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学園都市レベル4。それは決して低い数字ではない。
現状、確認できるのがレベル5までだからというだけでなく、学園都市に住む多くの超能力者の大半がそこまで辿りつけないからだ。
白井黒子はそんなレベル4の超能力者である。能力名は『空間移動』。
触れたモノや者を計算した座標に瞬間的に移動させる能力だ。
当然、対象に触れなければ能力を発動できないため、戦闘面においては能力だけに頼るのではなく、鍛錬も積んでいる。
そんな彼女は、学園都市の中でも間違いなく強者の部類だろう。

さて。そんな彼女のいまの相手は魔法少女の佐倉杏子。

彼女も彼女で、長年魔法少女として見野市で魔女と戦い続けてきたベテランである。
その戦闘術は主に槍による近~中距離戦。
本来ならば幻惑の魔法を使えたのだが、父親が家族を連れて無理心中してからというものの、その魔法を使うことはできなくなっていた。
じゃんけんで例えれば、選択肢はグーとチョキのみ。そんなハンデを負ったまま、師と仰いだ魔法少女から離れ、一人でここまで生き残ってきた。
彼女もまた、猛者と言っても過言ではないだろう。

そんな二人だが、その戦況は停滞していた。

黒子は振るわれる槍を極力能力を使わず、己の身体能力のみで躱す。
杏子は明らかに空間移動を使い避けさせようと攻撃している。
焦って下手に能力で躱せば、先程のように動きを先読みされ攻撃を受けてしまうからだ。
そのため、多少の掠り傷は甘んじて受け、確実なる勝機を伺っているのだ。

対する杏子はというと、彼女も決して余裕綽々ではない。
身体能力は自分の方が上のはずだが、それにしては黒子が粘っているのだ。
本来なら、とうに黒子が痺れを切らし、瞬間移動で攻撃を躱している筈だった。
だが、彼女は多少の傷などものともせず杏子の槍をその身ひとつで躱し続けている。
想像以上に戦い慣れている黒子の実力は認めざるをえないだろう。

現状では、身体能力で勝るぶん杏子が優位ではある。
このまま戦い続ければ、杏子がなにかミスでも冒さぬかぎり彼女の優位は揺らがないだろう。
だが、黒子はこの形成を変えるチャンスがあることを確信していた。
それはなにか。
外部からの助っ人?いいや、そんな淡い希望染みたものではない。
そのチャンスは、ほどなくして訪れる。


カッ。

槍を避けた黒子の脚が、なにかを踏みつける。

(―――あった!)

黒子はすかさずしゃがみ込み、その踏みつけたなにかへと触れる。

同時に。

杏子の右肩に走る痛み。
その痛みは杏子の動きを鈍らせ、それに伴い槍の動きも鈍くなる。
痛みのもとを見やれば、そこに撃ちこまれていたのは小さなネジ。

(チャンスは、いま!)

黒子が槍を躱しつつ待っていたのは、工場でよく使われるネジだ。
普段使用する金属矢を没収されている黒子には、現状武器が無く、その代用として探していたのがこのネジだった。
ネジさえ見つかれば後は簡単。このネジを能力で杏子の肩へと撃ちこむだけだ。

唐突な痛みは行動を制限し戦意を削がせる。
拘束するなら、いまこの瞬間が最大の好機だ。

まずは瞬間移動で転倒させる。
そのためには対象に触れなければならない。
杏子に触れようと黒子は右手を伸ばす。

ぐるり。

黒子の手が触れた瞬間、杏子の世界が180°傾く。
同時に、杏子の右足が突き出され、黒子の額へと放たれる。
ありえない反応の速さに、黒子は思わず目を見開き、迫る蹴りへの反応が遅れ、額で受け止めざるをえなかった。

杏子が突然の痛みに怯んだのは決して演技ではない。そこまでの反応は素だ。
だが、黒子が空間移動で、自分を反転させることはあらかた予想はしていた。
杏子は、最初に乱入してきた時の黒子の攻撃手段を覚えていた。
彼女は、掴みかかったレヴィを宙回させた。
あの時はレヴィのあまりの反応速度に気をとられていたが、本来ならば、レヴィが地面に落ちた時点で踏みつけるなりマウントをとるなりで無力化しようとしたのだろう。
ならば、移動させる位置は黒子自身の近くであると予想は立てやすい。
自分の身体が逆さになるのも、予想しておけばいくらでも対応はできる。

杏子は己の脳天が地に着く寸前に両掌を着け、一旦逆立ちになり速度を殺すことで身体への負担を減らした。
そのまま両手を屈伸させ、腕力で跳躍し体勢を立て直す。

蹴りを受けた黒子だが、体勢が体勢であり本来の半分にも満たない威力の蹴撃だったため、少々の痛みと額が赤みを増す程度で済んでいた。

両者は再び向かい合い睨み合う。

互いに少々の手傷を負わせたうえでの仕切り直し。




レヴィは、その手に持ったダイナマイトを投擲。
導火線には火が点いている。あと数秒もすればT-1000の付近で爆発を起こすだろう。
だが彼は一切動じずに銃を構え、爆弾を撃ち抜いた。

当然、起こるのは爆発。

派手な音と共に巻き上がる爆炎とT-1000の技量に、レヴィはヒュゥと口笛を吹いた。

いまの一投は、敵が爆弾に対してどうでるかの様子見だ。

レヴィ自身、T-1000がなにもできずに被弾するとは思っていなかった。
ただものではないのはわかっていたことだが、ダイナマイトに動じず正確に撃ち抜いたあたり、かなりの技量を持ち合わせているらしい。
おそらくこのままダイナマイトを投げ続けたところで届きはしない。銃弾が効かなかった謎も合わせればかなり厄介だ。

(だが構わねえ。こちとらダラダラと延長戦に持ち込む趣味はねえ)

だが、レヴィの戦闘スタイルは元々慎重には程遠い。
短期決戦。勝てば美味い酒をのみ負ければ不様な骸を路地に晒す。そんな生死を掛ける勝負でも、流れ星が落ちるまでに簡単に決するような瞬間の煌めき。
それは、本来の二挺拳銃(トゥーハンド)であろうとなかろうと変わりはない。

呼吸も、鼓動も、脳髄も、全てホットに冷静(クール)。いつも通りだ。
さあ、死の踊りとしゃれ込もう。

ダイナマイトの導火線に火を点け、再び投擲。
T-1000は、先程の流れを再現するかのようにソレを撃ち抜く。

違うのは、撃ち抜かれたダイナマイトが爆発しないこと。

予想外のことに、T-1000は思わず動きを止める。

(いまのはあらかじめ火薬をあらかた抜いて、念入りに湿らせておいたやつだ。どんなけ着火しようが煙草の代わりにもなりやしねえ)

いまの一投はフェイク。本命は二投目だ。
低い姿勢からのアンダースローにより、ダイナマイトは地面スレスレを高速で滑空する。

フェイクに気を取られていたT-1000は反応が遅れ、迫るダイナマイトを撃ち抜くことができない。
銃を腰のホルスターへと仕舞い込み、一足飛びで後退し、ダイナマイトから距離をとる。

火が導火線を侵食し爆発する。

爆風はT-1000の全身を煽り、その熱で服を、皮膚を焦がしていく。
無論、その程度で行動不能に陥る彼ではないが、眼前の熱風はレヴィの探知を阻害し行動の停止を余儀なくされる。

だが、晴れるのを待たずして熱風を掻き分け迫る者が一人。

レヴィは、己の身が高熱に晒されるのも厭わずT-1000へ特攻したのだ。

T-1000が彼女の存在を探知した時にはもう遅い。
彼の顔に向けて放たれるは、レヴィの後ろ回し蹴り。
狙いは頬やこめかみなどではなく眼球。人体の中でも解りやすい急所である。
踵がそこにめり込む感触と共に、レヴィは追撃の手を伸ばす。

ガシリ、とレヴィの手が掴まれる。

T-1000は、澄ました表情のままレヴィの腕を吊り上げ、右脇の下へと回し蹴りを放つ。
レヴィはほぼ反射的に左手を挟み込み脇への直撃を防ぎ、右手を掴むT-1000の左手を無理やり引きはがし後退する。

「眼球に当たってるんだぜ。ちったぁ痛がれよ」

T-1000は、追撃のために腰に手を当て銃を抜こうとする。
が、見当たらない。腰のホルダーは、既に空になっていた。

「探し物はコレかい、おまわりさん」

レヴィを見やれば、その手の中でT-1000が先程まで使用していた銃をクルクルと弄んでいる。

「悪党の前でそんなに隙を見せちゃ駄目じゃねえか。こんな簡単にスられるようじゃ街の安全なんざ守れねえよ」

銃を奪われた。その事実を認識すると、Tー1000は近接戦へと持ち込むために駆けだす。

「遅ェよ」

響く銃声。
放たれた弾丸はT-1000の眉間へと放たれ吸い込まれるように着弾した。
T-1000は、2、3歩後ろへとよろけるとそのまま仰向けに倒れ天を仰いだ。

「......」

勝利したというのに、レヴィの顔は浮かない。
それどころか、警戒心と殺気は微塵も消えていなかった。

「...くだらねえ三文芝居は止めな。てめえ、脳みそはどこへやったんだ」

その言葉を聞き遂げるのとほぼ同時に、T-1000は顔色ひとつ変えずにむくりと上体を起こした。

頭部に被弾したというのに血が一滴も飛び散っていないのだ。
この光景を目にすれば、レヴィでなくとも違和感を感じたことだろう。

「なるほど。最初に心臓撃たれても生きてたのは防弾チョッキなんかじゃなく、そういう身体の仕組みだったからか。おまけに化けの皮も剥がれて踏んだり蹴ったりってやつだな、賞金首」

T-1000の普通の首輪の下から覗かせる真赤な首輪。
レヴィの弾丸を受けた部位の修復により、首輪に巻いていた分の流体金属が剥がれてしまったのだ。

「......」

T-1000は、立ち上がり程なくして、くるりと踵を返してコンテナの密集地帯へと駆けこんだ。

単なる逃走か、それとも策があるのか。
なんにせよ構わない。目の前にカモがいるなら地の底まで追いつめる。
レヴィは、躊躇いなくT-1000の後を追った。

「あ?」

しかし、その先にあったのは左右を挟んでそびえ立つ、数個の巨大なコンテナだけ。T-1000の姿はどこにもなかった。
レヴィはコンテナの森へと踏み込む。

(コンテナの間には通れるかどうかの隙間がある程度...まさか、あそこに隠れたのか?)

だとすれば、なんとも単純な待ち伏せだろう。もはや作戦でもなんでもないではないか。
だが、この状況ではそれが効果的なのは厄介だ。こちらは左右どちらにいるかを当てなければならないが、あちらはレヴィが顔を出したところを狙うだけだ。
それでも行かなければ決着をつけることができないのだから尚更だ。

(仕方ねえ。こいつでおびき出すか)

まずはダイナマイトを投擲し様子を窺おう。もしも投げた方の隙間にいればなんらかのアクションがあり、なにもなければ潜んでいるのは逆の隙間にいる可能性が高い。
レヴィは、ダイナマイトとライターを取り出した。

瞬間。

レヴィは咄嗟に身を捩った。
それは、なにも確信があった訳ではない。
いうなれば、それは『勘』。
長年の経験により積み重なった、生き残るための本能。

そしてそれは見事に的中し、左方から伸びた刃がレヴィの指を掠め鮮血を散らした。

ダイナマイトとライターが空を舞う。
彼女は目を見張った。
なんせ、その刃の出所は、コンテナの中からだったのだから。

何時の間に入ったのだろうか。それを考える間もなく、ほぼ反射的に銃を抜き発砲する。
だが、コンテナの厚い壁は弾丸を弾くだけだ。奥にいるT-1000には届かない。

延びた二本の刃は、垂直に下ろされ、コンテナを切裂いていく。
これだけの切味なら、見失った数秒で中に入ることも簡単だろうとレヴィは推測した。

切り裂いた壁を蹴り飛ばし、レヴィの前へと姿を見せるT-1000だが、落ちたダイナマイトとライターを回収するなり、再びコンテナの中へと戻ってしまう。
それを追いかけるレヴィだが、コンテナに足を踏み入れた途端、充満する粉に思わず足を止めてしまう。

(コイツは小麦粉か?だとすりゃあ)

下手に銃を使う訳にもいかねえか。
そう思ったレヴィだが、差し込んだ月明かりに照らされたT-1000の姿に、思わず目を見開いてしまう。

その手に握りしめられるのは、ライターとダイナマイト。
そして、T-1000の指は、ライターの蓋に触れている。

「お、おい。テメェ、まさか...」

キンッ。

引きつった笑みを浮かべるレヴィを余所に、ライターの蓋は開かれ、導火線に火が点いた。




それは唐突だった。

一つのコンテナが爆発、そこから連鎖するかのように次々にコンテナは爆発していく。
互いの戦闘に集中していた杏子と黒子も、思わずたじろぎ動きを止めてしまう。

その瞬間が致命的だった。

誘爆は、瞬く間に二人のもとへと近づいてくる。

「ッ!」

先んじて動いたのは黒子。
杏子が爆発に気を取られ固まっている隙を突き、有無を言わさず能力を発動。

二人の身体はその場から消え失せ、爆発との距離は遠ざかる。
だが、その行為も空しく。

瞬く間に爆風は目前へと迫り、二人の身体を飲みこんだ。



轟音。

まるでなにかが爆発したかのような音が、玄野と陽炎の耳に届く。
何事かと目を向ければ、そこにはもうもうと立ち昇る煙と火の手。
間違いない。あそこでなにかがあったのだ。

「す、スッゲェ爆発...」

玄野はそう漏らすと同時に、そこにいるかもしれない友の安否を気遣う。
もしも加藤があそこにいたら間違いなくピンチに陥っていることだろう。
仮にあの爆発に巻き込まれていなくとも、彼ならば間違いなくあそこへ向かい生存者の救出に向かうだろう。
そう考えると気が気ではなかった。すぐにでも向かわなければ。

「陽炎さん!」

玄野の呼びかけに、陽炎は黙って頷く。
陽炎は、玄野が現場へと向かうのを止めはしなかった。
あの場に弦之介か朧がいる可能性があるのもそうだが、彼女は玄野がどの程度の男なのかを見極めたかった。
彼は生き残ることに関しては自信があると言い張っていた。
それだけ自負するなら、狂言の類でなければ、相応の体術か忍法を有している筈だ。
彼がその力を見せるのは追い込まれた状況の中だろう。
それを確認するために、興味の無い人助けに、陽炎は承諾したのだ。

「ハッ、ハッ」

玄野は走る。一刻も早く現場に辿りつくために。
だが、GANTZスーツの無いいまの自分は、有効な武器を持っていなければ、特別優れた運動神経を持っている訳でもない。
それでも彼は現場へ向かうことに躊躇いはなかった。

加藤が心配なのはもちろんだが、その一方でこんな場面を望んでいる自分がいた。

かつて、田中星人討伐の任務を終え日常に戻ったころ、早くガンツからの任務にいきたい衝動に駆られたことがある。
それは、星人を殺せるからというよりは、全く振り向いてくれない岸本と彼女に想いを寄せられていた加藤への複雑な気持ちからだ。
普段は教師やクラスメートに凡庸な男だの昼行燈だのと弄られ、好きな少女には目の前で惚気をだべられる始末。
そんな自分でも、他の者が出来ないことをやってのけた。
他の誰がどう思っていようとも、あの間だけは確かに大活躍なヒーローだったのだ。

そんなかつての栄光を手に入れた感覚に酔いしれたいのか、それとも傍らの女性にいい恰好ができると感じ取っていたのか。

玄野の顔には、微かに笑みが浮かんでいた。



「ひとまず収まったか」

パキン、と音を立て、紡がれた鎖は崩れ落ちる。
杏子の魔法で張られた鎖の結界が、爆風から彼女を護ったのだ。

「......」

杏子は、傍らで火傷により意識朦朧としている黒子へと目をやる。
爆発が起きたあの刹那、あの状況で、如何に自分を守るかを考えていた自分と違い、黒子は真っ先に二人が助かる手段をとった。
あの時彼女一人だけでさっさと逃げていれば、余計な手傷を負わずにいられたというのにだ。
だがそのお蔭で杏子が生き残れたのも事実。もしもあのまま取り残されていれば、ただでは済まなかっただろう。

「おい」

聞こえているかもわからない彼女へ呼びかける。
返答はない。

「爆風はあたしが防いだ。あのまま食らってたら、きっとあんたは死んでただろうな」

意識が朦朧としている彼女に聞き逃すなという方が無理かもしれない。
けれど、彼女が聞いていなくても構わなかった。ただ、自分の中でケリを着けたいだけだから。

杏子は黒子を抱き上げ木陰に横たえる。
爆発が収まったいま、ここなら更なる被害を被ることはないだろう。

「その程度の怪我なら死にはしないだろ。...借りは返したからな」

それだけを告げ、杏子は去っていく。
その小さくなっていく背中を、黒子は見つめることしかできなかった。





「クソッ、やりやがった。やりやがったあの野郎!ハワード・ペインも大喜びだクソッタレ!」

粉塵爆発による火傷を負い、煤と泥に塗れたレヴィは、火災地から離れるように足を引きずり歩を進める。

T-1000がなにをしようとしたのか瞬時に理解し、咄嗟にコンテナから離れたのが幸いした。
幸い、向かい側にも巨大なコンテナがあったため、それが爆風や熱による被害を軽減役割を果たし、レヴィはこうして無事に生存することができたのだ。

だが、受けたダメージは決して軽いものではない。
これでは普段のように銃弾の雨の中を無傷で行き交うことはできないだろうし、二挺拳銃も存分に力を振るえない。
この殺し合いにおいてかなり不利な条件の参加者になってしまった。

(ったく、なんでこんなことになっちまった)

一度頭を冷やし、こうなってしまったいきさつを振り返る。
どこでヘタをうったのか。考えるまでも無い。
T-1000を撃ち、杏子との闘争を継続したのが全ての原因だ。

もしも、素直に黒子の静止に従い、T-1000の言ったジョン・コナーという少年の情報交換に事を留めておけば、こんなことにはならず五体満足で済んだ。
多少の我慢ならロアナプラでもよくあることだったのに、レヴィは我慢が効かずに引き金に手をかけた。苛立ちのままに引き金を引いてしまった。
この殺し合いの熱に浮かされてしまったとでもいうのだろうか。

『銃じゃ、解決しないこともあるんだぜ』

不意に、そんな言葉を思い出す。
ロック―――この殺し合いにも連れてこられているバカヤロウが、ラグーン商会に入って間もない頃のことだった。
あの時は、新人が入るといつもなってしまうホイットマン熱(フィーバー)の残り香でなんに対しても苛立ち当り散らしていた。
そんな折に、あの男は銃を脳天に突き付けられた上でそう言って退け、レヴィが引き金を退いても生き延びて見せた。

(うるせえな。あの状況じゃ仕方ねえだろ)

『ガンマンは稼業。気分で撃つのは乱射魔だ。チャールズ・ホイットマンを雇った覚えはねえ』

「あ~~~、うるせえな!わかってるよ、あたしがトチったんだよ!」

同僚に続き雇い主の御高説までもが脳裏を過り、レヴィは思わず苛立ちで地団太を踏んだ。

「ああ、クソッ。あのヤロウ、あたしをこんなのに招待しやがったあのヤロウは絶対ェタダじゃおかねえ」

もとをただせば全ての原因はあの男にある。依頼を頼んだわけでもなく、駄賃の一銭も払わず自分を殺し合いに放り込んだあの主催の男にだ。
決めた。いま決めた。あいつは殺す。尻の毛をむしり取って下の球を叩き割って絶望の淵に陥れて遊び殺してやる。
苛立ちしか募らない殺し合いに呼びつけた主催への怒りを募らせ、レヴィは独り暗がりへと歩みを進めていった。


【C-4/工場地帯/一日目/早朝】
※多くのコンテナが爆発しました。火災はまだ続いていますが、これ以上広がることはありません。


【レヴィ@ブラックラグーン】
[状態]:頬に軽い痣、全身に火傷とダメージ、疲労(大)、精神的疲労(大)、苛立ち。
[装備]:ソードカトラス@ブラックラグーン
[道具]:基本支給品、西山のダイナマイトセット×2@彼岸島
[思考・行動] 
基本方針:赤い首輪の参加者を殺してさっさと脱出する。
0:少し落ち着いて行動する。
1:自分の邪魔をする奴は殺す。
2:ロックは見つけたら保護してやるか。姉御は...まあ、放っておいても大丈夫だろ。
3:あの主催の男は絶対ブチ殺す。

※参戦時期は原作日本編以降


「待ちなよ」

レヴィを呼び止める声がひとつ。
聞き覚えのある、まだ幼い声だ。

振り返り、姿を認めれば、そこに立つのは赤を基調とした服の槍使い。

「あたしとの決着はまだついてないだろ」

ああ、そうだ。もとはコイツと殺りあっていたんだ。

「...オーライ。あたしも中途半端は嫌いなんだ。これからどうするにせよ、キッチリケリは着けておかねえとな」

レヴィは凶悪な笑みを浮かべ、銃を構える。
それに対する杏子の手は、槍を構えての突撃。
無防備極まりない猪突猛進に見えるが、先刻のやり取りで解っている。
適当に撃ったところで躱されるだけだ。もしそうなれば、死ぬのは手傷の多い自分だ。

ならば、狙うべきは死の瀬戸際だ。
相手の槍がこちらの心臓まで届くようなゼロ距離射撃で確実に仕留める。

槍が迫り、レヴィの心臓を穿つまであと30cm。

(こんなもんじゃねえ)

20cm。

(まだだ。まだ足りねえ)

10cm。

(まだだ。まだ...)

5...4、3、2、1

(ゼロだ)

ミリ単位の瀬戸際まで来て、レヴィは身を翻す。
服が切り裂かれ、穂先を掠めた胸部が露わになり血が滲むも、それがレヴィを殺すには至らない。

(殺った―――!)

杏子のこめかみに銃を突きつけ、引き金に力を込める。

瞬間。彼女と視線がかち合い、レヴィの背筋に怖気が走った。

杏子の、人のモノとは思えないほどに無感情な瞳に。




玄野計と陽炎。
二人が辿りついた時には、もう手遅れだった。
爆発はもう止めようがなく、原因の確認もロクにできなかった。

だが、ある意味では彼らは間に合っていた。

今まさに、第二ラウンド、ガンマンと槍使いの少女の勝負が決する寸前だったのだから。

二人は「待て」とも武力行使としてもその戦いを止める暇も無かった。

カラン、と音を立て落ちる槍。

ガンマン―――レヴィは、その脳天を刃で貫かれた。

「お」

その事態を認識した玄野は、ようやく声を発することができ、叫びと共に銃を構えた。

「お、お、おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

引き金が引けるかはわからない。
だが、いまこの場で人が殺されたのならば、次に狙われるのは自分達だ。
彼の生存本能は、咄嗟に最適解を叩きだし、身体を行動に移させた。

少女―――杏子は、玄野達の方へ向き直り、引き金が引かれる前にレヴィの身体を投げつけた。

当然、そんなことをされれば、引き金を引くことよりも、彼女を受け止めることを優先せずにはいられない。

玄野は咄嗟に銃を手放し、振りかかる重い衝撃に耐えつつレヴィを抱きとめ、地面に倒れこむ。

杏子は、すぐさま槍を拾い上げ、玄野たちへと背を向け逃走する。
玄野は崩れた体勢のまま銃を広い狙いを定めようとするも、立ち昇る煙が視界を遮り、玄野の追撃を許さなかった。

「クソッ...」

玄野は、陽炎の力も借り、伸し掛かるレヴィの身体を地面へと丁寧に横たえる。
大丈夫だろうか、という視線を陽炎に投げかけるも、陽炎は首を横に振る。
即死。脳髄を破壊されたのだから当然である。

レヴィの見開かれた両眼は、己に起きたことを信じられないかのように虚空を見つめ続けている。
そこには感動も矜持もなにもない。ただ、一人の参加者が他の参加者に殺されただけのことだ。
二人には、それがこの催しが殺し合いであることを物語っているようにも見えた。


「はぁ...はぁ...くっ」

黒子は痛む身体に鞭うち手を伸ばすも、炎はそれを拒むように燃えさかり彼女の干渉を許さない。
これでは空間移動をしようにも、座標が計算できず中まで入れない。

怪我を負った黒子が炎に近づき、わざわざなにをしているのか。
彼女は、杏子に安全な場所へ放置されたのはいいものの、爆発の大元であろうレヴィとT-1000が気がかりになり、こうして火の手まで足を運んでいたのだ。

(お二人共、どうかご無事で...)

あの爆発では助かる可能性は低い。それこそ、反射の能力でも持ってなければ厳しいだろう。
けれど、生きている可能性もゼロではない。ならばこそ、黒子がそう易々と諦められるはずも無かった。

どうにか消火しなければと眩む頭を働かせるが、そんな手段はなにひとつ浮かばない。
一か八か飛び込むかと考えが纏まりかけた時だった。

「大丈夫か」

かけられた男性の声に、黒子は思わず振り返る。
立っているのは、紛れもなくあの警官、T-1000だった。

「ぶ、無事でしたの...」
「危うく死にかけた。きみこそ酷い有り様だ。ここからすぐに離れよう」

T-1000は、有無を言わさず黒子を背負い、炎から遠ざかるように背を向けた。

「あの女性なら私よりも先に遠くへ避難していた。あの炎の中にはもう誰もいない」
「そう、でしたの」



黒子はT-1000の言葉にふぅ、と息をつく。
それは、自分の心配が徒労で済んだことへの安堵の息。

レヴィはお世辞にも善人とは言えない者だが、だからといって死んでせいせいするなどとは到底思えないし見捨てようとも思わなかった。
だから、彼女が生きていると聞かされれば安堵もするものだ。

それに、自分を助けてくれた杏子もだ。
彼女は確かに終始敵意を抱いていたが、一度とて自分を殺そうとはしなかった。
もしも殺す気で来ていたならば、確かなチャンスであったあの反撃を蹴りではなく槍で刺していたはずだ。
だが、彼女は自分を殺さないどころか支給品にも手をつけなかった。
きっとまだ殺し合いには乗っていないのだろう。ならば、レヴィとの問題さえ解決すれば味方になってくれるかもしれない。

少々手傷を負ってしまったが、死者が出ておらず改心のきっかけを作れたのなら上々な結果だろう。
妥協する気は無いため、彼女達の説得を止めることはないが。

(ああ...眠たいですの...この背中がお姉様のものだったらよかったのですが...)

黒子が安堵による睡魔に襲われていたその時だ。

「あ、アンタ達気を付けろ!」

T-1000が足を止めるのとほぼ同時に、聞きなれぬ青年の焦燥の声が黒子の耳に届いた。
背負われたまま身を捩れば、甘いマスクの青年と着物の美女、そして仰向けに倒れるレヴィの姿が確認できた。

「いまさっきこの人が殺された。犯人は、槍使いの女の子だ!」

その思いがけない結末を聞いた瞬間、黒子の眼は驚愕で見開かれた。



佐倉杏子は、黒子と別れ、独り闇夜を駆けていた。

(クソッ...なんであたしはあいつを助けちまったんだ)

舌打ちと共に毒づくのは、自身の理解不能な行為。
どんな手段を用いてでも生き残る方針とは矛盾する人助け。

(せめて支給品くらいカッ払っうべきだろうが。なんであたしは...!)

今まで生きてきたように合理的に考えれば、支給品くらいは取りに戻るべきなのだろう。
だが、正義であろうとする黒子の姿が、あの甘い戯言抜かす二人の魔法少女の幻影が重なれば、わざわざ邪魔をしに戻る気が失せてしまう。

安否不明なあの二人―――レヴィとT-1000の存在は気がかりだが、わざわざ戻って顔を突き合わせる意味もないだろう。

杏子は、当てもなくただ立ち昇る火煙へと背を向ける。

彼女の向かう先、空は次第に明るみを増しているが、未だ暗い部分もある。
それは、煮え切らない想いで殺し合いに臨む彼女の気持ちを表しているかのようだった。


【C-5/一日目/早朝】

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(中)、苛立ち、黒子に対して複雑な気持ち。
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:生き残る。そのためには殺人も厭わない。
1:どんな手段を使ってでも生き残る。
2:鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむらを探すつもりはない。
3:マミが本当に生きているかは気になる。

※TVアニメ7話近辺の参戦。魔法少女の魂がソウルジェムにあることは認識済み。


順調だ。
黒子や青年の様子を確認し、T-1000はそう実感する。

自分の正体が見られた以上、どうしてもレヴィは始末しておきたかった。
だが、単に刺殺するだけなら、真っ先に疑われるのは対峙していた自分だ。
黒子の懐に入りこむ以上、彼女から信頼を損なうのは避けたかった。そのために粉じん爆発を用いてレヴィを爆殺しようとした。
逃げ場のないようなるべく多く誘爆するように隣接したコンテナにはあらかじめ大きな穴を開けておき、この爆発を起こしたのはレヴィであり、彼女は自爆したことにして片付けるつもりだった。
だが、悪運強く彼女は生き延びていた。あれで殺せないならば、もう確実にこの手で殺す他なかった。
そこで白羽の矢が立ったのが佐倉杏子だ。
彼女の戦闘スタイルや口調は既に知っているし、レヴィも力量を既に認識しているため読み違えやすい。
肝心の黒子もまた、あの爆発の最中で未だに杏子と共にいる可能性は低いだろうと考えた。
彼女の姿で殺せば、自分に疑いの目がかかる可能性は低くなる。
槍は己の身体の一部を使い再現できるのでなおやりやすい。
加えて、それを立証するのが新たに現れた玄野計と陽炎だ。
杏子の姿を借りてレヴィと接触する前に、彼らの姿を確認したT-1000は、彼らを目撃者に仕立て上げることを考えた。

ここまでくれば後は実行するだけだ。


T-1000が佐倉杏子の姿を借りてレヴィを殺す。

たったこれだけのことで、レヴィを殺したのは杏子となり、自分に疑いの疑惑がかかるのを防ぐことができる。
正体を知った者を口封じに抹殺し、ジョン・コナーを追い詰めるための手駒を増やすこともできる。
まさに一石二鳥とはこのことだ。


一皮むけば大したトリックもない、変装術によるただの詐欺だ。
だが、この事件の真実を知るのは、T-1000ただ1人だけ。

何も知らぬ小年少女らは、ターミネーターの仕掛けたウィルスに侵されるだけか、それとも...



【C-4/工場地帯/一日目/早朝】

基本支給品、西山のダイナマイトセット×2@彼岸島、ソードカトラス@ブラックラグーン

【レヴィ@ブラックラグーン 死亡確認】


【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(大)、衣類ボロボロ、全身に軽度の火傷(簡単な行動にはあまり支障無し)。
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止める。
0:状況を確認する。
1:...止められません、でしたか。
2:御坂と上条と合流する。
3:槍使いの少女に要警戒。


※参戦時期は結標淡希との戦い以降。

【T-1000@ターミネーター2】
[状態]:ダメージ40%(爆発によるダメージ)
[装備]:ソードカトラス@ブラックラグーン
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1
[思考・行動]
基本方針:ジョン・コナーを殺害する。
1:眼前の人間たちからジョンについての情報を聞く。始末するかは後で判断する。
2:効率よくジョンを殺害するために、他者の姿を用いての扇動および攪乱も考慮に入れる。
3:黒子の瞬間移動の技法を手に入れる。

※参戦時期はサラ・コナーの病院潜入付近。
※白井黒子、佐倉杏子、レヴィの容姿を覚えました。
※首輪に流体金属を巻いて色を誤魔化しています。




【玄野計@GANTZ】
[状態]:健康
[装備]:鉄血帝国ルガー・スペシャル@ブラックラグーン
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1
[思考・行動]
基本方針: ゲームから脱出する。
0:陽炎さんヤバイ、エロイ。
1:加藤と合流。西も、まあ...合流しておこう。
2:浮気はマズイって。
3:状況を確認する。

※参戦時期は大阪篇終了以降
※たえちゃんとは付き合っています。

【陽炎@バジリスク】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2(武器ではない)
[思考・行動]
基本方針:弦之介様と共に絶頂の果てで死にたい。
0:弦之介様と合流する。
1:薬師寺天膳には要警戒。
2:朧を殺す。
3:朧が死んだ場合、方針をゲームから脱出する(ただし弦之介を脱出させること優先)に変更する。
4:玄野を利用する。
5:状況を確認する。

※参戦時期は弦之介が天膳を斬った後。
※左衛門は書き手枠のため名簿に名前がありません。






甘い言葉の蜜薫り立つ 玄野計 未知との遭遇
陽炎
前哨戦 レヴィ GAME OVER
白井黒子 未知との遭遇
T-1000
佐倉杏子 Anima mala/Credens justitiam
最終更新:2019年04月16日 18:45