電車男 ◆LwWiyxpRXQ



 しゅう、と空気が抜けるような音を響かせながら電車は扉を閉じた。
 つかの間の停止を終えた電車は静かに加速し始め、この場を離れようとする。
 ルルーシュ・ランペルージはその際に起こる慣性の感覚を身に受けながら、閉じる扉を電車の座席から見ていた。

 ルルーシュは電車を降りなかった。
 駅に降りて、情報を集めるべきかと迷ったが、闇雲に動き回っても得られる物はたかが知れている上、
 自分の体力を考慮するに徒歩で移動するよりも、このまま電車で移動した方が断然効率が良い。
 また、特に行く当てもないのに、無理をして外を出歩くにはリスクが高過ぎる。
 その他の色々な観点からも考えた結果、ルルーシュは電車に留まるという選択をしたのだった。

 ルルーシュは無事に電車が発車したことを確認すると、視点を扉から手に持っている一枚の紙に切り替える。
 それは地図だった。
 簡略に記された島の全容を眺めながら、ルルーシュは静かに思考を巡らせていた。 

(このゲームからの脱出。
 海で囲まれ脱出の難しい会場、『帝愛』の持つデイパックを初めとした物理法則を無視したオーバーテクノロジー、死者すら蘇らせるという『魔法』。
 そのような要素を見ると、一見、それはとても困難に思える)

 だが、とルルーシュは静かに呟く。
 呟きながら、彼は自らの首にそっと指先を這わした。
 正確には首ではなく、その首に仕掛けられた無骨な首輪に。

(首輪。
 『帝愛』にいくら力があろうと、参加者を直接縛っているのはこれだけだ。
 これさえ何とかすれば、脱出へは一気に近づく)

 逆にいえば、それは首輪を何とかしなければ何もできないということだが、ルルーシュは首輪の解除自体はそう難しくはないだろうと考えていた。
 指を這わせながら、彼は首輪の材質を確認する。
 それは間違いなく、金属だった。

(『帝愛』が『魔法』又はそれに類する力を持っているのは確かだ。
 だが、参加者の拘束という、このゲームの進行においてかなりの重要度を誇る筈の仕事は首輪――つまり、機械的な要素によって行っている)

 対処の仕様がない『魔法』ではなく、機械技術によっての拘束ならば自分にもやりようはある。
 勿論、この首輪に未知の技術が使われている可能性はあった。
 が、それにした所で、わざわざ首輪という機械を用いていることを考えれば、基本的な構造は通常の技術によって成り立っている筈だ。

(この場にこの首輪に対応できるような技術者がいるかは分からない。
 もし居るのなら協力を得たいが、『帝愛』がわざわざゲームを破綻させる要素を参加者に入れている可能性は低いだろう。
 先程まで、そう思っていた。
 だが――)

 ルルーシュは地図のある一点を指で指した。
 そこは会場南部の、機械をイメージしてあるのだろう灰色の色彩で彩られた場所だった。
 即ち、宇宙開発局。

(宇宙開発局。この施設の存在でそれも分からなくなった。
 名前からしてこの施設は工学系の研究施設だろうし、隣には工業地帯まである。
 下手をすれば首輪を解除しかねない施設がこの場にある。
 これは恐らく自信。奴らの、絶対に参加者に脱出されないという『帝愛』の自信)

 ルルーシュは開幕においての司会役の男を思い出す。
 遠藤と名乗った男の高圧的な態度は、自分たちが絶対的に安全な場に居ると信じているようだった。

(そして、その自信故、この場に技術者を参加させている可能性は十分にある。
 絶対とは言えないが、宇宙開発局などという施設があるということは、それを扱える参加者もいるのだろう。
 よって今後の方針としては、先ずこの宇宙開発局を目指し、そこを拠点にして技術者を探し出す)

 幸いにして、宇宙開発局は駅から近く、この電車に乗り続ければそう長くは掛からない。
 自身の体力に自信のないルルーシュからすれば、それはかなり有益なことだった。

 今後の方針を一先ず決めたルルーシュは、とりあえず地図をデイパックに戻そうとする。
 大体の内容は既に頭に入れているので、しばらく見る必要はないだろう。
 そして、その途中、一つの威圧的な銃器に視点が行った。
 ミニミ軽機関銃。
 自分の支給品であり、人を殺す武器。

 それは護身用として自らの隣に置いておいたのだ。

(俺は……敵が多いからな。いや敵だらけといってもいい)

 ルルーシュが電車での移動を選んだのも、出来るだけ他者との遭遇を避けたかった、というのもあった。
 ゼロレクイエムの為に演じた悪逆皇帝。
 数え切れない程の暴挙を働いた自分は、この場の大半の人間から憎悪を抱かれている筈だ。
 ましてや今の自分の姿は皇帝服であり、悪い意味で目立ってしまう。
 自分にとって他者との遭遇は会敵といっても過言でなく、高い可能性で戦闘になってしまうだろう。

(幸運なことに装備には恵まれている。大抵の者なら撃退できるだろう。
 それにギアスもある。
 『俺を襲うな』とでもギアスを掛ければ、自分自身の護身くらいなら簡単にできる筈……)

 そう考えながら、ルルーシュは自分が生存を考えていることに気付き、少し笑ってしまった。
 どうせ自分は死ぬ運命にあったのだ。この場で死ぬことに別に恐れはない。
 自分から死にいく気はないが、己の生に固執する必要もない筈だ。

(この場に来る直前で見たナナリーの姿に、少し未練があるのかもしれないな)

 ルルーシュはもう見ることは出来ないであろう、最愛の妹の姿を思い出しながら考えを改めた。
 今、優先すべきなのは己の生存ではなく、救世主ゼロ――枢木スザクの生存だ。
 ナイトオブゼロとして動いたスザクも、ルルーシュと同じく、敵が多い。
 ならば、自分が他者に掛けるべきギアスは『俺を襲うな』などの利己的な物ではなく――

「『枢木スザクを守れ』
他の参加者に会ったら、そうギアスを掛けるべきなのかもしれないな……」


【B-5/電車内/一日目/深夜】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康
[服装]:皇帝ルルーシュの衣装
[道具]:ミニミ軽機関銃(200/200)@現実、ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2
    ウェディングドレス@機動戦士ガンダム00
[装備]:
[思考]:スザクは何としても生還させる
1:宇宙開発局へ向かい、そこを拠点に技術者を探す。
2:スザク、C.C.と合流したい
3:首輪の解除方法の調査
4:撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ!
5:他の参加者に会ったら『枢木スザクを守れ』とギアスを掛ける?
6:自分の生存には固執しない
[備考]
※R2の25話、スザクに刺されて台から落ちてきてナナリーと言葉を交わした直後からの参戦です。
 死の直前に主催者に助けられ、治療を受けたうえでゲームに参加しています。
※頭の中では様々な思考が展開されています。しかし、現時点ではどれも憶測の域を出ていません




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033:魔人が蘇る日 ルルーシュ・ランペルージ 073:施設Xを追え