何度でも繰り返そう。孤独な男はそう言った。
失った時間を取り戻したかった。武道に打ち込んだ男は涙を流した。
こんな馬鹿と一緒に居てくれてありがとう。常に少年の隣に居た『馬鹿』は笑った。
繰り返される虚構の果てに、少年の辿り着く先は何処なのか。
■
殺し合い。突然言い渡された死亡通告に皆が絶望に嘆く中、『普通の少年』直枝理樹を先に迎えたのは喜びであった。参加者に『ありえない』人物の名前があったからだ。
朱鷺戸沙耶。学園の闇に生きるスパイにして、理樹の唯一無二の相棒。
隠された秘宝を探して、毎晩闇の執行部と戦いながら地下迷宮を探検する中で、最初は嫌々だった理樹の中に、違う何か胸が苦しくなる感情が生まれ、朱鷺戸沙耶の不憫すぎる運命に怒りを燃やすようになっていく。
一言で言えば、恋。
そのどこか抜けている性格、時折見せる凛々しい一面。全てが直枝理樹を魅了した。
もっとも、彼は沙耶が幾度の『リプレイ』を行ってきたかも知らない。
彼女が何故戦い続けるのか、闇の執行部とは何かも、何一つ彼は知らない。
自分が戦っているモノの正体も明確に分からないなんて、と思うかもしれない。
しかし、結果的に『時風瞬』を倒した。
最強の敵にして最高の親友を撃ち、自らはまた一つ成長した。
何もかも、終わったと思っていた。
秘宝を手に入れ、沙耶と約束したデートにやっと行けると思っていた、のに。
理樹は彼女の真意を最後まで知ることができなかった。
銃口。
こめかみ。
生物兵器。
タイムマシン。
秘宝。
涙。
時風瞬。
最後に。愛する彼女は世界に別れを告げて、自ら命を断った―――――筈だった。
バトル・ロワイアル。古戸ヱリカの主催する狂気のゲームに理樹は参加させられる。
彼の近くには『憎めない筋肉馬鹿一直線』こと井ノ原真人が居た。
あの真人が明確な怒りを見せたのは驚きだったし、理樹にも怒りが沸いてきた。
が。いざ開始されてから参加者名簿を見て、物語は冒頭へと戻る。
井ノ原真人、三枝葉留佳、二木佳奈多。
よく知る三人の名前の後には、愛しい愛しい彼女の、もう会えない筈の彼女の名前。
『朱鷺戸沙耶』
不謹慎ながらも、理樹は喜びを隠せなかった。
沙耶と再会できる確率はほぼゼロに等しい。死人が生き返るなど彼には考えることもできずに、世界の秘密を見過ごしていた。
棗恭介が生み出したキャラクター。それが沙耶の正体だ。
ゲームマスターの恭介になら沙耶と理樹を再会させることも容易だったろうが、やはり理樹は世界の秘密に触れていない。恭介の正体を知る由などなかった。
大きな喜びの後には、彼を大きな不安が襲う。
スパイである沙耶なら生半可な敵との戦いは楽勝だろう。
だが、参加者の中に闇の執行部部長のような、彼女を越える実力の持ち主が居るなら?
理樹では到底敵わないような、まさしく『強敵』が居るのなら?
「それでも……僕が沙耶を守らなきゃいけないんだ」
覚悟は完了した。
どんな強敵が目の前に現れようと、それが沙耶の敵になるなら容赦しないという覚悟。
が。直枝理樹、彼は数分後に一人の少女と出会う。
その出会いが、理樹のバトル・ロワイアルにおけるスタンスを決定するものとなることを、彼はまだ知らない。
■
黒神めだかは、激しい怒りに身を焦がしていた。
どんな悪人も見捨てずに手を差し伸べる、そんな『
生徒会長』がここまでの怒りを見せるのはまさに、バトル・ロワイアルの狂気や卑劣さを見事に表しているとしか言いようがなかった。
「古戸ヱリカ……貴様だけは絶対に許さない……!!」
歯が砕けそうな力で噛みしめられた歯が、ぎりっと音を鳴らす。
しかし、冷静になれば怒りを燃やしている場合ではない。
今めだかが怒りに身を任せていた時間にも、誰かが泣いているかもしれない。
得体の知れない恐怖におびえ、過ちを犯す者がいるかもしれない。
立ち止まっている暇など彼女には無いのだ。
箱庭学園第98代生徒会長は、凛とした瞳で遠い敵、古戸ヱリカを睨みつける。
「待っていろ。私が必ず貴様の野望を粉々に破壊してやる」
正しすぎる少女は駆けだした。何処かに居るかもしれない弱者や、志を同じくする者に仲間たち、或いは殺し合いを決意した者達か。
全てを守り全てを救うために、生徒会長・黒神めだかは駆け抜けていく――――。
■
「銃か…」
直枝理樹は、支給されたワルサーP99を構えてそう言った。沙耶との戦いで理樹は使い慣れている。
しかし、やはり生身の人間に対して使うのはどうしても気が引けてしまう。
だらしないわね、甘いのよ理樹くんは、と懐かしい声が頭の中で再生される。
気を引き締め、ワルサーP99に弾を装填し始めたまさにその瞬間だった。
「貴様、殺し合いになど乗ってはいるまいな」
凛としたよく通る声が、理樹の鼓膜にまで届いた。
声に視線を向けると、紫色の髪をしたかなり『キワドイ』格好の少女の姿があった。
理樹より年下に見えるが、その圧倒的な雰囲気は年を感じさせない。
「僕?うん、殺し合いには乗ってないけど……」
「そうか。ならば質問を変えさせて貰おう」
凛とした声色が少しだけ穏やかになり、纏う雰囲気も若干近寄りやすくなる。
「貴様は、何を悩んでいる?」
理樹の時間が凍り付いた。そして瞬時に思い知る。目の前の少女は、彼の親友であり尊敬の対象―――棗恭介と同じく、隠し事は通じないタイプなのだと。
「何故それを、といった風だな。何、簡単なことだ。貴様は『けど』と言った。つまり、乗るか迷うくらいの悩みがあると私には分かる」
参ったな、と理樹は思う。
この少女に自分の『悩み』を相談するのは簡単だし、話せば幾らか気が楽だ。
しかし、闇の執行部や地下の秘宝、それを狙うスパイなどと話して誰が信じる?
頭の変な人と思われて終わりなのは目に見えているし、理樹もそんなのは御免だ。
「(でも、隠し通せそうな子じゃないしなあ…)」
嘘を言ってみるのもいいが、もしも見抜かれてしまったなら非常に厄介な話になる。
理樹は嘘が下手でもあった。ため息を吐いてから、理樹は引かれる覚悟で話し出す。
不思議と、覚悟さえ決めれば後はスラスラと話せるものだった。
話している内に、これを小説の新人賞に応募したら佳作くらいには入れるんじゃないかと思えてくる。あまりに現実離れしていて、まるで夢の話をしているようだ。
いや、違う。朱鷺戸沙耶という一人の女の子は確かに存在しているんだ、と理樹は弱気になった自分に強く言い聞かせる。
少女は相槌を打ちながら聞いてくれていたが、どうせ『面白そうな映画だね』などと評されて終わりなのは目に見えていた。
「―――というわけなんだ」
「うむ。実に興味深い話だった」
少女はうんうんと首を縦に振り、そう語る。
話だけでも聞いてもらえた分幸運だろう。
理樹はそれじゃあ、と言って少女に背を向けた。
「待て」
呼び止められる声に振り向くと、少女は一歩も動かずに理樹を見据えていた。
「貴様の悩みは分かったぞ。その朱鷲戸沙耶なる人物を助けたいのだな」
「そ…そりゃあそうだけど……ってまさか、信じてくれるの?」
「当然だ。私は箱庭学園第98代生徒会長だぞ」
意味は理解できなかったが、この少女は基本的に『善人』のようだった。
少女の名前は、黒神めだかというらしい。
理樹は自分の名前を名乗ると、めだかはいい名だ、と一言誉めた後毅然と言い放つ。
「直枝二年生、必ず貴様の恋人は私が救う!箱庭学園第98代生徒会長黒神めだか!この場に―――――生徒会を執行する!」
【深夜/D-1】
【直枝理樹@リトルバスターズ!】
[状態]多少の困惑
[所持品]ワルサーP99@現実、不明支給品1
[思考・行動]
0:朱鷺戸沙耶の保護を最優先する。
1:黒神さんと行動
2:真人、葉留佳さん、佳奈多さんとも合流したい
※沙耶ルート、沙耶死亡後からの参加です
【黒神めだか@めだかボックス】
[状態]健康、強い決意
[所持品]不明支給品2
[思考・行動]
0:この殺し合いを完全に潰す。
1:直枝二年生と行動
2:朱鷺戸沙耶は必ず守る。
3:球磨川たちとも合流したい
※生徒会戦挙編終了後からの参加です
最終更新:2011年08月29日 23:41