18話 狼のキモチ
ようやく放精が終わったイェレミアスは海の見える幹線道路を南に歩いていた。
カツカツと固い爪がアスファルトに当たる小気味良い音が波の打ち寄せる音と共に響く。
「由菜はどこだー?」
「お前の淫乱***にまた突っ込むまでは俺は死なないし、お前も死ぬなよ……」
自分の欲望のためか、何かしらの愛情は持っているのか本人にしか分からないが、
とにかくイェレミアスは知人の若月由菜の事を捜していた。
「……」
突然、イェレミアスは立ち止まる。
嗅ぎ覚えのある匂いを感じたのだ。
道路脇の草むらの方に視線を向ける。
「由菜…の、匂い…?」
草むらの中から確かに香るそれを追い、狼は草むらの中へと進んで行く。
しばらく歩いて、彼は見付けた。
「由菜…」
「んー……」
草のベッドの上で惰眠をこいている女性、若月由菜を。
いつも彼女の自宅で、自分のベッドで寝ている時とほとんど変わらない間抜けな寝顔だ。
「こいつ……おい、由菜」
「むにゃ……あ、イェレミアス!」
起こされた由菜は目の前の視界に自分が交際する魔狼の顔が入り、眠たそうな顔から一気に笑顔になる。
しかしイェレミアスの顔は対照的に不機嫌そうだ。
「お前なぁ、何でこんな所で寝てるんだよ」
「え? あー…これからどうしようか考えている内に、寝ちゃったみたい」
「……俺じゃなくて、殺し合いやる気になってる奴に見付かったら、文字通り『寝首を掻かれる』ぞ、お前」
「う……ごめん」
「はぁ…まぁ良いさ、見付かったしな。無事で良かったよ」
「イェレミアス……」
ここでイェレミアスは自分自身が抱いている感情に疑問を抱く。
若月由菜とはあくまで身体が目的で交際しているのになぜ彼女が不用心な行動を取っていて怒るのだろうか。
身体が目的なら例え彼女にもしもの事があったとしても、その時は別の女性を捜せば良いはず。
だが――。
(俺は……こいつの事)
「…どう、したの」
「いや、何でもねーよ……ところで由菜、お前、何が支給されてんだ? っていうか確認したか?」
「え? 何?」
「ハァ……支給品だよ」
「あ……ちょっと待ってて」
「……」
急いで自分のデイパックを開けて中身を調べる由菜。
そんな由菜を横目で見ながらイェレミアスは呆れたように溜息をつく。
「あ……これ、みたい」
「拳銃が二丁か……当たりじゃないか、良かったな」
出てきた物は自動拳銃が二丁。グロック19と、シグザウエルP228。それぞれの予備弾倉が二つずつ。
かなりの当たり武器だが、由菜は銃に関しては全くの素人である。
「ええと、どっち使えば良いかな」
「知らねーよ俺に訊くな……説明書読んでみたら?」
「えーと……成程……うん……」
しばらく二丁の銃の説明書に目を通し、由菜が選んだのは、グロック19だった。
装弾数が多いからと言うのが理由である。
「…どうしようか、イェレミアス、これから」
「…俺はこんな殺し合いに乗る気は無い」
「私も…」
「…多分、俺達の他にも殺し合いに乗っていない奴はいると思う、そういう連中を捜して仲間にしよう。
この首輪、爆弾が内臓されてるってのは、お前も知ってるよな? 見たろ? あの開催式の時に……」
「う、うん……」
「逃げようとしたら爆発、無理に外そうとしたら爆発……つまる所、この首輪をどうにかしない限り、
この殺し合いから脱出すんのも無理って事だ……だけど俺は機械の事なんて全く分からない」
「私も……あ、だから仲間捜しって訳?」
「……参加者の中に首輪外せそうな奴がいるとは限らないけどな、何もしないよりはずっと良いだろ」
「…そう、だね」
「……取り敢えず行く宛ても無いが南へ行ってみるか」
「…あれ、でも、見てイェレミアス、あそこに何か建ってるよ」
「ああ?」
由菜が指差す先には確かに建物がある。
しかし、遠目から見ても分かる程、朽ちている。廃屋群のようだ。
「廃屋か……誰かいるかも……いや、それは分かんねぇけど、取り敢えず行ってみるか」
「ん」
イェレミアスと由菜は廃屋群を目指し歩き始めた。
【早朝/E-7平原:幹線道路付近の草むら】
【イェレミアス】
[状態]健康
[装備]草刈鎌
[持物]基本支給品一式、オ*ホール
[思考]
0:由菜と行動する。
1:殺し合いはする気は無いが殺しについては躊躇は無い。
[備考]
※特に無し。
【若月由菜】
[状態]健康
[装備]グロック19(15/15)
[持物]基本支給品一式、グロック19弾倉(2)、シグザウエルP228(13/13)、シグザウエルP228弾倉(2)
[思考]
0:殺し合いはしたくない。イェレミアスと一緒にいる。
[備考]
※特に無し。
≪キャラ紹介≫
【若月由菜】 読み:わかつき ゆな
19歳の大学生の女性。狼や犬等の犬科の獣や獣人が大好き。
動物図鑑の犬科の項目や犬科動物の飼料で自慰する程。異世界から来た魔狼の雄と交際し、
充実した毎日を送っている。
最終更新:2011年08月25日 20:01