不幸。それは人としてこの世に生まれた時、皆に付きまとう存在。
ガムを踏みつける、財布を落とすなどはまだしも。警察の狙撃の誤射が当たってしまう、予防率99.999999%のワクチンが効かないなどは洒落にならない。
生まれながらの幸運は残念ながら存在しないのだ。
彼―――◆YR7i2glCpAは、ある意味不幸に愛されているのかもしれない。
『◆YR7i2glCpAさん:『暴君の采配(カオスゲシュタルト)』』
小綺麗な字でそう書かれた下には、簡単な説明書きがしてある。
YRは読んで絶望し、思わず参加者の一人の台詞をパクってしまう程に焦り出す。
『能力解説:ぶっちゃけ一番の外れです(笑)。一度だけ、不安定な精神の相手の心に言葉を響かせる能力。ある意味最強ですねw』
「うおぉおおぉおお!!不幸だぁぁああああああああっ!!」
どこが暴君だよ、完璧な劣化ジャイアンじゃねえか!とYRは絶叫する。
しかも、最悪なのは使用回数がたった一回しかないこと。切り札にも頼りなすぎる。
勢いよく能力の書かれた紙を破り、罰当たりながらも墓場に投げ捨てた。
ここはE-4の墓場。大丈夫?縁起は最悪だよ?
だが、YRもまた、バトル・ロワイアルを幾つも見てきた特別な人間の一人だ。
まだ支給品という最後の希望がある。
戦々恐々としてディパックを開けた。
まず最初に出てきたのはかの有名なひみつ道具、『スモールライト』。
説明によれば、人の踝くらいまでは小さくでき、3時間で元に戻るらしい。
スモールライト自体も三回の使用で電池が切れる不便仕様だが、贅沢は言ってられない。むしろ、強敵に追われているときに起死回生の手段となってくれるだろうし。
もう一つ出てきたのは、瓶に詰められた芳しそうなワイン。
「うーん、この香り、実にブルジョア……って何でやねん!」
一人ノリ突っ込みは空しいものだとYRは学習した。そして落胆した。
武器といえる武器がない。スモールライトを引けただけラッキーなのかもしれないが、本家BRの桐山を見る限り強力な武器があればやはり得だ。
墓石でも投げて戦うかな…と、YRは嘆息した。
「……畜生。神様は、俺が嫌いなのか…?」
一応手ごろな大きさの墓石をデイバックに詰め、手を合わせる。
手段など選んではいられない。時には、殺害を求められることもあるのだ。
参ったね、YRは、星が煌めく夜空に言った。
―――畜生、最悪の状況だってのに、何で星は綺麗なんだろうな……
見とれているYRは、背後から近付く襲撃者の影にはちっとも気付いてはいなかった。
二木佳奈多。『素気なし 愛想なし 配慮なしの風紀委員長』は、片手にベレッタM92を構えて、YRの後頭部に銃口を向けていた。まだ罪悪感があるのか、引き金に当てられた指はぷるぷると震え、唇は固く噛みしめられている。
だが、佳奈多には、守るべき者に命を賭し、守るために他者を切る覚悟があった。
悲しげな瞳で、YRに向けられたベレッタの引き金に静かに指をかけ――――――
「……悪いけどさ。奇襲の仕方としては最悪だよ」
YRは頭を軽く横に反らして弾丸をかわし、佳奈多の方に向き直る。
怖い。そんな感情が浮かぶ。しかし、佳奈多の肉体が死ぬことに対してではない。
大切な人――――三枝葉留佳を守るためには、易々と死ぬ訳にはいかないのだ。
YRに向けて引き金を引くが、既に彼は隣に飛び移った後。
墓石を蹴り、一気に佳奈多との距離をつめる。
ドンッ!と、佳奈多の腹にYRの拳が叩き込まれた。
「かふっ……!!」
ふらふらとよろけ、佳奈多はその場に倒れてしまう。
ふぅ、と一息吐くが、まだ問題は山積みなのだ。
目の前の彼女をどうするか。今まで見てきたバトル・ロワイアルの中では、マーダーとなった相手を殺して危害を避ける方法を取る人物が居た。
だが、俺はこの子を殺せるのか?
デイバックに詰めた墓石で頭を潰すような芸当ができるのか?
「甘いんだろうな……こんなんじゃ」
「まあいいんじゃないの?僕としてはまだ見直した方だぜ」
想定外の方向から、自分の独り言に想定外に返事が帰ってきた。
中肉中背の体型、不良をイメージできる金髪。黄色のブレザーの制服に紺のスラックスで身を包んだ少年が声の主だ。どこか不良じみた印象を受けるのは否めないか。
しかし、となればこいつはYRが襲撃されているのを黙って見ていたことになる。
「僕の名前は春原陽平。さっきの戦いは見事だったよ」
「……◆YR7i2glCpA。まったく、俺が殺されていたらどうするつもりだよ」
「僕は可愛い子の味方だからね。まあよろしく頼むよ、YR」
どこか憎めない春原の態度にやれやれとYRは苦笑する。
春原と情報を交換し、春原は今『岡崎朋也』という人物を探しているらしい。
書き手さんたちを探していくか、と考える。
春原と手を組むのもいいだろう。
外れ能力&支給品のYRだけでは戦っていくことも難しいだろうし。
「春原は何を支給されたんだ?」
「僕かい」
自慢気に春原はデイバックから自分の支給品を取り出す。
コンバットボウと呼ばれる種類のボウガン。確かに戦う上では有利になるだろう。
もう一つはYRと同じくひみつ道具『名刀電光丸』。説明によれば、持つだけで簡単に剣の達人になれるらしく、どうやら春原はかなりの当たり支給品を引いているらしい。
「……不幸だっ!!」
【深夜/E-4】
【◆YR7i2glCpA】
[状態]健康、不幸
[所持品]スモールライト@ドラえもん、ワイン@現実
[思考・行動]
0:
殺し合いには乗らない。
1:春原と行動。
2:女の子(佳奈多)が起きるまで待つ。
【二木佳奈多@リトルバスターズ!】
[状態]気絶
[所持品]ベレッタM92@現実、不明支給品1
[思考・行動]
0:三枝葉留佳を優勝させる。
1:………
【春原陽平@CLANNAD】
[状態]健康
[所持品]コンバットボウ@現実、名刀『電光丸』@ドラえもん
[思考・行動]
0:殺し合いには乗らない。
1:YRと行動する。
※少なくとも学園祭以降からの参加です
【暴君の采配(カオスゲシュタルト)】
一度だけ、精神が不安定な相手に使用できる。
相手の心に自分の言葉を無理にでも響かせることが可能。ぶっちゃけ使えない。
■
墓場の中には、YRたち以外にも人間が居た。
大柄な体型はただ立っているだけで威圧感を放つ―――ことはなかった。
『知られざる英雄(ミスターアンノウン)』日之影空洞は、他者に認識されない、ある意味の『異常』だった。しかし、この殺し合いではある程度弱体化しているようだ。
本来の彼なら、人の記憶からさえ消えてしまうような性質だ。
誰にも認識されずに、箱庭学園の平和を守り続けた『英雄』が殺し合いで目指すものは何か。
「……箱庭学園には、あいつが必要だ」
日之影空洞。
彼が目指すのは黒神めだかを優勝させること。その為になら全てを殺す覚悟がある。
彼の拳はそれだけで撲殺級の破壊力を持つのだから、十分可能な話である。
英雄は暴君へ。殺戮の中に、どこまでも堕ちていく―――
【日之影空洞@めだかボックス】
[状態]健康
[所持品]不明支給品2
[思考・行動]
0:黒神めだかを優勝させる。
1:球磨川禊には最大限の注意を払う。
※『知られざる英雄』には制限がかかっています
- 気配を消せるのは相手がこちらを認識していない間のみ
- 記憶から消えることはできない
※『光化静翔(テーマソング)』を手に入れる前からの参加です
最終更新:2011年08月29日 23:37