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灯台下……うん、まあそう言う事だ。

第六十三話≪灯台下……うん、まあそう言う事だ。≫

陽が少しずつ少しずつ傾き、夕方へと近付く。
エリアH-4に位置する灯台の管理人詰所では、灰色の竜人の少年と金髪の女性の、
年の差カップルが誕生していた。

制服のシャツとズボンという服装の竜人の少年、本庄忠朝は、
管理人詰所のソファーに座り、ぼーっと天井を仰いでいた。
彼の脳裏に浮かぶのは、つい先程までの、同行者である人間の女性、伊藤文子との出来事。
今、文子は仮眠用のベッドで掛け布団にくるまって寝息を立てている。
その掛け布団の下の文子は、一糸纏わぬ、生まれたての姿。
彼女が身に付けていたバニーガールの衣装と下着は無造作に床の上に放り出されている。
放り出された文子の衣服と、ベッドで眠っている文子を交互に見た後、
顔を伏せ、頬を赤らめた。

(僕……やっちゃったんだよね……初めての……)

彼にとって、つい先程までの「出来事」は、現実感のわかない、まるで夢かと思えるような事だった。
実際、彼はその「出来事」の最中、正に「夢心地」だった訳だが。
ソファーから立ち上がり、文子が眠っているベッドの方へと近付く。
そして、安らかに寝息を立てる文子の寝顔を覗き込む。

(可愛い……)

猫やハムスターなどの小動物を見た時に思っていた言葉を、初めて人間相手に使う。
無論、猫やハムスターに対する「可愛い」と文子に対する「可愛い」とでは意味合いは微妙に異なるが。

「ん……トモ君……」
「あ、伊藤さん」

不意に文子が覚醒し、眠たそうな顔のまま上体を起こした。
掛けていた布団がはだけ、何も身に着けていない状態の若い女性の上半身が露わになる。
文子が欠伸をしながら背筋を大きく伸ばす動作をし、それが忠朝少年の前に大きく曝け出される。

「……!」

忠朝の赤らめた頬が更に赤くなったように見えた。

「あら、何赤くなってんのトモ君、今更」
「あ、いや、その……」

文子が意地悪そうな笑みを浮かべて忠朝の様子を見て楽しむ。
忠朝は何やらそっぽを向き顔だけを文子の方へ向け、困惑と恥じらいの混じった表情を浮かべる。
文子は少し寒く感じたのか掛け布団を身体にくるみ、頭だけを出すような状態になった。
忠朝が一瞬、ちょっと残念そうな顔をしたのは――気のせいでは無いだろう。

「トモ君、ウブな顔して、激しいのね。そんなに気持ち良かった?」
「あーあー聞こえなーい聞こえないです」

耳を指で塞ぎ聞こえない振りをする忠朝。
そんな忠朝を見て文子はニヤニヤと笑う。

(ゴムも何も無しだから、赤ちゃん出来ちゃうかも……まあいいか。どうせ死ぬんだし)

心の中で文子は思う。
文子はいつしかこのゲームから生きて帰る事を諦めていた。
それならば死ぬ最期の瞬間まで好き放題やって、悔いの残らないようにしようと考えていたのである。
どうせ死ぬのだから、妊娠してしまおうが何の問題も無いはず。
文子はそう考えるようになっていた。
忠朝に対してはそんな素振りは全く見せなかったが。

「どうかしました?」

文子の表情が少し沈んでいるのを見て、忠朝が心配そうに言う。

「えっ? あ、ううん、何でも無いよ。あ、とりあえず服着とこうかな。トモ君私の下着とバニースーツ取ってくれる?」
「え? あ、分かりました」

言われるがまま忠朝は床に散乱する文子の衣類を拾い始める。
そんな忠朝の後ろ姿を見ながら文子は、

(こうなったら死ぬまでトモ君と……)

と、妙な決意を固めていた。
忠朝自身が生還を諦めているかどうかなど、文子にとってはどうでも良かった。
そんな文子の心情を知ってか知らずか、忠朝は文子の衣類を拾い続ける。

竜人の少年とバニーガールの女性。
二人は、既に何十人もの死者が出ている血生臭い殺し合いとは全く無縁の、甘々(?)な時間を過ごしていた。


丁度その頃、フロントが凹み、フロントガラスが取っ払われ、車体は銃痕だらけの、
ボロボロのレッドカラーのルーチェを運転する、野球帽を被った緑髪の女性がいた。
現在、二人のキルスコアを稼いでいる、新藤真紀である。

「あの灯台にでも行ってみようかな。別に決まった目的地がある訳じゃ無いし」

途中に座礁客船があるらしかったが、遠目で見る限り座礁客船は既に沈没寸前で、
侵入するのは危険な状態だ。あんな所に好き好んで入る者もいないだろう。
沈没に巻き込まれて死亡、などと言う死に方は真紀は嫌だった。
市街地の手前辺りには灯台がある。
真紀は何の気無しに灯台を次の目的地に据えた。

「しかし風が……」

フロントガラスは真紀が頑張って取っ払った。
一人の青年を撥ね飛ばした際、蜘蛛の巣状のヒビが入ってしまい視界が利かなくなっていたためである。
そのためそこそこ冷たい海風が真紀の顔に容赦無く吹き付ける。
鬱陶しかったのは事実だが、これは致し方無い。

真紀は灯台へ向けルーチェを走らせた。

灯台にいる二人は、すぐそこに危険人物が迫っている事に気付く由など無い。

この急造年の差カップルの結末は。


【一日目/午後/H-4灯台管理人詰所】

【本庄忠朝】
[状態]:健康
[装備]:無し
[所持品]:基本支給品一式、ウィンチェスターM1873(14/14)、44-40ウィンチェスター弾(140)
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らない。死にたくない。
1:伊藤さんと行動を共にする。
2:一ヶ所に留まり、出来るだけ動かないようにする。

【伊藤文子】
[状態]:健康、死に対する恐怖(軽)、全裸(布団にくるまっている)、生還への諦め
[装備]:無し
[所持品]:基本支給品一式、ブッシュナイフ
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。生き残る。
1:生きて帰るのは無理かな、もう……。
2:トモ君(本庄忠朝)と行動を共にする。
3:一ヶ所に留まり、出来るだけ動かないようにする。


【一日目/午後/G-6海岸沿い幹線道路】

【新藤真紀】
[状態]:疲労(中)、身体中に掠り傷及び軽度の打撲、左肩に掠り傷(いずれも応急処置済)、
H-4灯台へ向け移動中
[装備]:二六年式拳銃(6/6)、長谷川俊治の野球帽
[所持品]:基本支給品一式(食糧1/3消費)、9㎜×22R弾(32)、 サーベル、ラドムVIS-wz1934(5/8)、
ラドムの予備マガジン(8×9)、マークⅡ手榴弾(3) 、長谷川俊治の水と食糧(食糧半分消費)
[思考・行動]
基本:優勝を目指す。積極的に他参加者と戦う。
1:灯台へ向かう。
2:知人(須牙襲禅)とは出来れば会いたくない。
[備考]
※リボンを付けた青い髪の和服姿の少女(菊池やと)の姿を確認しました。


※G-5座礁客船は沈没寸前になっているようです。



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最終更新:2009年11月20日 21:05
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