018

ガールズ ドント クライ―殺しのリスト―◆fCxh.mI40k


「バトルロワイアル……あの広川っての中々おもしれー事やってくれるじゃねーか」

 闇夜を闊歩するは凄惨な笑みを浮かべる男、その名は浦上。
 人を殺す事をなんとも思わない、いやむしろ喜びすら感じる彼はこの殺し合いの場に降り立ってすぐ、自身の方針を確定させた。

―皆殺しだ! 一人でも多くの人間を殺して殺して殺しつくす! ついでに女は犯して殺す―

 それだけだった。
 最も確定させるも何も、彼の人生は『犯す』と『殺す』の二つだけで完結させられる物なのだから是非も無い。
 そしてその彼の生き様はこの殺し合いの場において、最高に適した物でもあった。

「最高だぜ。女は犯してからこのナイフで……、男はこの銃で……うおおおっっっ!!! 滾ってきたー」

 興奮を隠し切れない。
 腰には肉厚のナイフを差し、バッグには大口径ショットガンが収められている。
 この二つはともに高い殺傷能力を秘めている。
 恐らく広川は彼の殺害能力を評価し、凄惨な地獄絵図を期待していることも十分に分かる。

「言いなりは癪だが、こんなおもしれえ事やらないわけにはいかねえよな」

 浦上は周囲を散策する。
 するとすぐに標的は見つかった。
 それは制服を今時に着崩した一人の少女だ。
 顔立ちは可愛く、それでいてスタイルが良い、いわゆる女子力の高い女子高生である。
 そんな彼女がベンチに座り、照明の下で塞ぎこんでいたのだ。殺し合いの恐怖に絶望しているのだありありと分かる。
 そしてその無防備な姿は浦上からしたら、格好の獲物だった。
 あれだけの美少女が一人でいるのであれば、仮にここが日常の最中でも恐らくは犯していただろう。
 つまりここから浦上が行うことは、日常の延長に過ぎない。
 ただナイフで脅して、押し倒してその純潔を奪う。
 そして陵辱の限りを尽くしてから、その腹を割いて赤い華を咲かせる。
 たったそれだけだ。
 浦上に動揺は無い。
 散歩道を歩くように、気軽な歩調で少女へと近づいていく。

「えっ!? …………誰?」

 少女との距離は約5メートル。そこで少女は浦上に気付く。
 自然と浦上と少女の視線が重なる。

「あの……一体なんですか?」

 少女は怯えと震えが混ざったままの声で浦上へと声を掛けた。
 そしてその声に、浦上は絶頂に近い興奮を覚えた。

―うおおっ! 何こいつ。近づくと余計に可愛いじゃねーか。それにあの少し開いた胸元……サイコーだぜ!―

 浦上はそんな感情を覚えながら、ナイフを抜く。
 支給された肉厚のナイフ。骨すらも両断出来る強力な武器だ。

「これからお前、殺すからさ。まあ、せっかくだし、殺す前に女の悦びってやつ? は感じられると思うぜ。
まあ一緒に楽しもうや」
「うっ、嘘だよね」
「いや、残念だがマジだ!」

 それだけ言うと、更に歩を早めて少女へと近づいていった。
 少女は震えながら何か剣の柄のようなものを取り出したのが分かるが、浦上はそれを意にも止めない。
 過去、抵抗する女は何人か経験があった。
 しかし所詮は怯えた女が長物を振り回しても、その重さに身体がついていかないのだ。
 つまり、仮に目の前の少女が仕込み刀のようなものを支給されていたとして、それが浦上の障害になる事は無い。
 振り回して上体が泳いだ所で一気に詰め寄って押し倒す。
 それだけだ。ましてや相手が構えているものには肝心の刀身すら確認出来ない。
 これでは浦上にとってはただのネギを背負った鴨と同じだ。
 むしろ半端な抵抗があった方が、その後は余計に楽しめる。
 浦上にとって至高の時間は目の前にあった。

「へっへっへ、じゃ早速……」
「いやああぁぁぁぁぁ!!!!!」

 互いの距離は約1メートル。
 そこで異変が起こった。

「がっ!?」
 突如として、浦上は首から大量の鮮血を流して地面へと倒れ伏した。
 刹那の後に、浦上は少女を押し倒すはずだった。
 それが何故か、自身が首から大量の血を流して倒れている。
 浦上にとって全く理解出来ない事だった。
 ただ、最後に理解したのは、少女の手に光の刃があった事。
 それだけだ。



***********



 数十分前。
 由比ヶ浜結衣はベンチに座り、途方に暮れていた。

「ヒッキー……ゆきのん……私どうしたら……」

 先ほどの広川による、バトルロワイアルという言葉は結衣の頭では消化しきれる物ではなかった。
 ただ、恐怖の感情が心の中で渦を巻いている。
 けれど、それでも結衣はバッグの中を確認は行った。
 せめて何か使えるものは無いか? ヒッキーかゆきのんを探すのに役立つ物は……
 そんな気持ちでバッグを漁る。
 すると、中から出たのは剣の柄の様な物だ。

「何これ……『フォトンソード』? スイッチがあるけど……きゃっ!」

 突如として光の剣が出てきたのだ。
 すぐにスイッチを切ると、元の柄に戻る。

―何だか、SF映画にありそうだけど……―

 そんな感想を持ちながらもそばに柄を置き、更に何かあるか確認する。
 すると、一枚の興味深い資料があった。

『人間を殺害した経験を持つ者の顔写真及び、名前一覧』

 そんな紙が入っていたのだった。
 そしてその資料に記された名前の量は結衣を更に恐怖させた。

―嘘? こんなにいるの……人殺しがこんなに……?―

 そこにあった名前の数は結衣の想像をはるかに超えていた。

 男女問わずにDIO アンジュ アカメ タツミ ウェイブ クロメ セリュー・ユビキタス 
 エスデス ロイ・マスタング 足立透 後藤 浦上 キリト 槙島聖護…………

 ざっと数えるだけで20人を超える数の顔と名前がそこにはあった。

「こんなに人殺しがいるなんて……ヒッキーやゆきのんもこれじゃ殺されちゃうよ……」

 結衣は絶望に顔を俯かせる。

―どうしよう……どうしたら…………私……―

 そして一通り逡巡を続けるうちに、自身に近づく男の気配に気が付いた。

「えっ!? …………誰?」

 顔を見て、そして絶望する。
 相手は浦上。殺人者リストに名前があった男だった。

―どうしよう…………駄目、足が震えて走れない。逃げられない……―

 結衣の足はガクガクに震えていた。
 何とか立ち上がるが、それが精一杯。歩くことさえ困難だった。
 しかし浦上は自身の震えを無視するように近づいてくる。

「あの……一体なんですか?」

 震える声で結衣は問いかける。
 あの殺人者リストが虚偽であれば、浦上は悪人ということは無い。
 けれど現実は残酷で-

「これからお前、殺すからさ。まあ、せっかくだし、殺す前に女の悦びってやつ? は感じられると思うぜ。
まあ一緒に楽しもうや」
「うっ、嘘だよね」
「いや、残念だがマジだ!」

 -浦上は冷血な言葉を吐いたのだった。
 つまり名簿は真実であり、浦上は自身を殺すつもりなのである。

―死にたくないっ!― 

 必死になってバッグからフォトンソードを取り出すが、浦上はそれを無視し、むしろ歩調を速めて近づいてくる。

―どうして、どうしてどうして? 何でこんなことに? 嫌だよ。死にたくない。ヒッキー助けて、嫌だ死にたくない。
 そうだ、この武器で殺せば? 殺さなくちゃ、死にたくない、殺さなくちゃ、殺さなくちゃ殺さなくちゃ!!!!!―

 結衣の頭はパニックを起こしている。
 思考は恐怖が占拠しグチャグチャのまま、恐怖と殺意がループを続ける。
 そして―――――――――
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 ―――――――――現在に至る。

「うっ、がはっおえええええっっっ!!!」

 結衣は嘔吐を繰り返した。
 目の前には先ほど殺した浦上の遺体が横たわっている。
 首からは大量の血を流しながら、その眼だけは結衣を睨みつけ、そのまま死んでいたのだ。

「私、私、私、うわあああぁぁぁぁ!!!!!」

 そして結衣は涙を流す。
 殺すつもりじゃなかった。
 ただ、支給された光の剣を振り回しただけだ。
 けどその剣は予想以上に軽く、そして想像以上の切れ味だった。
 だから、浦上の予測をはるかに上回る速度と軌道で浦上の頚動脈を両断するに至ったのだ。
 完全な事故だ。
 だがそう弁解しても意味は無い。
 自分の振った剣が男を殺した。
 その事実は揺るぐ事がない。
 そしてそれは結衣を苛む。

「殺す気なんて、……だけど……」

―私もあのリストの仲間入りなの? 人殺しの? こんな私じゃヒッキーとなんて……私……―

 絶望が結衣を支配する。
 そしてその結衣を休ませることなく、新たな男が目の前に現れた。

「悲鳴が聞こえたけど……」

 それは黒ずくめの男だった。



**************



 数十分前。
 キリトは、月夜の中で立ち尽くしていた。

「ログアウトボタンは……無いか。…………クソッ! どうなってんだよ!!!」

 苛立ちは隠せない。
 SAOの地獄のような世界から脱出を果たし、かつてのラフィン・コフィンとの因縁も清算し、
 ようやく普通の暮らしが出来るはずだった。 
 だがその矢先にこれである。
 ご丁寧に自身への説明書きには

『貴方の体はこちらで管理しています。HPがゼロになった場合、あなたの身体は破壊されます。
 ただしHPがゼロにならない限り貴方の体の安全は保証されます。全力でバトルロワイアルをお楽しみ下さい』

 という説明文が記されていた。

「だけどどうなってんだコレ。アバターはALOだけど……」

 キリトにはもう一つの疑問があった。
 自身のアバターはアルヴヘイム・オンラインで使用しているものだった。
 スプリガンのものであり、羽根もある。
 しかしスキルを確認すると明らかな異常があった。

「これ……SAOの………どうして?」

 スキルには『二刀流』が記されている。
 他のスキルも基本はALOでのスキルだが、SAOでのスキルもそのまま残されていた。
 アイテムや装備は無いが、ステータス値も全てがリセット前にまで戻されている。

「サービスは良いけど……これなら何とか……」

 キリトはこのステータスにはかなり安心出来た。
 即死が回避出来るのは心強い。
 そしてその後、更に武器を確認する。
 だがその武器にキリトは微妙な顔になった。

「剣は……一本だけなのね。それに刀か………もう少し重量がほしいな」

 武器で刀剣の類は一つのみだった。
 二刀流が実装されながら、武器が刀一本なのはキリトにとっては非常に残念なことだ。

「けど無いよりはマシかな。えっと……それで他には……」

 他にも何か無いか、確認を行おうとするがその前にキリトの耳にある声が響いた。
 それには涙が混じった少女の声だ。

「行こう!」

 少女の声に導かれ、キリトはすぐに歩き出した。



***********************



 再度現在。

 由比ヶ浜結衣は非常に怯えていた。

―何この人。名前あったよ確か。この人もさっきと同じ人殺し? いや、もう絶対嫌!!!―

「悲鳴聞こえたけど……これ君が……」
「いやあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 もはや何度目か分からない絶叫。
 そして結衣は自分のものと、たまたま近くに落ちていた浦上のデイバッグを持ってキリトから距離を取る。
 更にフォトンソードの柄をポケットに収め、浦上のデイバッグからはみ出ていたショットガンを取り出す。

「ちっ、近寄らないで!!!」

 恐慌状態のまま、ショットガンの銃口をキリトへと向けた。
 だがこのとき、結衣の頭の中は恐慌の中にあって酷く冷静でもあった。
 一度浦上を殺した事実が、ある種の常識のリミッターを外したのだ。
 故に、銃口を向けながらも狙いはしっかりとつけられた。

「なっ、ちょっと待てって……」
「だから近寄らないでっ!」

 キリトが一歩踏み込んだだけで結衣は引き金を弾いた。
 そしてそれはキリトの左腕に辺り、その腕を肘から一気に奪い去った。

「っ!」

 しかしキリトは痛みを感じることは無かった。
 アバターであるキリトにはペインアブソーバーの効果により、軽い衝撃が走った程度の認識しかない。
 欠損部位も『ステータス異常』扱いなので数分もすれば元通りだろう。
 HPは四割ほど削られたが、それも大したことではなかった。
 だがキリトにはそれ以上に予想外なことがあった。

―予測線が出ない!?―

 これがキリトが相手の着弾を許した最大の理由だった。
 GGOでの経験から、狙撃銃の初弾以外は予測線が来るのが当たり前だ。
 だからその予測線を頼れば相手の銃を回避することも、容易なはずだった。
 それ故に、この着弾とダメージは完全にキリトの想像の外の出来事だったのだ。

―大丈夫。身体は動くな―

 キリトは左腕を無くしたまま、相手とのコミュニケーションを試みる。
 だけどキリトが結衣から意識を外した一瞬の隙、その隙に結衣はキリトから更に大きく距離を取った。

―何あいつ! 腕が吹き飛んだのに、血が出てない。それに腕も結晶みたいになって消えたし……化け物!?―

 そして結衣の心には新たな恐怖が生まれだす。
 それは目の前の男が人間じゃないのかという疑問から出る恐怖。
 その恐怖に結衣は少しずつ距離を取るしかなかった。
 本当であれば背中を見せて逃げ出したい。
 だけど、そうすればその直後に背中を斬られる。
 そんな確信が結衣にはあった。
 だから、恐怖の崖に立ちながらつま先で必死にこらえている。

「俺はこんな殺し合いに乗る気は無い。だから……」
「ふざけないでっ! 人殺した事があるんでしょ。そんな人を信用出来ないっ!!!」

 キリトの言葉を結衣は跳ね返す。
 絶対に信じない。あらゆる恐怖から身を守るため、心に鉄の壁を張るかのようにして、キリトを拒む。
 だが、その言葉はキリトの心にも過大な動揺を与えた。

―知っている? 俺がSAOでやった事を……まさか彼女もSAOサバイバー……あの場に居たのか?―

 キリトは思わず立ち止まる。相手の言葉による動揺で掛ける言葉が見つからなかった。
 そしてそんなキリトを結衣は必死で見つめ続ける。


「はぁ、はぁ、はぁ」

 息も乱れ、下半身により失禁という自体まで引き起こしていた。
 しかし結衣は自身の異常にも気付かず、ただキリトに向かって銃を構え続ける。
 そんなこう着状態のまま、言葉も無くただ数分が経過する。
 部位欠損のステータス異常も回復し、腕が元に戻るのだが、それによりこう着状態も破壊される。

「なっ? 腕が生える? ばっ、ばっ、化け物ぉぉぉぉっっっっ!!!」

 異常事態に結衣は再度ショットガンを撃つ。
 衝撃と恐怖で更に足元の水たまりは広がりを見せるが、それにすら結衣は気付いていなかった。
 しかし今後はキリトは地面に倒れこむようにして、その銃弾を避ける。

―クソッ! 近寄れない!―

 予測線が見えない以上、キリトは距離を詰める手段は無かった。
 彼女の言葉による動揺も少なからずあったのだろう。
 キリトは倒れたまま転がるようにして、結衣から距離を開くしかなかった。
 そしてキリトが距離を空けるのと同時に、結衣もまた背を向けて逃げ出した。
 途中で足がもつれ、転びながらも必死で足を動かしてただこの場から逃げるべく必死だった。
 顔は涙にぬれ、首元は嘔吐の跡で汚れていた。
 スカートはいつの間にか、失禁の後で惨めなほどに染みがついている。
 お洒落な美少女由比ヶ浜結衣の姿はここでは欠片も存在しない。
 一人の少女は、ボロボロになりながら夜の闇の駆けた。


【浦上@寄生獣 セイの格率 死亡】



【D-6北部/1日目/深夜】

【由比ヶ浜結衣@やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】
[状態]:精神的疲労大、精神的にかなり不安定、上半身が嘔吐、下半身が失禁で酷く汚れている
[装備]:MPS AA-12(6/8)@寄生獣 セイの格率
[道具]:デイパック×2、基本支給品×2、MPS AA-12の予備弾装×5、フォトンソード@ソードアート・オンライン、ロワ参加以前に人間の殺害歴がある人物の顔写真付き名簿
[思考]
基本:怖い 死にたくない
1:比企谷八幡と雪ノ下雪乃に会いたい
2:殺人者リストに名前が載っている人物は見つけたら撃つ
[備考]
ロワ参加以前に人間の殺害歴がある人物の顔写真付き名簿は、殺人歴がある人物全員の顔と名前が載っています。
それ以外の情報(殺人数や殺人経緯など)は一切載っていません。



【D-6南部/1日目/深夜】

【キリト@ソードアート・オンライン】
[状態]:HP残り6割程度
[装備]:一斬必殺村雨@アカメが斬る!
[道具]:デイパック、基本支給品、未確認支給品0~2(刀剣類ではない)
[思考]
基本:このゲームからの生還
1:状況を整理する
2:仲間を探す
3:剣をもう一本ほしい。
[備考]
名簿を見ていません
登場時期はキャリバー編直前。アバターはALOのスプリガンの物。
ステータスはリセット前でスキルはSAOの物も使用可能(二刀流など)
生身の肉体は主催が管理しており、HPゼロになったら殺される状態です。
四肢欠損などのダメージは数分で回復しますが、HPは一定時間の睡眠か回復アイテム以外では回復しません。
GGOのスキル(銃弾に対する予測線など)はありません。



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GAME START 由比ヶ浜結衣 036:やはり私の正義は間違っているなんてことは微塵もない。
キリト 052:儚くも美しい絶望の世界で
浦上 GAME OVER
最終更新:2015年06月07日 11:01