バック・トゥ・ザ・バック ◆9FT2f.3o12


 名簿を見てみると自分の他にアインとマクギリスの名前が記載されていた。
 ギャラルホルンの仲間同士であるが、殺し合いに巻き込まれる心当たりなど微塵も存在しない。
 軍人として活動している以上、当然のように恨みを買われることは少なからずある。けれど、これ程までか。

 極刑など生温い人畜非道の行いだ。人間同士で殺しあえなどB級映画が好みそうな悪趣味である。
 ガエリオ・ボードウィンはそのような悪を許さない人間だ。彼の心は怒りに燃えている……と、言うのは不適切かもしれないが。
 開幕で行われた数人の男性が散ってしまった時間。自分は無力だった。何一つ止めることが出来なかった。
 子供も叫んでいた。けれど、自分が伸ばした腕は誰一人として救えることが出来なかったのだ。

 モビルスーツが無ければ、何も出来ないのか。違う。鉄華団に負けている時点で機体の有無は関係ない。

「鉄華団……俺もアインもマクギリスも、関わっているな……考え過ぎか?」

 何度も敗北――或いは勝敗が着いていない集団だ。
 いや、負けている。ただの宇宙鼠相手に何度も手を焼いている時点で負けている。
 そんな彼らと関わりを持つギャラルホルンの人間が名簿に記載されているがこれは鉄華団の仕業――そんな訳が無い。
 自分で考えた憶測を音速で否定したガエリオは支給品とやらの煙草を見つめる。

「少し明るい海……嫌味か?」

 銘柄だ。しかしガエリオは元々喫煙家では無い故にどのような代物かも分からずじまい。
 最も身体に害のある煙など軍人たるもの吸わないのが基本である。と、信じたい。

「海……か。最近は宇宙続きだな」

 故郷の妹が脳内に蘇る。
 数々の思惑が絡み親友であるマクギリスと結婚することとなっているが、元気にしているだろうか。
 今度帰った時には海にでも行って気分転換でも出来ればいいものだなと、物思いに耽る。



 さて……殺し合いには当然、ガエリオ以外にも参加者がいる。
 適当に警戒も含め歩いていると一人の少女が視界に映り、接触を試みる。
 見たところ、まだ十五程度に見える少女の近くには誰もいない。
 美しい黒髪で綺麗な顔立ち、人形のようで歳相応の平坦だ。
 こんな女の子も巻き込まれるのか。
 と、ガエリオはダーハラと名乗った男の悪趣味さに嫌悪感を示す。

「俺はガエリオ・ボードウィン。安心してくれ、君の敵じゃない」

「ドーモ。ガエリオ=サン。ヤモト・コキです」

「うおっ」

 掌を合わせきちんとしたお辞儀を行う少女――ヤモトを見てガエリオは思わず声を漏らした。
 独りで暗闇に放置された少女を安心させようと声を掛けたものの、想像以上に礼儀正しく、驚いたのだ。
 美しいとまでに表現出来るアイサツは簡単に見えて簡単じゃない。
 一朝一夕で身に付くものではないのだが――会話を続ける。

「ヤモト。俺は危害を加えないから安心してくれ。誰かに会ったりしたか」

「……」

 黙って首を横に振るヤモト。どうやらガエリオが最初に出会った参加者のようだ。
 スカーフが目立つ、と、近付いたガエリオは美しいピンクに瞳を奪われながらも更に会話を続ける。

「知り合いは巻き込まれたりしているか?」

「……一人だけ、です」

「そうか……不安もあるだろうが心配するな。俺が脱出まで保護してやる」

「脱出が出来るんですか?」

「……諦めなければ、きっと」

 言葉の勢いは最初と最後で大きな差が生まれてしまった。
 アテなど無い。だが、諦める訳にもいかない。このまま黙って死ぬのか。違う。
 サンズ・リバーを渡るか。違う。悪が存在するならば打ち倒すのが正義の役目だ。

「武器はこれしかないけどな」

 バッグからバットを取り出し、持ち歩くことにする。
 急襲にも備えられるように。本音を言ってしまえば銃火器の類があれば心強かった。
 文句を言っても武器は出てこないため、しばらくはバット一つでヤモトを守るしかない。

「それにしてもこのバッグはどんな仕組みなんだ……?
 まるで宇宙に繋がっているみたいじゃないか。無限に入りそうだ」

「……折り紙を大量に持てる」

「……ん?」

 何か聞き慣れない単語が聞こえたような気がするも気にしないことにした。
 ヤモトは若干であるが顔を赤らめ下を向いている。恥ずかしいことでも言ってしまったのか。

 さて、今後の方針と言うと隠れれる建物の確保と仲間の散策である。
 どちらも移動を伴い危険であるが――動かなければ、状況も運命も決して好転はしない。



【F-8/深夜】

【ガエリオ・ボードウィン@機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ】
[状態]:健康
[装備]:金属バット
[道具]:支給品一式、少し明るい海(煙草)@ニンジャスレイヤー
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止め、ダーハラを倒し帰還する。
1:ヤモトの保護。
2:建物の確保と仲間の捜索。
3:マクギリスとアインの捜索。
[その他]
※参戦時期はアインがまだあんな状態になる以前から。



 ヤモト・コキは忍者である。
 生身の戦闘においてはガエリオの何倍も強い。
 だが、口には出さなかった。こんな自分を相手に保護を申し出てくれたのだ。
 何て良い人なんだろう。こんな人に会えたのは久し振りであり、嬉しくて感極まり泣きそうになるぐらいだ。

 しかし、迷惑は掛けれない。
 このまま一緒に行動していればソウカイヤのニンジャに彼も襲われてしまう。
 バトル・ロワイアルの主催者もきっと汚いニンジャの仕業に違いない。
 名簿に記載された二人のニンジャが追手だろう。ガエリオを巻き込むわけにはいかない。

 襲われればアタイが守る――この力を使って。



【ヤモト・コキ@ニンジャスレイヤー】
[状態]:健康
[装備]:ヤモトのスカーフ@ニンジャスレイヤー
[道具]:支給品一式、不明支給品2(一個は銃火器、もう一個は武器の類ではない)
[思考・行動]
基本方針:ニンジャがシュウゲキするならば相手をする。
1:ガエリオを守る。
2:ガエリオを自分の荒事に巻き込まない。
3:二人のニンジャに警戒。
4:あの人はどうしているんだろうか。
5:折り紙を確保し大量にバッグへ仕込む。
[その他]
※参戦時期はスワン・ソング・サング・バイ・ア・フェイデッド・クロウにて『シルバーカラス』と対峙する前から。


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GAMESTART ガエリオ・ボードウィン 35:歌う角笛の騎士と銀鴉の忍、そして吸血淑女
GAMESTART ヤモト・コキ 35:歌う角笛の騎士と銀鴉の忍、そして吸血淑女

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最終更新:2016年07月28日 09:28