第一回放送 ◆QkyDCV.pEw
ダーハラは預かった原稿を斜めに読みながら、これを渡して来た出っ歯の男に問いかける。
「あちゃー、知ってる人いきなり死んでるよ。そっちはどう?」
出っ歯で紫のスーツを着た細身の男、イヤミは不機嫌そうに答える。
「こっちもザンス。まあアイツ等が生き残れるなんてこれっぽっちも思えないザンスから、妥当っちゃ妥当ザンスが」
「うわ、冷たいの」
「しょーじきな話、アイツ等の心配してる余裕なんて無いザンス。ヲタクだってそーでしょーが」
「まあ、ねえ。あそこに放り込まれないだけありがたいと思わないと」
ずいっとダーハラに顔を寄せるイヤミ。
「そ・れ・に! ここできっちり役に立つ所見せておけば、ミー達も良い目が見れるかもしれないザンス! だからダーハラ、お前も気合を入れるザンスよ、わかった!?」
そう言い残し、イヤミは放送室を出ていく。
残されたダーハラは、大きく大きく嘆息する。
「ゲッスいなぁ~。でも、言う通りなんだよねぇ、逆らったって無駄に死ぬだけだし。だったら前向きに考えた方がマシって事かなぁ。いやはや、ハードなやりなおし人生になっちゃったもんだ」
放送室の椅子に座り、原稿に改めて目を通す。
これで失敗なんてしたら何言われるかわかったもんではないので、ダーハラはかなり真剣に原稿を読み上げる練習を始めた。
えー、これより第一回放送を開始します。
ゲーム開始よりこれまでの死亡者の名前は以下になります。
逸見エリカ
若狭悠里
美影ユラ
アルベド
霧島董香
虹村億泰
ネコネ
松野トド松
安室透
ガエリオ・ボードウィン
シルバーカラス
丈槍由紀
光宗
紅煉
リネット・ビショップ
天海春香
以上、十六名になります。
また禁止エリアはC1、A8、H8の三箇所になります。
次の放送は十二時ちょうどになりますので、聞き逃しの無いように。
では、はりきって殺しあって下さい。
原稿を読み終えると、ダーハラは放送のスイッチを切り、大きく安堵の息をつく。
「あー、緊張した。でもま、これでしばらくは仕事は無いか」
両腕を上にあげ、大きく伸びをする。
ダーハラは欠伸をしながら放送機器のスイッチが全て切れているのをチェックした後、放送室から外に出る。すると、出てすぐの所にイヤミが待ち構えて居た。
「あれ? どうしたの?」
イヤミは小声でありがなら強い口調で、ダーハラの耳元で囁いた。
「こんのマヌケっ! さっきの放送はなんザンスか!」
「え? なんかマズった?」
「名前はもっとゆっくり読んだ方がいいって言われたザンス! 聞き逃す馬鹿が居たらつまらんザンスよ!」
あー、と振り返ってみるに、ゆっくり読み上げるつもりではあったが、緊張してたせいで思ってたよりは早口になっていたかもしれない。
表情を伺うように問うダーハラ。
「……本気でマズそうだった?」
「まあ、怒ってはいなかったザンス……むしろ上機嫌に笑ってたから次気をつければ良いとは思うザンスけど」
「悪趣味だよなぁ」
「ばっ、余計な事言うなザンス! 連中に聞かれたらどうするザンスか!」
「わかってるよ。命は惜しいし、殺さないでいてくれるってんならあの人たちの靴の裏だってなめられる自信あるさ」
「ミーもザンス。ダーハラとはその辺で話が合うからやりやすいザンスよ」
ダーハラもイヤミも、他者に対してドライな部分のある人間であったが、にしても、人死をこうまで日常として受け入れられるような人間でもなかったはずだ。
それがいまや、知人の死すら他人事のように口にし平然としている。
そうなるような出来事が、きっと彼等の身に起こったのであろう。そしてそれはきっと、そんなに難しい事でもなかったのだろう。
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| 000:オープニング |
ダーハラ |
: |
| GAMESTART |
イヤミ |
: |
最終更新:2016年11月05日 11:18