ここでは、私が「たたらの燭灯」という名前に込めた想いを語ります。
「燭灯」は当て字で「ともしび」と読ませます。
先人より受け継がれてきた伝統の火を意味する「灯」という文字を、どうしても使いたかったのです。
「たたら」はご存知の通り、日本に古来より伝わる製鉄方法の名称です。
「たたら」という言葉を古代朝鮮語で解釈すると「もっと加熱する」という意味にあたるそうです。
私たちたたらの民は、伝統を受け継ぐ燭灯そのものとなり、良質な玉鋼から最高の芸術品を産みだしていく存在でありたいと願っています。
ここで言う最高の芸術品とは、良いステータスや戦闘での強さや知識のみをさすのではなく、むしろ仲間と共に培っていく絆や志や心の強さを指しています。
以下に「たたら製鉄」について簡単に述べます。
どうもworでの私たちの生き様に共通することが多いように思われて仕方がないのです。
「たたら製鉄」は、1000年以上もの歴史を有しています。
鉄原料として砂鉄を用い、木炭の燃焼熱によって砂鉄を還元し、鉄を得る方法です。
何トンもの砂鉄をさらい、山に入って火起こしのための木を集め、何日もかけて炭を作るところから始まります。
操業開始から終了まで三昼夜、約70時間かかるそうです。
その一操業を、一代(ひとよ)と言います。
籠もり期 |
炉に砂鉄を投入し、次に木炭を投入して燃焼させます。 |
籠り次ぎ期 |
さらに炉温を上げます。 |
上り期 |
次第に砂鉄を増していくと、鋼のもとになる塊「ケラ」ができます。炉況は活発になり、炎は山吹色に高く輝きます。そして、炉が次第に侵食される一方、ケラが成長します。 |
下り期 |
さらに砂鉄を増して、ケラを大きく成長させます。このころになると炉壁は痩せ細り、これ以上の操業に耐えられなくなり、たたらの操業を終了します。 |
一代に装入する砂鉄13トン、木炭約13トンに対し、できるケラは2.8トン。
このケラの中から選別された良い部分は玉鋼(たまはがね)といい、日本刀など高級刃物の原料にされましたが、2.8トンのケラからとれる玉鋼は1トン以下という僅かなものだったのです。したがって、玉鋼がいかに貴重なものだったか分かると思います。
和鋼(たたら製鉄により製造された鋼)は地質が極めて純粋で、硬く、曲がらず、粘り強く錆びにくいといった性質を持っています。
日本刀はこの和鋼の性質を利用した最高の鋼製品と言うことができます。
日本刀は折れず、曲がらず、良く切れるという武器本来の機能を備えているのみならず、姿の良さ、刃文(はもん)、沸(にえ)、匂(におい)、映り(うつり)や地肌の不思議な美しさなど、神秘的とも言える荘厳な美をもっています。これは日本刀1000年の歴史の中で和鋼の特質を日本刀の中に最大限活用し、表現した結果生まれたものです。
たたら場では仕事場と従業員の住宅を一緒にした一つの特異な社会を形成し、これを山内(さんない)と呼んでいました。
そして、たたら作業の技術責任者を村下(むらげ)と言います。
長年にわたって高温の炉内を直視するため、村下の眼は強い光によって衰えを早め、ついには全く視力を失うに至るとのこと。村下はまさに火との壮絶な闘いによって鉄を作ったのです。
最終更新:2009年01月23日 02:55