街の灯り潤んで揺れる ◆1aw4LHSuEI



 風吹く海岸沿い。
 長い髪を靡かせながら。
 放送を、聞き終えて。
 騎兵のサーヴァントは一人静かに考える。


 アーチャーが死んだ。
 バーサーカーが死んだ。

 これで残るサーヴァントは私だけだ。

 明智光秀が死んだ。
 伊達政宗が死んだ。

 これで残る戦国武将は織田信長一人だけだ。


 最早この会場で、私に近しい個人戦闘能力を持つものは、そういない。
 それは、私が優勝という目的に近づいたことを意味している。
 新しい武器の解放も、そう脅威になるものとは考えられない。
 自分とて等しくそれを得る権利があるのだし。
 何より、自分は既に豊富な支給品を多く備えているのだから。
 現時点をもって有利だという事実には変わりない。

「…………フ」

 思わず、唇が釣りあがるのが分かる。
 しかし、それは今考えた理由などではない。
 そう、そんな冷静な思考は建前のようなものだ。

 ああ、心臓が高鳴る。
 単純な事実が、私にはとても嬉しかった。
 放送で、彼女の名前は呼ばれなかった。
 つまり。


 “浅上藤乃”は生きている。


 ただ、それだけで。
 私は……。

 こんな、こんな。
 混じりけのない純粋な笑みを浮かべている。


「―――探すことを、優先することにしましょうか」


 彼女が生きていると分かった以上、そうするのは当然のことのように思えた。
 協力できるのか、信頼できるのか分からない傭兵。
 そんな相手よりも、戦力的、心情的、どちらの面でも彼女のほうがパートナーには相応しい。

 銃声の元にも向かわない。
 あのあとで響いてきた重火器の乱射音や倒壊音。
 激しい戦闘が行われているのは間違いないだろう。
 もちろん個人戦闘能力で私に匹敵するものが戦闘している確率は低い。
 しかし徒党を組まれれば苦戦することがあるということも、駅での戦いからわかっている。
 経過時間と戦闘音から察するに乱戦であるようだし、危うきに近寄らない方がいい。
 慢心した結果、フジノと離されたばかりでもある。
 自分の力を過信することは避け、フジノと合流し戦力を立て直すことを、まず優先すべきだろう。

 そして、何よりも。
 阿良々木暦の名前も、先ほどの放送で呼ばれなかった。
 彼女があの後、目覚めたならば、今度こそ確実に彼を殺すだろう。
 しかし、そうはなっていない。
 ―――つまりこれは、彼女は阿良々木暦に拘束されている、と考えるのが自然ではないだろうか。
 ひょっとしたら、ただ流されたときに離されたという可能性はなくもないけれど。

 どちらにせよ、彼女は身体能力的には常人に過ぎない。
 放っておけば危険なことには変わりないのだ。
 そう。
 迎えに、いかなくては。
 だって。


 ッザ―――


 だって、“あの子”には。
 私が付いていなければいけないのだから。


 眼  眼  眼


 ライダーの英霊。
 その真名をメドゥーサ。
 アテナの怒りを買い、呪われた女。

 “いずれ怪物になる運命を持つ”
 ”被害者のまま加害者になる”

 そして、その通りに。
 守るべきだった姉達を殺した彼女。
 我侭で、自分勝手で、自由奔放で。
 でも、大切だったはずの存在を。
 判別する理性もなくし、潰した。
 化物。

 雑音。
 彼女の耳にのみ届くそれは、C.C.という少女の血を吸った以降のものである。
 そして、C.C.には一つの力がある。
 ショックイメージ。
 過去を見せられるその力が、その血を飲んだライダーに少しづつ作用していた。
 あくまでも、無意識下のことではあるが、少しづつ確実に。
 それこそが、彼女に響き続けていた雑音の正体である。

 じわりじわりと蝕む過去。
 美しい娘だった頃の自分、襲い掛かる勇者達を狩った自分、怪物となり姉を殺した自分。
 死闘の果て英雄ペルセウスに殺された自分。
 それらが、大切な“あの子”、そして自分自身にも似た“彼女”と出会って加速する。
 自らの過去を想起させられて。
 大切な何かを、思い出してしまって。
 情が、移っていく。

 雑音に乗せて。


 眼  眼  眼


 ザッ――ザザ―――ザザザザザザザザザザザザザザザ


「迎えに、いきますから。必ず」


 雑音が五月蝿くて、思考は乱されているけれど。
 それを無視して私は歩く。
 海岸沿いに“あの子”の姿を探しながら。

 心が逸る。
 冷静じゃない。
 早く、会いたかった。

 しかし、いない。
 もう、海岸沿いは随分と探したが、痕跡一つ見当たらない。
 ……一体どこにいるのだろうか。
 生きているならば、海を漂い続けているということはないだろう。
 陸に上がっているはず。

 いや、待て。
 ひょっとして、私は思い違いをしているんじゃないだろうか。
 “あの子”が、こちら側に流れ着いたとは限らない。
 そう、対岸だってそう遠くは無いのだ。

 日が沈み黒くなった海を見る。
 かつて姉さまたちと共に在った頃。
 勇者達の船を警戒し、海を見ることがあったので、ある程度なら潮の流れを読むことが出来た。
 そうして見た海は、確かに対岸へと流れる海流があるようだ。
 ということは……。

 そして、そうやって視線を対岸に持っていくと、気付く。
 黄昏時だからこそ紛れていたが、暗くなりつつある今では明白に。
 僅かに緋の残る空を、もっと紅く。
 激しい熱を伴って、燃え盛る炎が舞い上がっていた。

「……なるほど」

 対岸に辿り着いていてもおかしくはない、か。
 だとしたら、こうしようか。
 とりあえずこのまま水辺沿いをフジノを探しながら北上。
 そして、橋に行き当たったらそこから対岸を探す。
 フジノとの合流を一番に考えるのならば、それがいいような気がした。

 その途中でついでに政庁がどうなったかを調べるのもいいだろう。
 出来るだけ強者との戦闘を避けながら。
 もちろん、一般人ばかりなら襲ってしまってもかまわないだろうが。

 そこまで考えて、少し可笑しくなる。
 冷静に行動を決めていたつもりだったけれど。
 結果を見てしまえばまるで。
 フジノのために無理やり理論を作っているかのような―――。


 ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ
 ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ


(―――無事で、いて下さいね、フジノ)


 もう一度だけそう願い、私は行動を再開した。


【E-5 /一日目/夜】
【ライダー@Fate/stay night】
[状態]:右腕に深い刺し傷(応急処置済み) 若干の打撲 、両足に銃痕(応急処置済み) 、雑音(中)
[服装]:自分の服
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式x3、簡易版魔女狩りの王@とある魔術の禁書目録、ライダーの眼帯、不明支給品x0~4、眼鏡セット(魔眼殺しの眼鏡@空の境界 を含む)@アニロワ3rdオリジナル、
    天の鎖(エルキドゥ)@Fate/stay night、デリンジャーの予備弾薬@現実、
    ウェンディのリボルバー(残弾1)@ガン×ソード 、参加者詳細名簿@アニロワ3rdオリジナル、デリンジャー(0/2)@現実
[思考]
基本:優勝して元の世界に帰還する。
0:…………。
1:出来るだけ戦闘を避けながらフジノと合流する。
2:政庁で何がおきたのか確認したい。
2:できればサーシェスを利用する
3:織田信長を警戒。
4:魔力を集めながら、何処かに結界を敷く。
5:戦闘の出来ない人間は血を採って放置する。
6:できれば首輪を回収したい。
7:阿良々木暦が生きていたら今度は私が確実に殺す。
[備考]
※参戦時期は、第12話 「空を裂く」より前。
※C.C.の過去を断片的に視た為、ある種の共感を抱いています。
※忍者刀の紐は外しました。
※藤乃の裏切りに備えて魔眼で対応できる様に、眼帯を外しています。
※藤乃の千里眼には気づいていない様子です。
※戦国BASARA勢の参加者をサーヴァントと同様の存在と認識しました。
※以下の石化の魔眼の制限を確認しました。
 通常よりはるかに遅い進行で足元から石化。
 魔眼の効果を持続させるには魔力を消費し続けないといけない。
 なお、魔力消費を解除すれば対象の石化は解ける。
※E-3の象の像の前に、第三放送前に対主催派の人間が集まる事を知りました。

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225:迷い路-其の先に在るモノ- ライダー 243:開け、細き一条の血路(前編)


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最終更新:2010年04月26日 04:44