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「悲壮」

岡崎朋也は、殺し合いに怒っていた。
馬鹿げている。人の命を犠牲にしてまで叶えたい願いなどあるものか。
それも、友人である藤林杏や春原陽平を殺害してまで、叶えたい願いなどあるものか。
余談だが、岡崎は妻を失っている。

元々病弱だった『妻』。何故妻―――――古河渚だけがいつもこんな目に遭わなければいけないのか分からなかった。腸が煮えくり返る思いだった。
もしも。死人を蘇らせる願いさえ叶えられるのなら。もしも、あの幸せな日々を、渚と娘の汐ともう一度やり直せるチャンスがあるのなら。

―――――俺は、本当にチャンスを捨てられるのか?

致命的な矛盾、矛盾、矛盾、矛盾。
杏や春原を殺したくはない。でも、渚を生き返らせたい。
片方しか選べない。友か、妻か。

「分からない。俺は――――――」

ダァン。渇いた破裂音がした。
下手糞なサスペンスドラマなんかでよく聞くような音。ああそうだ、この音は銃声によく似ているんだ。撃たれたのは誰だ?誰が撃たれたんだ?

胸の真ん中から出ている血液が、迷走する岡崎を現実に引き戻した。
ああ――――撃たれたのは、俺か。
でも、悪くないのかもな。これで、俺は誰も殺さずに、友達の血を浴びずに、渚に会えるんだから。ごめんな早苗さん。汐はしばらく任せるよ。俺はもう駄目だ。

「こんな父親でごめんな…………汐………」

岡崎朋也は、その生涯の幕を閉じた。


『FB』こと天王寺裕吾は、現実を受け入れられずに困惑していた。何故なら、本来天王寺がここに存在していることは有り得ないからである。
天王寺は世界規模の研究機関『SERN』の武力制圧や暗殺を生業とする部隊『ラウンダー』の幹部で、一般人としての顔はあくまで表の顔に過ぎない。
彼は岡部倫太郎たちのタイムマシンを回収する任務を請け、任務成功の暁として自殺した。ラウンダーは使い捨てで、必ず口を封じられる。
娘の天王寺綯に危害が及ぶことだけは、絶対にあってはならなかった。
だからこそ、彼は潔く自害する道を執ったというのに。

「これじゃあ……意味が無えじゃねえか……!」

固く握った拳を近くの電信柱に叩きつける。
その鍛えられた肉体から出される拳の威力は絶大だったろうが、彼はそんなこと気にも留めない。結局自分はSERNに利用されていたのだ。

「―――――――――――やるしか、ねえ」

殺し合いに乗る。
『FB』は静かにそう決意した。全ては娘を、大切な何物にも代えがたい宝物を守るために。天王寺は自ら修羅の道を決断したのだ。
願いはたった一つ。娘への永遠の幸福。
その願いが叶えられるなら、天王寺裕吾は喜んで鬼にも悪魔にもなれた。

後は何も感じない。人を殺すのは初めてではないし、殺人が生ぬるい軽犯罪に思えてくるようなことだって天王寺はたくさん見てきたのだから。
岡崎朋也に背後から銃口を向け、後は迷わずに発砲する。

僅かな、本当に僅かな時間さえあれば、人は簡単に殺せるのだと天王寺は改めて実感し、物言わぬ死体に自然と手を合わせた。

「――――すまねえ。俺は、綯を守らなきゃいけないんだ……」

支給品に入っていたのは二つ。
まずは彼が殺人に使った銃、H22ベレッタ。これは扱いやすい銃だし、威力も対人用としては申し分ない。間違いなく当たりの支給品だろう。
もう一つは『どろり濃厚ピーチ味』と書かれたジュースだった。
実は一部の人を除いて驚異的なまずさを誇るのだが、天王寺は見向きもしない。

『FB』天王寺裕吾は実質二度目の人生にして、再び闇へと落ちていく。

【岡崎朋也@CLANNAD】  死亡
【残り116/120人】

【深夜/C-6】
【天王寺裕吾@めだかボックス】
[状態]健康、微かな罪悪感
[所持品]H22ベレッタ@現実、どろり濃厚ピーチ味@AIR
[思考・行動]
0:優勝して娘に『永遠の幸福』を与える。
1:岡部達には会いたくない。
※死亡後からの参加です

強者たちのバトル・ロワイアル 投下順 消える飛行機雲、追いかけて追いかけて。
GAME START 岡崎朋也 GAME OVER
GAME START 天王寺裕吾 [[]]

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最終更新:2011年09月05日 18:41
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