律「やすいかこれ」
紬「……」
紬「……ねぇ、安いの?」ツンツン
菫「知りませんよぉ……1,000お嬢様$紙幣一枚で買えますけど」ボソボソ
紬「いまいちわからないもの……」
菫「私は阿呆のメイドですからもっとわかりません」
紬「とりあえず三本買ってみるわ!いちかばちか!」
菫「ですね! たぶん安いですよ。旦那様からお小遣いで1,000,000お嬢様$いただいてますし」
紬「そうよね♪」
律「……で、なんの相談?」
紬「ううん、なんでもないの!」
律「高かったら少しまけるよ。こっちもその日のうちにさばける分にはすんごいありがたいから」
紬「えー、いいの? 私値切るのが夢だったの~」
澪「あほの匂いがするぞ」
律「……だな」
ゴトゴト ゴトゴト…
律「ツムーギーはさー、なにしに牧場いくの?」
紬「ちょっと遊びにいくだけよ」
菫「お嬢様は過酷な日程の間をぬって、息抜きに牧場へ行くのです」
律「へぇ。やっぱりお嬢様ってことは貴族か何かなんだ?」
紬「え、えっと……」
律「もしかしてタメ口でしゃべってる私の首とぶ?」
紬「ううん誓ってそんなことないわ! りっちゃんはもうお友達だもん!!」
律「へへ、ありがと」
紬「お友達……ふふ」
菫「お嬢様!私は!?」
紬「メイド」
菫「そんなぁ……」
澪「私は牛」
紬「楽しみね牧場」
澪「うんうん!」
紬「牛さんは牧場に帰ったらまず何がしたいの?」
澪「育ててくれた唯に会いたい! 憂ちゃんに会いたい!」
紬「そう」
澪「唯はな、アホだけど優しいんだ。憂ちゃんはな、アホじゃなくて優しいんだ」
紬「澪ちゃんのいた牧場はアホなのね……うふふふ」
菫「お嬢様! 負けてられませんね!」グッ
律「うわー仲間だとおもわれたくねーなー」
澪「それで唯たちに律のことをたくさん話すんだ!」
紬「へぇ……」
澪「律はな、だめで悪いやつでへんたいだけど実は」
律「うわああっちょちょっ、澪ちゃんそういうのはナシで」
澪「え? あぁごめん……ぺらぺらしゃべりすぎた」
菫「律さんは悪い変態なんですか……」
律「そこだけ抽出するなぁ!!」
紬「変態って?」
菫「きっと牛相手に興奮するんですよ!」
紬「まぁまぁまぁまぁ!」
律「いやいや……それは誓って無い」
澪「一緒にお風呂に入りたがるんだぞ!」
律「やめてくれよ……太陽も笑ってるぜ」
紬「うふふふふ、もっと聞きたいなりっちゃんと澪ちゃんのこと」
菫「こうして直接お話しを聞いて市井のことを知るのは良いことですねお嬢様!」
律「なんなんだよあんたら……」
紬「つくまでたっぷり聞かせてください!」
菫「ください!」
律「わかったわかった……どうせ暇だしな。よし、じゃあ澪を買ったとこから話すか」
澪「なんだか照れくさいな」
――――――
ゴトゴト
律「はー、すっかり暗くなっちまったなぁ」
菫「みてください! 向こうに明かりが!」
律「お!!」
澪「あ……あ……!!」
紬「ふぁ……着いたの?」
律「あれが平沢牧場か!!よし!とばすぞ!」
澪「わああああああ!! 牧場だあああ!!」
律「もうすぐだぞ澪!」
澪「うん! 唯ー!! 里帰りにきたぞー!!」
律「うん、もうすぐだ! もうすぐ……」
律(お別れだよ、澪……)
……
唯「やー、今日も一日お疲れ様でしたー」
憂「ふぅー……肩こっちゃった」
梓「いやぁ、牧場の仕事ってのも大変ですねぇ」コキコキ
唯「ようし、牛さんたちのご飯もおっけーだし、閉めよっか」
憂「あれ? 向こうから何か来るよ?」
唯「んえ?」
ゴトゴト ゴトゴト
梓「荷馬車が二台……」
唯「こんな時間にお客さんかなぁ」
憂「ご飯の用意おおめにしたほうが良さそうだね」
唯「私出迎えてくるから憂とあずにゃんは後よろしくね」
憂「うん!」
唯「やぁやぁ。遠路はるばるようこそ平沢牧場へ」
唯「なにもないところですが一晩のお宿をお探しならぜひお立ち寄りください」
ガタッ
澪「唯!!」
唯「うわっ! 澪ちゃん!!」
澪「唯ー!」パタパタ
唯「澪ちゃんどうしてー!」
律「ども、こんばんは」
唯「どうもーいらっしゃーい」
紬「こんばんはぁ」
菫「こんばんは。お嬢様!牧場ですよ!暗くてほとんど何も見えませんけど」
紬「牛さんいないね……」キョロキョロ
唯「この時間はみんな牛舎で御飯食べて寝てるんだぁ」
唯「それより澪ちゃん……」
澪「唯ー……会いたかった……」
唯「どうして……」
律「連れてきたんだ」
唯「あなたが、澪ちゃんのオーナーさん?」
律「あぁ」
唯「澪ちゃん……もう会えない覚悟だったのに……ごめんね」
澪「ううん。時期がきたら順番に旅立っていくのは仕方ないんだ……牛の運命だ」
唯「ごめんね……」
澪「謝らなくていいんだ。唯はあの日たくさん泣いてくれた」
唯「それで……」
澪「ちょっと街の暮らしの息抜きにきたんだ! ここの空気はやっぱりおいしいな!」
澪「早く憂ちゃんのご飯がたべたい!」
唯「うんうん、ゆっくりしてお行きー」
澪「うん!」
唯「夢みたいだよ。澪ちゃんがこうしてもどってくるなんて」
律「へへ。私が買わなかったらいまごろ澪は肉の塊だったけどな」
澪「や、やめろぉ……」
唯「ありがとうね澪ちゃんのオーナーさん。お肉にしなかったんだね」
律「あぁ、肉にするにはちと惜しいとおもってな」
唯「そっか。変わった人もいるんだね……」
律「いんや。にしてもあんたも大変だよな。仕事とはいえ、こんな思いばっかり」
唯「ううん……慣れたとは言いたくないけど、たくさん楽しいこともあるから……」
律「そっか……」
澪「ねぇねぇ、どう!? ここが私の家!」
紬「いいところね。空気がおいしいわ」
菫「のどかですねー」
澪「ふふふっ。いっぱい遊んで帰ろう」
唯「まぁとりあえず中へお入り。ご飯も用意するよ」
律「お邪魔します」
紬「ご飯だって!」
菫「お腹ペコペコですねお嬢様!」
唯「こんなに良い身なりの人がくるのははじめてだなぁ」
律「そうだ、後で少し話があるんだけど」
唯「? いいよー、ご飯たべてからね!」
律「おう」
ガチャリ
梓「いらっしゃ……あー! 律先輩!」
律「あ! 梓なんでこんなところに! てかなんだその格好!」
梓「え、えっと……」
唯「あずにゃん知り合いなんだー」
梓「……」
律「え? 何? 雇われてんの?」
梓「……」
唯「近くの道で行き倒れてたんだよー」
梓「わわっ、言わないでください」
律「……」
唯「あずにゃんはよく働いてくれてるよ」
梓「そうです! おみやげとかも作ってるんですよ!!」
律「ほぉ……」
唯「全然売れてないけどね!」
梓「……」
律「なんだ? じゃあ梓はしばらくここで働くの?」
梓「えぇ……正直いうと行商人するより性に合ってるみたいで」
律「そっか……やっと安住の地をみつけたんだな」
梓「律先輩みたいに自分のお店をもつのが夢でしたが……こういうのも悪く無いかなって」
唯「あずにゃんがいてくれて助かってるよー」
梓「律先輩はそれから売上どうですか?」
律「……」
梓「?」
澪「えっと、実は」
梓「え? え? なんですかこの空気」
律「いまいちっつうか、てんで売れてねーよ」
梓「うそ……もう結構たちますよ? こんなとこまできて何やってるんですか!」
律「……んー」
梓「商魂みせてくださいよ! ぶらぶらしてる場合じゃないでしょ!」
澪「……耳が痛い」
律「わかってるって……でもな、いいアイデアが浮かばないんだよ」
紬「??」
菫「お嬢様のためにかいつまんで説明しますと、どうやら庶民相手にはいささか売れ行きがよろしくないようです」
紬「なるほど……あんなにおいしいのに難しい世界なのね」
唯「まぁまぁ、暗い顔せずに! ご飯たべよう!」
憂「どうぞ、牧場のとれたてミルクでつくったシチューです。栄養たっぷりでおいしいですよ」
律「どうも……いただきます」
澪「憂ちゃん! ただいま!」
憂「えっ!? え?」
唯「澪ちゃんが帰ってきたんだよー」
憂「そうなんだ……こんなこともあるんだね」
澪「憂ちゃん! 私のごはんは? いつもたべてたのがいい!」
憂「うん! すぐに!!」
菫「お嬢様! このシチュー! とっても濃厚ですね!」
紬「むぅ……うちのシェフが作るのよりおいしいかも……」
菫「首にしましょう! そして彼女を雇用しましょう!」
紬「馬鹿ね。これはきっと彼女の腕だけでなく、材料そのものが素晴らしいからよ。言ってたでしょとれたてミルクって」
菫「なるほど! さすがですねお嬢様」
律「たしかにうまい……うますぎる」
唯「でしょー?」
梓「この味から離れられなくて……」
律「たしかに、牛乳をつかった
レシピってのはアリだよな」
梓「でも私たちは料理人ではありませんからね」
律「うん。そうなんだよな」
唯「お仕事の話?」
律「あぁ、うん」
唯「牛乳の一番おいしいいただきかたはねー」
律「いや……それはもういいんだ」
唯「えっ」
律「ふたりとも、ちょっと席外してくれる?」
唯「うん、先言ってたお話だね?」
梓「はい……」
澪「?」
憂「いっぱい食べてね」
澪「わぁ♪」
……
梓「ふー夜風がきもちいいです」
律「ここは星がよく見えるんだな。澪も言ってたよ」
唯「それで、話って澪ちゃんのこと……?」
律「あぁ……」
梓「あ、さてはおいしくお肉にする方法を」
律「違う!」
梓「すいません……ちょっとした冗談です……」
唯「……もしかして、ここへ来たのって」
律「……」
律「……澪を返しにきた」
梓「えっ、高いお金払って買ったのにどうしてですか」
律「……」
唯「……そっかぁ。ごめんね」
律「なんで謝るんだ。謝るのはこっちだ。あんなにおいしいミルクなのにうまくさばけなくてごめん」
律「平沢牧場の名に傷をつけてしまったかもしれない」
唯「ううん、こっちこそ。お役に立てなくて申し訳ない」
唯「澪ちゃん、せっかく買ってくれたのに」
律「いや、すべては私のささいな失敗が招いた結果さ」
梓「でも……元手とりかえしてないんでしょ!?」
律「あぁ」
唯「……澪ちゃんをお肉にすれば。そこそこのお金にはなると思うよ」
梓「唯先輩……」
唯「私は牧場主だもの。牛一頭一頭丹精こめて育てるけど、その後はオーナーさんに全てを委ねてる」
唯「それが私の商売、私たちのやり方…………あなたは?」
律「……私は……私の商売は……」
最終更新:2011年09月19日 20:27