―――――中庭


虎徹「」スヤスヤ

エリ「あ、ここにいたんだ・・・」

サヤサヤ

アカネ「いい風が吹いているから、いい場所をみつけたんだね虎徹」

信代「休日の学校ってしずかでいいね」

潮「いただきまーす」

慶子「私たち以外には登校してないんだね」

和「えぇ。休みを返上してまで追い詰められているわけじゃないみたい」

「「 う・・・ 」」グサッ

潮「ごちそうさまでしたー」

ちか「おにぎり一個でいいの?」

潮「色々つまみぐいしてるから」アハハ

虎徹「」スヤスヤ

純「置いていかないでくださいよぉ」

春子「2年生たちと食べると思ってた」

純「外で食べてくるらしくて・・・憂はいないんですか?」

英子「いちごさんと来るんじゃないかな・・・」

純「なるほど・・・。お菓子期待しようっと」

風子「外で~なんて、いつもならそれは出来ない事だよね」

エリ「うん。休日登校の特権だよね」

純「よいしょ。・・・冬はいないんですね」

風子「冬ちゃんはクラスの子達と食べるって、夏ちゃんは外なのかな?」

英子「うん。誘われていたよ」

純「いただきまーす」パクッ

さわ子「よいしょ」

虎徹「」スヤスヤ

さわ子「なによ、この子は」モグモグ

エリ「あ、預かってます・・・」

さわ子「ふーん。教師に見つからないようにしなさいよ?」

エリ「はい」

さわ子「屋台班の料理はないの?」

和「憂が持ってきてくれるかもしれませんね」モグモグ

さわ子「出来はどうなのよ?」

未知子「どうだった?」

多恵「お、おいしかったよ」

純「おいしかったそうです」

さわ子「聞こえたわよ」モグモグ

憂「みなさん、こんにちは~」

ちか「こんにちはー」

和「それ、試作品なの?」

憂「はい。お一つどうぞ」

さわ子「・・・」サッ

風子「・・・」コポコポ

純「さっきのだ・・・。確か、ポーポー」

慶子「郷土料理って感じだよね」

いちご「どうですか?」

さわ子「・・・喉が渇くわね・・・、誰か水を・・・」

風子「どうぞ」スッ

信代「気が利くね・・・。さすが野点班」

風子「・・・」ブイッ

さわ子「ジャスミン茶ね」

多恵「あ、すごい・・・」

風子「正解です!ちなみに沖縄ではさんぴん茶と呼ばれているそうです」

さわ子「へぇ・・・。どうしてこの、ポーポーと合わせて出したのよ」

風子「・・・気まぐれです」

英子「違います。ちゃんと理由があります」

憂「チンビンは黒糖を使用していて、その黒糖と合うのがさんぴん茶だと調べました」

和「なるほど・・・。確かに合っているわね。二つが合わさるとさらに美味しく感じるわ」

さわ子「いい発見じゃない。やるわね」

潮「唯と憂ちゃんが発見したんですよ」

さわ子「沖縄ねぇ・・・」モグモグ

いちご「・・・よいしょ」

春子「おつかれ」

いちご「うん」

憂「さっき梓ちゃんが、ネコじゃらしを持って教室へ向かいましたけど・・・」

エリ「ふふっ」

アカネ「すれ違ったかな・・・?」

虎徹「」スヤスヤ

エリ「波長を感じたのかも・・・ね」プクク

純「梓は?」

憂「刺激されちゃったみたい。一度演奏してから来るって」

さわ子「刺激ねぇ・・・。あの子たちクラシックなんて分かるのかしら」

未知子「朝言ってましたね。クラシックコンサートがあるって」

風子「分かりそうなのが・・・ひぃ、ふぅ・・・・・・・・・」

信代「二人だと決め付けたな・・・」

三花「ふぅは誰?」

風子「・・・ベースかリズムのどっちか」

英子「・・・」

いちご「ドラムとメインは入ってないんだ」

さわ子「・・・風子ちゃん、お茶おかわり」モグモグ

風子「はい」

エリ「音大の無料コンサートらしいですよ。駄菓子屋へ寄ってから向かいましたから」

さわ子「そう・・・」

和「結構熱心なのね」

憂「・・・そうですね」

慶子「あ、演奏が始まった」

さわ子「校内がしずかだから聞こえるのね」

純「いつもは喧騒に包まれていますからね」

信代「一休みしたら、午後も頑張るぞー」

風子「おー!」

潮「おっー!」

ちか「おぉー!」

虎徹「」モゾモゾ



―――――夕方・3年生のクラス


梓「結局戻ってきませんでしたね。ホームシックで帰ったんですよ」ヤレヤレ

エリ「・・・」

夏「なにをムキになってんの?」

梓「ムキになんてなってないよ」

夏「あっそぅ・・・」

風子「ネコじゃらしが無駄になっちゃったね」

梓「・・・」


紬「・・・」コンコン

未知子「もうちょっと強く打っても大丈夫だよ」

紬「・・・」コクリ

ゴンッ

未知子「わっ・・・」

紬「・・・」エヘヘ

未知子「だ、大丈夫・・・。ビックリしただけ」

紬「・・・」コクリ

コンコン

未知子(無理して叩いている気配はない・・・大丈夫みたいだね・・・)

虎徹「みゃっ」

ちか「あ、お帰り~」ナデナデ

虎徹「みゃぁ~」

梓「・・・帰ったんじゃなかったの」

夏「誰もそう言ってないでしょ」

虎徹「みゃ~」スリスリ

紬「・・・」ナデナデ

虎徹「みゃみゃ~」ゴロゴロ

梓「・・・」

虎徹「・・・」チラッ

梓「・・・」イラッ

唯「おぉ~いい子いい子ぉ~」ナデナデナデナデ

虎徹「みゃみゃ~」ゴロゴロ

梓「・・・」

虎徹「・・・」チラッ

梓「いちいち確認するなっ」

虎徹「・・・」フンッ

梓「・・・」ムカッ

春子「え、何・・・?ケンカ?」

夏「ネコと・・・?」

アキヨ「・・・」

美冬「どうしてケンカできるの?」

唯「類は友を呼ぶんだよ!」

春菜「類って部分を間違えてるような・・・」

夏香「友でもないような・・・」

夏「ネコ科ですから」

梓「ほらほら、仲直りしよう」フリフリ

虎徹「・・・」ジー


風子「ネコじゃらしで・・・」

千雨「ちょっとずるいね」

来美「人間の最大の武器が知恵だからね」

由記「最大の武器まで出さなきゃいけないんだ・・・梓・・・」

梓「ほらほら」フリフリ

虎徹「・・・」ウズウズ

梓「ふふ・・・勝利は目前・・・」

虎徹「・・・!」ダッ

梓「あ、あれ?」


「こんばんは」

唯「おぉ、おばぁちゃん」

エリ「小田おばぁちゃん!ここまで来て大丈夫なの!?」

小田ばぁ「息子に連れて来てもらったんだよ」

さわ子「中を案内したのよ」

アカネ「あ・・・さわ子先生」

エリ「こ、腰は痛くない?」

小田ばぁ「これくらい大丈夫だよ。ありがとねぇ」

エリ「い、いえ・・・」

小田ばぁ「ほれ、せんべいのレシピ」ペラッ

エリ「あ、ありがとう・・・」

夏「ご主人が一番か・・・」

虎徹「みゃ~」スリスリ

小田ばぁ「虎徹を預かってもらったお礼さね」

エリ「う、うん・・・」

小田ばぁ「病院でヒマだったからねぇ」ヒッヒッヒ

エリ「・・・」

紬「・・・」ツンツン

唯「ん?」

紬「・・・」トントントトントン

唯「おぉ、いいね」

エリ「?」

唯「おばぁちゃん、作り方調理室で教えてもらえないかな~」

春子「強引だねぇ」

純「どうしたんですか?」

アカネ「・・・今からせんべいの作り方を」

小田ばぁ「いいのかね?」

さわ子「こちらは構いませんが・・・。息子さんを待たせていますよ?」

小田ばぁ「電話するさね」ピッピッピ

trrrrr

『どうした?』

小田ばぁ「少し待っとれ」

『は?』

プツッ

小田ばぁ「では行こうかね」

エリ「は、はい!」

虎徹「みゃっ」

唯「なんとっ!」

夏「一言っ」プクク

虎徹「・・・」スタス

三花「コテッチャンはこっち」ダキッ

虎徹「みゃっ!?」

小田ばぁ「よろしくねぇ」ヒッヒッヒ

エリ「こっちです」

スタスタ

さわ子「せっかくだから、行きたい人行ってきたらいいわ」

唯「むぎちゃん、行こうよ!」

紬「・・・」コクリ

アカネ「わ、私も」

テッテッテ

風子「虎徹ちゃんに相手にされなかったから、落ち込んでいるの?」

梓「いませんよ・・・。あれ、むぎせんぱい達がいませんよ?」

純「調理室行ったよ」

虎徹「みゃ」

三花「はいはい。ここで大人しくしていようね」スッ

虎徹「・・・みゃ」

夏「言葉分かるの?」

虎徹「・・・」

夏「そうだよな・・・。会話してる風だったからビックリした」

虎徹「・・・」スタスタ

潮「あ、こら。そこの上歩いちゃダメだって」

ササッ

虎徹「みゃ~」

潮「うむ。許す」

夏「あれ・・・?」

冬「こんにちは~」

風子「いらっしゃーい」

冬「お邪魔します」

虎徹「みゃ~」

冬「ふふっ、迎えてくれるんだ。ありがと~」ナデナデ

虎徹「みゃみゃ~」ゴロゴロ

夏「無視されたんだ・・・あたし・・・」

ちか「どんまい!」




―――――調理室



小田ばぁ「おやおや、珍しいものを作ってるねぇ」

姫子「?」

律「誰・・・だ・・・?」

澪「おい。むぎと駄菓子屋へ行ったんじゃなかったのか」

律「あぁ!」ピコン

エリ「今からせんべいの作り方学ぶからね」

姫子「え、あ、うん」

小田ばぁ「どれどれ・・・」

律「駄菓子界の重鎮だな」

澪「はいはい」

小田ばぁ「ドーナツかねぇ?」

エリ「サーターアンダギーって言う沖縄の郷土菓子です」

小田ばぁ「そうかい・・・。ちょうど材料揃ってるねぇ・・・」

唯「私たちも研修するよ!」

紬「・・・」キリ

アカネ「・・・」

律「お茶を淹れる練習にも飽きてきたから、丁度いいな」

姫子「そうだね」

梓「・・・」

唯「あれ、あずにゃん、こてっつぁんと遊んでいるんじゃ?」

梓「誰ですか・・・。こっちが重要ですから」

――・・・

小田ばぁ「ここまでやって、一時間寝かせてから揚げるといいよ」

エリ「ふむふむ」メモメモ

憂「・・・」メモメモ

律「真剣だな」

信代「・・・うん」

夏「こ、こんばんはー」

姫子「夏・・・?どうしたの?」

夏「よ、様子を見に来ました」

律「入って来いって」

夏「失礼します・・・」

信代「どうして制服に・・・・・・あ」

夏「えへへ」

澪「なんか冬っぽいな・・・」

夏?「な、夏ですよー」

律「不自然だな・・・。なんで制服に着替えてんだよ。今日はみんなジャージだろ?」

夏?「あ・・・」

唯「あ・・・って?」

紬「・・・」ジー

夏?「え、と・・・」アセアセ

梓「冬は髪の毛長いじゃないですか」

姫子「・・・夏が冬の真似しているだけだね」

紬「・・・」コクリ

夏?「え・・・と・・・」

梓「なにしてんの?そんな事でひっかからないよ?」

律「冬が髪を切っていたらどうすんだよ」

夏?「!」

澪「あ、驚いた」

姫子「髪を切ったの?『冬』は」

夏?「はい。切りました」

姫子「へぇ・・・」

梓「え・・・」

『あたしが『冬』としてそこに居れば・・・』

夏?「・・・」

梓「どうして『冬』が髪を切ったのか・・・『夏』は理由は知ってる?」

夏?「う、うん」

紬「?」

澪「理由・・・」

姫子「・・・」

唯「えぇと、今日はジャージ登校でいいんだよ。でも冬ちゃんの所は制服なんだよね
  という事は、ここにいるのは制服を着ている冬ちゃんでいいんだよ。ところが、髪を切ったという事で事態は複雑になって・・・
  でもでも、口調は冬ちゃんで・・・でもでもでも、夏ちゃんが制服を着て冬ちゃんが髪を切ったという
  嘘をついているかもしれなくて・・・。今日はまだ冬ちゃんに会っていなくてー・・・」

信代「それでは判定です。ここにいるのは、『夏』、『冬』どっちでしょう」

律澪「「 冬 」」

梓姫子「「 夏 」」

紬「・・・」トントントントン

唯「分かりません!」

信代「冬が二票、夏が三票、放棄が一票と別れました。それでは正解発表を」

冬?「こ、こんばんは・・・」

律「なぬっ!?」

唯「本当に切ってたよ!」

澪「ジャージを着た・・・。冬でいいのか・・・?」

夏「そうです。正解は『制服を着た夏』でしたー!」

信代「うわ、私が騙された」

姫子梓「「 よし 」」グッ

紬「・・・」グッ

冬「髪切っちゃいました」

律梓「「 聞いたから 」」

風子「間違えたくせに・・・」ジー

律「う・・・」

信代「誰の入れ知恵さ」

ちか「私さ」

澪「あずさ・・・」カムカム

梓「なんですか?」

澪「髪を切った理由って?」

梓「・・・。冬が入院していた時、夏と冬は同じ髪型だったそうです。親に間違えられても変える事は無くて・・・。
  その理由が『冬がそこにいる』と、誰かの心に残そうとしていたんです」

澪「・・・」


2
最終更新:2011年10月06日 17:50