Shovel Knight ◆4Niu9EDMqM


「ない……ないっ!?」

海上に浮かぶ巨大な学園艦の倉庫の片隅で、活発そうな女子高生、恵飛須沢胡桃が
可愛らしいツインテールを振り乱しながら鞄の中身をひっくり返して狼狽えている。
殺し合いという異常な世界に連れて来られる以前から既に彼女の住む世界は狂っていた。
街にはゾンビのようなが奴等溢れかえり、僅かな仲間たちと学校に籠城して明日の見えない日々を送っていたのだ。
そんな彼女が、今まさにかつてない危機に晒されている。

「あたしのシャベルが!入ってない!」

世界が壊れたあの日から常に肌身離さず持っていた愛用のシャベル(園芸ショベル木柄¥1,580)が
陰湿な主催者の手によって彼女の元から引き離されてしまったのだ。あのシャベルはただのシャベルではない。
胡桃と共に数えきれない奴等を次々と始末し、友人たちを守ってきた歴戦の相棒であり、めぐねえに
「彼女のシャベルがなければここまで生活圏を広げられなかった」と言わしめるほどのかけがえのない仲間の
ひとりなのだ。ディバッグから転がり落ちた銃火器も目に入らず、残酷な現実に胡桃は打ちのめされていた。

「そんな……酷すぎる!あんまりだ……許さねえぞ畜生っ!」

ずっと好きだった部活の先輩も奴等になってしまった。この手で始末した。
もうこれ以上仲間を失う訳にはいかない。零れる涙を拭きながら胡桃は落ちていた銃火器を
興味無さそうに拾い上げ、ディバッグに仕舞いながら幽鬼のように立ち上がった。

「一体だれが持ってやがるんだ?絶対アタシが取り戻す!」

それにしてもここは何処なんだろう?何か工事をしていたような跡があるが。
ひょっとしたらシャベルの代わりになるものが見つかるかもしれない。
一時的とはいえやはり何かシャベルの様なものがないと落ち着かないのだ。
そうして倉庫を探索することになった胡桃。ここは戦車道という競技が存在する世界から
何らかの方法で連れてこられたか模して再現された空母のような学園艦。
彼女は知らないだろうが運が良ければ彼女は戦車を見つけることが出来るかもしれない。
だが廃校寸前の工事中だったがゆえの偶然か、主催者の悪戯か。
胡桃が見つけたシャベル君の代わりは更に意外な物であった。

「ん?なんだありゃ?……重機!?にしても、なんだこの形状は?」

それは、恵飛須沢胡桃が初めて見る重機だった。
真紅に染まる機体色、何より本来一つしかない筈のシャベルが二つ付いている。
日立建機の双腕仕様油圧ショベル「アスタコNEO」である。

「シャベルカーかぁ、いくらなんでもこれじゃ小回り効かないよなぁ。
 奴等相手ならすっげぇ便利なんだろうけどさ」

そう言いながらもその機械の腕に付いた立派なシャベルにときめきを覚えた胡桃は
吸い寄せられるようにアスタコNEOのコックピットへと移動し、中に座る。
免許は持っていないが車を運転してデパートまで遠足へ行ったことがあるし、
ドライブテクニックはかなりの腕に達しているのだ。

「変な操縦席だなぁ。ガンダム?まあいいや、行くぞ!
 ……おっお、結構速いじゃんこれ!」

何故か戦車並みの速度で起動する油圧ショベルに乗って倉庫を出た胡桃は
キャタピラを走らせ誰も居ない静かな町を走行する。

「待ってろよ!あたしが必ず探し出してやるからな!」


【H-1/深夜】
【恵飛須沢胡桃@がっこうぐらし!】
[状態]:健康
[装備]:双腕仕様油圧ショベル「アスタコNEO」@現実?
[道具]:支給品一式、不明支給品(何らかの銃火器)
[思考・行動]
基本方針:
1:愛用していたシャベルを探す
2:友達を捜し出して保護する


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恵飛須沢胡桃 015:らすぼす

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最終更新:2016年07月07日 17:11