14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

パートB

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14sure74

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それは一見、ただの古ぼけた何かの研究施設にしか見えない。
その施設は重そうな鉄の門が付いた小高い塀に囲まれ、外界との接触を頑な【かたくな】に拒んでいた。
そこに年季の入った鉄製の甲冑に身を包む顎鬚【あごひげ】の生えた男が一人。
自慢の大剣を塀に立てかけ、門の前に佇んでいた。

「・・・ん?」
「どうした?」

顎鬚の生えた男が何かに気付き、疑問の声を上げる。
隣にいたもう一人の男がそれに気付いて問いかけた。

「あれは・・・何だ?」

顎鬚の生えた男がゆっくりと指を指す。
隣の男はその指の先を目で追った。

「『何だ』って、ありゃ・・・マシンガンキャリアーだろ?」
「そりゃそうだが・・・。」

隣の男が呆れた顔で答えるが、顎鬚の生えた男は何故か違和感を感じずにはいられなかった。

「・・・おい。あれ、突っ込んでくる気じゃねぇのか?」
「まさか、考えすぎだろ。」

顎鬚の生えた男が見つけたキャリアーは真っ直ぐ物凄い速度で迫ってくる。
このままだと激突するのも時間の問題だろう。
隣の男は考えすぎだと言うが、どうにも彼には嫌な予感がしていた。
・・・そして、その嫌な予感は当たることになる。

「おい!やっぱ突っ込んでくるぞ!・・・うわああ!」
「そんなはずな・・・ってマジかよ!うぉあ!?」

二人は左右に飛び退き、間一髪の所でキャリアーの体当たりをかわした。
体当たりの衝撃で塀が大きく振動し、鋼鉄の門がその硬く閉ざしていたその口を無様に開け放っていた。
先の衝撃でキャリアーは存在可能時間が限界を超えたのだろう。
その姿を消し、代わりに何者かの影がゆらりと立ち上った。

「な・・・何が起こって・・・ぐぁ!?」

顎鬚の生えた男の隣に居た男はその影に蹴り飛ばされ、そのまま意識を失った。
顎鬚の生えた男はようやく、その影の正体を知ることができた。
血の様に赤い髪と眼、大きな刀傷を右目に付け底知れない余裕を秘めた不敵な笑み。
その体躯は確かに女性のそれであったが、彼にはどう見ても女性には思えなかった。
女戦士が珍しいワケではない、職業柄そんな物には見飽きるほど出会っている。
しかし、目の前の人物からは女戦士の気配を感じない。

「な、何者だ・・・?」

有体な言葉で例えるならば、そう――

「化物さっ♪」
「き、貴様ぁ!此処が何処か分かってて・・・ごふぅ!」
「よぉ~く知ってるぜ。でも、1つだけ知らないんだよな。」

自らを化物と名乗った人物が、男の顔面を掴み塀に叩き付ける。
そして、その顔を覗き込むように自らの顔を近づけた。

「この、離しやが・・・ぐあぁ!?」
「大将の居場所、教えてくれよっ。なっ?」

化物と名乗った人物、ネスは笑顔で掴んだ手にゆっくりと力を込める。
男の顔面が少しずつ塀に減り込んでいき、男の顔が苦痛に歪んでいく。

「ぐおお!お・・・奥だ!・・・一番奥の建物だぁ・・・!」
「ありがと!助かったぜっ♪」

ネスが男を離して門の向こう側へと立ち去ろうとしたその時であった。

「・・・死ねぇ!」

男が傍に転がっていた自分の大剣を手に取り、ネスに斬りかかったのだ。
男の全力で振り被った大剣がネスの胴を真っ二つに斬り裂いた。
・・・はずであった。

「な・・・い、居ない!」
「バカだな、私の影斬ってどーすんだよ、アンタ。」
「な、なんだって!――げっ!?」

ネスは男の後ろにあっと言う間に回り込み、後頭部に一撃を入れる。
男はそのまま前のめりに倒れこんだ。

「さーて、行くぜっ♪」

ネスはこの騒動で程よく敷地内がざわつきだしたことを確認してから、意気揚々と飛び込んだ。
物の数秒もせず無数の銃声と爆発音が辺りに満ちる。

「おいおい!無駄遣いすんなって!私達の分無くなっちまうだろーが!」

彼らの盛大な歓迎にネスは血沸き肉踊る感覚を覚えつつも、本来の目的のため一応制止を促す。
当然、聞く耳を持たないことは分かっているので、ネスはとりあえず手近な男を殴り倒した。
そして男の持っていたアサルトガンを素早く奪い取り、残る者を片っ端から打ち抜いて行く。
数分もしない内に、騒がしかった敷地内が静まり返った。

「あーあ、私達の分殆ど無くなっちまったぜ・・・。」

ネスは最後の一人を打ち抜いた所で、溜め息をつきながらアサルトガンを床に捨てた。
そして、大将が居るという施設内奥の建物に向かった。

「ちわーっす!お邪魔するぜ!いや、邪魔じゃないはず!邪魔なものかー!」

ネスは勢い良く扉を蹴り飛ばして建物の中へと飛び込んだ。
外観の割りに中は広く、立派な絨毯が敷かれ高級そうな長い机が置かれて作戦会議室のような印象を受けた。

「なっ!?何者だ貴様!」

その長い机の真ん中で座っていた男が驚きの声を上げる。

「んー、侵入者ってヤツだな。」
「何だと!?じゃあ、外の銃声が止んだのは・・・。」
「おう、アイツらなら今頃天国か地獄に旅行中だぜっ♪」
「き・・・き・・・貴様ぁぁ!」

男がイスを蹴って立ち上がり、ハンドガンを取り出してネスに突きつける。
しかし、ネスはそれよりも遥かに早く男に近づきハンドガンを叩き落とした。

「な、何が望みだ・・・!」

ネスに胸倉を掴み上げられた男は両足を必死にバタつかせながら叫んだ。
ネスはその質問に笑顔で答える。

「そうだな。まず、このアジトの物資全部頂こうか。それから・・・。」

ネスはそこで一息つき、男の顔を思い切り自分の顔に近づけてから口を開く。

「・・・あの男は、何処へ行った?」
「だ、誰のことだ!」
「銀髪の目付きの鋭い男だ。此処に来たはずだ・・・。」
「知、知らん!俺は会ってなど・・・がぁっ!?」

男の答えを最後まで聞かず、ネスは頭突きを放った。

「・・・もう一度聞くぞ。アイツは、あの男は何処へ行った。」
「うぐぐうぅ!?い、いう!言うから、は、離せぇ!!」

男を睨みつけるネスの目は激しい殺意を秘めていた。
胸倉を掴み上げる腕に自然と力が入っていく。
男は呼吸が苦しくなって、呻き声を上げながら必死に戒めを解こうと暴れた。

「あ、あの男なら、東南へ、む、向かうと・・・」
「・・・そうか。」
「うぎゃっ!?」

ネスは男を投げ捨てた。
男は壁に背中を打ちつけ、床に転がった。

「・・・さて、そろそろ10分だな。アイツらが来る頃か。」

ネスが独り言を呟きながら蹴り破った扉に引き返そうとした時のことであった。

「――――っ!?」
「し、死ねや化物ぉぉ!」
「うがっ!?」

殺気を感じて素早く振り返った時に、ネスの腹に何かが突き刺さった。
それは物凄い速度と質量でネスの身体を押し出す。
ネスの身体に食い込んだままそれは建物の壁をぶち破って、外へと飛び出した。
そして、速度が少し落ちてきた所でネスの身体がそれからズレ落ち地面を何度も跳ねながら転がる。
何度目とも知れないぐらいに跳ねた所でようやく勢いが殺され、ネスの身体は地に投げ出された。

「・・・・・・ハ・・・ハハハ・・・ハハハハ!」

その様子を見て、笑い声を上げる姿が1つ。
壁に叩き付けられたあの男が陸上最強とも言える鋼鉄の砦に乗り込み、その絶対無敵の咆哮をネスに浴びせたのだ。
男は勝ち誇った笑い声を上げながら、彼女の無残な姿を見ようと鋼鉄の砦を前進させた。
そして彼女の姿を捉えた時、男の顔が再び恐怖に染まる。

「つぅ~っ・・・室内でアームドカーゴを呼び出すたぁ・・・出鱈目やってくれたなぁ・・・。」
「な・・・なな・・・ななな・・・・・・。」

男の目に飛び込んできた姿は無様に転がっているネスの姿ではなく、剣を杖代わりに今にも立ち上がろうとしているネスの姿だった。
ネスは全身の至る所を擦り剥き、血だらけではあるがまだその瞳には闘志が漲って【みなぎって】いた。
口の中に溜まった血を吐き捨て、男の乗るアームドカーゴを睨みつける。

「爆発してたら・・・死ぬ所だったじゃねーかぁ!!」
「く、くそおぉぉぉ!今度こそ吹き飛べぇぇ!!」

男が再び砲塔を向けるよりも素早くネスは剣を構えて真っ直ぐアームドカーゴに向かって走りだした。
しかし男はたいして驚くこともなく、ネスの突撃を迎え撃つべく前進を開始した。

「バカめ!そんな剣で斬れるか!そのまま轢き殺してやる!!」
「さーて、やってみなきゃぁ・・・。」

ネスは全速力で前進してくるアームドカーゴの脇を掠めるように飛び込む。

「分からねぇぜ!!」

そして、すれ違いざまに一閃。
ネスの剣がアームドカーゴの砲塔部と車両部を真っ二つに斬り裂いた。
男の乗っていたアームドカーゴは存在可能時間を大きく削り取られ、限界を迎えて消滅した。

「う・・・うそだ・・・出鱈目【でたらめ】だぁぁ!!・・・がはっ。」

アームドカーゴから投げ出された男は、目の前で起きたあまりに非現実的な光景を呪い叫びながら絶命した。

「・・・よし、ジャスト10分。流石ラス。きっかりじゃん♪」

ネスは剣を鞘に収め、額に流れた血を軽く腕で拭った。
入口付近で二人が立ち止まっている気配を感じ、二人が自分のぶち抜いた門を見て唖然としてるのだと直感した。
ネスは仕方ないので道中で見つけておいた、輝石や使えそうな物資を幾つか回収しつつ二人の下へと駆け寄った。
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