rendezvous ◆ApriVFJs6M
打ち捨てられ寂れた廃村。
空には冷たく輝く青白い月。
月は無慈悲な夜の女王とはよくいったもので、
煌々と煌く月光に照らされた無人の集落は生の存在を一切許さない、
荒涼とした月の平原のような死に覆われた世界の様相を醸し出していた。
そんな死と静寂に支配された廃村をを一人の少女がとぼとぼと歩いている。
漆黒のブレザーにすらりとした長身を包み、
腰まで伸ばした長く美しい黒髪を眉毛の辺りで切り揃え、切れ長の瞳を持つ少女――
秋山澪だった。
だが彼女はその凛とした佇まいが醸し出す意志の強そうな外見に反し、
人見知りが激しくかつ極度の恥かしがり屋という臆病な面があるのだった。
「あはははは……こんなの夢だ……そうじゃなかったらドッキリか何かだ。そうだそうに決まってる……」
桜が丘高校二年一組軽音部所属。担当楽器はベース。
ついついお茶会に勤しんで本業である軽音部であることを忘れ、後輩の
中野梓に怒られることもあったが、
それでも友達と楽しく穏やかな日常を謳歌しているはずだった。
テレビのニュースで殺人事件をあったり、どこか遠い国で戦争があったとしても、
それは自分の日常と全く関わらないことで起きた非日常であり、自分の平和な日常が侵されることなんてあるはずもなかった。
だけどそんな自分が謳歌している日常なんて結局薄氷一枚の上に乗っかっているだけに過ぎなかった。
帝愛グループなどという見たことの聞いたことも組織に拉致されて、白い奇妙なシスターの口から告げられた言葉。
《バトルロワイアル》《ゲーム》《殺し合い》
呼称は様々でであるがその本質は命の取り合い。
おおよそ現代日本では考えられない催しだった。
――信じられない。
誰もがそう思っただろう。何を馬鹿なことだと。
ああ、これはドッキリだそうに決まっている。
だがそんな甘い考えは一人の少女の死によって脆くも崩れ落ちた。
得体の知れないヤクザ風の男に詰め寄った少女の頭が、澪達の目の前で弾け飛んだ。
ボンっとまるで自転車のタイヤがパンクするような間抜けな音を発して、視界に朱が現れる。
血とも脳漿ともつかぬグロテスクな液体が床に降り注ぐ。
赤い血に混じった薄いピンク色のモノの欠片がべちゃっと潰れたトマトのように落ちて、
青い色が混じったピンポン玉ぐらいの大きさの二つの白いモノがどこかに飛んで行って、
綺麗な金色の髪がこびりついた板の欠片のようなモノが辺りに撒き散らされて、
どさっと音を立てて首から上が無くなった胴体が、床に撒き散らされた汚いモノの上に倒れこんだ。
「うっ…うぇぇ……」
脳裏にフラッシュバックする光景に思わず吐き気がこみ上げ口を両手で押さえる澪。
喉からせり上がる酸っぱい物を必死に堪える。
喉が胃液でヒリヒリして痛かった。
あれは映画のセットでもドッキリでもない。
あれは間違いなくリアルの出来事で、自らが置かれている状況は紛れもなく殺し合いの場――
半ば喪失していた現実感が、あの凄惨な死を思い出してしまったせいで再び鎌首をもたげ澪に絡みつく。
恐怖で身体の震えが止まらない。
どこから襲撃者が現れるか分からないのだから。
「律……怖いよ寂しいよ助けてよ……律ぅ……」
この場にいない親友の名をすがるように呟く。
だけど親友の返事はなく、代わりに一際冷たい風が吹くだけだった。
「ひぐっ……うぐっ……」
涙が溢れて感情が爆発しそうになるが必死で堪える。
ここで声を出して泣いてしまったら誰かに自分の居場所を教えるようなもの。
それが気弱な澪にできる精一杯のこと――
「もし――? そこの貴女」
「――!?」
突然の声にびくんと身体を仰け反らす澪。
女の声、少女にも老婆にも聞こえる不思議な声。
それは頭上から、正確には通りに植えられた木の上からした。
上を見ちゃだめだ。
上を見ちゃだめだ。
上を見ちゃだめだ。
ホラー映画のように、もし上を見てしまったらどうなるかわからない。
だけど澪は見たくないと心で思っていても身体が、無意識がゆっくりと顔を動かす。
少女が木の枝の上に立っていた。
どこかの学校の制服に身を包んだ少女、澪に比べるとずっと小柄でまだ幼さを残す少女だった。
上を見上げる澪の視界に少女のスカートの中が映りこむ。
――年の割りに妙に露出度が高く、扇情的なデザインの下着を身に着けていた。
「少しでも高いところから見渡せばお姉様を見つけられると思いましたのけど…………おっと、高いところから失礼遊ばせ」
澪の視界から突然少女の姿が消えた。
まるで闇に溶け込むかのように。
その刹那、澪の背後から声がした。
先ほどと同じ、独特の口調の少女の声が。
「わたくしと同じ制服を着た、
御坂美琴というお方をご存知ありませんこと?」
「ひ……ぃ……」
澪は総毛立つ、まるで少女は瞬間移動をしたかのように背後に現れたのだから。
ここにいてはいけない……!
恐怖という名の本能が澪の身体を突き動かす。
とにかくどこかに逃げなければ……!
澪は脱兎のごとく逃げ出す。
「ちょっと! 人の顔を見ていきなり逃げ出すとは失礼ではありませんの!?」
が、恐怖のあまり足がもつれ地面に派手に転んでしまう。
持っていたデイバックの中身を派手にぶち撒けてしまう澪。
「あら、可愛らしい縞々の下着ですこと」
「いやぁ……来ないで……来ないでよぉ……」
何か何か武器はないか。
何でもいい、自らの身を守るための武器を――
澪の手が何かを掴む。
転んだ拍子にデイバックの中から零れ落ちた白刃の柄に手が触れた。
それはシンプルながらも美しい装飾がなされた西洋剣。
中世の騎士が儀礼用に扱うような剣にも見えた。
だがそれは紛れもなく人を斬る為に鍛えられたされた正真正銘の武器であった。
澪は抜けた腰で剣を少女に突きつける。
誰が見てもへっぴり腰で威嚇にもならない構え。
でもそれが澪にできる限界だった。
そんな澪の様子を見た少女ははぁっと溜息をついて、
「いけませんこと、お姉様には及ばないものの貴女のような美しい淑女がそのような無粋な物を持つだなんて……」
ふっと少女の姿が掻き消えて、手の重たい感触が消失する。
「へ――?」
「ごめん遊ばせ、無粋な物はわたくしが預からせてもらいましたわ」
時間にしてコンマ数秒、再び澪の視界に現れた少女の手にはいつの間にかに西洋剣が握り締められていた。
全く理解できない事象に澪の頭は混乱する。
脳の処理能力を完全に超えてしまった澪は――
「きゅう……」
ふっと全身の力が弛緩し地面に倒れこむ。
寸でのところで少女に身体を支えられるも澪をそのまま気を失うこととなってしまった。
「しょうがありませんわ……お姉様の捜索はひとまず置いといて彼女の介抱が先決ですの」
少女――
白井黒子は結局美琴より澪の介抱を優先することにした。
もっとも、彼女が敬愛する『お姉様』こと御坂美琴は学園都市が誇るレベル5の能力者『超電磁砲<<レールガン>>』
その辺の暴漢如きに遅れを取ることなんてあるはずない。
だから黒子は市民の安全と平和を守る<<ジャッジメント>>の本分を優先することにした。
しかし、黒子に一抹の不安がよぎる。
名簿にあった『
一方通行<<アクセラレータ>>』の名。
学園都市に七人しかいないレベル5の能力者達の一位に君臨する最強の能力者。
同じレベル5の美琴とて歯が立たなかった存在なのだから――
【B-6/廃村/一日目/深夜】
【秋山澪@けいおん!】
[状態]: 気絶中
[服装]: 桜が丘高校制服
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品一式
[思考]
基本: 死にたくない
1: ???
[備考]
※本編9話『新入部員!』以降の参加です
【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
[状態]: 健康
[服装]: 常盤台中学校制服
[装備]: カリバーン@Fate/stay night
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品(1~3)
[思考]
基本: 殺し合いに乗らず美琴を捜索
1: 澪の介抱を優先
2:一方通行を警戒
[備考]
※本編14話『最強VS最弱』以降の参加です
※空間転移の制限の詳細は次の書き手氏にお任せします
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最終更新:2009年11月06日 01:59