「左衛門さんたちも殺し合いには反対なんだな?」
「ウム。ワシにも仲間がおる。彼奴らを捨て置くことはできんからのう」
SMバー平野の一室で遭遇した当麻とラ・ピュセル、左衛門と吉良の二組は、互いに名乗ったあと、腰を落ち着かせつつ情報交換に勤しんでいた。
「そういう主らも、乗っておらんということは仲間がおるのじゃな?」
「ああ。俺もこいつも探してる奴らがいる」
当麻はさりげなくラ・ピュセルを自分の後ろに置き、己の身体を盾にしつつ話を進める。
「みんなこいつと同じくらいの歳の女の子なんだが、どこかで見てないか?」
「いや、ワシらはくさそうな男と会っただけじゃ」
「くさそうって...臭いが独特とかじゃなくって?」
「うむ。別に匂いが強いわけではないのだが、なぜか『くさそう』と思ってしまう男じゃ」
「言ってることがよくわからないな...吉良さん、あんたから見てどうなんだ?」
当麻がこれまで会話に加わっていなかった吉良に質問をふるも、吉良の返答はない。
ただ呆然と彼方を見つめているだけだ。
「...おーい、吉良さん?」
「......」
「吉良さん」
「ッ...す、すまない。すこしボーっとしてしまっていた。私も殺し合いに賛同するつもりはない。家に戻りたいとは思うが、他の人を殺してまでは」
「その話はもう終わっておる」
「そ、そうか。ええと、なんの話だったかな?」
「吉良さんたちが会った男は『くさい』わけじゃなくて『くさそう』と思う男なのかって話だ」
「ああ。あながち間違っていないんじゃないか?」
明らかに動揺している吉良に、当麻とラ・ピュセル、左衛門までもが訝しげな目を向ける。
その視線を受けた吉良は、ふぅ、と小さく息を吐き、額に手を添えた。
「君達が疑うのも無理はない。ただ、私は見ての通り普通のサラリーマンで、こんな経験は初めてなんだ。恐怖はあるし、緊張もしている。それ故に常に最善を尽くせるわけじゃない。その辺りは理解してもらいたい」
先程とは一転、うって変わって落ち着いたその様子に、当麻もラ・ピュセルも一層不審感を抱く。
が、本当にパニックに陥った一般人の可能性も顧み、二人はひとまずその不信感を頭から振り払った。
「...わかった。悪い、吉良さん」
「いや、この中で年長者は私なんだ。もう少ししっかりしなくちゃあな」
吉良が大きく息を吸い、改めて情報を整理していたその時だった。
『あー、ごきげんようおめーら』
突如、天より響いたその声に、四人は思わず天井を仰ぐ。
「な、なんだ?」
「どうやら放送の様だ。何を伝えるかまではわからないが、この殺し合いに関することで間違いないだろう」
吉良の考え通り、声の主は殺し合いについて不足していたヶ所を説明し、ルールとして付け加えた。
その過程で、左衛門が記載漏れされていたことが判明したが、当麻たちがそこにツッコむ暇もなく放送は続けられる。
『今回の禁止エリアはC-2、E-8、J-3だ』
「ふむ。ここからはどこも遠い。煽りを喰らう事も無さそうじゃ」
左衛門がそうぼやけば、次いで知らされるのは死者の名だ。
『薬師寺天膳
志筑仁美
南京子
一方通行』
「!」
一方通行。その名が呼ばれた瞬間、当麻は思わず息を呑んだ。
あの学園都市第一位の男が、死んだ。
その身を持って彼の脅威を体験していた当麻は、衝動のまま壁を殴りつけようとするも、その腕は吉良に掴み止められた。
「それは徒に手を傷付けるだけだ」
「......」
沸騰した当麻の脳内が些か落ち着きを取り戻し、思考もどうにか平静になる。
「...悪い、吉良さん」
そう彼に謝り、ふぅ、とひといきつく。
一方通行。
かつて、御坂美琴の複製(コピー)である妹(シスターズ)を一万人殺した男。
当麻は彼と戦い、勝利を収めたことがある。
が、それは当麻の右手の幻想殺しと御坂たちの協力があってこそだ。
本来ならば、学園都市一位に恥じぬ『最強』を誇った男には間違いない。
その男が、死んだ。おそらくだが、誰かに斃された。
当麻のように幸運が重なったか、あるいはなんらかの不運が重なったか。
一方通行が殺し合いに乗ったのか、あるいは乗った者に狙われたのか。
なにもかもわからないが、いまの当麻が言えることはひとつ。
(どうしてあいつに勝てるくらいの力がありながら、こんな殺し合いを肯定しちまうんだよ!)
もし一方通行が殺し合いに乗っていなかった場合、殺した者は殺人肯定者に他ならない。
彼に勝てるほどの力がありながら、殺し合いに乗る―――その力を守るために使えば、犠牲者なくして殺し合いを止めることができるかもしれないのに。
それに、死亡者は一方通行だけではない。
全員を聞き遂げたわけではないが、少なくとも複数人の殺人肯定者がいるはずだ。
(はやくこんなバカげたことは止めねえと)
人を殺す。
如何な事情であれ、それは多くの悲しみを生み出す所業に他ならない。
当麻は決して正義の味方ではないし絶対的なヒーローなんかでもない。
ただ、人が悲しみ傷つくのが嫌なだけの人間だ。
だから、この会場にいる御坂や黒子、ここにいる岸部たちやその仲間が涙を流す前に、殺し合いをぶち壊さなければいけない。
当麻の拳は、無意識のうちに強く握りしめられていた。
そんな彼の背中を見て、ラ・ピュセルは静かに唇をかみしめていた。
(僕は最低だ)
彼が放送を聞いて真っ先に思ったことは、『小雪が無事でいてよかった』だ。
それ自体は悪いことではない。問題は、その後だ。
(きっと、僕は小雪が呼ばれなかったことに安心して、死んだ9人も『思ったよりも少なくてよかった』と思ったに違いない)
本当なら、当麻のように犠牲になった人々を悼むべきなのに。
彼は、おじさんに虐待されたためか、あるいは既に死に瀕した経験があるためか、自分の周りのことしか見れなくなっていた。
(しっかりしろ、岸部颯太!もっと周りを見るんだ!この殺し合いを止めて、皆で笑顔で帰る!それが魔法少女だろう!)
パンパンと、己の頬を叩き、ラ・ピュセルは気を引き締め直した。
そんな各々に動揺する当麻とラ・ピュセルを余所に、左衛門は顎に手をやりつつこれからの方針を考えていた。
(薬師寺天膳め。あやつ死におったか)
薬師寺天膳。
この殺し合いに連れてこられる前に豹馬が仕留めていたはずが、何故かこの殺し合いにも連れてこられていた男。
如何な術者かと不気味に思っていたが、まさかこんな短時間で討たれるとは。
あまりにも呆気ないというか、やはり他愛のない男だったのだろうか。
(まあよい。これであやつは確実に死んだ。となれば、伊賀の者は朧のみか)
能力は不明であるが、恐らくは伊賀の忍びの纏め役であった天膳の死亡は大きい。
朧は破幻の瞳にさえ注意しておけばただの小娘、実質的な戦力としては皆無。
それに比べ、こちらはまだ弦之介、陽炎、そして自分が残っている。弦之介も盲目とはいえ、心眼の心得があるため充分に戦力となるため、優勢なのは間違いなく甲賀だ。
(とはいえ、ワシらが帰れなければそれも意味なし...ここでこの小娘を殺して先に脱出することも出来るが...)
現状、赤首輪であるラ・ピュセルもそれを護衛する当麻も気が動転し隙だらけだ。
ここで毒針のひとつでも飛ばせば問題なくラ・ピュセルを殺すことができるだろう。
(ただ、現状では小娘との距離は吉良が一番近い。あの妙な人形を掻い潜り、奴を含めた三人を始末するのは骨が折れる)
吉良がラ・ピュセルの傍にいる以上、脱出の権利は吉良に譲ることになる。
それでは殺す意味がない。
それに、陽炎はともかく弦之介を置いて先に帰還するのは憚られる。
彼の目が視えぬのもそうだが、彼は性分が穏やかすぎるきらいがある。
その性格上、薬師寺天膳のような好戦的な相手ならいざ知らず、ここにいる上条当麻のような者がいればそちらの意見を優先してしまうだろう。
(まあそういう性分だからこそ、朧が伊賀者でなければと思いつつも見届けようとした者がいるのじゃがのう)
無論、弦之介とてただ甘いだけの男ではなく、非情にならなければならない時はしっかりと忍びらしく徹することはできる。
ただ、そこに至るまでの時間が長い懸念は消しきれないため、可能な限り迅速な判断を促すためにも合流してから彼を脱出させてやるべきだろう。
(なんにせよまずは弦之介様と陽炎との合流じゃな)
甲賀者としてにせよ、個人的な感情にせよ、やはり二人を捨てることはできぬ。
左衛門は、ひとまずはラ・ピュセルの首輪は狙うまいと決めた。
そして、吉良は。
「すまない。少し、トイレに行かせてもらえないか。改めて殺し合いだと聞かされると聊か身体が強張ってしまってね」
☆
ラ・ピュセルに案内されたトイレにて、吉良は欲望を発散していた。
(まったく、上条当麻め。あの右手の価値に気が付いていないのか。危うくあの神のごとく清浄な手が傷つくところだったじゃないか)
ゴシゴシ、と吉良の右手が上下し吉良の息遣いも次第に荒くなっていく。
(ラ・ピュセル...あの可愛らしい手...上条当麻の右手...っく)
吉良の手の速さが増していき、呼吸は喘ぎにも似たものに変わってゆく。
そして。
「うっ!...あふぅ~」
あっという間に、果てた。
そそりあがった欲望を全て吐きだした吉良は、少しの余韻に浸った後、トイレットペーパーで丁寧に処理をし、既に濡れていた下着を履き替え、手をキチンと洗いトイレを後にする。
「待たせたね。それではこれからの方針を決めることにしよう」
同行者たちの前に姿を現した彼の顔は、既にイチサラリーマンの仮面へと切り替わっていた。
【E-5/街(下北沢、SMバー平野)/一日目/早朝】
【ラ・ピュセル(岸部颯太)@魔法少女育成計画】
[状態]全身に竹刀と鞭による殴打痕、虐待おじさん及び男性からの肉体的接触への恐怖、同性愛者への生理的嫌悪感(極大)、水で濡れた痕、精神的疲労(大)、上条への好意
[装備]
[道具]基本支給品、だんびら@ベルセルク
[行動方針]
基本方針:スノーホワイトを探す
0:虐待おじさんこわい。
1:これからの方針を決める
2:襲撃者は迎撃する
※虐待おじさんの調教により少し艶かしくなったかもしれません。
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:
[道具]:基本支給品、淫夢くん@真夏の夜の淫夢、不明支給品0~1
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止める。
0:これからの方針を決める。
1:御坂、白井と合流できれば合流したい。
2:一方通行を斃した奴には警戒する。
3:他者を殺そうとする者を止めてまわる。
※淫夢くんは周囲1919㎝圏内にいるホモ及びレズの匂いをかぎ取るとガッツポーズを掲げます。以下は淫夢くんの反応のおおまかな基準。
- ガッツポーズ→淫夢勢、白井黒子、暁美ほむら、ハードゴアアリス、佐山流美のような同性への愛情及び執着が強く異性への興味が薄い者。別名淫夢ファミリー(風評被害込み)。
- アイーン→巴マミ、DIO、ロシーヌのような、ガチではないにしろそれっぽい雰囲気のある者たち(風評被害込み)。
- クソザコナメクジ→その他ノンケ共(妻子や彼女持ち込み)。
判定はガバガバです。また、参加者はこの判定を知らされていないため、参加者間ではただの参加者探知機という認識になっています。
※吉良がガッツポーズに分類された可能性があります。
【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、スッキリ、ラ・ピュセルと上条当麻の手に心酔に近い好意、新しいパンツ(白ブリーフ)。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×1、ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本行動方針:赤い首輪の奴を殺して即脱出...したいが...ここは天国だ...抜け出すべきなのだろうか...?
0:これからの方針を決める。
1:少女(ラ・ピュセル)の手はこの世のものとは思えないほど美しい。上条当麻(少年)の右手は私が触れることすらおこがましく思えるほど神秘的だ。
2:如月左衛門、という奴と同行。秘密を知られたら殺す(最悪、スタンドの存在がバレるのはセーフ)が今は頼れる味方だ。
3:こんなゲームを企画した奴はキラークイーンで始末したい所だ…
4:野獣の扱いは親父に任せる。できればあまり関わりたくない。
5:左衛門の手も結構キレイじゃないか?
6:最優先ではないが、空条承太郎はできれば始末しておきたい。
[備考]
※参戦時期はアニメ31話「1999年7月15日その1」の出勤途中です。
※自分の首輪が赤くない事を知りました。
※絶頂したことで冷静さを取り戻しました。
【如月左衛門@バジリスク~甲賀忍法帖~】
[状態]:特筆点無し
[装備]:甲賀弾正の毒針(30/30)@バジリスク~甲賀忍法帖~
[道具]:基本支給品×1、不明支給品×0~1
[思考・状況]
基本行動方針:弦之介や陽炎と合流してから赤首輪の参加者を殺して脱出。
0:これからの方針を決める。
1:吉良吉影という男と同行。この男、予想以上に強いのでは…?
2:甲賀弦之介、陽炎と会ったら同行する。
3:野獣先輩からは妙な気配を感じるのであまり関わりたくはない。
4:ラ・ピュセルは現状では狙わない。
[備考]
※参戦時期はアニメ第二十話「仁慈流々」で朱絹を討ち取った直後です。
※今は平常時の格好・姿です。
※自分の首輪が赤くない事を知りました。
最終更新:2021年08月06日 23:07