夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下- ◆ANI3oprwOY


放送が終わると同時に風が吹いた。
髪を揺らすことさえない弱い風。
けれど、確かに吹いていた。


「なあ、コクトー」


呼ぶ。
屋上で一人、式は呼ぶ。
その声は、生きている人間には聞かれることなく風に溶けた。


「衛宮を殺したんだ。殺して……オレはたぶん、何かを失くした。
 失くしたってことは、オレが殺したのはバケモノじゃなく、ヒトだったってことなのかな?」


事故防止というよりは自殺防止なのだろう。
屋上は、上部に有刺鉄線が取り付けられた3メートル近い高さのフェンスに囲まれている。


「アラヤも死んだ。浅上藤乃も死んだ。デュオの奴も、白井も死んだよ」


南側のフェンスに背中を預け、式は街を見下ろした。
どこにでもありそうな平凡な街並みと、平凡な日常では起こり得ない破壊の痕跡。
何が起こったのかは、わからないし知る術もない。


「この島で大勢死んだんだ。知ってる奴も知らない奴も、たくさん死んだ」


空を見上げる。


「……お前も、死んだ」


一面、青だった。
澄みきった、どこにでもある、とても綺麗で、ありきたりな、青。
見慣れた空と何も変わらない。
なのに、この空が彼と一緒にいた場所と、繋がっているとは思えなかった。


「けど、秋山は生きてる」


俯いて、瞼を下ろす。
瞼の裏に誰かの顔が映る、なんてことはなく。
視界は黒で覆われる。
風はいつの間にか止んでいた。


「阿良々木や枢木も生きてる。ルルーシュや平沢も、織田信長も生きてる」


完全な静寂ではない。
何かの音がする。
動いているものが存在している証の音。


「この島にはまだ、生きてる奴がいるんだ」


目を開けて、式は自分の右手を見た。
たくさんのモノを壊してきた手。
掌に、僅かに血管が浮かんでいる。そこに血が流れていることを、式は知っている。


「……オレも、生きてる」


フェンスから背を離し、自分の力だけで立つ。
深く、肺いっぱいに空気を吸って、吐き出す。
力を込めて拳を握れば、指先の当たっている部分に痛みが走った。


「生きてるんだよ」


息をしてる。
動ける。
感覚があって――――感情がある。


「オレは、生きてる」


その声は、自分の中へと溶けた。



   ◇  ◇  ◆  ◇  ◇



放送が終わると同時に衣は転んだ。
二階と一階の間の踊り場。
転ぶのがもう少し遅ければ、階段から転げ落ちていただろう。


「グラハム……」


呼ぶ。
倒れたまま一人、衣は呼ぶ。
汚れてボロボロになってしまったぬいぐるみを抱きしめる。


「次の放送では、衣の名も呼ばれるのだろうな……」


呟いたのは、予想される未来。
感情とは関係のない、事実に基づいた予測。


「……グラハム」


顔が見たい。声が聞きたい。触れたい。傍にいたい。
こんな感情は初めてで、けれど初めてなのだと意識することさえないほどに自然だった。
理由なんて、わからないし知る必要もない。


「グラハム」


立ち上がろうと、手をつく。


「…ぁ……」


起き上がれなかった。
起き上がるために床についた手が何も感じない。
そこにあるはずの感触が、掴めない。


「え……?」


感覚がない。
それは、世界を感じられないことと同義。
自分がここにいるのだということにさえ、自信が持てない。
何もかもが遠くなっていく。


「……衣は、そちら側か」


死んでいった人たちの顔が見える。
きっとそれは幻で。
けれど手が届きそうなくらいに近い。


「グラハ――――」


呼ぼうとして、やめた。
訪れるのは静寂。
何も聞こえない場所で、何も感じない身体をぬいぐるみごと抱きしめる。


「……衣は、まだ生きている」


採光用の窓から差し込む光に翳すように、衣は自分の右手を伸ばす。
小さな手。何もできない手。
貧血の所為かいつもより白い。まるで血の通わない人形のようだと、衣は思う。


「生きているんだ」


それでも。たとえもうじき終わってしまう命だとしても。
まだ、続いている。
もう一度、起き上がるために床に手をつき、力を込めた。


「衣は、生きている」


その声は、どこへも辿り着かない。




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          夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-

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「今から約一時間半後に、天江衣の首輪は爆破されます」


……さて。僕、阿良々木暦は、いったいどれくらい硬直していたのだろうか。
25日くらい経ったような気がする。さすがに気のせいだろうけど。
僕は馬鹿みたいに放心していた。何も考えられなくなっていた。
一応放送は聞いていたけれど、その内容についてあれこれ考えるなんて無理だった。
数分かけてようやく動きだした僕がしたのは、主催者の一味―――元・主催者の一人である
インデックスの小さな肩に掴みかかることだった。

「何だよそれ、いったいどういうこと―――」

言おうとして、止まる。
一拍どころじゃなく遅れて言葉の意味を理解しだした僕の脳が、これに関連する出来事を追憶する。
それはずっと考えていたことではなかったか。
あの時、何故あの救済は行われたのか。
……あらゆる線が結ばれていく。全てに納得がいくようになる。ふざけるほどに、辻褄が合ってしまう。

「……おい、まさかそれって」
「はい。薬局での白井黒子の治療の際、借金として彼女が肩代わりしたものです」

以上でも以下でもない、予想通りの答えだった。そして最も外れて欲しかった答えだった。
一人でも多く人が死ぬことを推奨するルールの中で、負傷者の傷を治すという行為。
白井の命を助ける代償に天江の命を担保にかける。そしてこの場で効率的かつ効果的な首輪による爆死。
最低の発想が、最悪のタイミングでやってきてしまった。

「天江衣の借金は1億ペリカ。12時間以内、7時32分までという返済期限でしたが、
 定時放送毎に利子として借金を倍額していますので、現在負債は4億ペリカとなっています」
「そのことを……グラハムさん達は……」
「知り得ていません。本人が借用について他の参加者に話すことは違反行為として禁じられています。
 また、特例的に知ったあなたが発言することも規則に抵触するため留意下さい」
「もし、誰かに話したら?」
「首輪が爆破されます」
「……」

傷を負った白井も、その代価を請け負った天江も、責める気はない。
こんな先のことまで考える余裕は天江にはなかった。いや与えられなかった。
彼女はただ助けたかっただけなのだ。
それだけが―――こんなにも。重くなってのしかかる。
全てはこうなるように仕組まれたこと。
その片棒を担いでいる目の前の少女に八つ当たりすることもまた違う。
けれど。

「それなら―――」

どうして、僕に話した?
僕一人が知ったところでどうなるわけでもないとタカをくくってるのか。否定できない自分が憎い。
けど、だったら言わなくても同じことだろう。
この場で、この状況で伝えたところで、いったい何が変わるというのか。

「……………………」

インデックスは、語らない。
答えられないのか。答えたくないのか。答えを知らないのか。
なんにせよ、今ここで打ち明けてくれる様子ではない。詰め寄っても求める答えは聞けなさそうだ。
理由を話せないのならばそれでいい。それを知ったところで僕が納得するだけでしかない。
だったら、聞くべきはその先。この事態の解決法だ。

「どうすればいい?」

ただ不安を煽るだけでこの話を持ちかけたわけではない、と思う。
その意図が悪意にしろ善意にしろ、打開の行動ができるだけのアテがあるはずだ。
主催の手から逃れたというのが本当であれば、ここは頼るしかない。

「…………黒の騎士団」

開いた口から出てきたのは、謎のネーミング。

ルルーシュ・ランペルージが指揮する集団。彼らなら首輪を技術的に解体する情報を入手している可能性があります」

それだけ言うと、インデックスはもう用は済んだと言わんばかりに僕に背中を向け、天江が向かった方向へと歩き出す。
僕はただ、その後ろ姿を見ていた。
本当はすぐにでも追いかけるべきだったんだろう。
天江にしろインデックスにしろ、この状況で一人にするのは好ましくない。
けれど。この時の僕はそんな簡単なことさえ思いつかずにいた。

僕は考える。
黒の騎士団―――かなり、相当、僕だったらちょっと口に出すのを躊躇うくらい恥ずかしいネーミングだけれど、ツッコミは控えるとして。
7時32分までに彼等をみつけだすことはきっと不可能じゃない。
だけど、会えるかどうかと、合流し協力できるかは別の問題だ。

グラハムさんは、ルルーシュ達に思うところはあるみたいだけれど合流に関しては肯定的だ。
天江も異論は無いみたいだし、枢木はルルーシュとの合流が最優先事項。
式にしても、合流の邪魔はしないだろう。

問題は、僕だ。
僕たち5人の中で唯一ルルーシュや平沢と明確に対立した僕が――――

「なにやってんだ?」

声がして、慌てて振り返る。
そこには式が立っていた。
もの凄くやる気無さそうに、式が…………式が……………………


「なあ、式! おまえ、首輪外せないのか!?」
「できない」


いきなり質問をして、あっさりと一刀両断される男子高校生がそこにはいた。
ていうか、残念なことにそれも僕だった。



   ◇  ◇  ◆  ◇  ◇




並び立つガンダムエピオンとランスロット・アルビオン。
その足元では、二人の軍人が作戦会議を行っていた。

「首輪は解除できないか………」

試してみたものの、式には首輪を外すことはできなかった―――
放送前に式と会えたというスザクからの報告に、グラハムは落胆を隠せない。
思いつく限りの首輪解除の条件は整っているはずだ。それでも、首輪の解除には届かない。
ディートハルトに問い詰めても、首輪の製作は別部門で行われていたので一切知らないと言って憚らない。

「我々の推測は根本から間違っていたと考えるべきか」
「いえ。そう判断するのはまだ早いと思います。式は「"まだ"視えない」と言っていた。つまり―――」
「―――いつかは視える。そういうことか」
「その可能性はあります」
「待てるのか? 来るかどうかもわからない"いつか"を」
「待てません。だからこそ、情報を持っているかもしれないルルーシュ達との合流を急ぎたい」

スザクの言葉に、グラハムは同意を示す。
グラハムは、一刻も早く首輪を解除したかった。
首輪が爆破されるかもしれないという危惧は、今までに増して強くなっている。

参加者の残り人数。
インデックスと遠藤が行っているように見せかけることは可能だったはずなのに、変えられた放送の担当者。
主催が何らかの動きを見せてもおかしくない状況下で、自分達は『主催陣営の裏切り者』という爆弾を抱えているのだ。

「しかし……無事に彼らの元へ辿り着ける見込みは低い」
「わかっています。信長がこの付近まで来ている可能性は高い。放送を信じるならば、アリー・アル・サーシェスも生きている」
「そして、一方通行、か」

スザクは頷く。

「――如何にガンダムといえどもすべての攻撃を反射されたのでは勝ち目がないな」
「ええ。……ですが、彼の反射は完全ではありません」

第一に両儀式の存在。彼女の攻撃はどういうわけか一方通行の反射が通用しない。
反射を殺している、と彼女自身は言っていたが、理解の範疇外なので二人は深くは考えない。
ただ単純にここでは両儀式ならば攻撃を当てる事ができる、ということを理解していればいい。

第二に枢木スザク。両儀式ほどに完全な対応ができるというわけではないが、反射の法則を捉えた。
結果、肉弾攻撃ならば反射に捕まること無く攻撃をすることができるだろう。

第三に特別な武装。GN兵器の攻撃が通用したことから、どうやら彼の世界に存在しない物質による攻撃は透過するらしい。
そのような武装がどれだけ存在するかは分からないが、ひとつの手段として覚えておいて問題ないだろう。

第四に制限時間。あれほど強大な能力であるから、主催者によって制限がかけられているらしい。
能力の連続使用時間はさほど長くないことが分かっている。
その使用時間さえ使い切らせてしまえば、彼自身の身体能力は低い。さほど苦労せずに仕留められるだろう。

「……とはいえ、君や両儀式を単純に向かわせたのでは絶対に勝てるという保証はない」
「そうですね。彼の能力は最強の盾にして矛でもある。攻撃が届くだけで勝てる相手ではないでしょう。
 ……何より、彼は頭が切れる。ただの能力だよりの狂戦士ではないでしょう。僕もそれで一度敗れた。
 薬局であれだけの人数が生き残れたのはむしろ幸運だったと言えるかも知れません」

二人で情報を整理しながら作戦を立てる。
スザクは自らの目的、ゼロレクイエムへの障害のために。
グラハムは、今度こそ天江衣をしっかりとこの手で守るために。
たとえ最強であろうとも、一方通行を打ち倒すという信念を蒼く燃やす。

「……なるほどな。最強の矛と盾。ただし、制限時間付きか」
「――何か思いついたんですか?」

ふ、と口元を綻ばせるグラハムを見て、スザクは尋ねる。


「ああ……ならばこちらも用意してやればいい。矛と盾を、な」


勝機を見出し、悪魔の機体を見上げるグラハム・エーカー
その耳に、微かに届いた声があった。


「…………天江、衣…?」

振り返る。
見えるのは校舎だけだ。そこに衣の姿はない。
声が聞こえるはずがない。
けれど、たしかに―――

「スザク。ここは君に任せる」

それだけ言って、スザクの返事を待つことなく、グラハムは走り出した。



   ◇  ◇  ◆  ◇  ◇



「まだ視えない」


式のこの言葉が、首輪解除についての現時点での結論だった。
モノを殺すという物騒な式の力と、魔術を解くという折れ曲がった短剣―――少なくともこれだけでは、首輪を外すことは叶わないらしい。
もともとあの短剣と式の力は殺し合い開始の最初から同じ場所にあったという、確かにそれで外れるというのはおかしな話ではあったけれど。

考えてみれば、今の僕らに首輪の解除が可能なら、インデックスは僕にあんな話はしなかっただろう。
彼女はできないと知っていたのだ。
そして今、全ての情報はただひとつの方向を向いている。
つまり、ルルーシュ・ランペルージ率いる黒の騎士団との合流は必須事項ということだ。

やるべきことはわかった。理解できた。
わかってしまえば簡単なことだった。
ルルーシュの元へ向かうのも、首輪の解除について考えるのも予め決まっていたことで、動きが変わることはない。
変わるとすれば、僕の心境。
天江が背負っているものを知らなければ楽だったかもしれない。
けれど、知っておかなくてはならなかった。
息が詰まり、心が絞めあげられるが、構いはしない。食いしばって耐えられる。


……なんてことを僕が考えている間、式は職員室の中をただ見つめていた。

「なあ、式。インデックス達のことなんだけど」
「放送の前に枢木に会った」

僕が言いかけた台詞とは噛み合わない言葉が返ってくる。
少し考えて、枢木からインデックス達の件は話を聞いているということなんだろうと思い至った。
式との会話は難しい。

「その……いいのか?」
「なにが?」
「一緒に行くんだぞ、主催だった連中と。その……憎い、とか。そういうの、ないのか?」
「べつに」

本当に、なんとも思っていないようだった。
僕だって殺してやりたいくらい憎いとか思っているわけではないけれど。
だけど式みたいにあっさりと言ってのけることができるほど、割り切ってるわけでもない。

「殺したのは、浅上だ。主催(あいつら)じゃない」

唐突に、そう言われて。
僕は式の視線の先を見る。
そこにあるのは、かつて人だったモノ。加治木ゆみという名の少女の死体。

「殺し合えって言ったのはあいつらだけど、殺し合ったのはあいつらじゃない」

式は歩きだす。
躊躇いを感じさせない足取りで、職員室の中へと。
血痕を踏み、もしかしたらバラバラになった加治木ゆみの肉片さえ踏んで。
そして、顔の皮膚を剥がれた頭部のそばで足を止めた。

「なあ」

聞き違いかと思うほどに小さな声。
たった二文字の簡素な言葉は、だけどたしかに、式が僕へと発した声だった。

「こいつにも」
「え?」
「こいつにも、ユメはあったのかな」

ひどく、幻想的な問いだった。
夢―――目標、願い、望み、将来、未来、希望、欲望。言い方は数あれど、おおむねそういう意味だろう。
僕は加治木ゆみがどんな人間なのかを知らない。
だけど、きっと。

「……あったんじゃないかな、彼女にも夢が。たぶん他のみんなにも」

「おまえは?」

式の質問の意図はわからないままで、だけど、見るからに人付き合いが苦手、いや嫌いであろう式が
自分から誰かに話しかけるなんておそらく滅多にないことだろう。
式にちゃんと答えたい。たとえその答えが、声に出すだけで泣きたくなるようなものだったとしても。
僕にとっての夢は―――

「あったよ。とても小さいものだったけど」

羽川や火憐や月火や忍や忍野もいて。
神原や千石や八九寺もいて。
…………戦場ヶ原が、いて。
勉強したり遊んだり遊ばれたり、たまにちょっと面倒なことに巻き込まれたりする、有り触れた日常。
そんなささやかな未来を、僕は望んでいた。

「今は、もうないけどな。消えて…………死んだんだよ、僕の夢は」

全ての事象に終わりはある。出逢いは別れに、生は死に。
それでも、こんなにも不条理に破壊されてしまうことなんて、考えもしなかった。
煌びやかな日々は握り潰され、抱えられるだけの残骸もない。

「おまえは、これからどうなるんだ?」

僕のほうを見ることもなく、式はなんでもないことのように尋ねてくる。
どう動くかという行動ではなく、自分がどうなってしまうのかという状態を。
夢を失ったら、人はどうなってしまうのか。

「そう、だな……………………どうにもならないんじゃないか」

そう。きっと、どうにもならない。
失くしてしまったモノは戻らない。死んだモノは生き返らない。
代わりは無い。
僕は他の夢なんて、もう見れない。
ただ、決して埋まらない苦しみに。怒りに。悲しさに。心と身体を苛まれるだけだ。
だけどそれは夢を見ていた証だから、幸せだった証だから。
夢を失くしたことを不幸だと思うことはあっても、失くした夢に永遠に縛りつけられることを不幸だと思うことはない。
どんなに苦しくても。
………こんなに苦しいのに。
それでも僕は、解放されたいと望むこともできやしない。

「けど、夢をなくした今でも、死にたいとは思えないし死ねない理由もある。
 残ったものを見捨てて投げ捨ててしまうことはできない。僕の死が誰かの夢を奪うことになるってわかってるから。
 それなら、生きる意義ってのもあるんじゃないのかな」

これが、僕にできる精一杯の答えだった。

「そうか」

それだけ言うと、式はもう加治木の死体にもそばにいる僕にも興味がないといった様子で、教室を出ていった。
話は終わり、ということらしい。
そろそろ出発だろうし、一緒にグラハムさん達のところまで行こうと誘おうと思ったけど、やめた。
式はそういうのは好まないだろう。
天江やインデックスが向かったのと同じ方向へ歩いていく式の後ろ姿を見送って、僕は反対側の階段へ向かうために踵を返す。


失くしてしまった夢だとか、平沢が犯した罪だとか、天江が背負っている運命だとか。
いろんなものが重くて苦しいことに変わりはないけれど。

やるべきことがわかった。
式と話ができた。


たったこれだけのことで何かを悟ったような気になって、なんとなく満足してしまっている馬鹿な男子高校生がそこにはいた。
ていうか、こういうのが僕だった。


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291:夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- 阿良々木暦 :夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編)
291:夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- 天江衣 :夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編)
291:夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- 両儀式 :夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編)
291:夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- グラハム・エーカー :夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編)
291:夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- 枢木スザク :夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編)
294:夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- ディートハルト・リート :夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編)
294:夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- インデックス :夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 下-(後編)


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最終更新:2012年02月26日 01:42