究極の味、究極の代償 ◆i7XcZU0oTM
太陽は、既に天高く上っている。
だが、照英一行の雰囲気は、まるでそこだけ影の中に入っているが如く暗い。
……数時間前の出来事の時点で、少なからず心に影は差していた。
それに追い討ちをかけてしまったのが、定時更新だった。
そこに名前が載っている事実が、そんな心に追い討ちをかける形となってしまったのだ。
……だが、それと同じように気まずい空気が漂っているところもあった。
だが、照英一行の雰囲気は、まるでそこだけ影の中に入っているが如く暗い。
……数時間前の出来事の時点で、少なからず心に影は差していた。
それに追い討ちをかけてしまったのが、定時更新だった。
そこに名前が載っている事実が、そんな心に追い討ちをかける形となってしまったのだ。
……だが、それと同じように気まずい空気が漂っているところもあった。
(やっぱり、まだまだこの2人の間には、わだかまりが……)
(……いつまでも、このままじゃいけない。でも、どうすれば)
焦れば焦る程、思考は絡まってしまう。
それでは駄目だ、落ちついて1つづつ解いて行けば、必ず答えは出る。
……そう、分かっていても。
不安が焦りを生んで、育ててしまうのだ。
それでは駄目だ、落ちついて1つづつ解いて行けば、必ず答えは出る。
……そう、分かっていても。
不安が焦りを生んで、育ててしまうのだ。
(時が、解決してくれる……のを、待つ訳にもいかない)
これが日常の一幕であったなら、その選択をするのも1つの手。
だが、その手は…………使えない。
いつ襲われ、いつ命を落とすかわからないこの状況で、"時が解決する"のを待つ事は、できない。
だが、その手は…………使えない。
いつ襲われ、いつ命を落とすかわからないこの状況で、"時が解決する"のを待つ事は、できない。
(僕が……どうにか……)
そんな照英の悩みをよそに、801の姐さん達は道を進んで行く。
……どちらも、もしかしたら。
一歩踏み出すだけで、元に戻れるのかもしれない。
だけれど、その一歩は。果てしなく、大きい。
……どちらも、もしかしたら。
一歩踏み出すだけで、元に戻れるのかもしれない。
だけれど、その一歩は。果てしなく、大きい。
「……照英さん、PDAに反応が……」
黙っていた801の姐さんが、唐突に口を開き、PDAを指差す。
確かに、参加者の存在を現す光点が、前方に1つあった。
今の探知機の走査範囲は、約50メートルほど。
光点の位置を、実際の距離に変換すれば、30メートル程度。
だが……光点の動く速度が早い。
身を隠して様子を見るのか、警戒しながら接触するのか。
迷っている内に……反応の主は、照英たちの前に、姿を現した。
確かに、参加者の存在を現す光点が、前方に1つあった。
今の探知機の走査範囲は、約50メートルほど。
光点の位置を、実際の距離に変換すれば、30メートル程度。
だが……光点の動く速度が早い。
身を隠して様子を見るのか、警戒しながら接触するのか。
迷っている内に……反応の主は、照英たちの前に、姿を現した。
「……あ、照英さんじゃないですか。奇遇ですねぇ」
そこにいたのは――――禁断の味に、魅せられてしまった男だった。
◆
数分程度、時は戻る。
「アシハモウダイタイイイカンジダロ……デモナァ……(足の怪我ももう随分と良くなったな……だが、まだ……)」
素早く、存在を気取られないように。
グンマーは、市街地を進む。
……1時間ほどの休養を挟んだ後に、グンマーはとりあえず東に向かっていた。
負傷していた足の具合も、先程までに比べれば十分なほど回復していた。
だが、それでも万全な状態からは程遠かった。
現に、現在のグンマーの走行速度は、普段の半分も無い。
グンマーは、市街地を進む。
……1時間ほどの休養を挟んだ後に、グンマーはとりあえず東に向かっていた。
負傷していた足の具合も、先程までに比べれば十分なほど回復していた。
だが、それでも万全な状態からは程遠かった。
現に、現在のグンマーの走行速度は、普段の半分も無い。
「トットトナオレッテノ……ジャネェト、マジデヤレナイダロ……」
(もう少し早く傷が治ってくれれば……でなければ、全力を出せない……)
(もう少し早く傷が治ってくれれば……でなければ、全力を出せない……)
依然走り続けながら、グンマーは一人愚痴をこぼす。
「カンガエテミリャア、オレッテイママデダレモタオシテネェシ。イイトコマデイッタコトハアッタケドナ」
(考えてみれば、今まで誰も倒していないな。あと一歩の所まで行った事はあったが)
(考えてみれば、今まで誰も倒していないな。あと一歩の所まで行った事はあったが)
そう呟いて、グンマーは今まで遭遇した相手を思い出す。
――――最初に遭遇した2人組。
――――建物で不意打ちしてきた奴。
――――自身をとっ捕まえた集団。
――――建物で不意打ちしてきた奴。
――――自身をとっ捕まえた集団。
……どれもこれも、本気でいけば、倒せたかもしれない相手たち。
だが、そのチャンスを、ことごとく逃してしまった。
一度逃したチャンスがもう一度巡って来る事は、めったに無いのだ。
だが、そのチャンスを、ことごとく逃してしまった。
一度逃したチャンスがもう一度巡って来る事は、めったに無いのだ。
「モウチットマジメニヤレヨ、オレ……(もう少し、真剣にならないと……)」
こんなことでは、とても村を守る戦士にはなれない。
むしろ、このままでは守られる側になってもおかしくはない。
それでは、駄目だ。
むしろ、このままでは守られる側になってもおかしくはない。
それでは、駄目だ。
「……ゼッテーヤッテヤンゾォ!(……必ずやり遂げるぞッ!)」
◆
「あなたは……川越さん。まさか、あなたもここに連れてこられていたなんて……」
「ええ、散々ですよ」
「ええ、散々ですよ」
そう言って、川越さんはいつも浮かべている笑顔のまま、肩を竦める。
……目が、全く笑っていないように見えるのは僕の気のせいだろうか?
恐る恐る、僕は川越さんに尋ねた。
……目が、全く笑っていないように見えるのは僕の気のせいだろうか?
恐る恐る、僕は川越さんに尋ねた。
「……お一人、ですか?」
「ええ……何度か、人に出会ったのですが、同行はしてませんね。……僕の料理の素晴らしさを、
理解してくれませんでしたから、する必要もないでしょう」
「ええ……何度か、人に出会ったのですが、同行はしてませんね。……僕の料理の素晴らしさを、
理解してくれませんでしたから、する必要もないでしょう」
心底残念そうに語る川越さん。
……どこかで、料理をしていたらしい。
この状況では、確かに分かって貰えないかもしれない。
……嫌が応でも人を疑ってしまうような、ここでは……。
……どこかで、料理をしていたらしい。
この状況では、確かに分かって貰えないかもしれない。
……嫌が応でも人を疑ってしまうような、ここでは……。
「その人達は、今どこに?」
「知りませんよ」
「知りませんよ」
……言葉の後に、興味なんかない、と続いてもおかしくない口ぶり。
僕の知る川越さんは、こんな人だっただろうか?
それとも、この状況に長く置かれていたせいで、変わってしまったのだろうか……。
僕の知る川越さんは、こんな人だっただろうか?
それとも、この状況に長く置かれていたせいで、変わってしまったのだろうか……。
「ねぇ、照英さん……この人、何か変じゃない……?」
小声で、お姐さんが僕に訊いてくる。
お姐さんも、僕と同じような事を感じていたようだ。
……今の川越さんは、どこかおかしいような気がする。
コクリと小さく頷いて、お姐さんの意見に同調する。
お姐さんも、僕と同じような事を感じていたようだ。
……今の川越さんは、どこかおかしいような気がする。
コクリと小さく頷いて、お姐さんの意見に同調する。
「ところで、今は何を?」
「あぁ……今は、料理に使う食材を探していたんですよ」
「食材?」
「えぇ……とびきり美味しいものを、ね」
「あぁ……今は、料理に使う食材を探していたんですよ」
「食材?」
「えぇ……とびきり美味しいものを、ね」
……僕は、ここであることに気がついた。
さっきから、川越さんが僕の体をじろじろと観察している。
一体、何のためにそんなことを?
さっきから、川越さんが僕の体をじろじろと観察している。
一体、何のためにそんなことを?
「……なら、百貨店に向かえばいいんじゃないですか?」
「いえいえ、僕の求める味は、そんな所じゃあ手に入りませんよ」
「じゃあ、どこで……」
「いえいえ、僕の求める味は、そんな所じゃあ手に入りませんよ」
「じゃあ、どこで……」
僕がその言葉を言い終わるか終わらないか、その瞬間。
――――川越さんの目の色が、変わった。
――――川越さんの目の色が、変わった。
「はあッ!」
「うわっ!?」
「うわっ!?」
シュッ、と風を切る音と共に……僕の着ていた服の胸元が、一文字に切り裂かれた。
「照英さんッ!」
『照英ッ!』
『照英ッ!』
T-72神とお姐さんの声が、ほぼ同時に聞こえてきた。
その声など意にも介さない様子で、川越さんは僕に刃物を向ける。
……川越さんの握っていたものは、包丁だったようだ。
こんな、料理人の命を武器に使うなんて!
その声など意にも介さない様子で、川越さんは僕に刃物を向ける。
……川越さんの握っていたものは、包丁だったようだ。
こんな、料理人の命を武器に使うなんて!
「……お姐さんは下がって! T-72神、お姐さんを中に入れてあげて下さい!」
お姐さんは拳銃を持っているけれど、使い慣れないものを無理に使ったら、どうなるか分からない。
それに……もし、戦うようなことになれば、僕が戦うと決めたんだ。
だからこそ、とりあえずは安全だと思うT-72神の中に入るように言ったんだ。
そうすれば、もし僕に何かあっても、お姐さん達は助かる。
それに……もし、戦うようなことになれば、僕が戦うと決めたんだ。
だからこそ、とりあえずは安全だと思うT-72神の中に入るように言ったんだ。
そうすれば、もし僕に何かあっても、お姐さん達は助かる。
(……分かりました)
「でも、照英さんはどうするの!?」
「……とにかく、川越さんをどうにかしないと! さあ、早く!!」
「でも、照英さんはどうするの!?」
「……とにかく、川越さんをどうにかしないと! さあ、早く!!」
横目でお姐さんが中に入るのを確認してから、僕は再び川越さんと相対する。
……川越さんが、どうしてこんな事をするのかは分からない。
でも、このまま川越さんを放っておくのは、あまりにも危険すぎる!
……川越さんが、どうしてこんな事をするのかは分からない。
でも、このまま川越さんを放っておくのは、あまりにも危険すぎる!
「どうして、こんな事を!?」
「……ついさっき言ったばかりじゃないですか。僕は今、"食材"を探してるって」
「……ついさっき言ったばかりじゃないですか。僕は今、"食材"を探してるって」
食材?それと、襲い掛かってきた事になんの関係があるのだろう。
「それとこれと、何の関係があるんです!」
「何度言わせるんですか? ――――食材探しです。調理するには、まず〆なきゃ駄目ですからね」
「……!! ま、さか」
「何度言わせるんですか? ――――食材探しです。調理するには、まず〆なきゃ駄目ですからね」
「……!! ま、さか」
この川越さんの一言で、一体何を使用としているのかが、分かってしまった。
……まさか、まさか。
……まさか、まさか。
川越さんは、人を、調理しようとしているのか?
「あの素晴らしい味、食感、舌触り……一度味わえば、やみつきですよ。あれ以上に美味しい物、存在しませんよ。
僕の料理で殺し合いを止めるには、あの味が不可欠なんですよ。ですから……」
「――――何を考えてるんですか、あなたは!!」
僕の料理で殺し合いを止めるには、あの味が不可欠なんですよ。ですから……」
「――――何を考えてるんですか、あなたは!!」
……気がつけば、僕の口から、怒号が飛び出していた。
川越さんは……人として、越えてはならないラインを越えている。
この状況でどうにかなったにしろ、そうじゃないにしろ……赦されることじゃない。
しかも、川越さんの口ぶりから察するに、既に一度――――。
川越さんは……人として、越えてはならないラインを越えている。
この状況でどうにかなったにしろ、そうじゃないにしろ……赦されることじゃない。
しかも、川越さんの口ぶりから察するに、既に一度――――。
「…………何て、ことを」
信じられない。
どうして、どうして平然としていられるんだろうか。
人を、食べてしまったのに、それなのに。
川越さんは、それを何とも思っていないのだろうか?
どうして、どうして平然としていられるんだろうか。
人を、食べてしまったのに、それなのに。
川越さんは、それを何とも思っていないのだろうか?
「照英さんも食べてみれば分かりますよ、あの素晴らしさがね……さて、そろそろカタを付けないといけませんね。
下準備の必要もありますから……」
下準備の必要もありますから……」
頭がクラクラする。
川越さんの言っている事が、理解できない。
……いや、"理解したくない"と言った方が、正確かもしれない。
とにかく、今の川越さんは、おかしい。こんな状況でさえ、いつもの笑顔を崩していない。
だけど、目だけは違った。
"狂気"と形容するのが正しいくらいに、ギラギラと……輝いている。
川越さんの言っている事が、理解できない。
……いや、"理解したくない"と言った方が、正確かもしれない。
とにかく、今の川越さんは、おかしい。こんな状況でさえ、いつもの笑顔を崩していない。
だけど、目だけは違った。
"狂気"と形容するのが正しいくらいに、ギラギラと……輝いている。
「さぁ、大人しくしてください。暴れられても――――困りますからねッ!!」
「くぅッ!!」
「くぅッ!!」
キィン、と鉄同士がぶつかり合う音が辺りに響く。
……恐るべき速度で振るわれる包丁を、僕はただ金属バットで防ぐことしかできない。
そんな僕の様子を嘲笑うかの様に、川越さんは攻撃を続ける。
……恐るべき速度で振るわれる包丁を、僕はただ金属バットで防ぐことしかできない。
そんな僕の様子を嘲笑うかの様に、川越さんは攻撃を続ける。
「どうしたんです照英さん、その程度ですか?」
じわじわと、僕の体に細かい切り傷が刻まれて行く。
……どうして、この期に及んで僕は、川越さんを攻撃できないんだろうか?
川越さんを、傷つけてしまうのを、恐れているから?
今現在、命を狙われているのに、どうして僕は……。
僕は、守らなければならないんだ。
自分を、お姐さんを、T-72神を……。
その為に、僕がやらなければならない事は。
川越さんを――――。
……どうして、この期に及んで僕は、川越さんを攻撃できないんだろうか?
川越さんを、傷つけてしまうのを、恐れているから?
今現在、命を狙われているのに、どうして僕は……。
僕は、守らなければならないんだ。
自分を、お姐さんを、T-72神を……。
その為に、僕がやらなければならない事は。
川越さんを――――。
「……うおおぉぉぉぉッ!」
攻撃が少し緩んだ隙を突いて、僕は。
手に持った金属バットを……川越さんの腕を目掛けて、思いっきり振った。
当たったその瞬間だけ、時が止まったかのような感覚がした後に。
手に持った金属バットを……川越さんの腕を目掛けて、思いっきり振った。
当たったその瞬間だけ、時が止まったかのような感覚がした後に。
言葉にしたくない感覚が、金属バットを通して、手に伝わってきた。
「――――ッッ!!」
当たった部分を押さえ、地面をのたうち回る川越さん。
……攻撃の当たった右腕は、あらぬ方向に曲がっている。
おそらく……骨が折れたか、砕けたかしているだろう。
……攻撃の当たった右腕は、あらぬ方向に曲がっている。
おそらく……骨が折れたか、砕けたかしているだろう。
「……今の内に、逃げましょう!!」
(分かりました!)
(分かりました!)
とにかく、今は……逃げよう。
無我夢中でT-72神に乗り込んで、僕達はここから逃げ出した……。
無我夢中でT-72神に乗り込んで、僕達はここから逃げ出した……。
◆
「うぐ、ぐぁ……腕、がぁ……」
激しい眩暈で、立ち上がることもできない。
今まで体験した事のない痛みが、川越の痛覚を休み無しに刺激する。
その度に、気絶しそうになるのをグッと堪え、川越はなんとか意識を繋いでいた。
……そうしなければ、何があるか分からない。
それは、川越も重々承知の上だった。
だからこそ、立ち上がって安全な場所へ逃げなければならない。
この状態では、とても"食材"を探しに行ける状況ではない。
――――川越が、常人であったなら。
今まで体験した事のない痛みが、川越の痛覚を休み無しに刺激する。
その度に、気絶しそうになるのをグッと堪え、川越はなんとか意識を繋いでいた。
……そうしなければ、何があるか分からない。
それは、川越も重々承知の上だった。
だからこそ、立ち上がって安全な場所へ逃げなければならない。
この状態では、とても"食材"を探しに行ける状況ではない。
――――川越が、常人であったなら。
(……諦めて、なるものか……!)
普通なら、当の昔に気絶していてもおかしくない。
だが、川越は……"執念"で、意識を繋ぎ止めていた。
全ては、自分の料理で殺し合いを止める為に。
そのために人を殺めようとした、矛盾した意思のために。
だが、川越は……"執念"で、意識を繋ぎ止めていた。
全ては、自分の料理で殺し合いを止める為に。
そのために人を殺めようとした、矛盾した意思のために。
「……ヤレヤレ、ノコッタノハイカレタヤツダケカヨ(……やれやれ、残ったのはおかしな奴だけか)」
気がつけば、大柄の男――――グンマーが、川越の傍に来ていた。
今の今まで乱入するタイミングを伺っていたのだが、丁度行動しようとした時に、照英が逃げ出した。
この事は、グンマーにとってはあまり嬉しくない出来事だった。
……多人数を、一気に倒せるチャンスを逃したのだから。
今の今まで乱入するタイミングを伺っていたのだが、丁度行動しようとした時に、照英が逃げ出した。
この事は、グンマーにとってはあまり嬉しくない出来事だった。
……多人数を、一気に倒せるチャンスを逃したのだから。
「……今度は、ずいぶんと筋肉質ですねぇ……」
「ソノウエ、シニゾコナイトキテヤガル……マア、ラクショーダナ。ラッキー」
(その上、手負いと来ている……まあ、幸運と言う事にしておこう)
「ソノウエ、シニゾコナイトキテヤガル……マア、ラクショーダナ。ラッキー」
(その上、手負いと来ている……まあ、幸運と言う事にしておこう)
川越へ、ゆっくりと銃口が向けられる。
……そんな状況でも、川越は動揺しない。
むしろ、先程と同じ"目"に……。
……そんな状況でも、川越は動揺しない。
むしろ、先程と同じ"目"に……。
「……ッ!!」
「ナッ……!」
「ナッ……!」
一瞬の出来事だった。
突然起き上がった川越は、迷う事なく……。
――――グンマーの指に、齧りついた。
眼をギラギラと輝かせながら、グンマーの指を――――。
突然起き上がった川越は、迷う事なく……。
――――グンマーの指に、齧りついた。
眼をギラギラと輝かせながら、グンマーの指を――――。
「ア゙アァァッ!?(ぐあァァッ!?)」
「少々硬いですが、まあ、下ごしらえすればなんとかなるでしょう」
「少々硬いですが、まあ、下ごしらえすればなんとかなるでしょう」
……ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。
わざと、咀嚼音を立てながら、川越はグンマーの指を咀嚼する。
その表情は、まさに"恍惚"。
わざと、咀嚼音を立てながら、川越はグンマーの指を咀嚼する。
その表情は、まさに"恍惚"。
「……だが、他の肉には無い旨味がある! これはぜひとも――――」
「シニ、ヤガレェェェェェェェッ!!」
「シニ、ヤガレェェェェェェェッ!!」
川越の台詞は、銃声によって、かき消された。
【川越達也@ニュー速VIP 死亡】
◆
(今、銃声がしました)
「……どっちからしましたか?」
(先程まで、私達がいた方向です)
「……どっちからしましたか?」
(先程まで、私達がいた方向です)
そうですか、とそっけない返事を返して、またうつむく照英。
「照英さん……」
「…………」
「…………」
あの状況ではやむを得なかった。
自分を、同行者を守るためにはしかたなかった。
例えそうだったとしても、照英が川越を負傷させたのは事実……。
その"事実"が、照英の心を縛る。
自分を、同行者を守るためにはしかたなかった。
例えそうだったとしても、照英が川越を負傷させたのは事実……。
その"事実"が、照英の心を縛る。
(僕のやっていることは……正しいのだろうか……)
襲われたから、応戦した。当然のことだ。
だが、それでも。
人を傷つけると言う事は、想像以上に恐ろしい。
ましてや、今までそんな経験のなかった人間が急に経験すれば、ショックも大きいだろう。
だが、それでも。
人を傷つけると言う事は、想像以上に恐ろしい。
ましてや、今までそんな経験のなかった人間が急に経験すれば、ショックも大きいだろう。
(……分からない……何も)
心にかかる影は、さらに、濃くなっていく。
【D-3/1日目・午前】
【801の姐さん@801】
[状態]:健康、深い悲しみ
[装備]:グロック17(16/17)
[道具]:基本支給品×2、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ドクオのPDA(参加者位置探知機能搭載)、出刃包丁@現実
アイスピック@現実、うまい棒@現実、不明支給品×2(801の姐さん視点で役に立ちそうに無い物)
[思考・状況]
基本:生き残って同人誌を描く
1:……
2:照英さん……この気持ちは一体なんだろう? まさか恋?
【801の姐さん@801】
[状態]:健康、深い悲しみ
[装備]:グロック17(16/17)
[道具]:基本支給品×2、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ドクオのPDA(参加者位置探知機能搭載)、出刃包丁@現実
アイスピック@現実、うまい棒@現実、不明支給品×2(801の姐さん視点で役に立ちそうに無い物)
[思考・状況]
基本:生き残って同人誌を描く
1:……
2:照英さん……この気持ちは一体なんだろう? まさか恋?
【照英@ニュー速VIP】
[状態]:健康、使命感、悲しみ、上半身に複数の切り傷
[装備]:金属バット@現実
[道具]:基本支給品×2、PDA(忍法帖【Lv=00】)、首輪×2、麻雀牌@現実、出刃包丁@現実
冷蔵庫とスク水@ニュー速VIP、サーフボード@寺生まれのTさん、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本:殺し合う気は無い。皆で生きて帰る
1:自分のやっている事は、正しいのだろうか……
2:801の姐さんとT-72神を仲直りさせないと……
3:いざ闘うとなると、やっていける自信がない……けど、やるしかない
[状態]:健康、使命感、悲しみ、上半身に複数の切り傷
[装備]:金属バット@現実
[道具]:基本支給品×2、PDA(忍法帖【Lv=00】)、首輪×2、麻雀牌@現実、出刃包丁@現実
冷蔵庫とスク水@ニュー速VIP、サーフボード@寺生まれのTさん、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本:殺し合う気は無い。皆で生きて帰る
1:自分のやっている事は、正しいのだろうか……
2:801の姐さんとT-72神を仲直りさせないと……
3:いざ闘うとなると、やっていける自信がない……けど、やるしかない
【T-72神@軍事】
[状態]:装甲の一部にヘコミ、燃料消費(残り約85%)、カリスマ全開、悲しみ
[装備]:125ミリ2A46M滑空砲(0/45)、12.7ミリNSVT重機関銃(0/50)
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、煙幕弾@現実×3、親のダイヤの結婚指輪のネックレス@ネトゲ実況
[思考・状況]
基本:人民の敵たるひろゆきを粛清し、殺し合いを粉砕する
1:手に入れた首輪を解析しましょう
2:私は、保護対象を守れなかった……
3:弾が欲しい……
※制限により、主砲の威力と装甲の防御力が通常のT-72と同レベルにまで下がっています。
※制限により、砲弾及び銃弾は没収されました。
[状態]:装甲の一部にヘコミ、燃料消費(残り約85%)、カリスマ全開、悲しみ
[装備]:125ミリ2A46M滑空砲(0/45)、12.7ミリNSVT重機関銃(0/50)
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、煙幕弾@現実×3、親のダイヤの結婚指輪のネックレス@ネトゲ実況
[思考・状況]
基本:人民の敵たるひろゆきを粛清し、殺し合いを粉砕する
1:手に入れた首輪を解析しましょう
2:私は、保護対象を守れなかった……
3:弾が欲しい……
※制限により、主砲の威力と装甲の防御力が通常のT-72と同レベルにまで下がっています。
※制限により、砲弾及び銃弾は没収されました。
※ドクオのデイパックは801の姐さんが、麦茶ばあちゃんのデイパックは照英がそれぞれ回収しました
※スーパーの鮮魚コーナー作業所から出刃包丁を2本回収しました 801の姐さんと照英が1本ずつ持っています
※801の姐さんの恋心は現時点では一方的なものです
※スーパーの鮮魚コーナー作業所から出刃包丁を2本回収しました 801の姐さんと照英が1本ずつ持っています
※801の姐さんの恋心は現時点では一方的なものです
◆
「ハァ、ハァ……クソッタレガ(はぁ、はぁ……何てことだ)」
血の滴る手を押さえ、苦悶の表情を浮かべるグンマー。
……噛み千切られた部分は、衣服の一部を裂いて応急処置がなされている。
だが、それでも出血はジワジワと続いている。
……噛み千切られた部分は、衣服の一部を裂いて応急処置がなされている。
だが、それでも出血はジワジワと続いている。
「アンニャロー、ヨケイナコトシヤガッテ……(あの男、余計な事を……)」
肩で息をしながら、グンマーは近くの壁に寄り掛かる。
……例えグンマーと言えど、痛みは感じるのだ。
……例えグンマーと言えど、痛みは感じるのだ。
「ソノウエ、アイツタイシタモンモッテナカッタシ……(その上、あの男は大した装備も持っていなかった……)」
包丁は、一般人からすれば凶器に成り得るのだが……。
グンマーにとっては、ただの貧弱なものでしかなかった。
第一、そのような物を使わねばならないほど、武器には困っていない。
……武器が何もない、と言うような状況であれば、拾っていたのだろう。
グンマーにとっては、ただの貧弱なものでしかなかった。
第一、そのような物を使わねばならないほど、武器には困っていない。
……武器が何もない、と言うような状況であれば、拾っていたのだろう。
「アシガヨクナッタカトオモエバ、コンドハ、テカヨォ……カンベンシテクレヨ……」
(足が回復したかと思いきや、今度は手、か……これ以上は勘弁してほしいな……)
(足が回復したかと思いきや、今度は手、か……これ以上は勘弁してほしいな……)
フラフラと、グンマーはまた歩き出す。
……左手の傷の、まともな手当てが出来る場所を求めて。
……左手の傷の、まともな手当てが出来る場所を求めて。
【D-3/一日目・午前】
【グンマー@まちBBS】
[状態]:健康、首筋に血を吸われた痕、足負傷(中程度・回復中)、左手指欠損(応急処置済み)
[装備]:熱光学迷彩服(所々破れている)@攻殻機動隊、サイガ12(7/8)@現実
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=01】)、洗顔クリーム、予備マガジン
[思考・状況]
基本:優勝して、村を守る戦士になる
1:指のまともな治療が出来る場所を探す
2:頃合いを見て、戦場に赴く
※チハが喋ることを半信半疑に思っています
※やる夫を自分と同様に成人の儀を受けているグンマー出身者だと思っています
【グンマー@まちBBS】
[状態]:健康、首筋に血を吸われた痕、足負傷(中程度・回復中)、左手指欠損(応急処置済み)
[装備]:熱光学迷彩服(所々破れている)@攻殻機動隊、サイガ12(7/8)@現実
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=01】)、洗顔クリーム、予備マガジン
[思考・状況]
基本:優勝して、村を守る戦士になる
1:指のまともな治療が出来る場所を探す
2:頃合いを見て、戦場に赴く
※チハが喋ることを半信半疑に思っています
※やる夫を自分と同様に成人の儀を受けているグンマー出身者だと思っています
| No.99:Thank you for... | 時系列順 | No.101:悲しみの弔鐘はもう―― |
| No.99:Thank you for... | 投下順 | No.101:悲しみの弔鐘はもう―― |
| No.72:戦争を知らない大人たち | 801の姐さん | No.:[[]] |
| 照英 | No.:[[]] | |
| T-72神 | No.:[[]] | |
| No.75:アクシデントは突然に | グンマー | No.:[[]] |
| No.94:おしょくじのじかん | 川越達也 | 死亡 |