佐藤和真ですが、戦車内の空気が最悪です ◆QkyDCV.pEw
佐藤和真ですが、戦車内の空気が最悪です。
うん当たり前だけどね。俺も流石にこれをからかう気なんて無い。てか今の三人おちょくるとか俺どんな外道だよと。
正直に言う。俺、今、東方が怖くて仕方がねえ。
タダでさえおっかねえ顔(と髪型)に加えて、殺気なんてもんがそこらに漂ってる。
流石に幾らキレてても女の子殴るような事はしないだろうけど、俺には多分ヤる。後でごめんとかすまねぇとか謝って済ませる流れで、怪我しても俺が治すからいいだろーとかいう勢いで二目と見れない顔にされる。
なもんで戦車の中で一切の発言が出来ない。
こんな時頼りになるのは華やかな女の子達だけど、うん、無理。特に宮藤。何かきっかけあったら色んなもんが噴出しそうな顔してる。
残るは西住だけど、こっちも表に出てないだけだと思う。
あー、放送の前にアホな事聞かなきゃ良かったって心底後悔してる。
いやね、でもさ、気になるじゃん。それに宮藤は天然系だけど、東方と西住ってかなり頭良さそうだしさ。放送っての、どう受け止めたもんかーって、頭の良い奴に聞いておきたいじゃん。
俺もね、殺し合いしろなんて言われて流石に混乱はしてるんだよ。だから冷静に物考えられる奴に頼っても仕方ないと思うんだ。
んで、東方と西住の二人は全く同意見だったわけ。
『最初の放送で嘘ついてもしょうがねえだろ』
『最初の放送で嘘を言っても意味がありません』
かーらーのー、あの放送ですよ。
東方は親友だっていう虹村億泰が、宮藤は同じく親友のリネット・ビショップ、んで西住は前に通っていた学校の同級生で一緒に部活を頑張った仲間逸見エリカが、死んだって放送だ。
俺はさ、まだここでおっかねえ殺し屋みたいなのって東方しか見てないからわかんないんだけど、東方とか西住は戦車に乗ってても逃げるしかない(それ絶対人類じゃねえだろ)奴に出会ったみたいで。
東方の親友も宮藤の親友も無茶苦茶強いらしいんだけど、それが殺されても仕方が無い、ってぐらいの奴がうろついてるらしい。
つまり放送が本当でもおかしくないーって事で。
んで、だ。俺はこの地獄のような状況を一発解決する方法を知ってるわけだ。
アクア来てるらしいし、死体見つけてあいつの所持ってきゃいいんじゃねって話。
死んですぐじゃないと駄目だとか、もう一人の女神様曰く蘇生は一回だけとか色々あるみたいだけど、アクアならその辺すげぇ融通ききそーだしさ。
だ、が。
この空気の中でそれを言い出す勇気が持てません。ほら、だって『死んだ? ああ、魔法で生き返らせればいいじゃん』なんて言ってみ。
俺次の瞬間、東方にミンチにされてると思う。いや比喩とかでなくリアルミンチにされた挙句、おらさっさと生き返れやクソがとか言われそう。
でもな、いずれアクア見つけたら頼む気だしさ。だったら何で前もって言っておかねえんだよとかやっぱりキレられそうじゃん。
どうしたものか、って悩んでた所に、西住が声をかけてきたんだ。
アイツ、東方の方を見て何か目で通じ合ってるようなやりとりした後、まるで俺の心を読んでるかのように、話を振ってきた。
死んだ人が生き返るのかって話を。
西住みほは一度戦車を止める。
エンジンの騒音は相当なもので、完全にエンジンを切ってしまうと逆に耳が変に感じてしまう程周囲は静かになる。
みほは砲座に座る東方仗助をじっと見つめる。
仗助は一度深呼吸をした後で、みほをまっすぐに見返し、強く頷いて返す。
みほは先に宮藤芳佳の方に声をかけた。
「宮藤さん、少し重要な話をしたいと思いますので、聞いていてもらえますか」
「…………」
返事は無い。みほは構わず今度は佐藤和真に声をかける。
「佐藤君。幾つか確認したい事があるのですが、構いませんか?」
「ん? お、おお。いいぜ、何?」
「佐藤君は一度死んだ、と言ってましたよね。ですが今の貴方はどう見ても生きているようにしか見えないのですが、今の佐藤君は生きている、でいいんですよね?」
「ああ、転生……って事なのかな」
「それでは死ぬ前と今では肉体的に差異はあるのですか?」
「いいや、死ぬ前と一緒だよ。実際、俺死んだ時の記憶無くて、気を失った程度の感覚しかないんだよね」
「でしたら、佐藤君の体は今二つあるのですか? 既に亡くなった体と、今の転生したという体とで」
「ん? んん? それは……どうなんだろう。異世界転生物の定番じゃその辺つっこんだりしないしなぁ。元の世界に帰るって結末になるんならそりゃ体が二つあっちゃ変だろうけど……」
「あくまで仮定ですが。佐藤君が本当に死んでいたとしたのなら、一度は死からの蘇生が行われていた、という事になりませんか?」
芳佳が驚き顔を上げる。仗助の表情も硬く強張る。
そしてカズマはというと、少し考えこんだ後で、おもむろにこうのたもうた。
「……あー、そのー、だな。すげぇ言いずらい事なんだけど、今の流れなら言ってもいいか。これをどうお前等に言ったものかすげぇ悩んでたんだけどさ、俺、死んだの異世界に行く前の一回だけじゃねえんだわ」
さしものみほもポーカーフェイスは無理。カズマは続ける。
「異世界に行った後、雪山で剣持ったデカイのに俺、首飛ばされて死んだんだってよ。んでその俺を、一緒に居た女神のアクアって奴が生き返らせてくれたんだわ。ひどい怪我から治った云々じゃなくて、もう首から上が斬り飛ばされて、頭が地面を転がって首から噴水みたいに血が噴き出てたらしい」
カズマはおそるおそる仗助の様子を伺ってみたがすぐに目を逸らして、見なかった事にした。
「あ、アクアは名簿見る限りじゃここ来てるみたいだしさ。アイツ馬鹿で態度デカくて空気読めなくてどうしようもない駄女神だけど魔法の力だけはすげぇし、その、この騒ぎで死んだ奴出ても、アクアに頼めば何とかしてくれるかなって……」
カズマは今度は芳佳の方を見てみる。彼女はもう呆気に取られたなんてものじゃない大口開けた顔をしている。
そりゃ信じらんねえよなー、とか考えてるカズマにみほが言う。
「楽観は出来ません。今回のこの企みを考えた人達は、例え死者の蘇生であっても願いを叶えてやる、と言っていました。それは佐藤君の言葉の裏づけになるものでもありますが同時に、最後の一人になるぐらいしなければ蘇生はさせない、と言っているともとれます」
驚いたカズマが口を挟む。
「そりゃアクアに何かするって話か!?」
「既にした上でなければそもそもこの企みは成立しない、と思うのです。佐藤君、魔法で人を生き返らせるというのは、その女神アクアさん以外にも出来る人は居るのですか?」
「俺の知る限りじゃアクアと……後、もう一人の女神は多分出来る。そういう神様の事俺はそれほど詳しく無いんだよな。アクアもあまり話さないし。まあアイツの場合本当に知らない可能性が極めて高いんだが」
「その、言いにくいかもしれませんけど、良ければ佐藤君が亡くなった前後の状況を詳しく教えてもらえますか。恐らく、この企みを考えた人達は佐藤君の知る蘇生に関しても、何が出来て何が出来ないかをよりしっかりと把握していると思いますので」
「おう任せろ。自慢じゃないけど俺、死んだ回数なら並の奴には負けない自信あるぜ」
仗助は、下手に口を開けば自分が何を言い出すかわからないのでずっと沈黙を守ってきたのだが、ここで遂に堪えきれずにつっこんでしまった。
「……本当それ、自慢じゃねえよな……」
みほはちらっと仗助の方を向き、めっとばかりに視線と呼びかけで抗議する。
「東方君」
「わ、悪い。大丈夫だ。かなり、キレたくなる話題だが重要な事なのも理解してる。後、滅茶苦茶ムカつくけど佐藤に悪気は無い事もわかってる。わ、悪かったな佐藤。続けてくれ」
「お、おうっ」
そっかー、やっぱりキレたくなる話題な挙句滅茶苦茶ムカツいてるんだー、と心底ビクつきながらカズマは説明を始めた。
全ての説明が終わる頃、カズマはちらっと芳佳の表情を伺ってみた。
すがるような目でカズマを見ている。
『これでもし、やっぱり出来ませんでしたーなんてなったら洒落になんねえ。でもなぁ、アクアを頼ると絶っっっっっっ対ロクな事にならないって知ってるんだよなぁ俺。でも今更やっぱ生き返るのなしー、なんて言ったらそれこそどうなっちまうものか……』
そんなカズマの苦境を救ってくれたのはみほであった。
優しく芳佳へと語りかけるみほ。
「宮藤さん、まだ色んな事が不明瞭なままです。放送の真偽すら、確認は出来ていません。気持ちは……わかりますがどうかここは心を乱さず、冷静に、状況の把握に努めましょう」
色々と受け入れ難い事の続く芳佳であるが、彼女もまた幾多の死線を潜り抜けてきた戦士である。
それに、心優しい芳佳は自分を見失う程動揺していたとしても、目の前にいる女性もまた大きく傷ついている事に、気付かないなんて事はないのだ。
「うん、ありがとう西住さん。ごめんね、私ばっかり面倒かけちゃって。わ、私は大丈夫だから、西住さんも無理、しないでね」
そう返された事にみほは驚き目を見開く。その後すぐに出たみほの笑みは、何処か儚さを感じさせるものであった。
「私も、大丈夫。悩むのも、それ以外も、後にするって決めてるから」
仗助はそんなみほの笑みを見て、不覚にも一瞬全てを忘れて見惚れかけた。
見た目がどうとか、言葉がどうとかだけではない。それら全てをひっくるめた西住みほという人物に、強い敬意を抱いたのだ。
そして、そう思える相手だからこそ、彼女ばかりに負担をかけられないと思えた。
仗助は出来るだけ穏やかに聞こえるような声を出す。
「なあ佐藤。そのアクアって奴は人を生き返らせる魔法が使えるってんだよな。それも首が飛ぶような怪我でも元に戻っちまうと。それは例えば俺や宮藤のように、生き返らせるってのとは別に怪我の治療も出来るって事か?」
「あ、ああ。アクアのヒールはもんのすごく効く。他にもターンアンデッドやら結界張るやら色々と出来るみたいだけど、当人が馬鹿すぎるんで上手く活用出来てないんだわ」
「……馬鹿ってお前よりか? ああ、うん、いや、そいつはいいんだ。ただな、その生き返らせるって魔法は、怪我を治すってシロモノの延長線上にあるものなのか、って事を聞きてーんだ」
実は佐藤和真君、言う程馬鹿ではない。なので仗助が何を聞きたいのか一発で見抜いた。
「死んじまったなら、例え怪我を治しても生き返りはしない、と思う。俺は死ぬ度毎回あの世みたいな場所で別の女神に会ってんだ。その時の俺の体は、西住の言うもう一つの体なのかどうなのかはわかんないけど、ともかく、そこから俺が戻らない事には怪我が治ってても生き返る事は無いんじゃないかなって思う。思う思うってばっかりで悪いんだけど、俺も正式に勉強したとかじゃなくて経験則って奴だからそこは勘弁してくれ」
首を横に振る仗助。
「いや、お前の話は俺にも納得の行く話だった。幾ら怪我を治しても、一度死んだ人間はそれだけじゃ生き返ったりはしねえ。それは俺も以前に確認してある」
自分の祖父で確認した苦い経験ではあるが、それが表に出ないようにしながら仗助は淡々と言う。
空気を読んだか偶然か、カズマはそこには触れずすぐに別の話題へと。
「当たり前、なんだけどさ。人が生き返るなんて話、東方も西住も宮藤も聞いた事無いよな?」
三人共が頷く。
「俺もアクアに会うまではそんな事が現実に起こるなんて考えちゃいなかった。そんな事を当たり前に口にして来たのは、アクアと、今回の企みを仕掛けてきたあの坊さんぐらいだ」
そういえば、といった顔の芳佳と、その通り、と頷く仗助とみほ。予想通りの反応にカズマは、予想通りだったが故に綺麗に話を繋げ続ける。
「考えたくはないけど、アクアを連れ去るなんて真似が出来るんなら、もう一人居る俺の知ってる女神を、連中がさらったって事も考えられる。だとしたら、連中の言っている事も嘘なんかじゃないって事になる。女神ってのは地上に降りると弱くなるらしいんだけど、アイツはアクアなんかよりよっぽどしっかりした女神らしい女神様だ。それをさらうなんて……」
仗助が口を挟んで来る。
「もし、そのアクアってのに会えたら、一度俺のスタンドが効くかどうか試していいか? もし俺のスタンドで治療が出来るっていうんなら、他の悪い影響を及ぼすスタンドも通用する理屈だ。それなら、相手を支配する類のスタンドもあるってのを俺は知ってる。連中は俺達の誰より先に異世界を知ったっていうアドバンテージがある。そいつを駆使して、それぞれの世界の中じゃ当たり前な事の裏をかいて好き放題してるんじゃねえか?」
うわぁ、と頭を抱えるカズマ。
「それ完璧にやられたら勝ち目ねーじゃん」
「それが勝負事だっていうんなら、勝ち目の無い戦いなんざ間抜けのする事だ。だがな、戦いってのはそうじゃねーんじゃねえのか? 戦わなきゃならねえ時ってのは、大抵こっちの都合なんざお構いなしだ。それでも譲れないものがあるからこそ、戦おうってんじゃねえのか」
仗助はそちらを見なかったが、みほの声が聞こえて、それが嬉しそうなものであったのが、少し誇らしかった。
「うん」
仗助もみほも、闇雲にただ戦うような真似はしない。何処何処までも諦めず考え抜いて、勝ちの目を引き寄せようという努力を怠らない。そんな仗助が口にし、みほが頷くからこそ、この言葉は若気の至りだのといったものとは一線を画するのだろう。
そうした理屈を理解しているわけでもないのだが、宮藤芳佳もまた戦いを前に怯え引き下がるような者ではない。
「私も、もちろんそのつもりだよ。だって私、ウィッチなんだから」
カズマはそんな三人のノリに少し釣られている自分を自覚しながらも、まあ仕方ないか、と置かれた環境を鑑み自分を納得させる言い訳とする。
「おーおー、三人共かっこいいねえ。俺は真っ向からやりあうなんて柄でもないし、セコくコスくやらせてもらうけどな」
冗談めかしてそう言ったのだが、何故かみほにも仗助にもこの言葉は大層好評であった。
みほはぽんと手を叩く。
「はい、そういうので行きましょう。相手が強いという事だけははっきりしてるんですから、こちらは手間暇をかけてこそこそーって感じで」
始めて、嘲笑とかではなく楽しげにカズマに笑いかける仗助。
「そうだな、あんだけふざけた連中だ、おちょくってやるぐらいがちょうどいいだろ。おめえはそういうの得意そうだしアテにしてるぜ」
一人落ち込んだ気配の芳佳。
「わ、私はあまり頭を使うのは……で、でもセコくズルく、だね。頑張るよ。と、とりあえずはお夕飯のおにぎりの具をわさび漬けに変える所から……」
速攻でカズマが突っ込む。
「俺達にセコくしてどーする。後それ多分食ったら美味いぞ」
「だ、だって美味しくないもの食べるとかあんまりだし。でもちょっとした刺激っていうかびっくりをね」
「だから俺達にそーしてどーすんだよ」
二人のやり取りを見て、仗助とみほは同時に安堵の息を漏らす。それに気付いた二人はお互い顔を見合わせる。
何とか芳佳が元気を取り戻してくれて良かった、そんな事を二人が同時に考えていて。二人は同時に噴き出すと穏やかな笑みを浮かべる。
思いっきり笑い合える程精神状態は安定しているわけではない。それはひたすら冷静であろうとし続けているみほであってもだ。
ただそんな苦しい中であっても、ほんの少しなら笑う余裕を持てた。そして、自分でそうしてみて始めて、無理して作った笑みにも、心を安らげる効果があるのだと二人は知ったのであった。
【E-7/朝】
【東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:
[装備]: 戦車(IV号戦車F2型)搭乗中
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品(1~3) 片桐安十郎の支給品一式
[思考・行動]
基本方針: 殺し合いを打破する。
1:康一たちと合流する。
2:アイツら(吉良吉影、アンジェロ、剣の男)はぶちのめす。
3:西住、宮藤、佐藤と行動する。
4:放送も名簿も蘇生の魔法もまだ真贋は不明のままで、その
※吉良登場以降からの参戦です。
【西住みほ@ガールズ&パンツァー】
[状態]: 疲労(中) 精神疲労(大)
[装備]: テーザー銃@現実 戦車(IV号戦車F2型)搭乗中
[道具]: 基本支給品一式、戦車詰め合わせセット(折る事で即座に装備出来るオーバーロードの課金アイテムの木の棒が五本。その中に、それぞれ一台づつ戦車が入っている。判明しているのはヤークトパンター、マウス、IV号戦車F2型の三種でIV号戦車F2型とヤークトパンターの分は既に折って使用済み)
[思考・行動]
基本方針: 殺し合いには乗らない
1:東方くん、宮藤さん、佐藤くんと一緒に行動する。
※ヤークトパンターはF-6の川沿い町側にある民家の敷地内に隠してあります。
【宮藤芳佳@ストライクウィッチーズ】
[状態]:
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2 遠隔視の鏡
[思考・行動]
基本方針:民間人の保護
1:501隊の仲間と合流する
2:東方くん、西住さん、カズマくんと一緒に行動する。
※劇場版後から参戦。
【佐藤和真@この素晴らしい世界に祝福を!】
[状態]:
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:
1:マジで夢じゃなかったのかよ
2:東方、西住、宮藤と行動する。
※アニメ9話でサキュバスの館へ行った後ベッドに入った直後から参戦。
時系列順で読む
投下順で読む
045:芳佳のあのね |
東方仗助 |
: |
西住みほ |
: |
宮藤芳佳 |
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佐藤和真 |
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最終更新:2017年03月31日 11:24