「玄野どのの知己は、加藤勝と西丈一郎...この二人なのですね」
「ああ」
玄野計は、この会場で目を覚まし程なくしてであった陽炎と名乗る女性と情報交換にとりかかっていた。
自分がなぜこんな殺し合いに呼ばれているのか。ガンツの趣向が変わったのか?
現状ではわからないが、おそらく違うと思う。
ガンツは殺し合いとはいえ、ターゲットはあくまでも星人のみ。定められたルールを守り、呼ばれた者同士が連携をとる意思させ明確にしていれば、内部崩壊など起こらない仕組みであった。
しかし、今回の殺し合いは今までのものとはまったく異色のものだ。
報酬を貰えるのは赤い首輪の参加者を狩った者のみで、他の者はおこぼれを預かることもできない。事前になんの情報も与えられない。
赤い首輪の参加者を全滅させても殺し合いは終わらず、最後の一人になるまで戦わなければならない。これではガンツのミッションのように最後まで協力するのは困難だろう。
なにより、ミッションには必須のガンツスーツさえ配られない始末だ。これは明らかにおかしい。
確かに、配られた支給品には武器が入っていた。
だが、その武器は今まで星人相手に使っていたようなガンツから配られる武器ではなく、本物の銃。
しかもドラマで見たことある拳銃よりも一回りも二回りも大きく、考え無しに引き金を引けば反動でしばらく動けないであろうことは容易く想像できた。
これでは100点ではない星人相手でもかなりの苦戦を強いられるだろう。
星人の討伐をミッションに設定しているガンツにしてはありえない支給品だった。
(...そういえば、いまガンツの転送が始まったらどうなるんだ?)
ガンツの転送は場所と時間に関係なく行われる。もしも、ガンツが転送を始めたら自分はどうなるのだろうか。
晴れて殺し合いから自動的に脱出となるのか、首輪が爆発し死んでしまうのか。
(それとも...ここにいる間は転送されないのか?)
この殺し合いには、自分以外にも加藤勝と西丈一郎、二人のガンツ参加者が巻き込まれている。
ただの偶然か、それともガンツについてなにかを知っている者が意図的にこの殺し合いに招いたか。
もしも後者であれば、ガンツによる転送による脱出など快く思うはずもない。
ならば、なんらかの方法でガンツの干渉を防いでいる可能性が高い。
(...けど、確かめようにも手段がない。いまはとにかく生き残らねえと...)
とにかく、いまを生き残らなければどうにもならない。
この状況を切り抜けるためには、加藤と合流するのを優先するべきだ。
手がかりなどはなにもないが、とにかく先へ進まなければ。
「玄野どの...」
陽炎が、ひしと玄野の身体にしがみつく。
「陽炎さん...?」
「私は恐ろしいのです...このような、命を命と思わぬ残酷な遊戯が...」
陽炎の身体と声の震えが、恐怖の感情を玄野の心に訴えかける。
「このような弱き身では、すぐにでも虫けらのように殺されかねない...どうかお力添えを...お願いいたします...」
「も、勿論だ。俺は必ずあんたを助けてみせる」
玄野は決して熱血漢ではないし、正義漢でもない。その役割は幼馴染の加藤の役だ。
だが、最低限の良識は持ち合わせているつもりだし、なにより陽炎を守りたいと思わせたのは、彼女の美貌によるものが大きい。
もしもこれが容姿に優れない者であれば、よほどの恩でもない限り、即答はせず玄野も多少躊躇っただろう。
「嬉しい...」
陽炎が抱き着いたまま、顔を上げ玄野と視線を交わす。
その潤んだ瞳に、形の整った容姿に、ほんのりと赤い薄紅の唇に、押し付けられる豊満な胸に、玄野の鼓動がドキドキと脈打つ。
(―――あっ)
玄野のズボンが盛り上がる。
陽炎の漂わす色香に、女の香りにいやがおうでも反応してしまう。
それを知ってか知らずか、徐々に近づく陽炎と玄野の顔。
玄野の心臓は更に高鳴りを増す。
やがて、その距離は互いの息がかかるところまで近づき―――
『計ちゃん』
「だッ、だから安心してくれ!俺、生き残ることに関してはスッゲー自信あるから!」
脳裏によぎった『彼女』の声に我に返り、とっさに陽炎を引き離す。
危なかった。
あのまま流されていれば、浮気してしまうところだった。
陽炎が許してくれればそのままベッドインだ。それだけは駄目だ。タエちゃんを裏切ることはできない。
「まずは俺の幼馴染の加藤を探そうぜ。あいつは頼りになるからさ」
「玄野どのがそう仰るのなら、私は構いません」
常に流れを掴んでいなければだめだ。行動の主導権を握っていなければだめだ。
でないと、いつ流されて過ちを犯してしまうかわかったものじゃない。
玄野は、気を引き締め直し陽炎を先導するように足を進める。
しかし、どうしても陽炎のしなやかで美しい肢体をチラチラと視線で追ってしまうのだった。
「......」
玄野に悟られないように、陽炎は密かに不満を胸に募らせる。
惜しかった。もう少しで、この男は自分を押し倒し、欲の赴くまま貪ろうとしたことだろう。
そうなれば、彼の支給品を手にすることができたのに...
寸前で企みに気が付いた?いや、その割にはいまでも警戒心は見当たらない。
心に決めた者でもおったか、それとも初心なだけか。
...まあいい。
本当は、頼りになりそうにもない彼の支給品を奪い自分で行動するつもりだったが、守ってくれるというのならそれはそれで構わない。
使い潰し、適当なところで捨てれば良い。
(...弦之介さま)
陽炎を占めるのは、愛しきあの御方のみ。
彼が望むなら、彼のためなら、陽炎はなんだってできる。
この殺し合いの他の参加者を皆殺しにすることも、一人では到底太刀打ちできないと言われた赤首輪に挑むこともできる。
その、はずだった。
(けれど、あの方は私を裏切った...)
だが、陽炎は知ってしまった。
弦之介の心は敵方の朧にあり、自分に向けられることはないことを。
朧を討つ絶好の機会を得ても、彼は討つことができなかった。
それほどまでに、朧への想いは硬かった。陽炎がいくら愛そうとも彼が愛してくれることはないとハッキリわかった。
(手に入らぬのなら、いっそ共に死にたい)
そんな陽炎にとって、彼女の願いを叶える機会を与えてくれたかのようなこの殺し合いは暁光だった。
陽炎の身体は、薬師寺天膳に打たれた毒により余命いくばくもなかった。
だが、その毒はこの通り綺麗に取り除かれており、疲労や怪我も完治させられていた。
それだけではない。
この殺し合いでは、玄野のように忍びではない者が招かれている。
少なくとも、名簿で確認できる中で徳川家の世継ぎ争いに所縁のある者、即ち甲賀と伊賀に組する者は四名。
甲賀の甲賀弦之介と陽炎、伊賀の朧と薬師寺天膳のみ。
これなら伊賀甲賀の争いに他人の力を借りることを恥と思う必要もない。
如何なるものの全てを利用し為したいことを為せばよい。
(私が朧を殺すか、弦之介様が朧を守るのが先か...それとも、私があなたに会い共に死ぬのが先か...果たしてどの解になるのでしょうね)
甲賀卍谷衆がひとり、陽炎。
その女に惚れることは死を意味する。
【Cー3/1日目/黎明】
【玄野計@GANTZ】
[状態]:健康、顔面紅潮、半勃ち
[装備]:鉄血帝国ルガー・スペシャル@ブラックラグーン
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1
[思考・行動]
基本方針: ゲームから脱出する。
0:陽炎さんヤバイ、エロイ。
1:加藤と合流。西も、まあ...合流しておこう。
2:浮気はマズイって。
※参戦時期は大阪篇終了以降
※たえちゃんとは付き合っています。
【陽炎@バジリスク】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2(武器ではない)
[思考・行動]
基本方針:弦之介様と共に絶頂の果てで死にたい。
0:弦之介様と合流する。
1:薬師寺天膳には要警戒。
2:朧を殺す。
3:朧が死んだ場合、方針をゲームから脱出する(ただし弦之介を脱出させること優先)に変更する。
4:玄野を利用する。
※参戦時期は弦之介が天膳を斬った後。
※左衛門は書き手枠のため名簿に名前がありません。
最終更新:2017年07月07日 00:25