13話:水も滴る良い女
「あの、大丈夫ですか……?」
「はぁ…はぁ…はぁ…無理、もう駄目、私は死ぬ」
砂浜で倒れていたずぶ濡れの少女に、青基調の露出の高い装具を身に着けた若い女性が、
心配そうに声を掛ける。
「私の
スタート地点は…海の上だったのよ……有り得ない……酷過ぎる…必死に泳いで来たけどもう……」
「しっかりして下さい!」
「もう起きる気力も無い……」
「ええと、その辺の民家に行きましょう取り敢えず」
「歩くのもきついって言うのにもう……」
疲労しきった身体に鞭を打ち少女は立ち上がり、女性に肩を抱えられながら民家に向かう。
着ている服は海水で下着まで漏れなく濡れおまけに砂がびっしり付着し酷い有様だ。
民家に着いたらとにかくまず風呂に入りたいと思う少女。
水が使えるのかどうかはまだ分からなかったが。
「米田」と表札の掲げられた二階建ての民家に二人は入る。
「風呂! 風呂! 風呂!」
「あっ、ちょっと……」
手足に溜まった乳酸も何のその。
少女は民家に入るや否や風呂場を目指し猛進して行った。
「もし乗っている人がいたら危ないのに……気持ちは分かるけど。
……誰もいないよね?」
少し怯えながらも女性は民家の中を探索し始める。
少女は風呂場で温かいシャワーを浴びていた。
「あー……」
非常にだるいが汚れを落とすために手を動かす。
べたつく海水や砂が湯と一緒に排水口へと消えていく。
一通り身体を洗い終え、シャワーを止めた。
身体は綺麗になったが一つ問題がある、着る物だ。
「こんな海水と砂で汚れた服と下着なんてもう着れないね……はぁ、仕方無い、着れる物探すしか無いか」
濡れたデイパックを引き摺り少女は脱衣所から出た。全裸で。
「! ちょ、何で裸なんです!?」
家の中を探索していた女性が全裸で出歩く少女を見付け咎める。
「いや、私だって裸で歩きたくないよ、そういう趣味は持ってないし勘違いはしないでね。
あのさ、服がもうとても着れる状態じゃないのよ。海水と砂で。だから代わりの下着と服を見付けようと思って」
「そ、それは分かりますけど……」
「ところで他に誰かいた?」
「いや、いませんでした……」
「そう、分かった。じゃあ服……服」
「私も一緒についていきますよ…何かあったら危ないですから」
少女の着る物探しに女性も付き合う。
「所で…助けてくれてありがとう。私は今給黎涼華。涼華って呼んで。貴方は?」
「私はクラリッサ・ブランチャード…フリーの冒険者をやっています」
「冒険者ね……私はまあ、普通の高校生……寒い、あ、この部屋にありそう」
二階の子供部屋と思しき部屋に二人は入る。
どうやら少女が使っていた部屋のようで可愛らしい調度品、アイドルグループのポスターなどがある。
クローゼットや箪笥を涼華は躊躇する事無く漁りまくる。
「よし、これ、私の身体に合いそう! あ、サイズの事だからね」
「分かってますよ…」
どうやらサイズの合う下着と服を見付けたらしい。
それを手際良く着る涼華。
数分もしない内に、どうにか普通に外に出れる格好にはなった。
「似合う?」
「え? ええ、まあ」
「とにかくこれで外は歩けるね…流石にマッパで外は歩けないからね!
世の中にはマッパで学校に行ったり会社へ行く猛者もいるって聞いたけど私は至って健全な女の子だから。
そう自負してる」
「別に聞いていませんよ」
「……支給品、確認しないと」
「あ、そうですね」
まだ支給品を確認していない事を思い出した二人は一階に移動する。
広い和室に入り腰を下ろしてお互いデイパックを開ける。
涼華のデイパックは相変わらず濡れていたが。
そして二人はランダム支給品を確認する。
涼華は自動拳銃ベクターCP1と予備弾倉二つ、そしてスタングレネード三個。
クラリッサは「三日月宗近」と言う銘の日本刀と、ポーランド生まれの最強の酒、スピリタス。
「拳銃に刀か、当たりじゃない」
「ええ…」
「……で? 私を助けてくれたって事はクラリッサさんは
殺し合いには乗っていないんでしょ?」
「はい」
「私もよ。じゃあ殺し合い乗っていない仲間捜しでもしようか」
「ですね」
二人は殺し合いに乗っていない参加者を捜す事にした。
「……でもちょっとだけ休ませて」
「……分かりました」
しかし涼華の疲労の度合いはかなりのもので、休んでから行く事にした。
【早朝/E-7海沿いの町:米田家】
【今給黎涼華】
[状態]肉体疲労(大)、風呂上がり
[装備]ベクターCP1(13/13)
[持物]基本支給品一式、ベクターCP1の弾倉(2)、スタングレネード(3)
[思考・行動]
0:殺し合いはしない。仲間を集める。
1:クラリッサさんと行動。しばらく休む。
[備考]
※服を着替えました。
【クラリッサ・ブランチャード】
[状態]健康
[装備]日本刀・三日月宗近
[持物]基本支給品一式、スピリタス
[思考・行動]
0:殺し合いはせず、何とか脱出する手段を探す。
1:涼華さんと行動。涼華さんを少し休ませる。
[備考]
※特に無し。
≪キャラ紹介≫
【今給黎涼華】 いまきいれ・りょうか
16歳の高校生の少女。金髪ツインテ。かなり難読な部類に入る自分の苗字がちょっとコンプレックス。
羞恥心が少し足りず、また、他人と関わるのが余り好きでは無い事以外は普通の少女。
小学校の頃から1円玉を貯金いており今や貯金箱は人を殴り殺せる重さになっているとか。
【クラリッサ・ブランチャード】
フリーの冒険者。23歳。青髪赤目の美人。ナルガ装備に酷似した格好をしている。礼儀正しいが泣き虫。
剣やナイフを使った近接戦闘を得意とし、多少ではあるが魔法も使える。
レイ・ブランチャードの従兄弟にあたる。容姿は似ているがクラリッサの方が身長が高く優しい顔付き。
≪支給品紹介≫
【ベクターCP1】
今給黎涼華に支給。予備弾倉2個とセット。
1990年代後半に南アフリカで開発された民間・警察機構向けのポリマーフレーム自動拳銃。
衣服の下など懐に携帯することを前提としており、衣服との引っ掛かりを抑える特異な流線型の外形をしている。
【スタングレネード】
今給黎涼華に支給。3個セット。
爆発時の爆音と閃光により、付近の人間に一時的な失明、眩暈、難聴、耳鳴りなどの症状と、
それらに伴うパニックや見当識失調を発生させて無力化することを狙って設計された非殺傷型の手榴弾。
【日本刀・三日月宗近】
クラリッサ・ブランチャードに支給。
平安時代の刀工・三条宗近作の日本刀(太刀)。天下五剣の一つ。日本の国宝に指定されている。
「天下五剣」の中でも最も美しいとも評され、「名物中の名物」とも呼び慣わされた。
【スピリタス】
クラリッサ・ブランチャードに支給。
ポーランドを原産地とするウォッカ。アルコール度数世界最高の酒として知られる。
何と95-96度。何考えてんだ。ちなみに火を着けると燃える。マジで。消毒薬としても使えるらしい。
最終更新:2012年04月26日 13:43