Darkninja Look before he leap  ◆QkyDCV.pEw




その胸は平坦だった。
オーガニック美少女の名に恥じぬ容貌を持つ、ヤモト・コキの走るすぐ横を、江戸川コナンは飛行ネックレスの魔法の力によって飛翔していた。
ずっと無言のまま、コナンが指し示す方向へ逃げ続けていたヤモトであったが、不意に彼女が口を開いた。
「ねえ、君は何を知ってるの?」
「ん?」
「どうして、カギ=サンは、殺されなきゃならないの?」
「俺達をここに連れて来た奴が、爆発する首輪をタテに殺し合いをしろと強要してきているからだ」
「…………カギ=サン、無事だと、思う?」
「シャルティアと名乗ったあの女が、人知を超えた怪物だって事しか俺は知らねえ。後はその、カギ=サンって人次第だろう」
「ガエリオ=サン、も?」
「そうなる。だから……」
そこでコナンの言葉が途切れたのは、走っているヤモトの表情が激変したからだ。
真っ青を通り越し薄白い程に血の気を失った表情は、恐怖と絶望に染まっていた。
「シャルティアが来たのか!?」
「わ、わかんないっ……でも、黒い、黒いのが、来るっ。って事は!?」
ヤモトの表情は更に強張る。恐怖と諦念に加え、隠しきれぬ憤怒の色がコナンにも見えた。
「二人はっ!!」
シャルティアが追って来ていてそれを彼女が感じ取ったのだとしたら、あの場に残った二人は既に殺されたとする判断にコナンも異論は無い。
だが、その次は許さない。
「次の角を右だ! 俺達だけでやれるぐらいなら、あの時残って四人でやってた! 忘れんな! あの二人は! 俺達が生き残る事を望んでたんだよ!」
「でもっ!」
「このままになんかするか! ここにはまだ他にも参加者が居る! そいつら集めてアレを止めるんだ! 俺達がここで死んだら誰がアイツの脅威を伝えるってんだよ!」
グゥの音も出ない程の正論だ。その正しさがわからぬ程ヤモトも子供ではない。
二人は無駄話を止め、全力で逃げにかかる。
コナンにとっては、あの状況から二人を殺害し、更にコナンとヤモトを正確に追って来る者が居るというのは、少なくともコナンの常識からは考え難い状況だ。
その常識外の部分がどれほどかを探っている余裕は無い。
二人の速度はかなりのもので、そこにコナンの小賢しい知恵を加えた逃走ルートを取っているのだから、かなりの距離を稼げたと思える。普通の状況ならば。
だが、それでも振り切れる気がまるでしない。
再びヤモトが黒い悪寒を感じぬようになってまた少し経つが、こうしてただ走って飛んで逃げる以上の事をしなくては振り切れないだろうと、コナンには妙な確信があった。
そんな二人の進行方向から、エンジンの轟音が聞こえて来た。

オルガ・イツカはダークニンジャと別れた後、自分に与えられた支給品とやらの最後の一つを取り出す。
取り出すというか、引っ張り出すというか。
鞄からは金属の塊のようなでっぱりが飛び出ており、これを引っ張ると見た目の重量感とは裏腹に容易く中から引きだせる。
ただその質量が大きすぎて、途中で引っ張りきれなくなり、オルガは鞄を逆さに持って振る、といった形に切り替える。
既にこの時点で、金属の固まりは鞄に収まるようなサイズではなくなっており、オルガはその理解不能な状況に、なんだこりゃを連呼しながら半ばヤケクソ気味に対処していた。
鞄からずるり、といった様子で飛び出して来たのは、黒い車であった。
オルガのセンスでは、全くその美観が理解出来ない車だ。
車の前半分は所謂自動車なのだが、その後半分は家になっている。それも豪奢な屋根をつけ無駄に贅沢気配を漂わせている。
これこそネオサイタマの運び屋デッドムーン操る武装霊柩車ネズミハヤイDⅢなのだが、当然そんなものオルガが知るわけもない。
キーも付いているし、移動が楽になるというのなら、と車に乗り込む。色々とわからない装置もあったが、概ねオルガにも操作出来る乗り物であった。
これ幸いとエンジンをかける。かなりの騒音が予想されたが、意外や意外、車内は物静かなものであった。オルガはその造りの丁寧さに少しテンションを上げて走り出す。
アクセルを踏み込むと、予想していたより加速のノリが良い。いや良すぎる。
こんな街中を走っていいような加速度ではない。しかもコレ、オルガはまだまだアクセルに余裕を持たせているのだ。
更に、オルガが乗り込む時に見た扉の厚みや、各種ギミックが取り揃えてある事を考えるに、この車の作られた目的がそれなりにだが見えて来る。
「戦闘用……か? コイツは結構な大当たりって奴だな」
その加速度や車体重量から運転はしずらい車なのであろうが、オルガは阿頼耶識システムの手術を受けているのだ。
この車と阿頼耶識システムとが接続出来る、という話ではない。阿頼耶識システムでしか扱えないような速度で、モビルワーカーをぶん回して来たという事だ。
この程度のジャジャ馬に、今更ビビるオルガではない。
軽快に道を往くネズミハヤイ。この車の異常に敏感な操作性は即ち、扱えさえすればより高度なドライビングを提供してくれる。
オルガは気分良くアクセルを吹かす。ふと、頭上よりコンという音が聞こえた気がした。
「なんだ?」
アクセル踏んだままで窓から身を乗り出し上を見てみる。こういうあぶなっかしい真似を極自然にしてしまう辺りが、チンピラの頭目雰囲気がなくならない所以なのであろう。
見上げたそこには、先程別れたダークニンジャが立っていた。
比喩でもなんでもない。オルガが気分良くアクセルを踏み込んでる車の、屋根の上にダークニンジャはまっすぐ直立した姿勢で両腕を組んで立っていたのだ。
「はあ!?」
オルガが身を乗り出したのを見て、ダークニンジャもオルガを見下ろしてきた。
「オルガ・イツカ。この先にはニンジャが居る。お前は引いておけ」
「……動じねえのな、アンタ。そいつはアンタが言ってたニンジャスレイヤーって奴か?」
「いや、恐らくは違う。奴ならばきっと、私と同等の数値を示すだろうからな」
そう呟いたダークニンジャは、直径三十センチ程の機械を手にしていた。
これは彼に支給された品、本来は妖怪の能力を数値化する際に用いられるキルリアン感知機である。
だが何故かこれにニンジャも反応するようで。感知機のど真ん中には大きくダークニンジャの反応が輝いていた。
本来は生物全てに数値が出るシロモノなはずなのだが、その用途のせいか、大きな数値以外には反応しないよう調整されており、距離も随分と遠くまでわかるようになっていた。
ただ、この機能をダークニンジャは少し勘違いしていて、自分に反応するのだからコレはニンジャソウルを感知する機械だと思っていたり。
説明の文章にあった妖怪という言葉を、ニンジャの比喩として受け取ったのである。無理も無い。
オルガは時折ちらちらと前方を確認しながらもアクセルは緩めない。
ビビったと思われるのはよろしくない、というやはりチンピラ風味漂う発想であろう。
「だったら交渉の余地はある、か?」
「かもしれん……なるほど、お前はそういう見方をするのか」
「ん? アンタは違うのかい?」
「敵か、そうでないかだ。交渉はお前に任せるが構わないな」
「ああ、後は後ろでアンタが睨んでてくれりゃ完璧だな」
「わかった」
真面目腐った声で頷くダークニンジャに、思わず噴出しそうになるオルガ。
「ここをまっすぐでいいんだな」
「ああ」

江戸川コナンは、この場所に招かれて随分と非常識なものをその目にしてきた。
なのでいい加減そういったものに驚く事も無くなったかと思うとそんな事は全然無く。
前方から走って来た、屋根の上に忍者装束の男が直立腕組みしている霊柩車、なんて馬鹿げた光景に、思考が完全にストップしてしまう。
驚き足を止めるヤモト。
「ニンジャ!?」
「ああ……うん、確かに忍者だな。なあ、ヤモトねーちゃん。あの下に付属の霊柩車の意味わかるか?」
「わからない、でも油断しないで。あのニンジャのジツの一種かもしれない」
「なるほど、れいきゅーしゃのじゅつ、ね。あまりにファンキーかつ前衛的すぎて俺の発想がついていってくれねーや」
霊柩車は二人の前に停車すると、扉が勢い良く開き、中から背の高い男が出て来た。
目つきは最悪。見るからにガラが悪そうな顔付きに、二メートル近い長身で見下ろして来るものだから威圧感がヒドイ。
「俺はオルガ・イツカ。ニンジャってのは……そっちの女の子の方か?」
そしてそれ以上に、相変わらず霊柩車の上につっ立ったまま腕を組んで微動だにしない忍者装束の男。
馬鹿にされてるのかとも思えたが、長身の男も忍者の男も真顔を全く崩さないので、どちらも真面目なんだろうと考えられる。
コナンの前に立つヤモト。
「……そうよ。私達に何の用」
「何だかエライ警戒されてるな。俺も後ろのも、アンタ等に何かしたって訳でもねえだろうに」
「ニンジャを見て、それと一緒に居る男を警戒しない馬鹿は居ないわ」
何だそりゃ、と後ろを振り返るオルガ。
「そうなのか?」
「確かに、その女の態度も間違ってはいまい。だが、実力差も見て取れぬようではな。そういった露骨な警戒姿勢は、お互いの戦力が拮抗していてこそ意味のあるものだ」
「おいおい、いきなりケンカ腰は勘弁してくれ。交渉は俺に任せるんだよな?」
「うむ、ではこれ以上は黙ろう」
ヤモトに向き直るオルガ。
「悪い、ツレが失礼したな。アレで案外気の良い奴なんだ、そう邪険にしないでやってくれ」
コナンは心の中で突っ込んだ。
『お前自分で言ってる言葉の意味もう少し考えろ。例えあれの気が本当に良かったとしても、あの格好であんな所につっ立ちながらケンカ吹っかけてくる奴に、どうやって友好的になれってんだよ』
ジト目が隠し切れないコナンと、やはり同様に驚きを隠しきれないヤモト。
「貴方、えっと、オルガ=サン? 貴方はニンジャなの?」
「いいや、生憎とあんな人間離れした真似は俺には出来ねえよ」
「そ、そうなんだ……」
普通の人間が平然とニンジャ相手に、それもあんな恐ろしげなニンジャと対等な口を利いているのが信じられない様子だ。
オルガは交渉相手がきちんとダークニンジャにビビってくれているのを見て取り、それに満足しながら口を開く。
「その人間離れした真似を、アンタも出来るんだろう? 良ければ、俺達に協力しないか? 俺は、俺達は、殺しあえだのとふざけた事を抜かす連中を、全員潰すつもりだ」
オルガ・イツカは、自分が何も持たない事を自覚している。
学も経験も無い、知識もなければ天才的なひらめきなんてものも持ち合わせていない。
当然金も持っていないし、今この場では、苦労して手にした後ろ盾も兄貴分も役には立たないだろう。
だからこそ、交渉の際には棍棒を持参するのだ。必ず何処かに棍棒を潜ませ、最も効果的と思われるタイミングでこれを行使し、相手の妥協を引き出す。
品が無いだの、文明的でないだの、チンピラだのヤクザだのと、何と言われようとも仕方が無い。構わないわけではないが、選択肢が無い。
オルガには、鉄華団には、棍棒と己の命しか無いのだから。
オルガは、ダークニンジャから新たなニンジャが居ると聞かされた時、真っ先に考えたのはダークニンジャという棍棒を用いて、新たなオルガの側に置ける棍棒を手に入れる事だった。
それがどんな相手であれ、彼等に敗北か利益かを提示出来なければ、交渉相手はオルガの言葉を聞き入れはしないだろう。
ならばダークニンジャと別れるのなら、オルガはオルガの刃を持たなければならない。
武装霊柩車ネズミハヤイもその一つ足りえるものだが、やはりまだ交渉を有利に運ぶ棍棒と呼ぶには心もとない。
見た目は普通の女の子にしか見えないが、ダークニンジャがわざわざ避けろと言うのだからきっと大した相手なのだろう。
「どうだ? アンタは見た所、子供を助けてるようにも見えるし、殺し合いをするつもり、無いんじゃないのか?」
不意にコナンがこの話し合いに割って入る。
「待った。色々とお互い交渉したい事があるのはわかるけど、今はまず、逃げるのが先決だ。もし良ければその車に俺達も乗せてもらえないか? 物凄い敵が後ろから追って来てるんだ」
ぴくりとダークニンジャの眉が動いたが、当然誰も気付かない。
オルガは子供がいきなり口を挟んで来た事に驚いたが、言葉ははっきりとしていて内容も理解しやすいものだったので、普通に返事をする。
「今すぐそうすべきか?」
「うん。信用できないかもしれないけど、そこを曲げて頼みたい……」
コナンの言葉を遮ってオルガは言った。
「わかった、乗れ」
すぐに身を翻すオルガに、コナンは頷き車の方に走る。ヤモトも少し遅れてそうした。
コナンとヤモトが乗り込むのを確認すると、オルガは上のダークニンジャに言った。
「斥候、頼めるか?」
「良かろう。斥候と言うからには戦闘は避けろという事か?」
「片方だけの言葉を全部真に受けるのも良く無えだろう。だが、コイツ等が嘘をついているとも思えねえ。くれぐれも頼むぜ」
「承知した」
コナンが座席から身を乗り出して言った。
「知覚能力が人間のそれじゃない。およそ1200メートル半径は感知される。後、鼻の利く獣を自由に従えてくる。挙句、素手でそこの電信柱ぐらい軽くへし折って来るようなバケモノだ。気をつけてな」
子供に心配された事に、ダークニンジャは何とも言えない顔になったものだが、メンポで隠されそれは誰にも見えなかった。
他のソウカイニンジャに同じ事をしたなら、あっと言う間にコイツはネギトロだろう、などと考えながらダークニンジャは屋根の上から飛び立って行った。

ダークニンジャは、ネオサイタマでも五本の指に数えられる程の優れたニンジャである。一説に寄れば最強との呼び名もあるほどで。
なので先に遭遇したヤモト如きなら、なめてかかってちょうどいいぐらいだ。もちろん油断なぞとは無縁の男でもあるが。
そのダークニンジャが、ヤモトやシルバーカラスに出来た事が出来ないわけもない。
ダークニンジャはある場所で突然足を止める。
「……この悪寒は、一体……」
その優れたニンジャ第六勘は、進む先に居るバケモノの気配を感じ取っていた。
ニンジャソウルを感知するだのといった能力的なものではない。もっと動物的な、生命の危機をも予感させる、絶対者の気配。
デモリション・ニンジャ、ラオモト=カンを身近に知り、妖刀ベッピンの底知れぬ神秘を目の当たりにしてきたダークニンジャが、これまで感じ取った事もない、と言いきれる程の悪寒。悪鬼の気配。
なまじニンジャとしての能力に優れ、ニンジャ第六勘の精度が高いせいで、ヤモトやシルバーカラス以上にその脅威を感じ取れてしまう。
そして彼の直感が正しいと示すかのように、手にしたキルリアン感知機が反応する。その数値は、ダークニンジャを大きく上回るものであった。
実はこのキルリアン感知機、ダークニンジャが考えるようなニンジャソウルの強弱を測るものでは、ない。
たまたまダークニンジャ、そしてヤモトと続いてニンジャに遭遇しただけであって、本来は妖怪の反応を探る為に開発されたものだ。
しかもその造りの関係上、霊力にこそより強く反応するように出来ているので、ニンジャと比べるとより霊的な存在である妖怪やモンスターの方が高い数値が出やすくなっているのだ。
なので今ダークニンジャが見ている数値の差程、ダークニンジャとそのターゲット、吸血鬼シャルティア・ブラッドフォールンに差があるわけではない。
ただ、ダークニンジャもニンジャ以外の神秘に遭遇するのは始めてであり、より警戒度が増しているのも無理からぬ所だ。
とはいえ、そこで恐ろしいからと引き下がるダークニンジャではない。むしろ、如何に対策すべきかを見極めねば、と考えるのが彼だ。
離脱を叫ぶニンジャ第六勘に逆らいながら、ダークニンジャは目標へと慎重に接近していく。
闇夜の中ではあるが、ニンジャであるダークニンジャにはその程度障害にもなりえず、一際高いビルの屋上から、遂に遠目にその姿を視認する事に成功する。
ダークニンジャの目には、禍々しさを極限まで煮詰めたような、忌むべき呪いの塊が見えた。
これ以上は危険だ、と感じた距離を保つダークニンジャ。ふと、それが先程小僧が指摘した距離であった事を思い出した。
偶然? 馬鹿な、アレは幸運すら塗り潰す悪鬼そのものだ。アレの能力を把握するには、それだけの何かが絶対的に必要となる。それを、あの小僧が持っているという事だ。
ダークニンジャの任務は斥候だ。相手の能力力量を探るのも、斥候の仕事の内ではある。
だが、今のダークニンジャはニンジャスレイヤーとの決戦を控える身、それに、あのネズミハヤイならば怪物を振り切るのは難しくあるまい。
また、オルガはダークニンジャを向こうに回しての交渉時、ダークニンジャの持つ武力をすら、凌駕する何かに心当たりがあるようだった。少なくともオルガはそう思っていると、ダークニンジャには感じられた。
もしそれをダークニンジャに向けたのなら、オルガの勘違いをこれでもかと教えてやるつもりであったが、オルガにも優秀な武力の心当たりがあるというのなら、それを用いればあの化け物とより有利に戦える事だろう。
「はーい、そこの古風な君」
不意に、そうあまりにも突然に、ダークニンジャに声をかける者があった。
ただダークニンジャもそれを察知していたようで、動揺した様子もなく平然としている。
「……………………」
最初は無言のままであったが、ダークニンジャは少し不愉快そうに言った。
「……ドーモ、ダークニンジャです」
姿を現した優男は、ビルの屋上のフェンスの上に器用に立っていた。
「ん? ああ、これはご丁寧に。僕は月山習という。いきなりで何だけど、一つ、何より先に確認したい事があるんだけど、いいかい?」
「……言え」
「君、人間かい? あっちの女の子もそうだけど、正直とても人間とは思えない臭いがするんだよね。危なっかしさもどっちもどっちって感じに見えるし」
ダークニンジャも全く同じ疑問を持っていた所だ。この男からニンジャソウルは全く感じ無いが、にしてはあまりに人間と気配が違いすぎる。
くいっとダークニンジャが首を振る。こっちに来いという意味で、月山習もすぐに頷き後に続く。
あの化物の探知範囲ぎりぎりで会話するような馬鹿な真似はしたくないというのは、両者にとっての共通認識であったようだ。
少し離れた場所に着く。月山習を名乗った男は、ビルの屋上から飛び降りたダークニンジャの後に平然とついて来た。
ダークニンジャは、己の常識に従って彼を判断した。
「お前も察している通り、私はニンジャだ。だが、お前はニンジャではあるまい。一体何者だ?」
習は怪訝そうな顔になる。
「に、にんじゃ、かい? ごめん、ちょっとその返事は予想外だった。ちなみに僕は、人喰(グール)なんだけどね。君もその一種かと思ったんだけど、どうも違うみたいだね」
今度はダークニンジャが怪訝そうな顔をする番であった。
「ぐーる? ……お前はもしかして、ネオサイタマの住民ではないのか?」
「ね、ねおさい、たま? えっと、何だろう、話せば話す程お互いの距離が離れていってる気がするよ。おっかしいなぁ、聞きたい事他にあるのに全然そっちに話が振れないよ」
ダークニンジャを小さく息を吐く。
「同感だ。ではその辺は置いておき、まずは一つ。あの化物の事、お前は何か知っているのか?」
「あー、僕もそれ聞きたかったんだ。ごめん、僕も全くわからない。妙な匂いに惹かれて近づいてみたんだけど、アレ、絶対にヤバいよねぇ。何がって聞かれたら答えるの難しいけど、アレの近くに行くのがヤバイって事だけはわかるよ」
「こちらも同様だ。……どう危険なのか、一つ試してみるか?」
一瞬反応が遅れたが、習はにやりと笑みを見せる。
「いいねぇ……」
そして、人差し指でダークニンジャを指差す。
「なんてね。生憎と、会ったばかりの相手の為に我が身を盾にする趣味はないんでね」
見知らぬ化物の手の内を調べたくはあるのだが、ではアレからどう逃げるかとなった時、見捨てて逃げる捨石があれば逃げられる確率も上がろう、とそんな魂胆であった。
「ふん、そうか。なら、何時までもここに居ても仕方があるまい」
「はいはい。次はもっと余裕を持てる場所で会いたいものだね」
「望む所だ」
二人共、ここでやりあったりしたら間違いなくアレに気付かれてしまうとわかっているので、この場でケリを着けるなんて真似が出来なかったのだ。
化物の範囲から外れるようにして、ダークニンジャは北に戻り、習は南西の方へと。
走りながら、ダークニンジャは妙に気疲れしている自分に気付く。
任務とあらば、それがどんな事であれ当たり前に全てをこなすダークニンジャであるが、元々社交的とは程遠い人物で、ここ数年はソウカイヤのニンジャとして裏方仕事を黙々とこなしてきた身だ。
一かゼロかで全てを判別出来る拷問やらを用いない交渉術からは、長い事離れていたせいだろう。

打ち合わせていた合流場所にオルガ達が辿り着きしばらく待っていると、ダークニンジャが特に息を切らした様子もなく戻って来た。
結構な距離があったはずなんだがなあ、とか思いながらもオルガはダークニンジャを出迎える。
「よう、お疲れ。どうだった?」
ダークニンジャからは、何があってもアレの認識範囲内には近寄るな、との話であった。
ただ、ネズミハヤイの最高速度ならば、逃げるだけは何とかなるかもしれない、との事。
ネズミハヤイにはロケットブースターに飛行能力までついているらしいから、これを使って逃げられない相手だった場合、もう何もかもが無駄であろうが。
ネズミハヤイの持つ能力を確認した時のコナン君の台詞がこれだ。
「この機能を霊柩車につけなきゃなんねえ必要性を誰か俺に説明してくれ」
コイツはいい、と無邪気に喜ぶオルガには完全にスルーされた台詞でもある。
ダークニンジャは、斥候の役目を終えるとかねて決めていた通り、西の方へと向かっていった。最後に、ダークニンジャはコナンを見ながらオルガに言った。
「あの小僧、見た目は子供だが、何か大層なものを隠し持っているようだ。それが何であれ、上手く見極め利用するといい。きっとお前の役に立つだろう」
へぇ、とオルガも改めてコナンを見る。
あの場で逃げるよう言ったのはコナンで、その見立ては実に正しいものであったとダークニンジャが証明してくれた。
ヤモトと名乗る女の子の方は、ダークニンジャよりは弱いが同類のニンジャで戦闘能力に長けているようだし、これでどうにか、何かをしでかす程度は出来るようになったか、とオルガは考える。
ただ、ヤモトもコナンも、ダークニンジャが確認してきた化物を随分と気にしているようだ。
そういった無差別に暴れ回る類の奴は、オルガの目的から外れてはいるがやはり駆除しなければならないだろう。
「チッ」
思わず舌打ちが漏れる。
強いからこそ、殺し合いをしろなんて言われて、じゃあ殺すかという気になったという事か。
確かに、連中の言う事が真実である可能性に賭けるのも選択肢ではある。
だが、ダークニンジャもそうであるように、まともに考える頭があれば連中の言葉なぞ何一つ信用に値しないとわかろうものだが。
話し合いは可能か。とりあえずモニター越しでもいいから会話をして、人となりの一端でもわかれば、といった事を考えながら、オルガは霊柩車のエンジンを切る。
後部座敷に座るコナンとヤモトも、神妙な顔でその時を待っている。
あと少しで、連中の言っていた最初の死亡者報告の時間になるのだ。



【C-8/早朝】
【オルガ・イツカ@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ】
[状態]:健康
[装備]:コルト・ガバメント(4/7)+予備弾倉×2@現実、クナイ・ダート×3@ニンジャスレイヤー、武装霊柩車ネズミハヤイDⅢ@ニンジャスレイヤー
[道具]:支給品一式
[思考・行動]
基本方針:鉄華団のメンバーと合流し、殺し合いを瓦解させる。
1:三日月とビスケットを探す。
2:放送を聞いた後、コナンとヤモトから話を聞く。
3:南下して時計回りにCGS本部を目指し、十二時間後にダークニンジャと合流。
4:ベッピンを探す。ニンジャスレイヤーにダークニンジャのメッセージを伝える。
[その他]
※参戦時期は地球到達直後。

【ヤモト・コキ@ニンジャスレイヤー】
[状態]:健康
[装備]:ヤモトのスカーフ@ニンジャスレイヤー
[道具]:支給品一式、不明支給品1(武器の類ではない)
[思考・行動]
基本方針:ニンジャがシュウゲキするならば相手をする。
1:シャルティアから逃げる。
2:二人のニンジャに警戒。
3:折り紙を確保し大量にバッグへ仕込む。
4:……………………。
[その他]
※参戦時期はスワン・ソング・サング・バイ・ア・フェイデッド・クロウにて『シルバーカラス』と対峙する前から。

【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:双眼鏡(トロピカルランドの備品)飛行ネックレス@オーバーロード
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いからの脱出
1:シャルティアから逃げる。
2:人外の怪力と運動能力を持つシャルティアの打倒。
3:蘭、灰原の保護
※シャルティアの恐るべき能力を見ました。魔法の存在を認め、この世に本当に魔法があるとどうなるかを考えています。

【E-8/早朝】
【シャルティア・ブラッドフォールン@オーバーロード】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:
[思考・行動]
基本方針:人を探す
1:人を見つけ、ここが何処か等の基本情報を入手する。
2:アインズ様にこの楽しい場所(トロピカルランド)を是非紹介したい。(←名簿を見ていないので、アインズが来ている事は知らないがっ)
3:もうとっくに追いついてもいい頃合でありんすが……
※彼女の支給品他は、G-6付近に放置されたままです。また彼女は首輪爆破で自分は死なないと思ってますし、殺し合いのルールも何一つ把握しておりません。
※シルバーカラスよりニンジャスレイヤーの世界に関する様々な事を聞き出しました。
※どうやらシャルティアの吸血鬼の気配は、ニンジャや人喰といった鼻の利く連中には、かなりの遠距離からでも存在を感じ取られてしまう模様。


【C-8/早朝】
【ダークニンジャ@ニンジャスレイヤー】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品0~1、鉄華団のマーク入りペナント、キルリアン感知機
[思考・行動]
基本方針:ベッピンを取り戻す。脱出、優勝、可能性の高い方を選ぶ。
1:ベッピンを探す。役立ちそうにない者は人目につかないよう抹殺する。
2:光覇明宗総本山、501基地を調査し、十二時間後にCGS本部でオルガと合流する。
3:ニンジャスレイヤーを殺す。十三時間後、指定した場所でイクサを行う。
4:三日月・オーガス、ビスケット・グリフォンの捜索・保護。
5:キルリアン感知機とやらに、明らかにニンジャでないものも反応していた。これはよもや……
[その他]
※参戦時期は第六話『コンスピーラシィ・アポン・ザ・ブロークン・ブレイド』以後。


【E-7/早朝】
【月山習@東京喰種トーキョーグール】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:喰種同士で力を合わせて脱出する。
1:ヤモリと霧島董香に協力を持ちかける。
2:甚だ不本意ではあるがカネキ君には手を出さない。
3:とんでもない化物を見つけて、何事だと思ったらこれを忍び探っている奴を見つけ、何者だと思ったらそっちにも凄い化物が居た。
※この殺し合いは他所の喰種達が娯楽の為仕掛けたものだと考えており、無理矢理さらわれた者の他に狩人が居てこちらを殺しにくると予想しています。

時系列順で読む


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035:歌う角笛の騎士と銀鴉の忍、そして吸血淑女 江戸川コナン 053:くっ殺(ガチ)
ヤモト・コキ
シャルティア・ブラッドフォールン 060:最凶のバケモノ達
021:レイズ・ザ・フラッグ・オブ・ダークアイアン オルガ・イツカ 053:くっ殺(ガチ)
ダークニンジャ 060:最凶のバケモノ達
034:人と喰種と 月山習

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最終更新:2017年03月31日 11:43