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救いの無い世界

灰色の体毛の人狼ーーークールエルは、ひたすらに防戦一方だった。
どうしてこうなったのか、彼は思い出すーーー。


殺し合い…ねぇ。乗ってもいいけどよ、別に叶えてぇ願いもねえしな」

クールエルは無気力な人狼である。かつてつるんでいた仲間たちにはめられて殺人の罪を着せられ、無罪釈放となったが、彼についた汚名はなかなか消えなかった。
死にたくないなんて甘い考えではない。いつ死のうが構わないくらいに、無気力で自堕落な出稼ぎのバイトを繰り返すだけの毎日は退屈であった。
適当に誰か探してから決めるか、と歩きだそうとした時、景色の異変に気付いた。

林が、腐敗している。まるで薬品を大量に散布したような腐り方。
しかし腐りは未だ新しく、急成長した巨大植物などがあまりにもアブノーマルな光景だと言うことをクールエルの麻痺した脳髄に伝えた。

面倒だな、とは思いながらも、林の中に好奇心で入っていくクールエル。
人狼には様々な種類があり、人間の姿をしながらも狼の習性を持つもの、人というよりは神々のような超人的能力を持つもの。クールエルは狼としての戦闘力に特化した種族である。
前述の異能の人狼とも互角に渡り合う自信はあった。

待ち受けるのは一切の常識的思考の通じない過負荷(マイナス)だと知らなかったのが、彼の失策であった。


クールエルが林を訪れる数分前。紅魔館の吸血鬼レミリア・スカーレットの妹、『悪魔の妹』フランドール・スカーレットは、過負荷ーーー江迎怒江と遭遇していた。
しかしながら、今の江迎は初めて会うフランドールからすればもちろん、恐らくは彼女の仲間である者達でさえも異様と捉えることができただろう。
瞳の虹彩が消え失せ、両手からは目視できるほどの腐敗した空気が溢れている。
足取りもおぼつかず、明らかに精神崩壊している。

「(…何だろう。空気が腐ってるの?)」

幻想郷には様々な能力を持つ妖怪や人間が存在し、フランドールは『ありとあらゆるモノを破壊し尽くす程度の能力』を有しているが、『モノを腐敗させる程度の能力』など聞いたことがなかった。
危険な感覚を本能が告げていく。
フランドールは殺し合いに乗る者たちを殺すというスタンスーーー俗に言う危険派対主催であったが、きっとそうでなくともフランドールはこう判断しただろう。

こいつは危険だ。今ここで排除するーーー!

江迎はフランドールを視界に捉えると同時に空気を腐らせる。

空気を腐らせることでなら、幻想郷の妖怪を殺すことも可能かもしれない。しかし、フランドールの『破壊する』能力の前にはそれすらも無力だった。一撃で終わる。そう確信していた。
吸血鬼の肉体には腐敗した空気を吸わせるだけでは大きな痛手を与えることはできないと判断して、江迎は地面に両の手をつける。
次の瞬間、辺りの木が暴れるようにうねり、フランドールに迫った。
さすがにフランドールも驚くが、それでも破壊すればいい話であるーーー

筈だった。

「……え?」

破壊できなかった。『目』は視覚できるのだが、それを破壊しても対象に一切のダメージを追わせることができていない。吸血鬼の性質の一部以外は、完全に封印されていた。
横殴りに凪払われた木の一本がフランドールの華奢な肉体を跳ね飛ばしていた。


「……………」

気絶したフランドールにゆらゆらと近付いていく江迎。
腐敗させる過負荷ーーー『腐敗する草花(ラフラフレシア)』を頭にでも使用すればいくら吸血鬼といえども殺すことが可能だ。

「おいおい、気絶してる子供相手に大人気ないんじゃねえの?」

とっさに顔を後ろに反らす。
それは直感的な判断ではあったが、正解であった。

江迎の顔のあった座標をクールエルの鋭利な爪が切った。
顔を反らさなかったなら、江迎の顔面は無惨にも真横に切り裂かれていたことは明らかであった。クールエルは眉をひそめる。腐敗した空気が鼻につき、呼吸を困難にされる。

「(……畜生。分が悪すぎる)」

人狼には吸血鬼ほどの適応力がない。
このまま戦い続けても、あの木を腐らせて操る能力で叩き潰されるのがオチだ。
だとするなら、フランドールを連れて逃げた方が早い。

二・三度威嚇として爪で空を切り裂く。江迎との距離を十分に取ったことを確認すると、人狼の脚力でフランドールを抱えながら一気に林を駆け抜けた。

「くそったれ…こういうのは性に合わねえんだが…」

空を仰いで一言呟いた。

【クールエル@オリキャラ】
基本:ひとまず状況を見てどうするか決める
1:このガキ(フラン)の目が覚めるまで待つ
2:江迎怒江に警戒を払う。

【フランドール・スカーレット@東方project】
基本:殺し合いに乗る奴を殺す。
1:………
※『ありとあらゆるモノを破壊し尽くす程度の能力』は封印されています
※日光に当たっても平気です


結局。江迎怒江の異常の原因は何だったのか。

答えは単純に、『リリーステイクによる実験の一環として改造された』。
自我は二度と帰ってはこない。
彼女の先の道に、救いは無い。

【江迎怒江@めだかボックス】
基本:………
※参戦時期は少なくとも会計戦以降です
※主催により、過負荷の大幅な威力上昇、自我の崩壊を誘発されました

【クールエル】
19歳、灰色の毛皮を持つ人狼。種族としては戦闘に特化した種族。
高校生の頃つるんでいた友人たちにはめられ、殺人罪を着せられた。結果的には無罪放免になったが一度貼られたレッテルはなかなか消えず、今は毎日を無気力に過ごしている


這い上がれ地獄の底辺から 投下順 悪夢に身を委ねて
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最終更新:2011年07月05日 10:12
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