14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

パートB

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14sure74

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「・・・ハッ!?」

何時の間にか気を失っていたらしい。
上半身を起こしたタクトは、まだ少しだけ重い頭を激しく振って無理矢理覚醒させた。

「あっ、気が付きましたね。」

右の方から声をかけられ、タクトは顔を向ける。
そこには、先ほど一緒にあの女性に引き摺られていた男性の姿があった。
男性はタクトの意識が戻ったことに安心したのか、少しだけ疲れたような笑顔で口を開いた。

「すみません。僕の監督不行き届きで貴方まで巻き込んでしまって・・・。」

男性はタクトに申し訳なさそうに頭を下げた。
先ほどの二人の会話も合わせて考えると、どうやら二人には何らかの関係があるらしい。
そう考えたタクトは、色々と聞き出すことにした。

「・・・てか、まずアンタは誰だよ。」
「あっ、申し遅れました。僕はラグ=F=アルガスです。この度は巻き込んでしまって本当にすみません、えっと・・。」
「タクト、芹沢タクトだ。」
「タクトさん・・・ですか。余り聞きなれない名前ですね。・・・兎も角、申し訳ありません。」
「・・・分かったよ。もういいよ。」

ラグ=F=アルガスと名乗った男性があまりに申し訳なさそうに頭を下げるので、タクトはとりあえず許すことにした。
そして、先の発言で疑問に思ったことをぶつけた。

「聞きなれないって、日本じゃそれなりにありそうな名前だぜ?寧ろアンタの名前の方が・・・。」
「えっ?『にほん』・・?タクトさん何を・・?」
「おまっ、冗談を言うな。コスプレでキャラ名まで考えて入り込むのはいいけど、流石についていけねーぞ?」
「『こす・・・ぷれ』・・・?タクトさん・・・やはり、何かあったんじゃ?」
「コレだよコレ!コスプレなんだろ!」

タクトはラスの髪を突然掴んで引っ張った。

「痛い!痛い!な、何するんですか!?」
「えっ!?・・・地毛・・・?」
「当たり前ですよ!僕はまだそんな歳じゃありません!」
「つーことは、アンタ外人か?日本語ウマいんだな・・・。」
「『がいじん』?『にほんご』?」
「アンタのことだよ。で、アンタの話してる言葉だ。・・・さて、もういいだろ?演技はやめて・・・」
「・・・やはり何処かぶつけたのではないですか!?タクトさん!!」
「うわぁっ!?」

タクトは突然肩を掴まれ激しく揺さぶられた。

「おっ、オーケー!分かったから落ち着け!」
「あっ!すみません・・・。でも、僕は『がいじん』でもなければ『にほんご』なんて喋ってません・・・。」
「よし、分かった。じゃあ周りを見回してみろ。此処はどう見てもにほ・・・。」

と、中々コスプレをやめない男性に対して、周りを見回すことを勧めようとしたタクトであった。
しかし、それが自分の予想とはまったく違う結果を生むことになった。

「・・・って、日本じゃねぇ!!此処、何処だ!!おい!」

今度はタクトがラスの肩を掴んで激しく揺さぶる。

「わぁっ!?お、落ち着いてください!こ、此処はサナン地方の小さな宿場町ですよ!」
「サナン地方!?何だよそりゃ!俺をバカにするなよ!そんな地名、聞いたことないぞ!?」
「そ、そんなこと言われても、此処はずっと昔からサナン地方とですねぇ!」
「じゃあ、どうして俺の言葉が分かる!?アンタの言葉が分かる!?」
「し、知りませんよぉ!先ほどからずっと、僕も貴方も同じ言葉で喋ってますしぃ!」
「・・・はっ?」

タクトは彼の一言で動きを止めた。
揺さぶりから解放されたラスは少し苦しそうに息を整える。

(同じ言葉?俺、ずっと日本語で喋ってるんだぞ?つーことはやっぱこの男は日本語を知っているのか?)

タクトは目の前で苦しそうにしている男を気にせず思案に暮れる。

(でも、此処は日本じゃねぇ、ってかそもそも地球上にあるのかこんな場所・・・?)

タクトはもう一度ゆっくりと周りを見回す。
そこにはまるで、中世ヨーロッパ等が舞台のファンタジー物にありそうな風景が広がっていた。
何かの舞台用セットにしてはリアリティがありすぎる。
もし本当にこれが舞台セットなら、ニュースに取り上げられていてもおかしくはないだろう。
しかし、そんなニュースは聞いた覚えがない。
国外の何処かであるとしたら納得できなくもない。
しかし、今度はどうしてそんな場所に自分が居るのかという問題が生じる。
また、それに付随してそもそも車に衝突されて何故無事なのかという問題も出てくる。
夢とか死後の世界・・・にしては引き摺られた痛みとか、目の前の男の存在感とかハッキリしすぎている気もする。

(・・・つまり、これは・・・。)

タクトの頭の中に四文字の言葉が浮かび上がる。
それは実に荒唐無稽【こうとうむけい】、浮世離れの代名詞と言っても過言ではない、作り話でも最近は滅多に聞かない言葉。

(空間転移・・・ってヤツですか?)

「・・・もう一度聞く。」
「・・・は、はい?」
「此処は、何処だ?」
「ですから、此処はジ・パンドのサナン地方にある名も無い小さな宿場町ですよ・・・。」
「・・・俺の姿、此処じゃ当たり前か?」
「はぁ・・・。正直な所・・・この辺り、いえ、私が知る限りの地域では見かけませんね。」
「そうか。そうか。そう・・・か・・・・・・。」

タクトの表情が少しずつ凍り付く。
その様子をラスは心配そうに覗き込んだ。

「・・・俺、異世界に来たってことですね。分かりたくありませんが、分かります。」
「異世界・・・?つまり、貴方は・・・」
「ああそうだよ!俺はこんな場所知らねぇし、アンタみたいな姿をしたヤツが街中を歩き回ってるのも見たことねぇ!」
「そう、でしたか。やはり・・・。」
「・・・あぁ?」

タクトは彼の一言に疑問を感じた。
『やはり』と言うからには何かしら、自分がどうしてこんな目に遭っているのか理由を知っているはずだ。
タクトは彼を問い詰めることにした。

「何か知ってんのか!?俺をどうするつもりだ!」
「落ち着いてください!なんにもしません!僕らにとっても予想外の出来事なのです!」
「えっ?」

予想外ということは、元々は自分を連れてきてどうこうするつもりは無かったのだろう。
それに、どうこうするつもりならこんな所で悠長に話をしている意味が分からない。
加えて言うならば、目の前の男がとてもそんな酷いヤツには見えない。
タクトはとりあえず話を聞いてみることにした。

「予想外?何だよそりゃ。」
「はい・・・。そのですね・・・・・・。」

タクトの質問に彼は何か答えにくそうに口篭った。そして、何かを思いついたかのような顔で再び口を開いた。

「まずは、コレを。」
「何だよそりゃ?」

彼はタクトの目の前に小さな石を取り出して見せた。
タクトにとって白地に赤い炎のような模様が描かれたその石は、ただの綺麗な石にしか見えない。
すると、目の前で一瞬だけ輝いたかと思うとタクトの良く知る物の形になった。

「こ、こいつは!?」
「これは輝石と呼ばれる石の力です。僕らはこれの実験中でした。」

今、目の前にはタクトの良く知る、コンビニとかでは100円程度で売られているライターがある。
これはどう見ても今居る場所には相応しくない物だ。
手品かとも思えたが、今このタイミングで手品をやるような男には見えない。

「・・・これって、まさか?」
「そうです。此処、ジ・パンドには本来存在しません。」
「って、ことはだ。」
「ええ。輝石の力で、別の世界から呼び寄せました。」
「・・・・・・マジっすか?」
「はい・・・。」
「・・・つまりだ。その別の世界から何かを呼び寄せるっていう石の実験中に間違って俺を呼び出したということだな?」
「そう言うことに、なります。・・・本当に申し訳ないことをしました。」

再び深々と頭を下げられ、タクトは怒る気力を失った。
と言うよりは、余りに突拍子もなさすぎる出来事で呆れ返る以外に何もできなかったという方が正しかった。

「・・・で、戻れるのか?」
「分かりません・・・。」
「・・・・・・そうっすか。」

本当に自分が呼ばれたのは事故で、戻せる方法があるならば恐らくもう実行しているはずだ。
タクトは大きく溜め息をついた。更に聞き出そうとしたその時だった。

「ラス~!首尾はどーだー?!」

聞き覚えのある、できればあまり思い出したくない声が車の走行音と供に響き渡った。
二人が振り向いた先には、マシンガンを積んだ車に乗った彼女が居た。

「く、車!?そんなもんまであるのかよ!?」
「戦利品はマシンガンキャリアーですか。相変わらず凄いですね。」
「おうよっ♪」

車から飛び降りた彼女が親指を突き立てながら勝利を告げる。
そして、タクトを一瞥してからラスに視線を戻して問いかける。

「で、そっちはどうなんだよ?」
「そうですね・・・大筋、貴女の予想通りですよ。」
「そっか・・・。」

ラスの答えに残念そうな口振りで答えるが、その表情はあまり残念に思っている様子は感じられない。
彼の言う通り、彼女にとって既に予想していた結論だったのだろう。

「タクトさんは、確かに貴女の輝石によって呼び出されました。」
「な、なんだってー!」

自分を間違えてこの場所に呼び出した張本人が、自分のことを引き摺ったり放り投げたりした彼女である。
タクトは自身の何もかもを彼女に奪い取られた気がした。

「だろうな。そうとしか思えんしなー・・・。」
「だろうなってアンタ、俺をこんな所に呼び出した癖になんだその態度は!」
「それで、どうするんですか?・・・って、もうどうするか決めているんですね。」
「おい!俺を無視するなって!」
「・・・よし!私のせいだもんなっ!タクト、アンタを元の世界に帰す方法探してやるぜっ♪」
「だから、『元の世界に帰す方法を探す』って・・・えっ?」

彼女のあまりに唐突な申し出に、怒り心頭中だったタクトは目を丸くさせて聞き返していた。

「んっ?何だよ、タクト。こう見えて私は真面目なんだぞ?」

タクトの反応が気に食わなかったのか、ネスは少しだけ不貞腐れたような素振りを見せた。

「大丈夫ですよタクトさん。ネスさんは逃げも隠れもするし嘘も言うし平気で約束を破りますが、自分で決めたことはやり通す人ですよ。」
「おうっ♪何か褒められてるのか貶されて【けなされて】るのかよく分からんが、兎に角そーいうことだからよろしくなっ!」
「は・・・はぁっ・・・あはは・・・・・・。」

ネスはタクトの肩をばしばし叩きながら高笑いをした。
それに対してタクトは力無く愛想笑いをするだけだった。

(・・・あー、何かもう、どーにでもしてくれー!)

~つづく~
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