014

戦闘潮流 ◆dKv6nbYMB.



むにゃ...ん?どこじゃここは?なんでワシは椅子に縛られてるんだ?
「やあ、起きたかね。ジョセフ・ジョースター。私の名は広川だ」
「ヒロカワァ?ケッ、日本人か...キサマ何者だ?」
「私のことなどどうでもいい。きみにはある選択をしてもらいたい。これを見たまえ」
ヒロカワと名乗ったそいつが指を鳴らすと、ライトと共に照らし出されたのは、ワシと同じく身体を縛られた娘、ホリィ。
「続いてこちらだ」
もう一度指を鳴らすと、ホリィとは逆側にライトが当たる。今度は、身体の縛られていない老若男女様々な者たちだ。承太郎に花京院、アヴドゥルにイギーまでいる。その総数約70。
「これよりきみには、その地面に落ちた支給品を使い、そこの70人の人間と殺しあってもらいたい。見事勝ち残れば、ホリィの命は助けよう」
な...なんじゃと!?そんなこと誰が
「断れば、ホリィの命はない。このボタンを押しさえすれば彼女はドカン!聡明なきみなら、どちらを選べばいいか、わかるだろう?」
なにぃ!?ヒロカワァ!貴様の根性は畑に捨てられカビが生えてハエもたからんかぼちゃみてえに腐りきってやがる!



「とはいえ、私も鬼じゃない。考える時間くらいは与えよう。制限時間は1分。それまでによ~く考えて決断するんだ。その支給品を口に咥え、きみの考えをきみ自身の口から聞いたときその選択を認めよう」
チィ、こうなったら『隠者の紫』で...
「おっと、スタンドを使うんじゃあないぞ。スタンドを使えば娘の首輪は自動的に...わかるね?」
SUN OF A BITCH!ホリィを救うためには、やつの言いなりになるしかないのか...ぬ!?
支給品はシャボン玉セットォ!?こんなもん、ニャンコの一匹も殺せんわい!
「ほ~らほらァ。じかんが迫ってるぞぉ?ジョ・オ・ス・タ~・くぅん」
舐めやがって、ハナからワシに勝たせるつもりもないというワケか!
あのボタンさえどうにかなりゃこっちのモンだというのに!クソッ、どうすれば...

『情けないなァJOJOォ。柱の男との戦いを忘れたか?所詮イギリス人の根性などそんなものか』

ん?なんじゃ、この頭に響いてくる声は...

『ハン、年を喰ってぼ・け・た・かぁ?JOJOォ』

し、シュトロハイムか!?

『ドイツ軍人は全てにおいて世界一ィィィ!俺ならば、貴様のような状況に置かれたとて、目だろうが指だろうがヤツにとばして葬ってくれるわァァァ!』

無茶を言うんじゃあない!ワシはお前のようにサイボーグじゃあねえんじゃよ!




『ならここで諦めるか?』

こ、今度のこの声は...シーザー!?

『よく考えろJOJO。この限られた道具を使い、こいつには...いや、この場にいる奴らにできなくて、お前にできることはなんだ?』

ワシにしか...できないこと?

『俺たちのあの修行は、お前が経験してきた年月はこの程度で参っちまうものなのか?』

そうじゃ...ワシが多くのものを得、多くのものを失ったあの戦いは...

『そうだJOJO。例え状況が絶望的に思えても、必死にあがけ。戦え!』

こんなガキに言いようにされていいもんじゃあない!

『...それでこそ、俺が認めた男だぜ、JOJO』

「おっ?どうやら決意は決まったようだね。それでは、返答を聞こうか」
「...その前に、ひとつだけ言わせてくれんかのう」
「時間稼ぎのつもりかね?だが、寛容なる私はそれを許そう」
「次にお前は『せいぜい愛する娘への遺言を残すんだな』...という」
「せいぜい愛する娘への遺言を残すんだな...ハッ!」
「ギッヒヒヒ」
「戯けた真似をしおって!この老いぼれが!いいだろう、貴様には選択肢すら与えん。地獄を見るが...ん?」
奴の余裕ブッこいていたツラは憤怒に染まり、そのまま硬直する。そりゃそうじゃ、いつのまにか浮かんでいるシャボン玉に意識がいっちまったんじゃからな。
「なんじゃ?お前さんがコイツを渡したから吹いておるだけじゃぞ?」
「...ふん、くだらん」
やつがシャボン玉を指で弾いた時じゃった。
パ ァ ン
「ぬわぁ!?」
ギャーハハハ!微量じゃが、波紋入りのシャボンだよん!目なんかに入りゃあ十分強烈よぉ!
「ああぁ...目がぁ、目がぁ!」
おおっと、スイッチを押すつもりか?そうはさせん!波紋法の修業で鍛えたこの肺活量で...
プッ グサリ!
「ギャアアア!し、しまった、スイッチを落としてしまった!」
ゲホッ、歯を一本折ってとばしてやったわい!水鉄砲は穴が小さい方が勢いよく遠くまで飛ぶんじゃよ!痛みは波紋で和らげたが、血の味が酷いのぉ~。
さぁて、トドメじゃ!座ったままの姿勢でジャンプ!そのまま...
「ひ、ひいいいい」
足から伝わる波紋!『波紋疾走(オーバードライブ)』!
ボッキャアッ
ワシの蹴りを受けたヒロカワが、血を流しながら空を舞う。
どうじゃあ、ザマ~ミロィ!

「ふ、ふふ...そうだJOJO。それでいいんだ」

ヒロカワの顔が、声が、別の何かへと変化していく。

「お前の強さはスタンドなんかじゃあない。理不尽な選択を強いられれば、策を弄じて裏をかけ。受け継いだものを生かして活路を開け。かつて俺を倒した時の様にな」

その顔は、静謐たる戦士の顔。その声は、幾千もの戦いによって積み上げられてきた重みを背負う声。

「行ってこい。いって、とっとと終わらせて来い。まさかこの俺が、あんな若造以下だったなんて思わせないでくれよ、JOJO」

あ、あぁ...お、お前は...

「さあ、目覚めの時間だ」

ワム―――


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「うおおおおお~!...お?」
バタバタと虚空を描きながら、ワシは石造りの地面で目を覚ました。
「ここはどこじゃ?」
たしか、ヒロカワとかいう男に妙な場所へ集められ、殺しあえと言われて、掴みかかった少年が殺されて...
(うーむ、そこから先のことがよく思い出せんのぉ)
なんだか、妙に懐かしくも混沌とした、都合の良い夢を見ていたような気がするが、どんな夢だったかな。
っと、思い出せないことで悩んでいても仕方ない。状況を把握せねばな。まずは荷物を調べることにしよう。
「入ってるのは、水に食糧、地図、ルールブック、コンパス、時計、名簿...ポラロイドカメラにシャボン玉セットォ?」
なんじゃこれは。こんなもので殺しあえだとぉ?
「ヒロカワめ、バカにしおってからに!アイツ、ワシを生き残らせるつもりはないんじゃないのか!」
...と、普通の奴なら思うじゃろう。だが、このジョセフ・ジョースターにとってこいつは当たり!
このカメラとワシのスタンドは相性バッチシ。こいつさえあれば好きな時に念写ができる。

「さあて、と。それじゃあ早速念写をしてみるか」
あの場には承太郎がいることは確認できた。しかし、承太郎とワシはジョースター一族特有の波長のようなもので、近づけば互いの位置が大体わかる。
もしかしたら、他にも知り合いがいるかもしれん。念写の前に名簿を確認しておこう。
「いるのは承太郎にワシ、アヴドゥルに花京院にイギー...でぃ、DIOじゃとぉ!?」
こいつは驚いた!ヒロカワがDIOの手下ではないことはうすうす感づいておったが、まさかDIOまでもがこの殺し合いに巻き込まれていたとは!
こうなればDIOを念写したいところじゃが、やつの身体はワシのお爺さん、ジョナサン・ジョースターを乗っ取ったもの。そのため、奴もまた波長のようなもので近づけばわかるのでやめておこう。
カイロとは違って、場所が限られているうえ、時間ごとにエリアが減っていくようじゃからな。嫌でも奴とは出逢うだろう。
と、なると念写すべきなのは、承太郎以外の三人。うちイギーは自由奔放な奴の為、念写しても合流できるかは怪しい。
残りはアヴドゥルか花京院になるが...花京院は両目を怪我していた。スピードワゴン財団から治ったとの報告はまだ届いておらんとなると...
「念写するのは花京院じゃな」
彼がまだ怪我をしているのなら、早めに合流するべきだろう。
「『隠者の紫!』」
念写の方法は簡単。右手から茨のスタンドを出し、念写したいやつの名前を想像しながらカメラをぶっ叩くだけ!
この通り、三万円もするであろうカメラをイチイチぶっ壊さなければイカンがね。
ぶっ壊れたカメラから写真が出てくる。
さぁて、花京院のやつはどこにおるかね...む?妙だぞ、この写真、『真っ白』だ。
写真には何も写っていない。花京院どころか、まだ封を開けて間もない新品の紙のように真っ白だ。


「どういうことじゃ!?」
ワシの念写は、例え相手が暗闇の場所にいても、その人間だけは写すことができる。
だが、こんな『真っ白』な写真が出るのは初めてじゃ。
なにかミスを冒したのか?いや、それとも大切なにかを見落として...あっ
(そ、そういえば最初の場所で、ワシはスタンドを出すことが出来なかった)
つまりそれは、ヒロカワが他人のスタンドの能力を調整が出来るということかもしれん。
となると、ワシの念写能力は奴に封印されて...?
「OH MY GOD!」
なんてこった、貴重な支給品を台無しにしてしまった!
こうしちゃおれん、荷物を纏めてすぐに出発じゃあ!
いまの場所は...ん?ここは...
「古代の闘技場...か?」


思い出されるのは、ワシがまだ若いころ、波紋戦士として、柱の男・ワムウと戦った戦車戦デスマッチ。
まるっきり同じ形をしているわけではないが、どこかあの時の雰囲気に似ている。
「懐かしいのう...あれから50年も経つのか」
目を瞑ればいまでも鮮明に思い出せる。亡きシーザーと誓った約束、そして誇り高き戦士ワムウ...
もし、波紋戦士と柱の男という括りが無ければ、拳を交えた後よき友になれたとすら思う。
いや、その括りがあったからこその奇妙な友情なのかもしれん。
「...そういえば、波紋に関してはどうなんじゃろうか」
コオオォォ、と波紋法特有の呼吸をする。水のはいったペットボトルの蓋をとり、ボトルを逆さにする、と同時に
「波紋!」
ピッタァ
波紋の効果により、水はボトルから零れることなく、水面を水平に保っている。
(ふむ、波紋にかんしては別段制約を受けているようには思えん)
対吸血鬼用の技とはいえ、あるのとないのとじゃだいぶ違ってくる。
人間相手使えば、普通に殴るよりはだいぶ痛いし、水面を走ったり、自分の怪我を和らげたりといった用途もある。
と、なると、案外やつの能力統制は完全ではないのかもしれんな。
もしくは、波紋は制約するに値しない...と判断したのかもしれない。
だとしたら、だ。
(ヒロカワも人間であり、まぎれもなく生物だ。必ず付け入る隙はある)
ヒロカワ。いまごろ貴様は、まるで小学生がポップコーンをつまみながらキッズ映画を鑑賞するかのように、ワインを片手に呑気にワシらの行動を観ていることだろう。
だがな、貴様は重大なミスを冒した。それはな、あの場で既に『自分は安全だ』と『勝ち誇ってしまった』ことじゃ。
相手が勝ち誇ったとき、そいつは既に敗北している。それが、ジョセフ・ジョースターのやり方じゃ。
若造めが。いまに見ておれ。きさまなんかとは戦場での年季が違うことを思い知らせてやる!



老人がまだ若き戦士だったころ...彼は多くの者に支えられ戦ってきた。
父親同然といっても過言ではない、祖父の生き様を継いだ石油王。
母であり師でもある、気高き女性。
やかましくはあるが、人種も立場も超えた絆で結ばれた誇り高き軍人。
ともに修行を積み、ともに先祖の代からの因縁に立ち向かったキザな親友。
そして、強大な敵であると同時に、初めての好敵手でもあった、古代からの最強の戦士。
彼らとの絆が、因縁が、ジョセフ・ジョースターという男の『今』を作り上げた。
年月を重ね、その事実が歴史に埋もれようとも、彼が受け継いだものが消えることはない。
そんな彼がこのバトル・ロワイアルで見せるのは、喜劇か悲劇か、それとも...



闘技場を去っていく老人の背を押すように、一陣の風が吹く。
老人の背を押すその風は、まるで激励をとばしているようだった。
『負けるな』...と。


【G-7/古代の闘技場/一日目/深夜】
【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康
[装備]:いつもの旅服
[道具]:支給品一式 三万円はするポラロイドカメラ(破壊済み)@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース 市販のシャボン玉セット@現実
[思考・行動]
基本方針:仲間と共にゲームからの脱出。広川に一泡ふかせる
1:仲間たちと合流する(承太郎、アヴドゥル、花京院、イギー)
2:DIOを倒す
3:脱出の協力者を集める

※参戦時期は、カイロでDIOの館を探しているときです。
※『隠者の紫』には制限がかかっており、カメラなどを経由しての念写は地図上の己の周囲8マス、地面の砂などを使っての念写範囲は自分がいるマスの中だけです。波紋法に制限はありません。
※一族同士の波長が繋がるのは、地図上での同じ範囲内のみです。
※夢の内容はほとんど憶えていません

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最終更新:2015年05月18日 00:18