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「………おおおぅぅぅぅん…」
「何だ!?」「畑の方だ!」



「むぎゅうううううう!!」
「もうじないがらゆるじでえええぇぇぇ」


「もう二度とくるんじゃねえぞ!!」
数匹のゆっくりが罵声を浴びせかけられながら畑から叩き出された。
全身泥まみれで這って逃げていく。

「奴ら当分来ないだろうな。」
「でもあの餡子脳だ。そのうちやられたことも忘れてやってきくるだろう。」

そう言いながら見下ろした先
そこには一匹のゆっくりがいる。

「おう!やったなめ-りん!!」
「よくやったぞ!!」
「!!!!」

男たちの言葉に高く跳ねることで答えたこのゆっくり
その名はゆっくりめーりん
その特徴は先天的に喋ることができないこと
代わりに高い知能をもっていること
ゆっくりとしては皮が厚い丈夫な体をもつこと

そんなゆっくりめーりんであるが「喋ることができない」ために
ゆっくりの中ではいじめらることが多いという。

このめーりんも例外ではなく他のゆっくりにいじめられていた。
そこを助けたのがこの男たちである。
以来めーりんは恩返しをすべく人間の手伝いをするようになった。
特にめーりんは畑番を好んだ。
野菜につく虫を食べたり、果物を啄ばもうとする鳥
そして盗みに入るゆっくりを追い払う仕事である。
俗に「いいゆっくり」とも称されるゆっくりめーりんは
「何かを守る」本能の元にその仕事をこなした。


その最中にめーりんが出くわしたゆっくり達
それはかつて森の中でめーりんをいじめていたゆっくり達で会った。
「ゆゆ!めーりんだよ!!」
「あのいなかものまだいたのね。またいじめてあげるわ」

だが人間たちの中で畑番の任務をこなし自信をつけためーりんは
かつてのめーりんの比ではなかった。
ゆっくりの悲鳴を聞いて駆け付けた人間たちの助けを借りながらも
かつてのいじっめっこ達を撃退したのである。

「よーし今日は飲むぞ!!」
「はは、飲みすぎるなよ。」
めーりんの勝利を我が事のように喜ぶ男たち
その日は遅くまで笑い声が絶えなかった。



次の日
朝焼けの中に人間とゆっくりがいた。

「もう行くんだなめーりん」
「がんばるんだぞ。おまえなら大丈夫だ。」

初めからわかっていたことである。
いじめっこか達を撃退した以上もうめーりんが森を恐れる理由はない。
それでもなお名残り惜しそうに振り返り、振り返りながら
ゆっくりめーりんは森に消えていった。

「いいゆっくりだったな。」
「ああ、あんなゆっくりならずっとだって暮したいさ。」





森に入っためーりんは一気に加速する。
勢いよく跳ねて奥を目指す。
人間はめったに近寄らない森の奥深くに来たとき
ゆっくりめーりんは木の根元にある穴に向かって


叫んだ。



「じゃおん!おまえたち!!でてくるお!!!」


「わかったわよ…」
そういって穴の中から出てきたのは二匹のゆっくり
まりさとありす
両方共に昼間畑を襲撃し、撃退されたゆっくりの一団にいたゆっくりである。

「ほかのやつらはどうしだお!!」
「ぱちゅりーはあのあとしんじゃったんだぜ」
「ちぇんとみょんはけががひどいの。れいむがかんびょうしているわ」
「じゃおうぅん…まったくおまえたちはつかえないお!!
 きょうだってにんげんどもがくるのはもっとおそいはずだったお!!
 ほんとうならどさくさにまぎれてくだもののひとつもかっぱれてたお!!
「だってそれはめーりんが…」
「じゃおう!?」

昼の襲撃の際に人間を呼び寄せた「ゆっくりの悲鳴」
人間たちは襲撃側のものと考えたがそれは違う。
「しえすた」中の突然の襲撃に驚いためーりんの絶叫だったのである。
ゆっくりめーりんは喋れない、と思っている人間にわかるはずもないことではあるが。
ともかく人間を呼び寄せたのはめーりん自身である。
普段「しえすた」中はこのゆっくり達に見張りや虫取りをさせていた。
計画では起きているはずであったのだがつい普段の癖が出たのだ。

「じゃぅるさいお!おまえらがこのめーりんにさからうのはゆるされないんだお!!
 つかえないおまえらはくびだお!!もういらないお!!」
「!!!いくらなんでもひどいよ!!」
「あやま

その時点で彼らの言葉はとめられた。
めーりんによってではない。茂みから投げかけられた網によってである。

「ゆゆ!!」
「なにこれ!!」

「よーし、うまくいったぞ。」
「いつもどおりの方法だ。当然さ。」
茂みから出てきたのは数人の人間達

「いつもいつもありがとうございますねぇ。めーりんさん。」
「どうってことないお!!きもんげにもよろしくたのむお!!」
「えーっとありすにまりさに…穴のなかにれいむとちぇんとみょんでしたっけ?
 みんな成体ですからけっこうな額になりそうですよ。」

彼らは人里の大商人きもんげの配下のゆっくりハンター達
本来ならばすべてのゆっくりに恐れられているはずの男達である。

にも関わらずなぜめーりんは平然としているのか?
それはゆっくりめーりんの生態に理由がある。

人はゆっくりめーりんを「弱いゆっくり」と考えている。
体は強いがおとなしすぎる、だからいじめられる、と。

だがそれは重大な誤解なのだ。

ゆっくりめーりんは丈夫な肉体と高い知能を持つ。
そのようなゆっくりがいじめられるはずがない。
なにより…これは人間にも知られていないことであるが
ゆっくりめーりんは純然たる「捕食種」なのだ。

たいていの捕食種はゆっくりのなかでも低知能であったりする。
だがゆっくりめーりんは違う。
ゆっくりの中でも高等な部類に属する知能を持っている。
自らの力を自覚しためーりんを押しとどめるものはなにもない。

ゆっくりめーりんはある意味もっとも暴力的手段を好むゆっくりなのだ。
純粋な捕食行動以外にも示威やめーりん同士の諍いの解決手段として
ゆっくりめーりんは暴力的手段を取る。

そしてそれは他種に対しても変わらない。
幼いころから一族と共に他種からの略奪を行い鍛えられるめーりん達は
低知能なれみりゃ種、社会性のないゆゆこ種を押さえゆっくりの覇者とも言える存在となる。

他のゆっくりが様々な種と交わるのに対し
ゆっくりめーりんはゆっくりめーりんとのみ交わる。
純血主義とも言える婚姻統制が敷かれる理由は
全てはゆっくりの覇者たるゆっくりめーりんの結束を守るため。

一日の大半を寝て過ごすゆっくりっぷりにも関わらず覇者となったのは
その知能ゆえではない。その結束ゆえ、「何かを守る」という本能が
めーりん種を守れと命ずるゆえである。

結束によって他のゆっくりから種を守る事に成功したゆっくりめーりんが
人間の脅威を知った時、種を守るためにとった行動
それは他のゆっくりを犠牲にすることであった。

ゆっくりめーりん達が
「ゆっくりをゆっくりさせない」ことを好む奇矯なゆっくり、きめぇ丸の仲介によって
人里の商人きもんげと接触したのはゆっくり加工所がいまだ軌道に乗る以前の事
ゆっくりの有用性に着目し、ゆっくり加工所へ多額の出資をしていたきもんげは
ゆっくりの安定供給と引き換えに種の保護を求めためーりん達の提案に飛びついた。

その後きもんげの元に届けられたゆっくり達は
『きもんげ配下のゆっくりハンターの獲物』として加工所に納入された。

めーりん種との密約を加工所に内密にしたのは利益の独占と発言権の増大のためである。
当時ゆっくりの商品化には成功していた加工所であったがゆっくりの養殖にはいまだ成功しておらず
材料となるゆっくりはすべて捕獲する必要が有った。

その状況下で大量のゆっくりを安定して納入したことは
きもんげの発言力を高め、きもんげは実質的な経営者の1人となった。

その後の養殖の成功によって商品に占める天然物の割合こそ減ったものの
天然には一定の価値が認められている。
きもんげとゆっくりめーりんの密約は続いているのだ。


「やめて!やめてえええぇぇぇ!!」
「せめてどうくつのこどもたちにあわせてね!!」
「うるさいお!!きさまらはおとなしくまんじゅうになるお!!」

網にとらわれながらも
籠に放り込まれまいとふんばるゆっくり達を踏みつけ蹴落とす。
めーりんの一撃によってゆっくり達は次々に籠に落ちていった。

こうしてゆっくり達は捕獲され加工所に送られた。
ゆっくりハンター達を見送っためーりんはその場を離れ森のさらに奥へと進んでゆく。
目的地はありすたちが言っていた「どうくつ」である。

木々に囲まれたそこは実際は洞窟ではない。
正しくは廃坑である。

広い空間が存在するそこはめーりん種の拠点の一つである。
幻想郷中に散らばるゆっくりめーりんの拠点は種族間の連絡所であると同時に
もう一つの顔を持つ。

「じゃおん!!おかえりだお!!ゆっくりしていくお!!」
「じゃおん!!ただいまだお!!まったくつかれたお!!」

帰還しためーりんが仲間達と戯れるそこは
当然のごとく「しえすた」(あるいは計画的休息)をとる
門番めーりん達に守られた廃坑の入り口からすぐの小空間。
そこはかつての鉱夫達の休憩所であり
そのさらに奥にはいくつもの横穴が開けられた坑道が続く。

「ゆっくりちていってね!!」
「ゆっくりちているよ!!」
「ゆっゆっゆ!!」「ゆ~!」
「れいむのうえからどいてね!!」
「まりさのゆっくりプレイスはうごかないでほしいんだぜ!!」

横穴にはすべてに鉄格子がはめ込まれ
内部はゆっくりの牢獄となっていた。
入れられているゆっくりの殆どは赤子か子供であり
大人はごく少数

先ほどのゆっくり達の子供たちもこの中のどこかにいるだろう。
このゆっくり達はすべて人質として赤子のうちに親から奪われたゆっくりである。
種としての繋がりは薄くとも家族の関係は濃い。
この牢獄の存在が少数のめーりんが多数のゆっくりを従える鎖となる。

牢の入り口に嵌められた鉄格子は人の手によって作られたものであり
めーりん種と人間の繋がりが見て取れる。

「おまえたち!!えさのじかんだお!!」
めーりん達の声と共に穴の中に大量の菓子類が放り込まれる。
内部のゆっくりたちが貪るそれはきもんげの下にある食料品店、菓子店から買い上げられた処分品
本来なら廃棄処分になるそれを買い上げる事を店主たちは不思議がったが
まさかこのように使われているとは夢にも思わないだろう。

「ゆ!!ごはんだよ!!」
「めーりんありがとう!!」「ありがとうね!!」
「む~しゃ!!む~しゃ!!しあわせ~!!」
「うめぇ!!めっちゃうめぇ!!」

赤子の頃よりこの牢獄で育ったゆっくり達は
この異様な環境に毛ほどの疑いも抱いていない。
毎日食事をくれるめーりん達を無邪気に信じている。

「えーと、そこのおまえたち!!でるお!!」
「ありすのこと!?」「ついにすだちがきたのね!!」「とかいにいくんだね!!」

牢から出されたのは十匹程のありす
彼らの中ではここから出る事は巣立って都会に行くという事になっているらしい。
「とかいにいったらおめかししようね!!」「しょっぴんぐをしてえすてにいって」
「すてきなまりさとであうのよ!!」

前後を看守役のめーりんに挟まれてありす達は楽しげだ。
やがて彼らが来た事がない場所へとたどり着く。
「ゆゆ!!めーりんがいっぱい!!」
めーりん達が常駐する小空間、そこにはこの拠点に詰める二十数匹のめーりんが集っている。

「なんなの!!なにがはじまるの!!」
「ゆ!とかいはのありすはわかるよ!!」

一匹のありすが進み出て叫ぶ
「ありすたちのふぁっしょんしょーね!!」

その叫びにほかのありす達がざわめく。
「ゆゆゆ!!ほんと!?」「やだまだおめかししてないよ!!」

「あー…ちょっとちがうけどだいたいあってるお」
めーりん達はありす達を取り囲み
一斉に跳ねた。

「「「「ゆ?!」」」」

なにが起きたか認識する事はできなかっただろう。
ゆっくりめーりんの猛烈な体当たりが一撃でありす達の命を奪ったのだから。
ありす達はまるで一枚のカスタードパイの如くくっ付きあい混ざり合っていた。
あふれ出したカスタードクリームをじゅるじゅると吸い、めーりん達は空腹を満たした。

牢獄の中のゆっくりはその大半が加工所への納入品となるかめーりん達の餌となる。
そうならなかったごく一部のゆっくりも親元に帰れるわけではない。
かれらもまためーりん種の犠牲となる運命である。


ある日、一匹のめーりんが廃坑からあるゆっくりを連れ出した。
「じゃ、おまえたちはきょうからじぶんたちのすでくらすお!!」
めーりんにそう告げられたのは
まだ若いれいむとまりさの夫婦に
何匹かの子ども達

「ゆ!れいむたちはすだちをするんだね」
「ついにいっこくいちじょうのあるじなんだぜ」
「おかーさん、やったね!!」
「みんあでゆっくりちようね!!」

彼らは今まで巣立ちを拒んでいたわけではない。
幼い頃から育ててくれためーりんの「おまえたちはまだはやいお!!」という言葉に従ったのみ
子どもを作ったのも「いざというときはかずはおおいほうがいいお!!」とのめーりんの言葉による。

「じゃ、ついてくるお!!」
そういってめーりんは一家を廃坑の外へと連れ出した。
そしてそのまま森の外へと進んでいく。
森を抜けるとそこにあるのは人間達の土地、人里
ずっと廃坑で育った一家には見た事が無いものだった。

「ゆゆ!おっきなものがいっぱいだよ!!」
「きょうからおまえたちもあれにすむんだお!!」
「ちょーなの!!」「ゆっくりできそうだね!!」

人里の外縁部を進んだ一行は一軒の家で立ち止まった。
それなりの大きさの家であり住人の暮らしぶりも悪くなさそうである。

「きょうからここがおまえたちのすだお!!」
「おっきないえだよ!!」
「いいいえなんだぜ!!」
「じゃ、はいるお」

そういってめーりんは近くに落ちていた石を咥えると
顔面から雨戸に体当たりする。

「ゆゆ!!めーりん!!」
「だいじょうぶなのかだぜ!!」
「これくらいどうってことないお!!」

石を咥えて木の板をぶち破る。
分厚い皮を持つゆっくりめーりんのみにできる芸当である。
少々の切り傷はどうということもないのだ。
中に入ったゆっくり達は家の中をきゃいきゃいと騒ぎながら駆け回る。
「ゆ!ここにおいしそうな食べ物があるよ!!」
「きれいなお花があるよ!!」
「このしきものはゆっくりできそうだぜ!!」
「じゃーおまえたち。ちょっとあつまるお」

めーりんの言葉に集まるゆっくり達
卓袱台の上にのっためーりんはゆっくり一家にこう言った。
「じゃ!ここをもっとゆっくりできるようにするお!!」

それからは一家の共同作業
めーりんの指示に従い、鉢植えをひっくり返して土を撒き
仏壇を倒して中の物を放り出し、中に枯れ草や落ち葉を運び込む。
まりさが気に入った敷物には戸棚の中にあった蜂蜜を塗りたくり
戸棚の中の食器類を叩き割ったり床の間のけ軸に絵を描く作業を
子ども達は嬉々としてこなした。
見つけた食料品にも迷わずに手をつける。
野生のゆっくりならば見た事がない既成品や菓子類等は避け、野菜類を選ぶだろう。
だがこのゆっくりたちは廃坑の中で人と同じものを餌として与えられていた。
なんであるかはすぐわかる。

「じゃ、これでゆっくりできるようになったお」
「ゆっくりできるね!!」
「あとすこししたらおにいさんというにんげんがくるお
 えさはそいつにもってこさせるお!!」

これまで一家は人間を見た事がない。
めーりん達の話でゆっくりの言う事はなんでも聞く
ゆっくりの命令に従うのが大好き、と聞いたくらいだ。
今まで餌はめーりんが持ってきてくれた。
これからは人間が持ってくるのだろう。

「わかったよめーりん!!」
「これからはここでゆっくりするんだぜ!!」
「じゃ、げんきでくらすお!!ゆっくりするんだお!!」

めーりんが立ち去ってからしばらくした後
帰宅したこの家の主人が見たのはゆっくりによって荒らされた我が家
部屋中に土がばら撒かれ仏壇は引き倒されている。
小さなゆっくりが乗って遊んでいるのはどう見ても位牌であり
亡父が遺した掛け軸は煤で汚され、一緒に酒を酌み交わした杯は粉々に砕けかれていた。

ゆっくり達は彼を見るなりこう言った。
「おにいさん!!ここはれいむたちのおうちだよ!!」
「はやくたべものをもってくるんだぜ!!」
「どりゃやき!!」「きんちゅば!!」「だいふゅく!!」

その日の夕刻
ゆっくり加工所にゆっくりであった塊を持ち込む主人の姿があった。


ゆっくりたちに畑荒らし、家荒らしをさせるのもめーりん種を守る策の一つだった。
他のゆっくりが暴れるほど「いいゆっくり」たるゆっくりめーりんの評判は良くなる。
本来ゆっくりの生息域は人間のそれとはほとんど重ならない。
大抵のゆっくりは人間の存在すら知らぬままにその一生を終える。

ゆっくりが急速に増加した頃、一部のゆっくりが人里に接した事もある。
だがそれも「にんげんはこわい」との情報がゆっくり社会にもたらされると共に引いていった。
現在の被害の殆どはゆっくりめーりん達の工作によるものであるを
人里の人々が知る由もない。

「ゆっくりの被害」に喜ぶのはめーりん達のみではない。
きもんげも、である。

「ゆっくりの被害」を喧伝しゆっくりは害獣であるというイメージを
人々に植え付ける、ことでゆっくりへの抵抗感を減らす事が出来る。
人語を解するゆっくりを食用にする事に抵抗感を覚える人間は少なくないのだ。


きもんげはめーりん種の保護という約定を忠実に履行した。

かつて部下が見つけた新種のゆっくりとしてゆっくりめーりんを持ち込み
「こいつはほかのゆっくりにいじめれとった気の毒なゆっくりや
 こいつくらいは何もせんといてやろうと思うんや。」
と言ったのは他の誰でもないきもんげである。

その後も商品開発部門からはゆっくりめーりんを使用した新製品が何度か提案されている。
辛味のある餡を利用した調味料や分厚い皮を加工しての効率的な饅頭生産法などだ。
とくに後者は餡子は作れても皮は作れぬゆっくりの弱点を補う案として注目されたが
全てきもんげによって潰されている。

職員の間では「あのきもんげさんにも情けの概念があるのか」などと噂されているが
その実は利益の為なのだ。

加工所以外にも
幻想郷に存在するその他いくつかの研究機関に対しても
きもんげが『資金援助』を行いゆっくりめーりんの真実が漏れる事を防いでいる。

きもんげはその他にも様々な策を講じていた。

とある野原の真ん中で一匹のゆっくりめーりんが「しえすた」を行なっている。
「ZZzzz…ZZZzzz…」
そこにやってきた人間の子供たち
人懐っこい事で知られるゆっくりめーりんを見つけて声を掛けた。
「めーりん!一緒に遊ぼう!!」
「じゃおん!?」

声を掛けられためーりんはバネ仕掛けのおもちゃのように跳ね起きる。
そして
「じゃお!めーりんはぎょうむちゅうだお!!おきゅーりょーよこすお!!」
寝ぼけているのだろうか。
ぴょんぴょんと跳ねて子供たちにまとわりつく。

「めーりんが喋った!!」

ぎょっとしたように固まる子供たち
「じゃお!ぷろれたりあーとにちんぎんをよこすお!!このぶるじょあのいぬめ!!」
「こいつ可笑しいぞ」
「めーりんは喋らないよな?」
「あ、こいつみすずなんじゃないか?」
「きっとそーだよみすずだよ!!」

子供たちが言う「みすず」とはゆっくりめーりんに偽装するという「ゆっくりみすず」の事である。
加工所出版部門によって刊行される「ゆっくり図鑑」によれば
その主な特徴は「よく喋る」「ゆっくりめーりんを騙る」「他のゆっくりに襲い掛かる」こと。
捕食種であるとも書かれている。
このゆっくり、つまるところはゆっくりめーりんである。
種族間の結束が強いゆっくりめーりんにも時折はぐれはいる。
そのはぐれによって、あるいはなんらかのアクシデントによって
「喋る事が出来ない」「心やさしい」「他のゆっくりにいじめられる」
ゆっくりめーりんのイメージが壊される事を防ぐための処置だ。

「じゃ!みすずじゃないお!めーりんだお!!」
「うわ、でたよめーりん騙り」
「喋る時点でバレバレだろ。」

ゆっくりめーりんはいいゆっくり
なればそれを騙るのはわるいゆっくり

「ゆっくりってのは恥ってのを知らないのかな。」
「知ってればこんな事しないだろ。」
「害獣は駆除しないとな。」

めーりんを取り囲んだ子供たちは鞠を蹴る様にめーりんを蹴り上げ始めた。
「!!!やめ
「それ!」じゃぉ!」
「よっと!」じゃぅ!」
「はっ!」じゃ…ぉぉぅ」

ぽんぽんと蹴り回されるゆっくりめーりん
いくら分厚い皮をを持っていても蹴り上げ続けられれば身が持たない。

徐々に削れ中身のピザまんが露出し始めた頃
ゆっくりめーりんに一匹のゆっくりが飛び込んできた。
それは同族のゆっくりめーりん

まったくの初対面であるがこの状況で同族は救いの神に見える。
「じゃおぅ!めぃりぃん!めぃりぃん!たすけふめぃり…」
同族への必死の懇願
守る事を好むその身体で今こそ自分を守ってくれという願い
吐き出される息に混ぜられたサイン

それが叶うことは無かった。
蹴り殺される同族を目にしながら
ゆっくりめーりんは微動だにしなかった。

「じゃおおぅぅぅ…」
限界を迎えたのだろう。
茶色い中身をぼろぼろと落としながら
ゆっくりめーりんは動かなくなった。

「あー、死んじゃったじゃ。」
「行こうぜ」
「お、めーりんだ」
「見ろよめーりん。みすずをやっつけたんだ。」

子供たちとともに歩むゆっくりめーりんの顔には一片の翳りもなかった。
なぜなら今蹴り殺されたのは「ゆっくりみすず」だから。
守る事を知るめーりんは全力を持って無視という防衛行動をとった。
守るべきはゆっくりめーりんという種であるからである。

なお加工所出版部発行「ゆっくり図鑑」であるが
全種総天然色イラスト入り、ポケットサイズの図鑑には
様々なゆっくりの生態が書かれている。

人々が噂する
「れいむ種は強いものに媚びる」「まりさ種はすぐ裏切る」「ありす種は性欲の権化」などの
話の大本は大抵この図鑑である。
他のゆっくりのイメージを下げる効果を期しての記述だ。

この図鑑の信憑性は上の下といったところ。
各所に織り込まれた「意図」はこの図鑑の学術的価値と引き換えに
大いなる利益を加工所にもたらしている。


加工所出版部門は「ゆっくり虐待専門誌」も刊行している。
人里にゆっくり虐待ブームを仕掛ける策は見事に成功している。
子供を中心に据えた計画であったが成人や妖怪の中にも愛好者が増えているとか。
虐待グッズの売り上げも向上し、金が金を産む理想的な状況に近づきつつある。
このままめーりん以外のゆっくりを食品、娯楽品以上に見る人間がいなくなってくれれば、というのが
現在のきもんげの願いだ。

自分達以外の全てを犠牲にし繁栄する最強の弱者ゆっくりめーりん
全ての犠牲を吸い取り膨れ上がるきもんげ
両者の関係はこれからも続くだろう。
その関係に終わりが来るのか否か、それは誰にもわからない。






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最終更新:2022年05月03日 09:53