「ちょ、ちょっと本当に行くの!?」
佐山流美は引き留めるように慌ててT-800の後を追う。
放送を聞き、主催に真宮が関わっていると知った時は心底苛立った。
しかし、T-800が千手観音のもとへ行くと言い出せばもうそんな怒りもどこへやら。
「ノープロブレム」
「いや、でも、マジの怪物だよ?もう少し装備とかあった方がいいんじゃない?」
この機械的な反応しかしない男がどの程度強いかはわからない。
しかし、マミを失った今、自分に敵対しない参加者はどうしても確保しておきたい。
無碍に戦力を消費したくない一心で引き留めようとするも、ジョンコナーの障害に成りえるものは排除しておかねばならないと聞く耳を持たず。
歩きながら移動していれば、気づけば町中に。ここはE-5。流美が千手観音と遭遇したB-5とは逆の方角である。
(...念のために逆側を示しておいてよかったよ)
流美はこの頑固一徹男を引き留められない可能性を考慮し、E-5で出会ったと嘘の情報を流した。
これならば千手観音との遭遇も後回しに出来るし、他の参加者とも交流できるかもしれないという一石二鳥な選択肢だった。
ピタリ。
己の策の成功に安堵しかけていた流美を他所に、突如、T-800はその足を止める。
「ど、どうしたの?」
「生体反応を発見した。これより接触を開始する」
彼らの見つめる先は、ジョッキの絵が描かれた壁掛けのある扉。つまりはバーであった。
T-800は躊躇いなく扉を開け、ずんずんと階段を上がっていく。
流美は遅れて、周囲に最大限警戒しながらT-800の後ろを着いていく。
階段を上り切った先に待っていたのは、大剣を構えて警戒心を露わにする少女と、各々がそれぞれの構えをとりやはり警戒をしている三人の男。
T-800は一同を見回すと、無表情のまま野太い声で一言を発した。
「ハァイ」
「つまり佐山はクラムベリーって奴と先生みたいな口調で喋る怪物に襲われたんだな?」
「そっ、そうそう」
バーにいたのは吉良、上条、ラ・ピュセル、左衛門の四人。
T-800の挨拶で困惑していた一同に、遅れて到着した流美が身振り手振りを加えながら自分たちに敵意はないと訴えかけ、どうにか情報交換へと持ち込むことが出来た。
「巴さんもあいつに、クラムベリーに襲われて、それで...」
「なあ、岸部。クラムベリーって...」
「...ああ。やっぱりあいつは...!!」
ラ・ピュセルの拳が握り絞められる。
彼の中では未だに消えていない。あの女に痛めつけられた苦痛を、刷り込まれた死への恐怖を。
「上条さん。僕は行きます。あいつは絶対に止めなくちゃ...!」
「待てよ岸部。それなら俺も行く」
「上条さんはここの皆を護っていてください。あいつとの戦いに一般人は割り込めない」
「じゃあ、お前は確実に勝てるのか?」
「それは...」
「なら俺も連れて行けって」
「ダメだって言ってるだろ!あいつの危険性をその目で見てないからそんなことが言えるんだ!」
「ちょっといいかな?」
熱くなっていくラ・ピュセルと当麻の口論に、静観していた吉良が口を挟む。
「ラ・ピュセルはクラムベリーとやらを止めたいし、上条くんは単身で向かう彼女が心配だ。君たちの言い分はとてもわかる。
しかしね、わたし達の目的は一つじゃあないんだ」
吉良は二人に目線でT-800へと意識をやるように促す。
「彼はジョン・コナーという少年を探したい」
次いで、左衛門へと目を向ける。
「彼は弦之介と陽炎という仲間を探したい」
流美へと目を向ける。
「彼女は友達である小黒妙子ちゃんを探したい」
そして、最後に己の首輪に指を指す。
「そして共通の目的であるのは、皆が首輪を外したいということだ」
なにが言いたいのかを測りかね、眉を潜めるラ・ピュセル。
そんな彼の態度に、吉良はフゥ、とため息を吐く。
「こういう時は個人の感情だけで動くのではなく、互いの目的を擦り合わせて最適な案を出すのが大切だ。
君たちが抜けたことで私たちがそのクラムベリーや怪物に襲われたらどうする?その逆も然り。クラムベリーを追っていた筈なのに怪物とクラムベリーに挟まれたらどうする?」
吉良の言葉に、ラ・ピュセルはハッと目を見開く。
個人の我を押し通すのではなく、周囲の皆と相談して物事を決める。その際に、周囲に耳を貸さず我を通すだけでは周囲を不安に晒してしまう。
それは学校でも幾度となく経験してきたことだ。
魔法少女という特別性をはき違えてしまったのかと、ラ・ピュセルはしょんぼりと肩を落とす。
「...すみません吉良さん」
「いや、思い留まってくれたならいいんだ。こんな異様な状況でも私たちを護ろうとしてくれるその気概はとても嬉しいからね」
優しい声音で宥められたラ・ピュセルは気恥ずかしさにほんのりと頬を染め、「ど、どうも」と小さく零す。
その様子を見た当麻は吉良に軽く会釈し礼をすると、吉良も小さく頷き返す。
「さて。わたし達の目的をスムーズに進行させる為には」
「人手を分けるのはどうじゃ」
真っ先に声を挙げたのは左衛門だった。
「確かに六人で行動しておれば護りは盤石じゃ。しかし、籠城戦ならいざ知らずこれは期限付きの戦。数日の間に情報を集め決着を測るのならば多少の危険は受け入れるべきではないか」
人数分け。確かにこれでは戦力を分けて分散してしまうとはいえ、順調に進めば探索範囲が広がり情報も得やすくなる。
いま、ラ・ピュセルを除けば身内の情報が欲しいのは上条・左衛門・流美・T-800の四人。となれば、優先されるのは情報の収集だろう。
「ふむ。別れて行動か...私は構わないが、皆はどうかな?」
「俺はどちらでも構わない」
「あ...あたしもいいよ」
「...まあ、仕方ないよな」
「...わかりました」
上条とラ・ピュセルはあまり乗り気ではないとはいえ、どのみち、過半数が賛成しているのだ。
ならば、チームを分けるという流れに決まるのも当然の結果だ。
「人数はどう分ける?儂は二人三組でわければ良いと思うが」
「それでは戦力を絞りすぎではないか?半分、三人二組ではどうだろうか」
左衛門の三組と吉良の二組。
異なる意見が出たが、しかし争いはしない。二人は、またも残る四人に意見を求める。
「なんだっていい」
「...あたしは三人二組で」
「俺も佐山と同じだ」
「僕も二人と同じ意見だ。やっぱりある程度の安全性は確保しておくべきだ」
議論は白熱することもなく、あまりにもスムーズに滞りなく進んでいく。
多数決。それは少数の意見は封殺し多数派の意見を通す合理的解決方法である。
「さて。人数の配分も決まったところで、肝心のチーム分けだが...この二組の肝をそれぞれ赤首輪であるラ・ピュセルとT-800に任せようと思う」
「OK」
「了解した」
即答するT-800とラ・ピュセル。
この二人を中枢としたチーム分けを吉良は振り分けていく。
「分ける基準としては腕っぷしの強さにするべきだろう。となれば、ただのサラリーマンである私と少女である流美ちゃんは別れた方が良いだろう」
「...じゃあ、あたしはこっちの岸部...?さんに着いていくよ。巴さんを殺したクラムベリーを探すなら手伝いたいし」
「む、そうか。なら私はT-800だな。残るは左衛門と上条くんだが...」
「左衛門さん、俺が岸部に着いていく」
「いや、儂もこちらを希望させてもらう。主の術、幻想殺しと言ったか。ソレはあやつにも影響してしまうのじゃろう。儂の方があやつも気兼ねなく戦えるはずじゃ」
「けど...」
「上条さん。僕は大丈夫だから、あなたは吉良さん達を護ってくれ」
「岸部...わかった、あまり無茶はするなよ」
滞りなくチーム分けが進んでいく様相を眺めながら吉良は思う。
(狙い通りだ...これで私にとって非常に都合が良くなったよ)
目立つことを嫌う自分が、らしくなくまとめ役を買って出た甲斐があった。
吉良にとって上条当麻の神の如き右手とラ・ピュセルの天使のように綺麗で美しい手は目の保養を通り越して性癖の好みに合致しすぎたポルノ雑誌のようなものだった。
一つならまだちょうどいいが二つとなると常に竿を擦られているようなものである。
事実、吉良はその手を見た途端に一度発射し、放送が終わって元気を取り戻したと思った途端にまた出してしまった。
天国的な快楽ではあるがこのままでは身が持たないと思っていた矢先に現れたのがT-800と流美である。
T-800の手は決して汚くはなく、むしろサイボーグだけあって整った部類ではあるが、それはあくまで好感度が抱ける、というだけのこと。
少年が実物大ロボを見て目を輝かせるのと同じで、そこに性的な意思は介在しない。
流美の手は論外だ。傷だらけで、形も良くない。普通どころか醜い部類である。
それがかえって吉良に賢者の如き冷静さを与え、興奮のし過ぎは良くないという自制心を働かせる余裕を生じさせた。
その為、吉良はそれとなくチームを分散する流れになるよう取り計らい、且つ都合のいいチーム分けをすることができた。
(懸念としては左衛門が私の能力を知っていることだが...その為に赤首輪のラ・ピュセルと組ませたんだ)
赤首輪の参加者であるT-800とラ・ピュセル。
このうち、左衛門の毒針が通用するのはあくまでも生身のラ・ピュセルのみである。
もしもラ・ピュセルと組んだのが吉良であれば、左衛門は脱出の権利を渡すわけにはいかんと吉良が能力を隠していたことを明かす危険性がある。
しかし、T-800と組むということは、左衛門の視点から見れば自分では殺せない相手と組んでいるということ。
つまりは手放しても問題はない駒を吉良に渡し、且つ己は使い勝手のいい駒を所持しているというだけだ。
ならば吉良の能力を公表し無暗に敵対する可能性をわざわざしょい込むような真似は控えるはず。
(まあこれでラ・ピュセルの手を失ってしまうリスクは抱えてしまったわけだが、そこは受け入れよう)
ラ・ピュセルの手を拝めなくなるかもしれないのは残念だが、テ〇ノブレイクで死ぬよりはマシである。
当麻の右手を神と評するならばラ・ピュセルの手は天使。
神と天使、どちらを残すかと百人に問えば百人が神だと答えるだろう。
「では三度目の放送を合図にここに戻るとしよう。それで異論はないか?」
左衛門の案に一同は頷き合い、互いに一時の別れと労いの言葉をかけSMバーを後にする。
これ以上誰の犠牲もなく平穏に殺し合いを終わらせたいという幻想を殺せぬ幻想殺し。
与えられた任務を達成する為に戦うサイボーグ。
己の欲望に正直に生きるシリアルキラー。
愛する者を救いたいと願う魔法少女(少年)。
己の里の為に身を削る日陰者。
復讐に怯え己の業から目を背ける哀れな少女。
彼らの行く先がどうなるかは、今は誰もわからない。
【E-5/街(下北沢、SMバー平野)/一日目/早朝】
【T-800@ターミネーター2】
[状態]:異常なし
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜1
[思考・行動]
基本方針:ジョン・コナーを守る
0:一時的に当麻、吉良と行動する。シェンホアと合流した後、第三回放送までにここに戻ってくる
1:T-1000は破壊する。
※参戦時期はサラ・コナーを病棟から救出した後です。
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:
[道具]:基本支給品、淫夢くん@真夏の夜の淫夢、不明支給品0〜1
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止める。
0:一時的にT-800、吉良と行動する。第三回放送までにここに戻ってくる
1:御坂、白井と合流できれば合流したい。
2:一方通行を斃した奴には警戒する。
3:他者を殺そうとする者を止めてまわる。
※淫夢くんは周囲1919㎝圏内にいるホモ及びレズの匂いをかぎ取るとガッツポーズを掲げます。以下は淫夢くんの反応のおおまかな基準。
ガッツポーズ→淫夢勢、白井黒子、暁美ほむら、ハードゴアアリス、佐山流美のような同性への愛情及び執着が強く異性への興味が薄い者。別名淫夢ファミリー(風評被害込み)。
アイーン→巴マミ、DIO、ロシーヌのような、ガチではないにしろそれっぽい雰囲気のある者たち(風評被害込み)。
クソザコナメクジ→その他ノンケ共(妻子や彼女持ち込み)。
判定はガバガバです。また、参加者はこの判定を知らされていないため、参加者間ではただの参加者探知機という認識になっています。
※吉良がガッツポーズに分類された可能性があります。
【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、スッキリ、ラ・ピュセルと上条当麻の手に心酔に近い好意、新しいパンツ(白ブリーフ)。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×1、ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本行動方針:赤い首輪の奴を殺して即脱出...したいが...ここは天国だ...抜け出すべきなのだろうか...?
0:一時的に当麻、T-800と行動する。第三回放送までにここに戻ってくる
1:少女(ラ・ピュセル)の手はこの世のものとは思えないほど美しい。上条当麻(少年)の右手は私が触れることすらおこがましく思えるほど神秘的だ。
2:こんなゲームを企画した奴はキラークイーンで始末したい所だ…
3:野獣の扱いは親父に任せる。できればあまり関わりたくない。
4:左衛門の手も結構キレイじゃないか?
5:最優先ではないが、空条承太郎はできれば始末しておきたい。
[備考]
※参戦時期はアニメ31話「1999年7月15日その1」の出勤途中です。
※自分の首輪が赤くない事を知りました。
※絶頂したことで冷静さを取り戻しました。
【ラ・ピュセル(岸部颯太)@魔法少女育成計画】
[状態]全身に竹刀と鞭による殴打痕、虐待おじさん及び男性からの肉体的接触への恐怖、同性愛者への生理的嫌悪感(極大)、水で濡れた痕、精神的疲労(大)、上条への好意
[装備]
[道具]基本支給品、だんびら@ベルセルク
[行動方針]
基本方針:スノーホワイトを探す
0:一時的に流美、左衛門と行動する。第三回放送までにここに戻ってくる
1:虐待おじさんこわい。
2:クラムベリーを倒す
3:襲撃者は迎撃する
※虐待おじさんの調教により少し艶かしくなったかもしれません。
【如月左衛門@バジリスク〜甲賀忍法帖〜】
[状態]:特筆点無し
[装備]:甲賀弾正の毒針(30/30)@バジリスク〜甲賀忍法帖〜
[道具]:基本支給品×1、不明支給品×0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:弦之介や陽炎と合流してから赤首輪の参加者を殺して脱出。
0:一時的に流美、ラ・ピュセルと行動する。第三回放送までにここに戻ってくる
1:甲賀弦之介、陽炎と会ったら同行する。
2:野獣先輩からは妙な気配を感じるのであまり関わりたくはない。
3:ラ・ピュセルは現状では狙わない。
[備考]
※参戦時期はアニメ第二十話「仁慈流々」で朱絹を討ち取った直後です。
※今は平常時の格好・姿です。
※自分の首輪が赤くない事を知りました。
【佐山流美@ミスミソウ】
[状態]:疲労(中)、野崎春花と祥子への不安と敵意。 マミを刺したことへの罪悪感、クラムベリーへの恐怖。
[装備]:ガンツスーツ@GANTZ(ダメージ60%)、DIOのナイフセット×9@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:不明支給品0〜1、基本支給品×2
[思考・行動]
基本方針:生き残る。
0:一時的に流美、ラ・ピュセルと行動する。第三回放送までにここに戻ってくる
1:自分の悪評が出回る前に野崎春花と野崎祥子を殺す。
2:ラ・ピュセルにクラムベリーを倒して貰いたいが...出来るのか?
3:赤首輪を殺してさっさと脱出したい。
4:たえちゃんはできれば助けてあげたいが、最優先は自分の命。
5:あの先生の声の仏像キモイ、怖い。
6:また赤首輪かよ...
※参戦時期は橘たちの遺体を発見してから小黒妙子に電話をかけるまでの間。
※本来のガンツスーツは支給者専用となっていますが、このガンツスーツは着用者に合うようにサイズが変わるので誰でも着ることができます。
最終更新:2021年08月06日 23:25