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第101話~第110話 - (2009/08/03 (月) 08:07:13) のソース

350 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/02(日) 02:41:49.29 0
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第101回 

「みんなー新しい仲間連れてきた!」 
先生はカビくさくて、狭くて、乱雑な部室に入るなりそう言ってももの肩を抱いた。 
「新入部員ですか?足りなくて困ってたんですよー」 
「だろうと思ったー。1年生の桃子ちゃん」 
「あ、えっと嗣永桃子です、よ、よろしくお願いします」 
「よろしくね桃子ちゃん!」 

部屋にいたのは3人でみんな机に向かって何か作業をしていた。 
部屋の中には「文芸部」と書かれた冊子なんかが散らかっていた。 

「先生ここ何部ですか?」 
「文芸部だよ桃子、小説とか好きって言ってたから」 
「はぁ・・・・文芸部・・・」 

正直何をするところなのかよくわからなかった。 
それでも1週間もすればももはこの部に、部室に馴染んでいた。 
先輩3人はみんな優しかった。 
先生からそれとなくもものことを聞いていたようでとても優しくしてくれた。 
クラスでは相変わらず辛い思いをしていたけど 
この部屋に来ると安心できた。先輩とくだらない話をして笑いあっていた。 
学校でこんなに笑える日が来るなんて思っていなかった。 
嬉しくて泣いてしまって先輩を困らせた日もあった。 

そして先生もこの部の出身だと聞いた。先生の人生を変えた文芸部にももがいる。 
ももの人生も変わるかな・・・と入部して2週間そんなことを考えていた。 


351 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/02(日) 02:42:29.59 0
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第102回 

先生が実習を終える日、先生は部室に来てももに言った。 

「頑張ってね、桃子。先生、先生じゃなくなっちゃうけど、桃子のこと応援してるから」 

先生はそう言ってももを励ましてくれた。ももは勇気をもらった。 
強くなることが出来た。全部先生のおかげだった。 
自分から動けば何かが変わるはず、先生の言葉がいつも頭の中にあった。 

ももは自分の居場所を見つけて、入り浸るようになった。 
同時に自分から動き出せばなにか変わるはず、を実行して暗い顔をするのをやめた。 
いつも笑顔でいようと心がけた。中学の頃のように自分は可愛い、と自信を持つようになった。 
嫌な事をされたら下を向かずに立ち向かうようにした。 
今まで言えなかった「やめて」を言える様になった。 
何かが変わるはずだと信じて努力をした。 

するとなぜかももへの嫌がらせは少しずつ減っていった。 
理由はわからないけど、クラスの誰かが言うには面白くなくなった、と。 
それがどういう意味かはわからないけど、ももに大きく覆いかぶさっていた 
重くて暗いものがなくなっていった。その事実だけが残った。 

先生はたまにももの様子を見に、部室を訪ねてくれた。差し入れを持って。 
他愛もない話をして笑うと先生はちゃんと笑えるじゃん、と褒めてくれた。 
嫌がらせがなくなったことも喜んでくれた。 
頑張ったね、と頭を撫でてくれた。 


352 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/02(日) 02:43:26.28 0
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第103回 

そして、部室はももの宝物になった。先生もここは宝物だと言っていた。 
ももを助けてくれた場所。ここがなければ、優しい先生や先輩に出会ってなければ 
ももはまた死のうとしていたかもしれない。 
そう思うと部室は大切で、かけがえのないものになった。 

過去の作品や冊子がたくさんあるこの部室。 
狭くてカビくさくて古くて冷房も暖房もないし、 
入り口のドアのカギはなかなか開かないし、 
中に置かれた机と椅子は古くてボロボロ。 
歴史ってやつを感じる空間。 

でも、だけど、だからこそ?ももの大切で大好きな場所だ。最高の、居心地。 
◆ 
だから、失うわけにはいかない。 
先輩たちが築きあげた部と部屋をももが潰すわけにはいかない。 
生徒会の勝手な理由なんかで部室を取られるわけにはいかない。 
廃部を免れたところでこの部屋がないのならなんの意味もない。 
それならいっそ廃部でも構わない。 

でも、今ももがしているのは駄々っ子と変わらない。 
さしたる理由も言わずに嫌だと言い張っているのだから。 
それに話したからと言って部室を取り上げられることがなくなるとも思わない。 
だから生徒会に事情を話すつもりは一切ない。 
・・・・それに、生徒会長はももに嫌がらせをしていた、主犯格【リーダー】なのだから。 

戦ってやる。絶対奪わせたりしない。 
ももはあのときよりももっともっと強くなった。負けたりしない。 

だから、愛理手伝って。 



398 :&color(green){&bold()名無し募集中。。。}}:2009/08/03(月) 01:59:25.45 0
&color(blue){>>352} 
第104回 

そしていよいよ、意見交換会の日がやってきた。 
ももやみやと相談を重ねて、 

1.部室を出る気はないこと 
2.廃部にも応じないこと 
3.部員を増やすという提案をすること 

これを主張することを文芸部の総意として決めた。 
顧問で保田先生は長期入院でいないから報告だけした。 
実は先生も、うちの高校の文芸部出身らしくて 
部室は守れ・是非頑張れと激励してくれたけど 
オトナがいてくれないのはちょぴり心細い。 
でも、その日だけ行こうか?っていう先生をももと一緒に止めた。 

病人に心配させちゃいけないよね。 
それに戦うって決めたのは私たちなんだから3人で決めたんだから。 
3人で頑張らなくちゃいけない。 

◆ 

朝から、不安でいっぱいだった。気合は入ってるんだけど 
相手がどういう反応に出るか読めないから怖い。 
友理奈先輩が言うには、会長さんはどういう進行で話を進めていくか 
自分の参謀ともいえる、もう一人の副会長とばかり相談していて 
先輩には全然教えてくれないらしい。 

まだ2年生だからかな・・・ってちょっと悲しそうに先輩は言ってた。 
いやそうじゃなくてももや私に近すぎるから言わないんだと思う。 
意欲満々で部室から追い出す気だよってそれは先輩から聞いていたから。 


399 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/03(月) 02:00:52.72 0
&color(blue){>>398} 
第105回 

土曜日だから午前中で授業は終わり、意見交換会が始まるまで 
私たち3人は部室に集まって最後の気合いれをしていた。 
ちなみに各部代表二人らしく、みやは口下手を理由に参加を見送った。 
いや、ただやりたくないっていうまあみやらしい理由なんだけどさ。 

「さて、あと30分で始まっちゃうね」 

ももが自前のハートの腕時計を見ながら呟いた。 
3人とも、気合だ、と購買部のパンを3個ずつ頬張った。 
・・・保田先生のおごりで。 

「頑張ってよ、みやここで待ってる」 
「うん、頑張ってくる!私ね、頑張る!」 
「おー、愛理は頼もしいなぁ。」 

みやは私の頭を撫でてくれる。ありがとって微笑むと 
みやはちょっと照れくさそうに笑い返してくれる。 

「むぅ、みや、ももは?」 
「はいはい。もう、ガキなんだから」 
「うるさい!」 
「ほら、おいで。頑張ってね、部長」 
「・・・うん、頑張るから」 

みやは文句を言いながら結局、ももの頭を撫でて激励した。 
なんかこの2人、いや、みやが最近変わった気がする。 
ももにちょっと甘くなったっていうか・・・なんでかな。 
気のせいかもしれないんだけど。 


400 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/08/03(月) 02:01:33.00 0
&color(blue){>>399} 
第106回 


そして、10分前、私とももは部室を出て会場となる会議室へ向う。 
緊張しちゃう。手には汗。上手く喋れるかな・・・みやよりはイケるはずだけど。 
緊張しすぎて喋れなくなったらいやだな・・・。 
なんて考えていたら、ももはそんな素振りも見せず意志の強い顔で前だけ見ていた。 
その様がちょっと、いや、大分かっこよく見えて緊張してる自分が 
かっこ悪く思えた。だから、ももを見習おうと思って、下手に緊張するのを抑えた。 

会議室へ入ると、生徒会長がどーんと上座に座って紙パックの紅茶を飲んでいた。 
先輩はなにか書類を見ながら窓辺で太陽に当たっていた。 
他の部や同好会の人たちや、生徒会の人もいて、なんだか部屋中ピリピリしてる。 

先輩が私が入ってきたことに気付いたらしく、書類から顔を上げて笑いかけてくれる。 
その顔を見るだけで幸せに感じて、私を笑顔を向けた。 
ももを見るとももも、笑ってくれて、心がほどけていくような気持ちになって 
こんな空気でも、絶対屈したりしないと心に誓うのだった。 


そして、この会に参加する人が全員着席すると、生徒会長が会の開始を告げた。 
私たちの、戦いの始まりでもあった。 
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