納鳴村の見え方 ◆QkyDCV.pEw
最初の定時放送を聞き終えた後、松野カラ松は川を流れていくトド松の姿を思い出していた。
再び体に震えが来た。カラ松にはその震えの理由がわからなかったが、怖くて震えているというのだけは自分でもわかる。
悲しむよりも、怒るよりも、まず先に怖いとカラ松は思ったのだ。
助けを求めるようにカラ松は共に行動する広瀬康一に目を向ける。そこで、彼の見せた変貌っぷりに目を見張る。
怒髪天を突くとは正にこの事だろう。髪が逆立って見える程、康一は激怒していた。
康一は、声だけは平静なままで言った。
「ねえ、カラ松さん。例えば、ですよ。自分の大切な友達を、ロクに彼の事を知りもしないクソ野朗が、ざまあ見ろって言わんばかりに死んだとかぬかしたら、どう思います?」
「え? ええと……」
「ムカッ腹、立ちません? もし目の間にソイツが居たなら一発入れてやらなきゃ収まらないぐらい、頭に来ませんか? もし、親切心で言ってますーなんて戯言抜かしたら、起き上がれなくなるまで殴りたいって、思っちゃいますよね」
「お、おう。でもそれ俺じゃないからな、おーけい? 俺チガウ。俺コウイチの敵チガウ」
「わかってますよ。見境無く暴れたりなんてしません。けど、コレ、間違いなく、僕、怒っていいですよね? こんな事抜かすクソ野朗見かけたら、思い知らせてやっていいですよね?」
「うん、うん、怒っていいと思うぞー。でも俺じゃないからな、俺には怒らないでください、プリーズ」
滅茶苦茶怖いらしく、つい敬語になってしまうカラ松。
康一は自らのこめかみを手で抑え、三回、呼吸を行い心を整える。
「……ごめん、もう大丈夫。億泰君はまだ、きっと生きてる。だから……」
そこで言葉を区切って康一はカラ松をまじまじと見つめる。
カラ松の目の縁が小刻みに揺れている。さっきの放送で、カラ松の弟の名前が呼ばれたのは康一も知っている。その弟の死体を、カラ松は目にしているのだ。動揺も無理も無い話だろう。
康一はそんな彼に負担をかけるのは、心苦しいと思えた。
今の康一はもう、とにかく隠れてやり過ごすといった思考はない。こちらからも積極的に動いていって人を探し、敵と味方を見極めつつ味方を増やそうと考えている。
そんな道行きにカラ松を連れて行ったものか、と悩んだのだ。
カラ松はこの村に置いて、自分のみが動き回るというのが良さそうな考えに思えたのだが、康一は何故かそれを実行に移す気になれなかった。
彼を一人残していくのが心配だ、というのもある。ただ、危険さで言うのなら探索に共に出る方が絶対に危険だ。何せ人が居たらこちらから接触を取ろうというのだから。
カラ松は勇敢な青年だが、だからとスタンドも持たぬ彼では先のような人外相手では足手まといにしかなるまい。ましてやそんな相手に蛮勇を振るったならば結果は火を見るより明らかだろう。
ならば隠れられる場所に隠れていた方がいい、と思うのだが、やはり何度考えても、康一はカラ松をココに置いていくのは良くないと思えてしまうのだ。
「康一ボーイ?」
カラ松が不思議そうにこちらを見返してくる。
その仕草が康一が尊敬するちょっと変な人と被って見えた時、康一はようやく自分の違和感の正体に気付いた。
出来るだけ、不自然でないように心がけながら、康一はカラ松に言った。
「もう休憩も充分取ったし、そろそろ動こうと思うんだけど、どうかな?」
カラ松はきょとんとした顔だ。
「ん? しばらくはここに居るんじゃなかったのか?」
「んー、どうだろう。地図を見る限りじゃ、町もあるらしいから、隠れるんならそっちまで行っちゃった方がいいかもなってさ。ここも悪くないんだけど、虱潰しに村を探すとかされたら、森に逃げ込むしかなくなる。それは山歩きにあまり慣れてない僕等に有利な事とは思えないんだよなぁ」
カラ松はそう言われて、すぐに得心したように頷く。
「フッ、そうか。なら、町まで行くかい?」
「ああ、そうしよう。もしかしたらおいしいものもあるかもしれないしね」
そういたずらっぽく言うと、カラ松も僅かに笑みを見せてくれた。
赤井秀一は康一達の急な方針転換に少し戸惑う。
それまでの話の流れや、彼等が得られるであろう情報達をどう整理しても、いきなり移動しようという話にはならないはずなのだ。
可能性として考えられるのは、今聞こえてきた放送を聞き、方針を変更せざるをえなくなったという事だ。康一という少年は、虹村億泰の名が呼ばれた瞬間、劇的に表情に変化が生じていた事からこの名がキーワードとなろう。
赤井は、彼等の前に姿を現すべきかどうか、一瞬で考える。
いや、ここから出ていく、それもあの殺人者達の居る方向とは別の方に向かうというのであれば、見送っても問題が発生する可能性は低いと考えられる。
この村で、赤井は生き残る算段をつけなくてはならない。それは、敵を倒す事と同義だ。
殺人者が徘徊している土地に放り込まれた多数の無力な人間達を、如何に救うのが一番効率的か。簡単だ、殺人者を全て駆逐しきってしまえばいい。
放送内容を信じるのであれば、先に出会った二人組の殺人者ではとても殺しきれないだろう数の死者が出ている。それはきっと、あの二人以外にも人殺しがいるという事だ。
赤井には効率的に手際良く、殺人者を始末していく事が求められる。では、どうするか。
この村を、殺人者にとってのキリングフィールドにしてやればいい。
武器? 無いなら作ればいい。必殺の殺し間をこの村の各所に用意し、殺人者を招き寄せて殺す。
幸い、ここは村で、幾つかの面白そうな道具も見つけてある。また和風家屋である為、軒下や天井裏も入りやすく、今康一とカラ松を見張っているように隠れ潜む事も容易だ。
これらを活用すれば、有効な武器も作る事が出来るだろうし、待ち伏せやら仕掛けやらにも向いている場所だろう。武器は、とりあえず弓辺りを赤井は考えている。
そんな危険な場所となるこの村には、彼等は居ない方がいいだろう。
或いは、殺人者であろうとこれを殺す事に忌避感のある者も居るかもしれない。だから、赤井がやるのだ。
何でもそうだ。出来る者がするのが、一番効率が良い。ここにどんな者が集められているのかはわからないが、殺人の訓練を受けている赤井がそうするのは至極理に適った行為であろう。
故に赤井は二人を見送る。彼等が悪意を持って赤井の情報を洩らすとは考え難いが、必殺の殺し間をより磐石のものとする為には用心に用心を重ねるべきだ。
あのバーボン、安室透ですら不覚を取る場所なのだから、ここは。
村から離れた所で、康一はこんな事をカラ松に訊ねた。
「ねえカラ松さん。あの村さあ、何か変な感じがしたとかそういうのあった?」
「え? いや、俺はそういうのは無かったぜ……」
そっか、といい、康一はこれ以上この話題を続けはしなかった。
康一が村を離れたのには、れっきとした理由がある。
それは康一が、あの村をかつて入り込んでしまった杉本鈴美の居る場所と、似ていると感じたからだ。
人が全く居ない町並みといった表面的な類似ではなく、もっと別の、肌にまとわりつくような、空気が違うとでもいうような、感覚だ。
以前に感じたその不思議な空気と、今この山中の村を取り巻く空気が似通っている、と康一には思えてならなかったのだ。
あくまで勘の範疇であり、理論的に云々なんて話ではないので、これを普通に話してカラ松を納得させるのは困難だろう。だから康一はああ言ったのだ。
夜が明けたとはいえ、山中の移動は困難を伴うだろうし、木々が乱立する最中を歩く事になるのであるから、不意打ちへの警戒も難しかろう。
それでも康一は、あまりあの場所に居るのはよろしくないと感じていたのだった。
【C-6/朝】
【広瀬康一@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:殺し合いに反対。
1:ここに居るらしい仗助と億泰を探す。
2:ヤモリ、クレマンティーヌから逃げる。
3:カラ松を守る。
4:吉良吉影の危険性を伝え、捕まえる。
※本編終了後より参戦
※スタンドのことは「どうせ見えないだろう」と隠しています。
【松野カラ松@おそ松さん】
[状態]:健康
[装備]:H&K USP(13/15)
[道具]:予備弾薬30、支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・行動]
基本方針:帰る。
1:康一に引っ張られて移動する
※トド松の死体を見ました。
※康一のスタンドも見ましたが、その事を康一に確認する時間的余裕はありませんでした。
【C-6納鳴村/朝】
【赤井秀一@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:アーミーナイフ、支給品一式、不明支給品(1)
[思考・行動]
基本方針:主催者の調査を行いつつ一般人を守り殺し合いからの脱出。
1:江戸川コナン、灰原哀、毛利蘭の保護。
2:首輪の解除のために解析を行う。
3:ダーハラを知っている人間がいるならば接触を行う。
4:ジンへ警戒。
5:納鳴村にて、殺人者を始末する為の仕掛けを用意する。
[その他]
※参戦時期は緋色シリーズ(原作84及び85巻、アニメ779~783話)終了以降。
※名簿の記載に疑問を抱いております。
・ジンのみがコードネーム記載→組織の犯行と推測。
→しかしバーボンが安室透と記載されているため、組織の犯行とは断定できず、むしろおかしい。
・赤井秀一は赤井秀一として記載されている→組織時代のコードネームであるライではない。
・江戸川コナンは工藤新一として記載されていない→正体を把握していない。
これらのことから主催者は「彼らの正体を把握していない」と推測→しかし、それならば何故この面子が集められたかは現段階では不明である。
※首輪には盗聴器能があると睨んでいます。
※安室透の死に様が、心にこびりついています。
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047:納鳴村へ |
広瀬康一 |
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松野カラ松 |
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赤井秀一 |
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最終更新:2017年03月31日 00:17