暁美ほむらは憎悪する。
自分の顔に醜い烙印を刻み、弄んだ雅に、首輪などで殺しを強制する主催者に、
そして何より、大切な人を、最愛と言っていい彼女をこんな理不尽から救い出せない、力及ばない自分自身に対しての怒りが、当面の危機を脱したほむらを駆り立てる。
もはやちょっとした戦場と言っていい有り様の下北沢を背に、ほむらは一先ず休息をとる。本音を言えば、直ぐ様にでもまどかを探しにいきたいのだが、いかに魔法少女と言えども下北沢での激戦で受けた精神的・肉体的な苦痛はそう無視できるものでもない。

「……ッ!」

途端に痛みだす傷に悲鳴が溢れる。

(状況は振り出しに戻ったわね。……これからどう立ち回るにせよ、武器も、人手も、策も、何もかもが足りない)

雅とついでにひでへの殺意を膨らませながら、以下にあの怪物たちを打倒できるのかを推測する。

(本当に悔しいけど… この血は、今の私にとっての切り札"ジョーカー"。扱いには気を付けないと)

盛り会う吸血鬼のホモたちを思い出してしまい、ただでさえ悪い気分がより悪くなったが、雅の血液が如何なる結果をもたらすのかは、下北沢で十分に証明された。
これをうまく扱えば、場合によっては赤首輪でさえも殺せるかもしれない。
もっとも、まどかに危険が及ばない形で使うことが大前提である以上、いささか危険すぎる代物だが。

結論として、まず求めるべきは人だ。
集団を形成する利点は、(囮にしたとはいえ)ガッツたちとの共闘で実感した。
雅を倒すために、まずは戦力が欲しい。
まず知り合いで望みがあるのは美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子たちだ。
比較的善人であるさやかとマミならば事情を説明すれば手を貸してくれる可能性が高く、杏子も理があれば望みはある。
次に可能性があるのは宮本明と、先程の丸太の男(ガッツ)。
丸太の男については先程の戦いでのツテで共闘を申し込むのは可能だろうが、雅と対等に殴りあっていた不死身の怪物(ぬらりひょん)も、もしかしたらまだそこらを彷徨いているのかもしれないのだ。今から下北沢に戻るのは自殺行為に等しい。
暁美ほむらは過酷な運命に抗う過程で、幾度もの修羅場を越えてきた歴戦の戦士でもある。いまだ傷は深いが、まどかへの思いを糧に立ち直りつつあった。
しかし、ここはバトルロワイアルの舞台。
傷を癒しつつ、冷静に思考を巡らせている時にも、変化は訪れるものだ。

「フフっ、ほむらぁ!」

聞き覚えのない声。
硬直と共に顔をあげると、ーー目があった
魔女のような帽子にスカート、感情の読み取れない糸目。
そして、右手にきらりと光る包丁。
見知らぬ少女が、ほむらを見下ろしていた。

(まさか、ここまで接近されて気がつかないなんて……っ!)

謎の少女の気配遮断に驚愕しつつ、ほむらは咄嗟に銃口を向ける。
銃を突きつけられてもなお、眼前の少女は狼狽えずに平静だった。
それが堪らなく不気味な感情を抱かせたが、それを飲み込み、問いかける。

「貴女…… 何者?なぜ私の名前を知っているの?」

「こんにちは、ジョーカー役のSZと申します。」

ジョーカー。
通常はトランプの道化のイラストや、どこぞの犯罪界の道化王子を連想するが、
ここでの意味合いは"主催者と通じている者"であることを示す。

ほむらがその言葉を解する前に、相手は行動を起こした。 
一瞬の隙に、凄まじい敏捷さで距離をつめた女は、携えた包丁をほむらの首筋に……ではなく、ほむらのソウルジャムに擦り合わせた。

ほむらの背筋が凍りついた。
この女は、魔法少女の弱点を知っているっーー!!
ソウルジェムは魔法少女の魂の器そのものであり、生命線である。
魔法少女にとって生身の肉体がラジコンであるならば、ソウルジェムはそのリモコン。
壊されれば、死ぬ。

「なんてね、ふふ」

大成功!と言いたげな言葉と同時に、刃が離れる。
訝しむほむらに構わず、悪戯が成功した子供のごとく少女は無邪気に笑っていた。

「今ここで貴女と殺りあってもいいけど、私は所詮NPC。殺りすぎちゃうと首を飛ばされかねないからね」

おどけた仕草で首もとの首輪(赤ではない)を指し示し、SZと名乗った少女は会釈する。

「改めまして……SZと申します。
この度のバトル・ロワイアルではジョーカーとして、このゲームを円滑に進めるためのお仕事をしております」

主催の手先!告げられた言葉にほむらの警戒心が一気に高まる。
それを察したのか、SZは困ったような顔で言葉を続けた。

「……まぁまぁ、そう警戒しないでよ。私はただの伝言役みたいなものだから。
頑張ってる君に、主催者からのプレゼントだって。受け取って」

語りながらSZが懐から取り出したのは、手のひらサイズの黒玉であった。
彼女は妙な威圧感を醸し出すそのアイテムを、困惑するほむらに構わず押し付ける。

「これは……何?」
「さぁ?詳しくは知らされていないので……端末とかじゃないですかね?」

随分といい加減な説明に空気を読んだのか、タイミングよく、ブゥン、という機械音の後に、黒玉の表面に文字が浮かび上がる。端末という言葉は当たっていたらしい。
その文字をほむらは無意識のうちに読み上げる。

「……緊急ミッション?」



『こいつらのどれかをたおちてくだちい

あきらさん
こんがりふぇいす
じょうたろうさん
ジュッセンパイヤー 

黒玉には四人の男女の似顔絵と、渾名らしき名が表示されていた。そして、ほむらの視線はその下の文面に釘付けになった。



クリアとくてん
記憶を消して、鹿目まどかと元の世界へ帰還する』


見逃せるわけが無い。元の世界への帰還という、赤首輪討伐にのみ許される筈の報酬が別の形で提示されているのだ。
しかしほむらに訪れたのは、歓喜ではなく、困惑であった。
なぜこのタイミングで主催が介入してきたのか、という最もな疑問が素直な心境だ。

「これはどういうことかしら?」
「さぁ? 私はただそれを渡してくれ、としか言われて無いので」

それじゃあ、私はこれで。と無責任に一言告げると、SZはほむらに背を向けると瞬時に姿を眩ました。
その逃げ足の早さ! 歴戦の魔法少女でさえも追えない敏捷さであった。


「……なんなのよ、一体」

ひとり残されたほむらは、意味深な目で黒玉を見つめる。
この降って沸いたような選択に彼女がどういう選択をするのかは、まだ分からない。


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(大)、右頬に痣、右肩に銃創、失禁、ノーパン、貧血(大、ただし魔力である程度再生中)、身体に痺れ(多少の行動には問題ない程度には取れている)、額から左頬にかけての傷。緊急ミッションへの困惑と疑念
[装備]:ソウルジェム、ひでのディバック、雅の血液の入ったボトル、スタングレネード@現実(ひでの支給品)、黒玉@GANTZ
[道具]:サブマシンガン
[思考・行動]
基本方針:まどかを生還させる。その為なら殺人も厭わない
0:この場を離れ、早急にまどかを探し出す
1:いまは無理だが、雅は必ず排除する
2:雅を倒す戦力が欲しい。候補は美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子、宮本明、丸太の男(ガッツ)。
3:緊急ミッション……?

【黒玉について】
実写版GANTZに登場するアイテム。
手のひらサイズの端末であり、今回は主催から配信される緊急ミッションが表示されている。
これ1つだけなのか他に何かしら配られているのかは不明。

【緊急ミッション】
内容は参加者である宮本明、バラライカ、空条承太郎、野獣先輩のうち一人の殺害。
報酬は鹿目まどかとの生還らしいが、主催がそれを守るのかは未知数。
どういった意図で行われているのかも現時点では不明である。

【SZ姉貴(NPC件ジョーカー)@真夏の夜の淫夢派生シリーズ】
下北沢周辺に配置されているNPCの一人で、風評被害により淫夢入りした某ヴォイスドラマ企画のキャラクターである。
ホモからはサイコパス扱いされており、それによりBB劇場では殺人鬼役になることが多く、死ゾ姉貴と呼ばれることも。
チェーンソーや包丁でよく他キャラクターを拷問・殺害するが、雑魚専として描写される事も多くそこまで強くはない。
今回は主催の手先(ジョーカー)としてゲームの運営の指示で動いている。
他にジョーカーとして動いているNPCが居るのかもしれない(居るとは言ってない)


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TOP OF THE WORLD(前編) 暁美ほむら
最終更新:2018年06月13日 22:08