14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

#02

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14sure74

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・・・遠くで、なにやら声が聞える。
恐らくは、先ほどから上空で廻っていたデスバードカレの声だろう。
そう考えた彼女は、なんとなく目を開けてみた。
しかし、そこに広がるのは肌色の台地でも、蒼い空でもなく、真黒な虚無きょむ
の空間だった。

(そっか・・・あたし・・・死んで・・・これから・・・喰われるんだっけ?)

彼女はぼんやりとその空間を見つめて呟いた。
彼女がゆっくりと溜め息をついた時だった。

(・・・痛っ!)

彼女は右腕に痛みを感じ、僅かに顔を歪めた。

(まったくもう・・・。 優しく喰ってねって、言ったのに・・・。)

自らの希望を無視して続く痛みに呆れ、彼女は深く溜め息をつく。

(痛い、痛いって。 おーい、痛いってばー。 おーい、こらー。)

彼女は恐らくは今自分を啄んでついばんでいるであろう、デスバードカレに向かって呼びかけた。
しかし、依然として腕の痛みは続き、次第に彼女の顔に苛立ちの色が浮かびだした。

(どうやら、聞えてないみたいだなぁ・・・。 じゃあ、仕方ない・・・。)

彼女は大きく息を吸って、そして。

「――痛いって、言ってるじゃないかっ!!」
「――きゃあっ!!」

~~~~

力いっぱいに叫んだ瞬間、彼女の視界がホワイトアウトし、ガバッという大きな物音が間近くでした。

(・・・ガバッ?)

次第に、彼女の視界が戻っていく。

(・・・部屋?)

彼女の視界に映し出された光景。
それは、質素だけど暖か味のある、小さな部屋だった。
同時に視界の下の方に白いシーツが映り、彼女は先の音が自分が飛び起きた音だと悟った。

(・・・デスバード達カレらの腹の中って、こんな素敵な部屋があったのかぁ。)

あれだけ大きな鳥だ。
お腹の中にこんな部屋の1つや2つ、あっても不思議ではない。
彼女はそう考え、何度も頷いた。

(・・・って、きゃあ?)

荒唐無稽な推論に一人納得していた彼女は、自分以外の声が聞えた気がしたことをふと思い出した。
彼女は声の主を探すべく部屋の様子を見ることにした。
左端から流した視線が、右端へ着こうという時だった。

「あっ・・・。」「あっ・・・。」

彼女は呆然と立ち竦んでいた少女と目が合い、同時に小さく声を漏らした。
暫しの静寂の後、彼女は大きく息を吸い・・・。

「デ、デスバードの中の人だぁぁぁっ!?」
「中の人ってぇぇっ!?」

二人の絶叫は暫く続いた。

~~~~

「・・・そうだよねぇ。 デスバードのお腹の中に部屋があって、人が住んでるなんて、ありえないよねぇ。」

彼女はばつの悪そうな笑顔で頭を掻き、乾いた笑い声をあげた。

「そうですよぉ。 『飲み込まれて来た人を介抱して、シーツをかけなおしてあげたりしている』なんて、そんな話、聞いたことないですよぉ。」

少女もばつの悪そうな笑顔を浮かべ、彼女に合せて乾いた笑い声をあげた。

「・・・と、まぁ。 ありがとうね。」
「・・・はいっ?」
「あたしを助けてくれたの、キミでしょう?」
「えっ、ええ、はい。 町外れにゴミを棄てに行った時、デスバードの鳴き声が聞えたので、もしかしてと・・・。」
「そうなんだ・・・。 でも、よく助けられたね。 どうやったの?」

見た所、彼女は戦う力を持っていないただの町娘だ。
そう考えた彼女は、どうやってデスバードを追い払ったのか疑問に思い、問い掛けた。
いくら巨獣の中では大して強くないデスバードといえど、一介の町娘に負けるほど弱くは無いからだ。

「彼ら、ああ見えて怖がりだって聞いたことがあったんです。 だから、大きな声で脅かしてみたんですよ。」

エアは大きな声をだす素振りをして見せる。

「へぇー・・・。」
(デスバードって、怖がりだったんだ・・・。 知らなかったよ・・・。)

彼女はゆっくりと頷き、感嘆の声を漏らした。
彼女はゆっくりとベッドから降りて、軽く伸びをする。
そして、満面の笑みで口を開いた。

「本当に助かったよ、ありがとう♪」
「あっ、いえっ! そ、それほどでもっ!」

少女は小さく身体を撥ねさせ、少し恥ずかしそうに俯きながら答えた。
彼女は少女の揺れる紫色のツインテールを、前髪で隠れた目で追いながら問い掛ける。

「それで・・・此処、何処かな?」
「え、あ、はいっ! 此処は小さな町”スキルガンド”にある、私の家ですよ。」
「へぇー・・・。 それで、キミの名前は?」
「はい、私はエア。 エア=アルト=ラインズです。」

エアと名乗った少女は、深くお辞儀をした。
そして、彼女に負けないくらいの満面の笑みで、問い返した。

「貴女の、名前は?」
「あたし? あたしは・・・」
(・・・って、あれ?)

エアの問いに答えようとした突如、彼女の笑顔が凍り付いた。

(あたしの名前・・・なんだっけ?)

エアは彼女の変調に気付かず、笑顔のまま返答を待ち続けている。

(困った・・・。困ったぞ・・・。 あたしの名前・・・えっとぉ・・・。)

彼女の顔から冷や汗が滝のように流れ出す。

「あ、あたしの・・・名前は・・・。」
(ウエパンムーイの姿煮、スキルガンドヒカシュンの塩焼き、グリンバードの竜田揚げ・・・って全部食べ物じゃないかっ!)
「貴女の、名前は・・・?」

エアの無垢な笑顔が、彼女を次第に追い詰めていく。

「えっと・・・その・・・。」
(実に、困った・・・。 此処1ヶ月間、ずっと食べ物のことしか考えてなかったせいで・・・名前が、思い出せないなんて。)

単に名前が思い出せなくなっただけならば、素直に白状もできよう。
しかし、その理由が極度の空腹によるものだというのは流石に恥ずかしい。
彼女はそう思い、どうにかして誤魔化すことにした。

「と、その前に、あたし、お腹が空いたなぁーっ!」

すると、丁度よいタイミングでグルルと、彼女のお腹が情けない轟音を響かせた。

「そ、その、ようですね・・・。」
「で、でしょう? あは、あはは・・・。」

普段ならば恥ずかしくてつい俯いてしまう所だが、今回ばかりは誇ってもよい、彼女はそう思った。
エアは暫く呆気に取られていたが、やがて軽く両手を叩いて笑顔で頷いた。

「そうですねっ♪ 丁度、夕食の仕度をしようと思ってた頃でしたし、旅人さんもご一緒にどうぞっ♪」
「えっ!? 悪いよ、でもいいのかいっ!?」
「はいっ♪ 元々、私は旅の人にこの部屋を宿として貸してますし♪」
「へぇー、そうなんだ。 あっ、でも、あたし・・・。」

彼女がこれから言わんとしていることを悟ったエアは、笑顔で軽く首を横に振って答えた。

「いえいえ、お金は頂きませんよっ♪」
「えっ? そうなの?」
「はいっ。 お金を頂かない代わりに、頼みごとを1つ2つ聞いて頂いているんです。」
「へぇー・・・。 それで、頼みごとって?」

彼女の問い掛けに、エアは少し首を傾げてから答えた。

「そうですね・・・。 今はまだ、コレと言ってないですね。」
「そっか・・・。」

彼女は少し残念そうな顔で、小さく溜め息を漏らす。
そして、エアの話に再び笑顔で耳を傾けることにした。
エアは一息ついて、笑顔で口を開いた。

「ですから、旅の話。 聞かせてください♪」
「・・・へっ?」

彼女の笑顔が、再び凍り付いた。

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