「……許さねえぞ」
警視庁の若手警部興呂史郎は、怒りに満ちた瞳で呟いた。
未だ大した功績はあげていないーーーーーというのも、事件の度に全てのものを救おうとして犯人を逃すなど始末書の数が人より多いからであるのだが。
何の能力も持ち合わせていないただの人間。そんな史郎でさえも、こっくりと名乗ったあの狐をトリックと断ずることはできなかった。正直、馬鹿馬鹿しいから帰ろうとも思ったが、それはある瞬間を境に変わった。
あの少女が、見せしめと称され殺された時から、史郎にとってこっくりは『憎むべき害悪』となったのだ。怪異だろうが知らない。悪は倒す。それが史郎の生き方である。
とりあえず、支給品を確認してみることにする。
中から出てきたのは、一本のアイスピックと、いかにもなパッケージをしたアダルトゲーム…『妹×妹』と題されたpcソフトだ。史郎には残念ながらそういうものへの興味が皆無だったため、無言でディパックに戻そうとしーーーーー、
そこでやっと、背後に一人の小柄な少女が立っているのに気付いた。
身長は恐らく130cmに届いていない。
腰くらいまで伸ばした綺麗な黒髪に、黒を基調にした服を着ている。
「君は?」
「………アリス。しかし知らなかったな、警察というのはこんない、いかがわしいゲームを所持しているとは」
アリスと名乗った少女は若干顔を赤くしている。
史郎の脳内が警報を鳴らした。間違いなく、勘違いされてしまっただろう…
「違うぞ。支給品ってやつだ」
「そ、そうか。ところで君の名前は?」
「興呂史郎だ。警視庁に勤めてる。まあさすがにこんな事態に経験はないけどな」
「ぼくはニート探偵だ。間違えてもただの『探偵』とは呼ばないように」
ニート探偵?と疑問を抱いた史郎だが、聞いたことがあった。
家から一歩も出ずに、部屋の中から仲間に指示を出し、事件を解決する探偵の話を。
アリスというのはきっと偽名だろう。ハーフという可能性も捨てきれないが、少なくとも名簿に『アリス』という名前は載っていなかったはずだ。
探偵業を生業とする者で偽名を使う者は少なくない。
仕事柄その筋の人に命を狙われることが度々あるからだ。史郎たちも探偵の力を借りることは稀にあるため、そこにはあえて触れないでおくことにする。
「じゃあ、そのニート探偵さんから見て分かることは?」
「まず、にわかには信じがたいことではあるが、この世には狐神ーーーーーーーこっくりのような非科学的な存在が確かに実在する。名簿にある『テケテケ』や『メリーさん』も、
都市伝説通りの存在と見るのが利口だろうね」
確かにそれには史郎も同意見だった。
しかし、あの『制限』の存在。あれがある限り、こっくりを倒すことは叶わないのだ。あんなものが炸裂すれば、生き長らえるのは不可能だ。
「制限とやらは?あれがある限り、うかつに攻撃はできないぞ」
「君は、『大罪の器』という言葉を知っているかい?」
空気が、確かに凍り付いた。
| 怪奇さえ通じない |
投下順 |
『』 |
| GAME START |
興呂史郎 |
[[]] |
| GAME START |
紫苑寺有子 |
[[]] |
最終更新:2011年08月01日 00:48