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喫茶室。
殺し合いの『内側』の主催者達がこの喜劇を鑑賞するための空間。
古戸ヱリカは現在調整の為席を外しており、中では二人と一体が腰掛けている。
『奇跡の魔女』の称号を持つこの殺し合いの黒幕・ベルンカステル卿に、常人なら発狂してもおかしくない極悪かつ恐ろしい見た目をした『死神』リューク。
更に、黒い学生服に黒い学生帽、何より一際目を引く仮面を被った謎の男。
先に断っておくが、この男は主催者達の完全な協力者ではない。
『ある条件』と引き替えに殺し合いの運営に協力する。言わばスポンサーのような。
「……予想より悪趣味なことだな、奇跡の魔女ベルンカステル」
「あら、お気に召さなかったかしら?ねえ――――恭介?」
黙れ、と低い声で男はベルンカステルを遮る。
彼の名前は棗恭介。友のために幾度も虚構の世界を繰り返す世界のイレギュラー。
しかし、今は『棗恭介』などではない。棗恭介は、『彼ら』の頼もしいリーダーでなくてはならないのだ。今の彼は頼もしくなどない。友のために多くの命を投げ捨てようとしているのだから。
ある虚構で、『親友』と『イレギュラー』が共同戦線を組む事態となった。
やがて二人が恋に落ちることさえ恭介は気付いていた。だが見逃すことはできない。
『親友』は『妹』を守り、『俺達(リトルバスターズ)』が居なくなっても絶望しないだけの強さを手に入れて貰わねばならない。その為になら、彼は鬼にさえなる。
二人を引き裂き続け、彼らの最後の挑戦にて――――。
記憶に在るのはそこまでだ。『親友』との決戦までしか覚えていない。
闇の執行部部長。偽りの肩書きを、恭介はこの場において再び名乗る。
情などない、冷酷無比な悪鬼へと彼は変化する―――。
「俺の名前は闇の執行部部長―――――時風瞬だ。二度と間違えるな」
ベルンカステルの嘲るような笑みに向けて拳銃を突きつける。ベルンカステルは笑みを崩さぬまま、恭介―――――時風に対する抑止となる言葉をその口から紡ぎ出す。
「私を撃てば、お友達は助からないわよ」
チッ、と時風は舌打ちをし、銃をポケットに押し込む。
時風瞬がベルンカステル達に協力する理由はたった一つである。
『自分の帰還した世界での修学旅行の事故回避』。
全ては親友達を守るために。リーダー・時風瞬は仮面の奥で確かに呟いた。
「……すまない」
悪業に男は苦悩する。
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火花が散る。
赤髪の少年と黒髪の男性が、互いに構えた獲物をぶつけ合っていた。
衛宮士郎。義父であり参加者の一人・衛宮切嗣の跡を継ぎ正義の味方を目指した者。
土方十四郎。真選組『鬼の副長』―――士郎とは違う形で正義に生きる者。
同じ正義の道を志す二人は、似ているようで違う。
士郎は既に正義の味方であることを捨てた。
大切な人―――間桐桜を守り、共に生きていくために桜だけの正義の味方となった。
土方は正義を志しながらも、人情を併せ持つまさに『正義の味方』である。
結論から言えば、二人が同じ道を歩むことは決して有り得ない。
「投影完了(トレース・オン)―――――」
「チッ!てめえどっからそんなに武器を――――!?」
土方の持つのは名刀『九字兼定』。宝具と同程度の威力を持つからこそ彼は士郎と互角に戦えている。衛宮士郎の魔術『投影』には武器の限界がない。
戦いは圧倒的に土方に分が悪かった。
士郎の両手に投影されるのは二本の双剣『干将・莫耶』。
ランクが一つ落ちるが、それでも手数で土方を圧倒するには十二分の威力。
「俺は、負けられない―――!!俺は、桜を守るんだ―――!!」
くそ!と土方は吐き捨てる。
「何が正義だ馬鹿野郎!てめえのしてることなんざ只の悪でしかねえだろうが!」
莫耶で受け止められる斬撃。ここまでは予測の範囲内だった。
一歩真横に逸れ、今度は角度を変えて士郎に切り込む。もう話し合いでの解決など期待してはいなかった。『鬼の副長』と恐れられた彼だからこそ、言葉ではどうにもできないことを知っている。
少年一人救えない自分の無力さに歯噛みしながら、彼は殺しの一撃を放つ。
今までとは比較にならない速度に士郎は面喰らい、ぎりぎりで攻撃を防ぐ。
いくら手数では士郎に分があろうと、やはり剣技においては土方の方が数段上―――。
未熟者の投影魔術師の攻撃では土方の剣を抜ける可能性は相当低いことは士郎も理解していた。目の前の敵が人間であろうと、士郎にはあまりにも強大な壁となる。
「(駄目だ)」
速度を増した土方の猛攻を投影宝具の莫耶で防ぎながら、士郎は心中で吐き捨てる。
「(こんなのじゃ、足りなすぎる)」
たかが一人の人間に追いつめられているようでは、この先桜を守ることなんて夢物語に過ぎない。敵は何人居るか分からないのだから、目の前の侍を越える相手も居る筈だ。
足りない。足りない。足りない。
土方は内心勝利を確信し始めていた。
明らかに、土方の剣技から加減が消えてから士郎の動きが悪くなっている。
止めを刺す。土方十四郎はそう決めた。
衛宮士郎の首に刃が迫る。殺意が込められた刀身はまさしく必殺の一撃。
勝利を確信した土方は完全に安心していた。
次の瞬間、衛宮士郎の叫びがエリア一帯にどこまでも響き渡る―――――!!
「俺はぁ―――――――――――正義の味方になるんだぁぁああああああああ!!」
土方の一撃を防ぐことができたのは、士郎にとっては確かな奇跡だったはずだ。
莫耶を構えるその双貌はあまりに攻撃的な、ありとあらゆる戦意の塊。
並の戦士なら恐怖におののき失禁してもおかしくないが、土方十四郎は歴戦の侍だ。
幾ら目の前の少年が怪物でも、それに恐れを抱く土方ではない。
「―――いい目になったじゃねえか、ガキ」
「俺はあんたを殺す。その為に、切り札を使わせて貰う」
莫耶と九字兼定が衝突し、衝撃は二人に強制的に距離を取らせる。
土方が駆ける。切り札とやらを使わせてはいけない、そんな予感が彼の心を支配していた。それは確かに、戦略ではなく恐怖に近い感情だった。
士郎は莫耶を構える。
攻撃ではない、先と同じ防御の構え。しかし、士郎は『それ』を唱える――――。
「―――体は剣で出来ている(I am the bone of my sword.)」
莫耶と九字兼定の刀身が再びぶつかり合うが、土方は何故か士郎に対して引導を渡せる『決め手』が用意できない。やばい、と土方は冷や汗を流す。
決して土方が疲労によって剣のキレを落とした訳ではない。
士郎の防御がより丁寧かつ確実なものへと変わってしまったからだ。
「―――血潮は鉄で心は硝子(Steel is my body,and fire is my blood.)」
負けられない、なのに、決め手が無い。
徒にこちらの疲労が増えていく、無駄な攻撃にしか感じられなくなる。
「―――幾たびの戦場を越えて不敗(I have cleated over a thousand blades.)」
土方はたまらず距離を再び取り、士郎をぎりっと睨みつけたまま動かない。
隙はありそうなものだが、あの双剣の性能がまず反則級だ。
彼の持つ刀もまた宝具級の威力を持つのだが、土方に知る由はない。生半可な刀では莫耶の防御に対してあそこまで打ち込むことは叶わない。
「―――ただの一度も敗走はなく(Unaware of loss.)、ただ一度の勝利もなし(Nor aware of gain.)」
考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。
あの少年の防御を崩し、その命を断つ一撃を放つ算段を組み上げろ。
あの言葉を最後まで言わせてはいけない。土方の脳が警鐘を鳴らし続ける。
「―――担い手はここに独り(Withstood pain to create weapons.)」
脳内に浮かび上がるのは、自分を慕う部下たちの姿。
『鬼の副長』についてきてくれる、愛すべき仲間たちの元に、帰りたい。
「剣の丘で鉄を鍛つ(Waiting for one's arrival.)」
この殺し合いに呼ばれている自分の部下にして副長の座を狙う男、沖田総吾。
馬鹿の万事屋連中に、見せしめとして殺されたチャイナ娘。
「―――ならば我が生涯に意味は不要ず(I have no regrets.This is the only path.)」
生きながらに肉体を破裂させられた痛みは、恐怖はどんなものだったろうか。
それを間近で見た銀髪パーマと眼鏡の少年の心中は?
「―――この体は(My whole life was)」
戦わなければならない。古戸ヱリカを、史上最悪の下衆女を斬らなければならない。
九字兼定を再度構え直し、失いかけた戦意を再度奮い立たせる。
しかし、何もかも遅すぎた。衛宮士郎の切り札はもうあと1フレーズで完成するのだ。
「―――無限の剣で出来ていた("Unlimited brade works")」
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剣がどこまでも突き刺さっている赤い荒野がどこまでも広がっていた。
固有結界―――――。魔術師や英霊の中でも最大の大技にして絶対の威力を誇る。
魔術に疎い土方には理解できなかったが、只ならぬ殺気は彼に警戒を余儀なくさせた。
「……待たせたな。ここからは、無限の剣で相手をしてやる」
「上等だ……侍と素人の違いを見せてやるよ、クソガキ」
二人の叫びが赤き荒野に木霊し、互いの刀がぶつかり合う。
譲れないモノを賭けて、二人の男が剣の丘にて戦士として決戦を行う。それはどこか華麗で儚げな、まるで映画のラストシーンのようにも見えた。
突き刺さっている剣は全て士郎の視認した宝剣(ガラクタ)。
だが、偽物が本物に勝てない道理など世の理には存在しない。
士郎の一閃をかわし、土方の刀の一閃が士郎の頬を浅く切り裂く。
次は負けじと士郎が土方の肩に浅い切り傷を刻み込んだ。
一歩も譲らぬ戦いの中、先に優勢な状況に至ったのは士郎だった。
士郎の剣が、土方の腹に突き刺さる。深い傷になってしまうが、土方は気迫だけでその絶望的な局面を乗り切り、立て直して刀ではなく拳を士郎の顔に叩き込んだ。
大きく仰け反りながらも、士郎は負けじと土方の顔面を殴りとばす。
「ッ、ラァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「うォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
再び刀を取った二人が、最短距離で激突する。
どちらも自分の正義を貫き通すために、持てる全ての力を最高の一撃に込める。
「俺は正義の味方になってやるんだぁぁああああああああああああああああっ!!」
「勝つのは俺だぁぁああああああああああああああああああああああああッ!!」
赤い荒野に鮮やかな血が飛び、片方の命が断たれるのだった。
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固有結界『無限の剣製』が消え、最後に一人だけが立っている。
未だ冷めぬ闘志がその双貌にはまだ残っている。
最後に立っていたのは、衛宮士郎だった。
「……俺の……勝ち………だ……」
バタッ、と力無い音を立てて士郎はその場に崩れ落ち、瞼が降りていった。
死んだ訳ではない。意識を失っているだけ。彼を最初に発見した者は彼に果たしてどんな印象を抱くのか。血塗れの少年は、深い眠りに落ちていった。
【土方十四郎@銀魂】 死亡
【残り127/130人】
【深夜/a-1】
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]疲労(大)、魔力枯渇(大)
[所持品]不明支給品2
[思考・行動]
0:優勝して桜の元に帰る。
1:
セイバーと遠坂には会いたくない。
2:何で爺さんが生きてるんだ……?
※HFルート、桜だけの正義の味方になると決意した直後からの参加です。
※固有結界が使えるようになっています
| 式/シキ |
投下順 |
誓いの星 |
| GAME START |
衛宮士郎 |
[[]] |
| GAME START |
土方十四郎 |
GAME OVER |
最終更新:2011年09月04日 18:17