヶ月もお会いにできない事などよくありました。
ですが、お父様お母様には感謝しております。人並み以上の生活をさせてもらってこれ以上の我が侭はございません。
それに爺がおりましたから、寂しいとは思いませんでしたし。
ふいに小屋の戸を叩く音がする。わたくしは小物入れを閉じ、引き出しに隠し、応答する。
「どちら様?」
「れいむだよ!ゆっくりいれてね!!」
キャハハハ、雨で今日はもう殺せないと思っていましたのに。
自ら殺されに来られるとはキャハハハハ。
「雨の中、困っていただろ。さ、入れ、菓子もある」
「ゆ?ほんとはやくちょうだいね!!」
キャハハ警戒心も遠慮も無いのね。
「何が良い?饅頭、大福、鶏蛋?にボーロかえ?」
「ぜんぶちょうだいね。いいおうちだね、ここれいむのおうちにするね」
「キャハハハハ、無理無理。ここを家に?妾が生きている限りは無理だの」
「むりじゃないよ!!れいむのむれはにんげんをころしたことがあるんだよ!!」

今まで自分が動いた中で最速だったと思う。爺との剣術の鍛錬でもこうは動けた事は無い。
すでに妾はこのゆっくりれいむを捕まえ、頬に鉈をあてがっていた。
「言え、お前の群は誰を殺した。言えば命ばかりは助けてやろう」
「ふん!よわっちぃにん」
妾は鉈の先で目を突いてやる。
「いだい!!!・・・あやまれ、れいむにあやま」
鉈をそのまま押し込む。
「あやまぎゃああああああああ!!!」
「話す以外には死ぬしか選択肢は無い。選べ、まだ目が潰れた程度だ。次は足を焼き、頬を切り裂く」
「じじいだよ。じじいをれいむのむれのりーだーがころしたんだよ!!」
「もっと詳しく。その老人は何故お前達に負けた?」
「きゅうにくすしみだぢで!ゆぎぃ、やめで!!いだぐじないゆぎぃ!!」
「続けろ、お前らの長は老人に何かしたのか?」
「ふくろをゆぐぅ!!ふくろをと、いだい!!とっだ!!」
そこまで分かれば、コレに用はありません。キャハハハハついに見つけたついに。




村人とゆっくりの関係はすっかり壊れていました。
『妾』を気味悪がりまして、村人はゆっくりと関わらなくなり、
残飯やクズ野菜を貰っておりましたゆっくりは確保できる食料が減り、
数を徐々に減らしていっていました。わたくしが直接減らした分もございますし、
以前の半分、それ以下になったでしょうね。
そして、前の情報である群の長が仇と予想できました。
屋敷の者が寝静まった後で。庭に出て剣術の鍛錬をいたします。
どれだけ森を駆け回り、ゆっくりを殺そうとこれだけは欠かした事がありませんでした。
人を殺すための剣術ですが、相手がゆっくりの群の長ともなれば、必要な技術でしょうから。

ある日、わたくしは髪を結い短く見せ、胸にさらしをいつもよりきつく巻き、馬乗袴を着ます。
鏡を見れば、女のような男に見えますから、中性的な顔立ちに感謝します。
ここからはわたくしでも『妾』でもありません。
皆が起きてくる前に、馬に跨り町に走ります。
「おい、親爺、ゆっくりの本はないか」
なるべく強く低い声で言ってみせますが、爺やお父様に比べれば子どものような声になってしまいます。
しかし、古本屋の店主は客商売ですから、お声が変ですね。などと言わず、へい、どんな本をお探しでと尋ねてくる。
「ゆっくりの生態についての学術本だ。あるか」
普段、威張るなんて事をしないから、こんなのでいいのかしら。ですが、臆しては変に聞こえますから、
こんなものならございますと出されたのは一冊の分厚い本だった。著者は八意・・・聞いた事の無い名ですが、
「それをくれ、いくらだい」
店主の言ってきた値段はたいした額ではなかった。手持ちの金でどうにかなりそうでしたので。
「よし、貰おう。ほら、金だ」
町で買い物なんて初めてですから、上手くできているかどうか分かりませんが、
亭主が確かにと言って本をわたくしに渡してくれたので上手くできたのでしょう。
わたくしは久しぶりに嬉しくなりましたが、グッとこらえ、男のような歩き方で店を出て行きます。



「あんた、こんな朝早くから客だったのかい」
「ああ、なんだか、よく分からん客だ」
「どんなんだい?」
「女のくせに男の袴を着て、女の声で男の口調」
「なんだい、そりゃ」
「さぁな、だけど、良い客だったぜ」
「なんでだい?」
「長いこと埃かぶってた本を言い値で買っていきやがった。変な格好だがまた来て欲しいね」



それからわたくしはしばらく町を歩く事にしました。
暗くなってから屋敷に戻ればいいのですから、
ああ、町なんて10年ぶりね。六つの頃に一度だけ爺に連れられてきた事しかありません。
しかし、楽しかった気分も。あるモノを見てしまうとぱったり消えてしまいます。
「おね・・・?おにーさん、ごはんちょうだいね!!」
ゆっくりれいむです。店先になんでこんなのがいるのでしょう。
「バカ、おめー、客の呼び込みしろつってんだろ。お客さん、ごめんなさいね」
「あ、ああ・・・ゆっくりで客引きか?」
「へい、こいつら声はデカイもんですから。何事も共存ですよ」
「そうか、効果はあるのか」
「いやー、それが」
店主の苦笑いを見れば、さほど効果が無いのがわかります。
そして、この店主が本気でゆっくりに仕事をさせているのではなく、
可愛がる延長で、自分の店に置いている事も。わたくしとは真逆の人間なのでしょうね。
わたくしはまた、そうかとだけ言うと店の前から立ち去りました。

少し歩くと、焼けた家がありました。
まだ忙しく人が彼是と運び出しておりましたから、
つい興味本位で「火事かい」などと聞いてしまったのです。
「ああ、飼っていたゆっくりが蝋燭を倒したとかでね」
「家の者は?」
「一人暮らしの婆さんがいたんだが、大丈夫だったよ」
「よかった」
「まったく、ゆっくりなんて飼うもんじゃないね。俺は見るのだって嫌だよ」
「そうか」
人はどちらなのでしょうね。
ゆっくりを好いているのか嫌っているのか、
ゆっくりは人間にとって必要なのか否か、



わたくしは歩き続けると、小さな社まで来てしまいました。
いつの間にか町を抜けていたのですね。
適当な岩を見つけそこに腰掛けると、買ったばかりの本を開けます。
「むきゅ?おにーさん、ごほんよんでるの?!」
またか、こんな事なら『妾』に来てもらえば良かった。
「わたくしは本を読みたいのです。静かに立ち去ってはくれませんか」
「パチュリーもごほんよみたい!!」
「お断りいたします。さ、立ち去ってくれませんか。あなた、殺されたくはないでしょう?」
「むきゅー!ごほんをどくせんするきね!!このドロボウ!!」
泥棒?理不尽ですね。思惑通りにならなければ泥棒ですか、
わたくしは立ち上がり、本を岩の上に置く。
人がどちらかなど関係ないのでした。わたくしはこの理不尽で殺された爺のために。
「むきゅ?あたまでかてないからぼうりょくでくるの?にんげんはやばんね!!」
「去ね、屑が」
「むきゅー!!パチュリーはむれのほさやくなのよ!!」
「・・・ここから東にある村の傍にある森の群か?」
「むきゅん、そうよ!!もうすぐむれのおさももりのおくからもどってくるの!!そうしたらあなたなんて」
「見つけました、爺。見つけましたよ」
「むきゅ?なにいってるの、くるってるの?」
いいえ、違います。はい、そうです。
わたくしは狂ってのなどいません。妾は狂っています。
「キャハハハ、あなたお前。よく言ってくれました。殺す殺して差し上げますフフフ」
ゆっくりパチュリーの帽子を奪い、丸めて口に捻じ込む。目も、髪も、
それを強引に外部からの力で租借させる。ほらいつもの通りあの間抜けな声を出しなさい。
あら、もう?もう死んでしまったの?でも、次、次なの、次が、次なのですよ、爺。
わたくしはそれからその場所で暗くなるまで本を読みふけっていました。
帰り道、もう店終いを始めている文具屋を見つけ、どうにか便箋と封筒を買う。



群の長を勤めるゆっくりの多くは巨体な身体と体重を武器とし、
人間すら簡単に殺めてしまいます。また光線(レーザー)を照射できる者や毒ガスを散布するものもおり、
人間だけでの駆除は絶対に行わないでください。返り討ちに合う場合があり、悪い場合は殺害されます。


遺書という物を初めて書きます。
あのゆっくりパチュリーの言葉から群の長が森の奥から出てくるのはもう少し後、
それに買った本に書いてありました「悪い場合は殺害されます」の文。
いざ書こうと思うと筆が進みません。
仕方なく、わたくしは刀を持ち、夜の庭に出ます。
刀を振っていれば何か言葉が出てくるだろう。そんな事を考えながら。

三日後、わたくしはそれを後悔します。
今日捕まえたゆっくりれいむを拷問した所、群の長はもう森の北にある開けた場所に来ていると。
目を潰した後に子れいむの悲鳴を聞かせ、助ける代わりに聞き出した情報ですから、おそらく本当でしょう。
わたくいはいても立ってもいられなくなり、ゆっくりれいむの親子を小屋の壁に叩きつけ、屋敷まで戻ってきたのです。
深呼吸をして便箋に向かいます。死にに行く。今から殺すために死にに行くと思いますと。
「あ、あれ、涙が。あれ・・・」




お母様、お父様、村の皆様へ
わたくしはこれから死にに行きます。
森の奥にゆっくりの群の長がおります。それを殺すために死にに行きます。
信じて貰えないかもしれませんでしょうが、わたくしの今までの行動は全て。
この群の弱わらせ、爺を殺した群の長を殺すためでございます。
わたくしの部屋にある着物や何かお金になるものを売って迷惑をかけた村人の皆様に、
お詫びをしたいのですが、今日を逃すと長はまた森の置くに隠れてしまいます。
どうか、お母様が適当にお選びになって村人の皆様にお詫びの品でも買っていただけないでしょうか、
最後まで親不孝な娘で、本当に申し訳ありませんでした。
村人の皆様にも、本当に申し訳ありませんでした。
わたくしの命はもう群の長にくれてやる命で、頭を下げる事すらできませんが、
あの女は気が触れてとうとう死んだのだ。あのバカ女は最後の最後まで気が狂っていたのだ。
本当に厄介で本当に忌々しい女だったとお笑いください。
申し訳ありません。手紙も満足に書く時間がありません。
わたくしはこれから死んで参ります。大好きな爺の元へ行って参ります。
本当に申し訳ございませんでした。わたくしは喜んで死んで参ります。
最後にお願いがございます。わたくしは探すなら三日後、森にお入りください。
わたくしが長を殺せなくとも、三日あれば長は森のずっと奥に逃げます。
そうすれば安全なはずです。ですが、できる事なら探さずにあれは気が狂い崖から身を投げた。
そう、お思いください。


まだ口元が振るえ、鼻はグズグズと鳴り、目は真っ赤だが、
わたくしは着慣れた赤い着物を脱ぐ、邪魔になるといけないからいつもよりきつくさらしを巻き直す。
白い着物、爺の刀、『わたくし』の小物入れ
それだけ。わたくしが死出の旅路に持っていくのはわずかそれだけです。


森を北に進みます。ゆっくりはほとんどいません。
今朝からあまり見かけませんでしたが、日が落ちた今となっては尚更です。
おそらく群の長にわたくしを殺させるのでしょう。
群の長と入れ替わりで森の奥に行っているはずです。
北の広場なら何度か行った事がございます。
妖怪が出るかもしれないからと人が滅多に行くような所ではございませんが。
あれでしょう。北の広場の真ん中に大きなゆっくりれいむがおります。
わたくしは不意打ちなどせず、正面から出て行きます。まず、爺の薬入れを。


「なんで、人間がここまで来られるの?」
「お仲間をたくさん殺させていただきました・・・」
大きなゆっくりれいむは不思議そうにわたくしを見ます。
「でも、みんなを殺してたのは」
見つけた。もみあげのような場所にあるリボンに薬入れが結んである。
「赤い服を着たキャハハと笑う気狂いの女でしょう?それがわたくしです」
「ゆ?でもおねーさんは白い服で」
「フフフ、これから死ぬ女が赤い着物は着れないでしょ。さて、あなたから返していただかなければ」
わたくしは口元を緩め、手を差し伸べます。
「ゆ?」
「2年前、わたくしの爺から取り上げた薬入れですよ。あなたのリボンについてる」
「ゆゆ?!これはれいむが貰った物だよ」
爺が薬を出さずに?何を馬鹿な事を言っているのでしょう。
「奪った、物でしょ?」
「ゆ・・・ゆぅ、こ、こんな汚いのいらないよ!!さっさと持って帰ってね!!」
わたくしはそれを大事そうに拾いまして砂や埃を払い、懐にしまいます。
「さて、お姉さん。みんなを殺したってどういう事、ゆっくり説明してね!!」
「言葉の通りにございます。事の始めはこの薬入れ、爺からお前達が奪ったなんてすぐにピンと来ました。お前達は人の物を何でも欲しがる卑しいモノなのですから」
わたくしは大きなゆっくりれいむに説明してあげました。


そこではじめ、お前たちをすべて殺そうと思いましたが、
お前達は忌々しくも数が多く、全て殺すには私だけでは不可能です。
ですから、爺から薬入れを奪った憎いゆっくりを殺そうと思いました。
しかし、お前のような大きなゆっくりがいると村人は怖がりわたくしを止めようとします。
ですので、昼間は狂人のフリをしてお前達をとにかく殺し、
臆病なお前、大きなゆっくりを村に近づけさせないようにします。
別の所で、尋問を行い薬入れの在り処を探しました。お前達は著しく記憶が曖昧で苦労させられました。
が、たまたま、大きなゆっくりれいむ。群の長が前に人間から奪った袋を自慢していたと聞きまして、
お前を殺しに来たんです。お前もわたくしがあまりにゆっくりを殺すせいで、
心配になり、森の奥からこんな村の近くまで来たのでしょう?
お互いに良い機会なのです。さ、殺しましょう、お互い


「ま、待ってよ、おねえさん」
「臆しました?」
「れいむはそれを返したよ。それにお姉さんを見逃してあげるよ。これでやめにしようよ」
「いいえ、結構です。わたくしは死ににきたのですから、元より見逃してもらう気などありませんし」
「ゆ?」
「わたくしの事、お仲間から聞いているのでしょう?気が狂っていると」
口元を緩ませ、キャハハと笑い、妾は刀を抜いた。


「もう・・・おねーざん、やめようよ。れいむもおねーさんもじんぢゃう」
「キャハ、キャハハハ・・・そんな事できないに決まっているでしょう。あなたお前を殺すまでわたくしは生きるのですからキャハハハ」
もう左手の感覚が無い。恐らく折れたました。
肋骨も、内臓に突き刺さっていない事に感謝しなければ。
「もうじんだ人間のだめに死んで何になるの?!」
「何にもなりません。何にもなれるわけありません。わたくしは死ぬのですから」
兎に角、顔にダメージを。広い傷口を。出血が酷く視界がぼやける。
わたくしは刀を突き出し、突進します。
しかし、体重なら向こうの方が上、わたくしの体は簡単に撥ねられてしまいます、そこに。


「まっていました」
噛み付かれたわき腹、噛み切られるというより圧壊させられるような痛みだが、
右腕を動かし、れいむの顔面に刀を刺す、あとはもうめちゃくちゃに切り刻む。
わたくしはやっと噛み付きから開放される、脇腹から血がこんなにも。ああ、なくなっているのですか、
キャハハハハハ、赤姫らしいわね。キャハハハ殺しましょう早く早く。でないと!!
れいむは残っている左目でわたくしを見つけがむしゃらに体当たりを繰り返す、
わたくしはそれを避け、れいむの顔を重点的に攻撃する。
左目、左目さえ潰してしまえば。ぼやけた視界の向こうに見える赤いリボンに向かい刀を突き出す。
どこかに刺さった。あとは体重をかけて斬る。わたくしはそのまま地面に倒れこみました。




これ、これ起きてください。
「爺、わたくしはまだ眠いのです。もう少し寝かせてくれませんか」
またそのようなたまになら良いですが、毎日では困ります。
「ええ、わかっております。爺、そういえば、これなくしてはいけませんよ」
ん、薬入れ・・・おお、爺ともあろうものが、お嬢様にとんだお手間を。
「良いのですよ。わたくしのほんの感謝の気持ちなのですから、ですが」
何か裏がございますな。
「ですが、よければわたくしの我が侭を聞いてくれませんか」
ええ、ええ、爺はそのためにおるのですから、
「また二人で出かけましょう」
町がよろしいでしょうか、
「何処でも良いです。爺がおればどこでも良いです」
それではお嬢様、参りましょう。







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最終更新:2022年04月14日 23:46