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繋がる命 - (2008/10/10 (金) 17:54:01) のソース
「きゅうん……(お腹減ったよ……)」 これからは、ひもじいのも寒いのも感じないで、ネロとお空で幸せに暮らしていけると思ったのに……。 僕は悪い人間のせいで、無理矢理生き返らせられて、しかも殺し合いをしろって言われたんだ! なんでそんなことしなきゃいけないのか僕にはわからない。 死ぬのってすごく苦しくて、悲しくて、寂しいことなんだよ? 一度死ぬことの辛さを経験した僕には、殺し合いなんて出来ないよ!! はぁ……それにしてもお腹が減ったな……。 また僕は、お腹が減って死んじゃうのかなぁ……? 「……おい」 誰かの声がする。でも誰も見当たらないよ。 そうか……きっと天使が僕を呼んでるんだね……。 「おい犬」 うん……平気。今、行くよ。今すぐ行って、今度こそ天国で幸せに暮らしたいな……。 「おい無視すんな犬!」 よく聞くと声は空からじゃなく、地面から聞こえてくる。 僕は地面に目を向けてみた。 「やっと気付いたか犬!」 そこには……パンなのかな? よくわからないけど、焦げて真っ黒になった手足の生えてるパンみたいなものがいて、不機嫌そうに僕を見ていた。 「ばうっ、あうあうっ!(ぼ、僕にはパトラッシュっていうお名前があるんだよ! 君は?)」 びくびくしながら僕はそのパンみたいな謎の人(?)に声をかけた。 「俺は……見ての通り焦げたパンさ。こげぱんと呼んでくれ」 「あぉううん!(こげぱんくん、よろしくね!)」 「くん、なんてつけなくてもいいよ。どうせ俺は廃棄処分予定のわびしいパンなんだからさ」 そう言いながらこげぱんは悲しそうに笑ったんだ。 「……で、犬。ここで会ったのも何かの縁だ。お前に頼みがある」 「ばぅ?(な…なぁに?)」 「俺を……食ってくれないか」 「きゅ?(え……?)」 僕はこげぱんを見た。こげぱんはやはり寂しそうな顔で微笑んでいる。 「まず最初に言っておく。俺は戦う気がない。生き残る気もない」 「きゃうん、きゃうん!(な、なんで? なんでそんなこというの!?)」 「廃棄処分予定のパンが殺し合いゲームに生き残ったところで……現実に戻っても待っているのはカビるか、ゴミ箱行きかのどちらかだ。 散々生き物の命を奪っといて、そんな結末なんてあまりにも虚しいじゃねえか」 「うぅー…あうううん!(そ、そんなこといわないでよ!)」 僕は悲しくなって泣いてしまった。 「優しいんだな、お前……俺、お前みたいなやつに出会えて幸せだよ」 「くうぅぅん……(こげぱん……)」 「パトラッシュ、知ってるか? 俺たちパンにとっての一番の幸せは、『おいしい』って喜んで食べてもらうことなんだ」 こげぱんは、すごくきらきらした顔で言った。 「生憎俺は見ての通りの黒焦げパン。『おいしい』って言ってもらえることはないだろうけど……それでもやっぱり誰かに食べてもらって安らかに死にたいんだ」 「きゅぅぅん、くぅぅん……(こげぱん……そうか、それが君の幸せなんだね)」 「味の保証は出来ねえ。つーか確実に不味い。でも……お願いだ。パン助けだと思って、俺を食ってくれ!」 こげぱんは深々と頭を下げたんだ。 頭の重みで転んだけど、僕がなんとか起こしてあげた。 「きゃうぅん…(僕が食べてもいいの……?)」 「おう。お前みたいな優しい子に食ってもらって、命を繋げることが出来るならパン冥利につきるぜ……」 幸せそうな笑顔のこげぱん。 ありがとう、こげぱん。 僕も、君に出会えてよかったよ。 いただきます。 こげぱん、痛くないかな? もぐもぐもぐ……。 ああ、おいしい。 苦いけど、涙がでるぐらいおいしいよ……。 こんなにおいしいパンははじめてだ。 僕は安らかな顔のこげぱんを半分食べると、もう半分をくわえてその場を後にした。 残りの半分をネロにあげたいって思ったからだ。 ここにネロがいるかどうかわからないけど。 でもね、ネロともう一度生きたいって僕は思ったんだ。 そして、こげぱんのことを……僕の新しい友達のことをネロに話したいって……そう思ったんだ。 僕の命を救ってくれた優しいこげぱんのことを……。 【A-6/一日目/深夜】 【パトラッシュ@フランダースの犬】 【服装】全裸。敢えていうなら毛皮? 【状態】少し空腹・気力十分 【装備】未確認 【所持品】支給品一式 【思考】ネロにこげぱんの半分を渡す。 ※パトラッシュは一度天国に召された経験があります。 &color(red){【こげぱん@こげぱん 死亡確認】} *時系列順で読む Back:[[欲望の向こうへと]] Next:[[手相手にムキになっちゃってどうすんの]] *投下順で読む Back:[[欲望の向こうへと]] Next:[[手相手にムキになっちゃってどうすんの]] ||パトラッシュ|[[悪霊]]| ||&color(red){こげぱん}||