「えっと...このMURっていうのがあんたの名前なの?」
「そうだよ(肯定)」
「なんで英語表記なのよ」
「知らないゾ」
H―;7の寂れた農村。
DIOと雅と別れたMURは、歩くこと約一時間で少女・小黒妙子と少年・ジョン・コナーと遭遇していた。
「......」
妙子の視線が、思わずMURの顎下へと注がれる。
口元のホクロがセクシー...エロイッ!などとホモ的な感想を抱いたわけではなく、彼女が着目しているのは彼の首輪。
見た目どこからどう見てもただの成人済の一般男性にしか見えない。
そんな男が赤首輪を巻いているのだ。これはもう他参加者に殺してくれと言っているようなものだ。
(...コイツを殺せば、あたしは元の世界に戻れる...)
小黒妙子は人を虐めたことはあれど殺したことはない。
それも確固たる意志だとかではなく、単にそれほどの度胸が無かった故にだろう。
しかし、できるできないは別にしても、こんな場所から逃れられるとなれば、嫌でも脳裏に過らざるをえない。
彼女は自然と己の動悸が早くなるのを感じ取った。
「駄目だよ。赤い首輪でも殺そうとしたらあの主催の男の思うつぼだ」
「わ、わかってるわよ」
そんな妙子の心境を察してか、ジョンはひそひそと耳打ちし、妙子も己を顧み邪念を振り払う。
目の前の男はどう見てもただの人間であり、且つ脱出に必要な赤首輪の持ち主という垂涎ものの状況だ。
おそらく一般人を殺人に誘導し疑心暗鬼を引き起こすのが主催の狙いだろう。
ジョン・コナーは普段から窃盗をしたり心配してくれた相手への暴言を吐いたりと一般世間的にはクソガキと呼ばれる部類の少年だが、殺人は嫌だという最低限の良心は持ち合わせていた。
だから、この場でも命惜しさにMURを殺そうとは思わなかったし、T―;800が他の参加者を殺さないか不安で仕方なかった。
(約束したから大丈夫だと思うけど...やっぱり不安だ)
T―;800は、サイボーグであるせいか容赦を知らない。ジョンの命令が無ければ邪魔な者は容赦なく傷付け殺してしまう。
こんな他の参加者がみな敵に為り得る場では一刻も早い合流を余儀なくされるだろう。
(そのためには、僕が無事に生き残らなくちゃいけない)
ジョン・コナーは母親のサラ・コナーから仕込まれた機器に関する技術以外は平凡な子供程度の身体能力しかない。
一人で生き残るのは難しいため、どうしても味方となる人物が必要になる。
その点、最初に出会えたのが小黒妙子で助かった。
彼女は目付きや口調はすこぶる悪いものの、殺し合いに賛同するつもりはなく、同行もすんなり了承された。
彼女が純粋な戦力になるとは思えないが、それでも一人で協力者を求めるよりも同じく一般人がいる方がいいに決まっている。
妙子も妙子で、最初の遭遇がジョンでよかったと思っている。
ここに連れてこられる前、彼女はクラスメイトの野崎春花を虐めていた。
本当は、春花が憎かったわけじゃない。ただ、彼女が相場晄になびいていくのが許せなかった。あんな男になびかず、自分を見てほしかった。
そんな嫉妬心とクラスメイトからの持ち上げから引けに引けなくなって、気が付けばイジメの主導者となっていた。
その果てにあったのが、佐山流美率いるクラスメイトによる春花の家族への放火事件。
妙子は何度も後悔した。なぜ止めなかったのか。なぜ本気でやるわけがないとタカを括って煽るような言葉を吐いてしまったのか。
そう思い悩んでいた折に呼び出されたのがこの殺し合いだ。わけがわからなかった。だが、やらなければならないことはわかっていた。
野崎春花を死なせない。その意味は多分にあるが、それが当面の彼女の目標であった。
とはいえ、そのために身命を賭せるかといえばそうでもなく。かといって彼女のために他の参加者を殺しまわる覚悟もない。
そんな勇気と度胸があれば、彼女はイジメなどやるはずもない。
つまり、彼女は現状ではとにかく死にたくない、その上で春花を危険な目に遭わせたくないというある種臆病な気持ちでこの殺し合いに臨んでいた。
そのせいで、自分一人では、また状況に流されないという保証はない。さきほどのように、自分にも機会があれば赤首輪の殺害による脱出の算段を計画してしまう。
それを戒めるためのストッパー役として、ジョンは最適だった。こんな状況でも冷静に動ける彼がいれば、流されることなく春花と再会できるはず。
現に、MURの首輪を見て揺らぎそうだった妙子を諌めてくれた。
戦力にこそはならないものの、あのクラスメイトたちよりはだいぶマシだろう。
そんな思いで、彼女はジョンの同行を受け入れた。
それから程なくしてMURと遭遇し、三人での情報交換の時間としゃれ込むことになった。
「吸血鬼にサイボーグって...バッカみたい」
「けどあいつらはすっげえ怖かったゾ」
「そんな嘘をつく意味はないから僕は信じるよ。サイボーグだって嘘じゃない」
「ハンッ、んなことわかってんのよ。こんな状況だもの、なにがあってもおかしくない。...あたしが言いたいのは、そいつらとどう接すればいいかってことよ」
吸血鬼にサイボーグ。
それが嘘か真か確かめる術は現状はないが、妙子としてはそんなおっかないものには極力触れたくない。
仮に対面した時、どうすればいいというのだ。
「DIO達とはあっちで別れたからあまりあっちには行かない方がいいゾ」
「...僕も、なるべく彼らとは関わらない方がいいと思う。危険はなるべく避けるべきだよ」
「同感。じゃあ、万が一にもそいつらが追ってこないように、早く出発するわよ」
バケモノになんて関わりたくない。
妙子は、いそいそと荷物を纏めて出発の準備をする。
「あ、おい待てィ(江戸っ子)。その前に調べたいことがあるゾ」
唐突に呼び止めるMURに、妙子は訝しげな視線を送る。
「なによ、あんたの言ってたDIOとかいう奴らがきたらどうするのよ」
「DIO達は別の方角に向かうって言ってたから心配ないゾ」
「手伝って欲しいことってなんなの?」
「...こっちだゾ」
珍しく先導するMURに導かれて辿りついたのは、一際巨大な鉄の扉。
なにやら封印染みたものを連想させる造りである。
「...これはなに?」
「お前達と遭遇する前に見つけたモノだゾ。一人で調べるのも怖かったから手伝ってくれ」
「いや、でも見るからにマズイでしょこれ」
妙子の住んでいる場所は田舎である。あそこにも祠のような不気味な場所はあるが、これはその比ではない。
いまここに立っているだけで祟られそうな雰囲気さえ醸し出している。
「や...やっぱりやめましょうよ。触らぬ神に祟りなしって言葉は知ってるでしょ」
「殺し合いがしたい主催がそんなオカルトチックなものを置くはずがないよ。あいつが見たいのは僕らの殺し合いなんでしょ?だったら、原因不明の脱落なんて望んでいないはずだよ。まあ、僕はそんなもの信じちゃいないけどね」
「そうだよ(便乗)」
ジョンの言う事は理に適っている。
借りに祟りだなんだが実在したとしても、ここに置く理由がない。
そのせいで死んだところで殺し合いの趣旨には反するだろう。
ただ、それでも妙子からはここが不気味すぎる上に奇妙な胸騒ぎは払しょくできなかった。
「嫌なら僕らだけで行くよ。行こう、MUR」
率先して足を踏み入れるジョンに続き、MURもそろそろと足を踏み入れる。
取り残された妙子は、きょろきょろと周囲を見渡し、結局残される不安に勝てずジョンたちの跡を追うのだった。
☆
ジョン達が足を踏み入れた施設。その遙か地下...
ペタッ...ペタッ...
なにかが這うような音が木霊している...
「ン エ エ エ エ エ エ」
もぞもぞと壁を伝い蠢く一つの巨大な影。
それは、徐々に、着実にジョンたちへと近づいていた...。
【H―;7/一日目/寂れた農村・地下通路/黎明】
【MUR大先輩@真夏の夜の淫夢】
[状態]:健康
[装備]:Tシャツ
[道具]:基本支給品、不明支給品1~;2
[思考・行動]
基本方針: 脱出か優勝の有利な方に便乗する。手段は択ばない。
0:この怪しい場所を調べる。
1:野獣先輩と合流できればしたい。
2:とにかく自分の安全第一。
※宮本明・空条承太郎の情報を共有しました。
※T―1000、T―800の情報を共有しました。
※妙子の知り合いの情報を共有しました。
【小黒妙子@ミスミソウ】
[状態]:健康、不安
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:とにかく死にたくない。
0:暗いし怖いし不気味なんだけど。
1:野崎を...助けなくちゃ、ね。
※参戦時期は佐山流美から電話を受けたあと。
※T―1000、T―800の情報を共有しました。
※DIO、雅を危険な人物と認識しました。
【ジョン・コナー@ターミネーター2】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針: 生き残る。
0:とりあえずこの施設?を調べてみる。
1:T―800と合流する。
2:T―1000に要警戒。
※参戦時期はマイルズと知り合う前。
※妙子の知り合いの情報を共有しました。
※DIO、雅を危険な人物と認識しました。
最終更新:2017年05月16日 00:39