バトル・ロワイアルには様々な人物が呼ばれている。普通の人間から異形なる者、ゾンビと呼ばれる者、不可思議な力を行使する者。
主催者であるベルンカステルが幾多のカケラの中から厳選した30名はまさに十人十色の
殺し合いを演じるだろう。A-5の砂浜エリアでは、数分後に異能を持つ者の殺し合いが起こることになるのだが、その結末は誰にも分からない。
役者は二人。『探偵』と『魔装少女』にして『連続殺人鬼』の殺し合いだ。
◆
『探偵』とは、『怪盗』と対になり、常に怪盗を捕らえるという仕事だ。
帝都ヨコハマ。
日々財宝と金を目当てに暗躍する『怪盗』とそれを捕らえようと奮起する『探偵』のあまりに激しい戦いが日夜繰り広げられている。
『怪盗』のトップに輝くのは怪盗アルセーヌ率いる『怪盗帝国』。対してそれを何度も追い続けて時には撃退し時には逃げられの攻防を繰り返してきた有能な探偵グループがあった。
メンバーは個性豊かで、それぞれ強力なトイズ―――一般的に言えば『超能力』を持つ。その連携で、最強と謡われる怪盗アルセーヌを幾度も追いつめてきた。
だが。彼女達『ミルキィホームズ』は既に落ちぶれてしまったのだ。
謎の落雷により『トイズ』を失ってからは、『ダメダメ探偵』と呼ばれるほどまで堕ちた。ーーーあの日までは。アルセーヌとの決戦において彼女達は再びトイズを取り戻し、再度栄光を手にする。
今ここに呼ばれたのは、ミルキィホームズをメンタル面で支えるチームの一角。
名探偵シャーロック・ホームズの子孫、シャーロック・シェリンフォードである。
「人の命を……何だと思ってるんですか…!!」
いつも温厚で、他人に激情することなど無いシャロであるが、今回は違った。
極めつけは、神楽と呼ばれた少女を見せしめに殺して見せたところだった。
人とのつながりや仲間への思いやりを人一倍大切にするシャロには、人の命を見せ物のように扱った古戸ヱリカを許すことは決して出来なかった。
殺意という感情をここまで明確に感じたのは初めてかもしれない。
しかし、古戸ヱリカを殺してしまえば彼女はきっと罪の意識も感じずに死んでしまう。
生きて罪を償わせたい。
一生を捧げて見せしめにされた少女に贖罪してほしい。
シャロの願いはそれだった。どんな悪人でも、必ず時間をかけて分かり合うことができる。相手の痛みを知れば、きっと分かりあえる。
0
それが叶えば、きっとシャロはヱリカにこう言うのだろう。
『お疲れさま、ヱリカちゃん』
シャーロック・シェリンフォードはお人好しだ。だから人を憎むことができない。
だが。
それはバトル・ロワイアルにおいては欠陥にしかならないのかもしれない。
■
夜の王。とある少女は彼のためにと戦い続けた。
複数個の命を得るという禁忌を犯すために、連続殺人により命を集めるという更なる禁忌を犯す。そうして少女はどこまでも、這い上がれないほどに堕落していった。
それが、京子という名の『魔装少女』の生き様だ。
彼女は相川歩に敗れ、魔界に送還された。そしてすぐに、夜の王もまた敗北した。
そうして数奇な人生を送り続ける京子を次に待ち受けたのは、殺し合い。
古戸ヱリカと名乗る少女により開催された喜劇は、とある魅力的な賞品が存在する。
たったそれだけで京子に殺し合いに乗ることを決意させるほどに、魅力的だった。
―――――願望の成就。
嘘やハッタリではない。ヱリカの目は嘘を吐いている目ではなかった。
求めるのは何か?答えは簡単に、夜の王を蘇らせることだ。
相川歩やユークリウッド・ヘルサイズを殺すのは一筋縄ではいかない。
相川歩は人間ではない。不死――――言わばゾンビだ。
故に、人間が無意識に制限してしまう領域が存在しない。100――――いや、300%以上の力さえ発揮してくる怪物。一撃でも貰えばそれだけで危ない。
ユークリウッド・ヘルサイズはネクロマンサーと呼ばれる地獄の使者だ。
口にした『言葉』をかなりの頭痛を代償に現実にする性質を持っている。
もしもあの力がフルに使用可能なら、恐らく殺し合いの決着はすぐに付いてしまう。
戦いですらない、一方的な暴力である。
しかし、彼らとも戦ってきた。夜の王を復活させるための賞品を諦める理由にしては軽すぎる。殺す。今回は、今回こそは全ての力を使い果たしてでも殺さなければならない。
「(あら…丁度良さげな獲物が居るじゃありませんかぁ)」
『探偵』シャーロック・シェリンフォードの姿を京子は視界にとらえる。
シャロもまた、ほぼ同時に京子に気付く。
だが、シャロの望む『分かり合う』間も与えられずに、京子の周りから二つの竜巻がシャロに迫っていった。ただの竜巻ではない。触れた相手を潰すくらいの破壊力を秘めた京子のメインウェポン。シャロはそれを知ってか知らずにか、両手を前に出す。
「………?」
不思議だった。あの竜巻の真の力を知らなくとも、敵がわざわざ放った不可思議な攻撃を両手で防ごうというのか。あれは生半可な防御なら突き破る威力だ。
次に見るのはシャロの両腕がぐちゃぐちゃの挽き肉にされ、悲鳴をあげる光景だと、京子は確信していた。だが、違う。シャロは京子とは違うベクトルで『不可思議』な力を所持しているのだ。その能力の名は念道力ーーーーサイコキネシス。
京子の放った竜巻が衝突し、見事に相殺して形も残らず消滅する。
驚く京子の肉体が、急に何か見えない力で拘束され、身動きを封じられる。
「――――へえ。結構やるんですねぇ」
「大丈夫です!話せばわかり合え」
京子の拘束が、急に解けたのだ。
シャロが解いた訳ではない。いくらお人好しとはいえ、自分を殺しにかかってくる相手の警戒をそう簡単に解いてしまうほどシャロは探偵として無知ではない。
京子の周りに、大分小さくなった竜巻が幾つも浮遊していた。
「驚くほどの事じゃありませんよ。あなたの拘束を内側から破っただけの話です」
京子は自身の拘束の内側から竜巻を発生させて強引に拘束を破壊したのだ。
自身のトイズをあんな方法で破られるとは思いもしなかった。
京子は小さな竜巻を一気にシャロへと放つ。シャロは再びそれらを一点に集め、攻撃を無力化する。しかし、何度も同じ手を喰うほど京子は馬鹿ではない。
今度はシャロに向けて二次波・三次波の竜巻を放つ。彼女の読みでは、シャロは三次波を防ぎきることはできないと踏んでいた。最初の攻撃の際、京子の竜巻を無効化した後に京子自身を拘束するまでにタイムラグがあった。
それはつまり、一度力を使えばあまりにも早い連続使用はできないということになる。
それは弾幕状に竜巻を配置することであの力は破れる計算になる。
だが、物事はそう上手くは進まない。
シャロはとっさに横向きでサイコキネシスを使用した。それで地面を叩くことで自分は竜巻を避け、竜巻は行き場を失ってしまう。偶然に生まれた応用形の使い方は、京子の講じていた策を破るのに十分すぎる働きを見せた。京子は歯噛みする。
考えれば、あの能力は自分のものより使い勝手が格段に上だ。
予想される使い方としては、相手の足場を崩したり、相手を地面に叩きつけるなど殺しのバリエーションがあまりにも豊富すぎる。
さっきの拘束でもし首に力を掛けられでもしたら、京子はもう死んでいただろう。
いきなり厄介な相手に出会った、と嘆息する。
京子のような放出攻撃はシャロのサイコキネシスに対して相性が最悪だ。
次はシャロからの攻撃だった。
再度力が京子を拘束するために体にまとわりつくのが分かる。
竜巻を放ち、再びそれを破るが、今度はさっきとは違う。
シャロに向かって突撃したのだ。確かに遠距離戦ではこちらに分が悪いが、至近距離でならシャロを力ごとすり潰すことだって不可能なことではない。
竜巻を走りながら生み出し、同じパターンでシャロに向けて放つ。
ヒュゴォォォォオオッ!!という竜巻の風の音が、見えない力に押さえつけられてまるでもがき苦しむかのように暴れた後で消滅する。
その瞬間に、京子はシャロの懐に飛び込んだ。まだタイムラグの内のはずだった。
竜巻の噴射力を応用した拳を、シャロの腹に思い切り打ち込む。
「あぁぁああああああああっ!!」
「やっと…一発入りましたねぇ。お楽しみはまだこれからですよぉ」
サディスティックな微笑みを浮かべ、京子は起きあがろうとするシャロの顎を蹴りあげる。体の重心を失って再び倒れるシャロ。
シャロの顔を足で踏みつける。鼻血が噴き出した。
それと同時に、サイコキネシスの弱々しい力が京子を拘束しようとする。
「それっ」
笑い混じりのかけ声が響き、シャロの絶叫が一帯に更に大きく響き渡った。
シャロの右腕は肘から先が吹き飛ばされていた。竜巻を一つ使い、威力を確かめる。
勝った。そう京子は確信する。
確かに京子はシャロに勝った。もう血は足りなくなっており、放っておけば死ぬのは近い。だから、ここからは勝ち負けが関係ない。シャロの悪足掻きだ。
「……う、ああああああああああああああああっ!!」
猛るような声の後に、シャロの力は砲弾の形になり京子を跳ね飛ばした。
シャーロック・シェリンフォードが何故最後にこんなルール無用の戦いを始めたか。
それは、ここまで無慈悲に人を殺せる人間から、自分の大切な人を守るため。
ふらふらと立ち上がり、京子の方へと歩いていく。
京子は意識を持っていかれるかと思った。相川歩の拳よりずっと上の衝撃だ。
シャロは真上に手を掲げる。そこに巨大な力が収束しているのは明らかだった。
喰らえば間違いなく一撃で終わる。
冗談じゃない。ここで犬死になんかできない。
「(……冗談じゃない。無駄死になんて…馬鹿馬鹿しいっ)」
京子もまたふらふらと立ち上がり、無数の竜巻を出現させてシャロに放つ。
振り下ろされた『力』は竜巻を簡単に跳ね除け、その衝撃だけで京子を更に吹き飛ばす。もう京子に策は無い。後はシャロの力に潰されるだけだ。
しかし、力はいつになっても京子に降りなかった。
降りるはずがない。何故なら、シャーロック・シェリンフォードの胸元から一本の刃が生え、その一撃で彼女は完全に絶命したのだ。
シャロの背後に立っているのは、不敵な笑みを讃えた眼鏡の男。
シャロから刃を抜き取るとその血を舌でぺろっ、となめとる。
手慣れていた。人の刺し方も、人からの刃の抜き方も。
それもそのはずだ。彼は鳴神学園の闇のクラブ『殺人クラブ』の部長・日野貞夫である。ゲームと称して気に入らない奴を次々と殺していくことに快楽を覚える『エリート』―――――。
日野は愉快そうに笑う。足元に転がっている無惨な死体を軽く蹴り飛ばして。
連続殺人犯の京子でさえ分かる、あまりにも異常な男。
日野貞夫は、さぞ愉快そうに倒れている京子の方を向く。
「よお。今の殺し合い、見てたぜ。お前は殺しの才能がある」
「それはどうも。私、一応連続殺人事件の犯人なので」
常人なら逃げ出すか腰を抜かすかしそうな事だが、日野はやはり不敵に笑うだけ。
日野は楽しそうに、最高に楽しそうに京子にある『誘い』を持ちかけた。
「お前……俺達の殺人クラブに入らないか?」
「……殺人、クラブ?」
「この世を楽園とするエリート達のクラブだ。お前なら、きっといい殺しをするぞ」
日野のこの殺し合いにおける立場は、極めて異常な立場である。
参加者は『部員』として優秀な奴のみをスカウトし、後はすべて殺し尽くす。
そして最後には、主催者にこんなところに呼びつけたことに対しての『復しゅう』だ。
「いいですけど、一つ条件があります。願いを叶える権利を私に下さい」
「……いいだろう。あのガキは脅せばそのくらい簡単だ」
日野は一つ京子に話していないことがある。日野貞夫は、『あの日』にクラブ活動の標的によって殺害されたーーーーー正しくは自ら命を絶った。
つまり、日野はここには存在しないはずの『死人』であり、彼自身が『学校であった怖い話』と呼べる存在だと。
京子は知らない。何もかも。
【シャーロック・シェリンフォード@探偵オペラ ミルキィホームズ】 死亡
【残り129/130人】
【深夜/A-5】
【京子@これはゾンビですか?】
[状態]疲労(大)
[所持品]不明支給品2
[思考・行動]
基本:日野さんに協力する。
1:相川歩とユークリウッド・ヘルサイズに最大の注意を払う。
2:日野さんが裏切ったなら容赦しない
※原作三巻終了後からの参加です
【日野貞夫@学校であった怖い話】
[状態]高揚
[所持品]ドス@現実、不明支給品1
[思考・行動]
基本:参加者と主催者を殺す。
1:良い奴がいたら『部員』として勧誘する。
2:俺は死んだよな…?
※新堂七話目で死亡後からの参加です
| 鬼退治 |
投下順 |
『魔術師殺し』と『神になった少女』 |
| GAME START |
京子 |
[[]] |
| GAME START |
日野貞夫 |
[[]] |
| GAME START |
シャーロック・シェリンフォード |
GAME OVER |
最終更新:2011年09月04日 18:15