「何で……?終わったんじゃ、ないの……?」
八人を殺害して、一般人の少女が平然としていられる筈はない。真紀も例外なく、罪悪感に苦しみ、その上で生きることを選んだ矢先に、二度目の殺し合いだ。
ショックを受けるのは当然だし、また優勝を目指すと考えれば気が遠くなる。
呆然とするしかない。
あまつさえ、今回の殺し合いは前回と何かが根本的に違う。
神楽と呼ばれた少女が無惨に肉体を吹き飛ばされて死んだのも、前と違い派手すぎる。
殺し合いに乗るのは簡単だ。前の経験を活かせば、案外勝ち進めるかもしれない。
しかし、根拠はないが二度目の優勝はありえないと真紀はどこか悟っていた。
茫然自失になりながらも、命を守るための支給品を確認しようとデイバックを開く。
まず一つ目は野球の硬式ボール。使う人が人なら立派な凶器だろうが、真紀の力ではまずそもそも当てること事態が難しいし、後の反撃で手痛い傷を負うだろう。
二つ目は携帯電話だった。
説明には『探偵日記』と書かれている。
『日記所有者』なる存在の行動を予知できる日記とあったが、真紀には理解できない。
しかし、真紀は知らない。
この『探偵日記』は、参加者中四名の『未来日記所有者』に絶大な効果をもたらすことを。場合によっては、未来を予知できる彼らに対する最後の切り札となる可能性を秘めていることもまだ知らない。
携帯電話と野球ボール。真紀からすれば、最悪の外れだったといえる。
「最悪じゃない……」
◆
麻薬密売組織の中間役の女性クレリエルは怒りに震え、爆発を必死に抑えていた。
彼女の国は麻薬に対する規制が非常に厳しく、発覚したなら死罪は免れないほどだ。
だからこそ、儲けられる金額は一般の仕事の比ではない。
彼女の貯蓄は数億に及び、もうすぐ仕事から足を洗ってどこかに身を移そうと思っていたのに。運が悪ければ数年の命がけの仕事をした甲斐はすべて水泡に帰してしまう。
「許さないわよ……血祭りにあげてやるわぁ」
クレリエルは支給されたスペツナズ・ナイフを右手に持ち、双貌を爛々と輝かせる。
彼女は主催者を滅茶苦茶に切り刻み、願いの権利だけを奪い取るつもりだった。
願いは当然莫大な富。いざとなれば罪の帳消しでも構わない。
クレリエルは狡猾な頭の良い女性だ。
恐らく、あの主催者の前に立つには殺し合いを勝ち抜く必要がある。
適当に殺して適当に逃げる。
上手く立ち回れば、優勝するのは簡単かもしれない。
その時、前方に一人の少女の姿を見つけ、クレリエルは邪悪な笑みを浮かべた。
◆
新藤真紀は、その女性のことを『良い人』だと思いこんでしまった。
「こんばんは。お互い大変なことになっちゃったわね」
優しい微笑みを浮かべるクレリエルの姿に、真紀は悪意をまったく感じなかったのだ。
しかし当然といえば当然だ。クレリエルは職業上、様々な場面で偽の『クレリエル』を演じる必要があった。続けていく内に、演技は何時しか当然の事実に変わっていく。
一度殺し合いを制した程度の真紀に見抜けないのは無理もない。
「怖がらなくてもいいのよ?私は殺し合いには乗っていないもの」
「……本当なの?」
笑顔で頷くクレリエルを見て、真紀は完全に信用しきってしまった。
彼女の知り合いだという『黒神めだか』―――当然、嘘―――を捜すために、真紀がクレリエルの先を歩きだした瞬間。クレリエルは内ポケットから『それ』を取り出す。
真紀を殺すには十分な凶器を。
スペツナズ・ナイフ。
刀身を飛ばすことができる特殊なナイフで、殺し合いにおいては有用な武器。
「――――うふふ、馬鹿ね、真紀ちゃん」
「……え?」
世界を紅が包んだ。
◆
「え……?」
血の主は、真紀ではない。目の前の女性の頭から吹き出していた。
理解する。要は、クレリエルが本性を表した瞬間にその頭を狙撃によって撃ち抜いた。
敵か味方かは分からないが、もし襲いかかるような真似をしたなら真紀の頭は先の二の舞になることは請け合いだ。
程なくして、細長い狙撃銃を担いだ青年が真紀の方へとやってくる。
銃口を下ろしていることからも、彼に攻撃の意志は無いと真紀は判断した。
「悪いな、驚かせたか?」
国崎往人。『空にいる少女』を追い求めた旅人は何を思いどう動くのか。
答えは簡単だ。国崎の標的は殺し合いに乗った者の殺害。
クレリエルが本性を見せなければ、国崎と真紀が合流することは無かった。
互いに軽い情報交換を終え、国崎は真紀の経験した殺し合いの話を、真紀は国崎の目指す先と守るべき少女の話を。
「――――真紀。一つ、提案がある」
「……何?」
国崎往人はドラグノフ式狙撃銃を用いて殺人者の暗殺を行う指針である。
しかし、逆に国崎が襲撃された時には危険はぐっと高まる。
そこで、国崎は真紀に『提案』をするのだった。
「俺の相棒として、俺を援護してくれ」
なるほど確かに悪い話ではない。国崎の遠距離射撃と真紀の近距離での戦闘を合わせれば、安定して危険人物を排除することができる。
国崎は真紀を全力で守る、真紀は国崎を全力で守る単純明快な契約だ。
「………いいわ。乗った」
国崎往人と新藤真紀。殺し合いに積極的な危険人物の暗殺を行う、俗に言うなら『マーダーキラーコンビ』とでも言える同盟が一つ、完成した。
【クレリエル@オリキャラ】 死亡
【残り115/120人】
【深夜/A-7】
【新藤真紀@非リレー型バトルロワイアル・リピーター】
[状態]健康、精神疲労
[所持品]硬式野球ボール@現実、探偵日記@未来日記
[思考・行動]
0:国崎往人と共に危険人物を殺害する。
※俺のオリキャラでバトルロワイアル、生還後からの参加です
■
……すまない、真紀。俺はお前に一つだけ嘘を吐いている。
俺は殺し合いには乗らないと言ったが、あれは嘘だ。俺は殺し合いに乗る。
お前と組んで危険な奴を根こそぎ殺して、最後はきっと、お前を*すだろうな。
俺だって殺し合いなんてしたくないさ。だがな、俺にだって守らなきゃならない人がいるんだ。この殺し合いを勝ち抜くのは、神尾観鈴だけだ。
可哀想だとは思うが、分かってくれ。
俺は観鈴を守らなきゃいけない。その為には、甘えを捨て去って悪になり果てる必要があるんだ。――――本当に済まない、真紀。俺を憎め。俺は許されてはいけないんだ。
観鈴、待ってろよ。
今度こそ俺は、お前を助けてやるからな――――。
【国崎往人@AIR】
[状態]健康、強い決意
[所持品]ドラグノフ式狙撃銃@現実、不明支給品1
[思考・行動]
0:神尾観鈴を優勝させるため殺し合いに乗るが、最後まで隠し通す。
1:晴子、遠野には会いたくない。
2:表向きは殺し合いに乗る者を殺していく。
※転生直前からの参加です
| 「悲壮」 |
投下順 |
幸運もしくは不運 |
| GAME START |
クレリエル |
GAME OVER |
| GAME START |
新藤真紀 |
[[]] |
| GAME START |
国崎往人 |
[[]] |
最終更新:2011年09月05日 18:42