魔人が蘇る日 ◆aCs8nMeMRg



ルルーシュが個室で気がついたとき、彼はここが死後の世界なのだと思った。
なぜなら、ルルーシュは親友の枢木スザクによってその身に剣を突き立てられ、最愛の妹に看取られて息を引き取った。
つまり、死んだはずだったのだ。
あの時体に突き立てられた剣の感覚や、自分の体に縋りつく妹の手の感触は、まだルルーシュの体に残っている。
あれは決して夢や幻ではなかった。

C.C.のコードを引き継いで不老不死になってしまった可能性や、治療を受けて一命を取り留めた可能性など、
いくつか他の可能性も思いつくが、しかし、C.C.からコードを引き継いだ覚えは無いし、
あの一撃は明らかに致命傷だったはずだ。
目覚めたばかりの、ぼんやりとした頭でそこまで思い至ると、ルルーシュは考えることを止めた。

(──どうでもいいか。その時が来れば分かるだろう)

ルルーシュは生前(と言っていいのかどうか、今の時点では判断がつかないが)、
自身がすべきと思ったことはすべてやり終え、最期は自分の納得のいく形で死を選んだ。
苦しい事や辛い事の多い生涯だったが、後悔はしていない。
そんな彼だからこそ、今さら意識が戻っても特にやることが思いつかないのだ。
成り行きに任せるさ。
ルルーシュがそんな風に考えてボーっとしていると、
目の前にあったモニターに、ある文章が浮かび上がってきた。

《貴方のような人間が、こんなところで亡くなるのは、非常にもったいない》
《これはゲーム。他者の意思を捻じ曲げ足蹴にし、弱冠18歳で世界を統一した魔王の手腕に期待しています》

どうやら今の状況は、ルルーシュが最初に思いついた可能性の内の治療を受けて一命を取り留めたケースのようだ。
しかも、この文言はまるでルルーシュをゲームに参加させるため、わざわざ助けたという風に捉えられる。
一体誰が、何の目的で?
ルルーシュは疑問に思ったが、しかし、ゲームの内容自体には興味が沸かなかった。

(──ゲーム?止してくれ。今さら俺に何をさせようって言うんだ?)

その後、画面が切り替わり、遠藤と名乗る男やインデックスと名乗る少女がゲームの説明を始めたが、
ルルーシュはどこか他人事のように、映画でも見ている感覚でそれを眺めていた。

(殺し合い、首輪、金で魔法を買った──こいつら本気で言っているのか?)

いたって真面目である可能性。
何かの冗談である可能性。
程度の違いも含めると十種類近い可能性がルルーシュの頭に浮かび上がったが、
ルルーシュはこれを深く考察しようとはせず、そのままぼんやりと画面を見続けた。
そんなルルーシュの態度に変化が現れたのは、画面内に龍門渕透華と名乗る少女が現れてからだった。
彼女の言動。
そして今まで説明されたゲームのルール。
何かがルルーシュの胸の中で引っかかった。

(このゲームは、あんな子が参加しているのか?)

そして、その胸の引っかかりは龍門渕透華の首輪が爆破された瞬間、確信に変わった。

(撃っていいのは──そうだ、撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ!!)

ルルーシュの中で、このゲームの主催者達への怒りが一気に膨らんだ。

 ◇ ◇ ◇

何か手掛かりは無いかと、時間ギリギリまで個室に留まっていたルルーシュが『飛ばされた』のは、
このバトルロワイアルの会場内を走る電車の中だった。
二両編成の小さな電車だ。
自動運転らしく、運転手も車掌も乗っていない。
車内に設置されている液晶モニターには、この電車の現在位置と進行方向が表示されている。
それによると、どうやらこの電車は地図で言うところのD-6内をB-4 にある駅へ向けて進行中のようだ。
そうすると、駅に着くまではしばらく間があるだろう。

ルルーシュは車内に危険が無く、車両もルルーシュが知っている電車の車両と細部の違いこそあれ、
いたって普通の車両であることを確認すると、デイバッグの中身を取り出して確認し、床に並べていくといった、
現状確認の作業に移った。
デバイスや応急処置セットの使い方の確認。
何となく聞き流してしまっていたゲームのルールも、デイバッグの中にあったルールブックを読んで再確認。
もちろん、その間にもルルーシュの頭脳はフル稼働し、主催者の持つ力や言葉の真偽、目的、
また、聞いたことも無い『帝愛グループ』という組織についてなど、既に数十種類に及ぶ考察を展開していた。
しかし、現時点ではどれも憶測の域を出ていない。

(やはり、今の時点では情報が少ない。まずは情報収集をする必要があるか)

そして現状確認の作業が、参加者の名前が記載されている名簿に及んだところで、ルルーシュは驚愕した。
そこには、ルルーシュのよく知る名前があったのだ。

(スザク!!それに、C.C.だと!?)

まずは、枢木スザク。
彼にはルルーシュの亡き後、ゼロとして世界を影から支えるという役目がある。
こんな所にいていい人間ではないのだ。
もし、本当にスザクがこの会場に連れて来られているのだとしたら、何としても生還してもらわなければならない。

そしてC.C.だ。
こちらは、スザクとは別の意味でこの場にいていい人間ではない
彼女は、たとえ銃弾によって額を撃ち抜かれても死なない。不老不死なのだ。
もし、殺し合いをゲームとするならば、そんな彼女がゲームの参加者であってはならないはず。
これについては、例えばトランプのジョーカー的な意味合いで参加させられている可能性や、
この会場には不死者すら死に至らしめる何かがある可能性など、複数の可能性が思いつくが現時点で真相はわからない。

そして、ルルーシュ、スザク、C.C.という三つの名前を並べると、その先に浮かび上がってくるものがある。
このゲームの主催者側には、ギアスやコードについて知る者が含まれていると見て間違いないだろうということだ。
だとすると、それは誰か?
教団の生き残り?
Cの世界側からの介入?
他にもC.C.やV.V.のような存在がいた?
────etc.
──etc.

ボフッ


(ッ!!)

思考の海に落ちかけていたルルーシュは、電車がトンネルに入った音で我に返った。
慌てて車内に設置されている画面を確認すると、いつの間にか電車の現在位置がB-5にあるトンネルとなっていた。
このトンネルを抜ければもうじき駅に到着する。
それまでに、一通り支給品の確認は終わらせておきたいと考えていたルルーシュは、
ひとまず今の考察を保留にして、支給品のチェックに戻った。
もちろん、手を動かしながらも思考は決して止めない。
名簿には、スザクやC.C.の他にも、ルルーシュがなぜかランペルージ性になっていることや、
織田信長、伊達政宗といった歴史上の人物が記載されていること、
アーチャーやライダーなど、明らかに人名ではない記載があることなど、気になることが多かったが、
これも可能性を検討することはできても、今の時点で結論は出ないだろう。

そうして、支給品の確認も終盤となったところでデイバッグから出てきたのは、ルルーシュが見たことの無い銃だった。

(これは、銃なのか?)

付属のマニュアルによると、【ミニミ軽機関銃】というらしい。
二脚とスコープが付いているところを見ると、用途は長距離支援射撃といったところか。
この、自身の知らない技術が使われている銃に関しても、色々と考察が思い浮かんだが、
ともかくルルーシュはマニュアルを読み、使い方を頭に叩き込んだ。
それにしても重い。
スザクくらい体力があれば立ったまま使う事が出来るかもしれないが、ルルーシュでは銃身がふらついてしまう。
素直に二脚を使った方がよさそうだ。

しかし妙だ。
先ほどから感じていたことだが、この機関銃が出てきたことで確信に変わった。
デイバッグから出て来る物の大きさや重さが、明らかにデイバッグを手にしたときに想像した量を超えているのだ。

(これも『魔法』のなせる業か)

ルルーシュは不思議に思ったが、便利な機能であることには違いないので利用させてもらう事にする。

デイバッグに残る支給品は、あと二つ。
その内の一つは、剣のようだ。

(フッ、どうやら主催者の中にはとんでもない皮肉屋がいるようだな)

それが、その剣をデイバッグから取り出した際のルルーシュの感想だった。
なぜならこれは、スザクがルルーシュを殺す際に使ったものなのだ。
刀剣類を支給するだけなら、この剣である必要は全く無い。
主催者の皮肉が込もっているとしか思えなかった。

(まあいい、最後は──なんだ?これは??)

最後に出てきたのは、一着のウェディングドレスだった。

(主催者は一体、何を考えているんだ?)

その時、ボフッという音と共に電車がトンネルを抜け、それとほとんど同時に減速を始めた。
どうやら、駅に到着するようだ。

【B-4/電車内/一日目/深夜】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康
[服装]:皇帝ルルーシュの衣装
[道具]:ミニミ軽機関銃(200/200)@現実、ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2
    ウェディングドレス@機動戦士ガンダム00、基本支給品一式
[装備]:
[思考]:スザクは何としても生還させる
1:情報収集
2:スザク、C.C.と合流したい
3:首輪の解除方法の調査
4:撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ!
5:主催者は何を考えているんだ?

[備考]
※R2の25話、スザクに刺されて台から落ちてきてナナリーと言葉を交わした直後からの参戦です。
 死の直前に主催者に助けられ、治療を受けたうえでゲームに参加しています。
※頭の中では様々な思考が展開されています。しかし、現時点ではどれも憶測の域を出ていません。

【ミニミ軽機関銃@現実】
5.56mm NATO弾を使用する分隊支援火器。機関部下に200発のベルトリンクを装填できるプラスチック製弾倉M27を装着している。二脚、スコープ付き。

【ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2】
コードギアス反逆のルルーシュR2最終回にて、ゼロに扮したスザクがルルーシュを殺す際に使用した物。多少装飾が施されている以外は普通の両刃剣だと思われる。

【ウェディングドレス@機動戦士ガンダム00】
最終回のエンディングで、カティ・マネキン大佐改め准将が着ていたのと同じ型のものです。





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ルルーシュ・ランペルージ 042:電車男


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最終更新:2009年11月06日 21:14