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幸運もしくは不運

希望の船、エスポワール。
多額の借金を背負った文字通りの『クズ』が乗せられるまさに希望のギャンブル船。
勝者には栄光が、敗者には死にも等しい絶望が待っている。

尖った鼻と顎が特徴的な青年―――伊藤カイジは、エスポワール唯一の『勝者』である。類い稀な悪運と勝負運を持ち、地獄の底から這い上がったまさに不屈の男。
その後にもう一度、今度は過酷な地下労働施設にて悪辣な労働を強いられたが、彼は再び地上へと帰還。人喰いパチンコ『沼』を破り、地下の仲間たちと脱出を果たした。
要するにカイジは駄目な人間なのだ。
たとえ栄光を手にしようと、彼はまた堕落する。確かに彼は『クズ』かもしれない。
しかし、仲間の為に憶せず圧倒的に不利な勝負にさえ出る、逆境さえ跳ね返す男だ。
カイジが殺し合いにて行う行動など、もう決まっていた。

「ふざけるなっ……!!人の命を何だと思ってやがるっ……!!」

怒り。チャイナ服の少女を惨殺した悪の主催者・古戸ヱリカへの激しい怒り。
しかしカイジは、彼女によく似た人物を知っている。金と道楽の為に人を弄ぶ、世界最悪の外道――――帝愛グループ総帥・兵藤和尊。
カイジの前に幾度と立ちはだかるあの男。
伊藤カイジは、闇医者の世話になって指や耳を縫合した経験がある。
即ち、兵藤とのギャンブルに敗北した代償だ。
常人なら躊躇うことさえ、あの老人は簡単にやってのける。

早い話が、カイジはこのバトルロワイアルも、裏で帝愛グループが糸を引いていると疑っていた。というより、これほどのことをするのは帝愛以外には考えられなかった。
実際には、この殺し合いに彼ら帝愛は一切関係していない。
完全なミスリードだが、カイジの脳裏にはあの忌々しい兵藤の顔が浮かぶ。
血が滲むほど強く拳を握りしめ、改めて怒りの炎を燃やした。


数分後。カイジは結局、その場から動いていなかった。
それが伊藤カイジを『駄目』たらしめる要素の一つ、『優柔不断』。
一人で物事を決定する能力が足りないのがその欠点の一つだ。

「(くそっ……俺は……どうすれば……?)」

E-1の砂浜で空を仰ぎ、参加者名簿を無気力に眺める。『利根川幸雄』『一条』―――――かつて戦ってきた敵たちで、どちらも姑息な、とても信用の効く相手ではない。
二人ともカイジが失脚させ、地位を貶めた相手だ。間違いなくカイジに憎悪している。
つまり、信用できる知り合いは一人も居ない。


せめて、まだ『45組』の仲間たちが参加させられていれば、カイジに希望はあった。
知り合いが一人も居ない事実はカイジに大きな、圧倒的な孤独を決定付けたのだ。

「駄目だ……こんな事してる場合じゃねえっ……!!」

起き上がり、カイジは両の目にもう一度闘志をたぎらせていた。
参加者名簿をしまい、代わりにランダム支給品を取り出す。

一つ目はグロック19。これを当てた時にカイジは思わず頬を緩ませた。
間違いない当たり。襲撃されようと返り討ちにできる。
二つ目に引いたのは二つのトランシーバー。それはエリア内のトランシーバーと無線通信ができる画期的なものだ。これもまた、外れではない当たり寄りの支給品だろう。

「ラッキーだっ……!!今の俺はっ……ツイてやがる……!!」

カイジはグロック19を右手に持ち、宛てもなく歩き出す。
まず、誰か信頼できそうな人間と合流したい。早くカイジは、自分が孤独だという状況を払拭したかった。
危険な行為である。銃片手の交渉は相手に不信感を与える可能性があるのだから。
しかし、今の伊藤カイジは本当にラッキーだったのだ。

「すいませ~ん!そこの人~!!」

仲間は、向こうから訪れた。
カイジは振り返って僅かに狼狽の色を見せる。
それもそのはず、背後から駆け寄ってくるのは人間ではない青い狸のような生物――。

「何だお前……青い狸っ……!?」
「僕は狸じゃな~いっ!!」

22世紀の猫型ロボット。そんなことをカイジが知る由も無く、お約束の展開になる。
猫型ロボットは、ドラえもんと名乗った。


「じゃあ、カイジさんはこの殺し合いの黒幕に心当たりが……?」

カイジはああ、と言って頷く。
ドラえもんにも心当たりのある人物は何人か居たらしいが、カイジにはどうしても黒幕として『兵藤和尊』の名前が浮かんでくるのだった。
ドラえもんにも自分の口から、帝愛がどんな連中かを説明するカイジ。
話を聞くと、ドラえもんも驚くほどに、帝愛グループは悪辣だった。
エスポワール。人間競馬。地下労働。そして、総帥・兵藤が敗者に下す『罰』のこと。
正直なところ、ドラえもんの予想の遥か斜め上をいっていた。
日本最大級のコンサルタント・帝愛グループ。そしてその総帥・兵藤和尊。
黒幕としては十分に考えられる、恐ろしい連中だ。
ドラえもんにもギラーミンや恐竜ハンターなど危惧はあった。


しかし、帝愛グループが殺し合いを統括している可能性は非常に高いといえた。
伊藤カイジとドラえもんは、ひとまずドラえもんの友人たち『野比のび太』『剛田武』『骨川スネ夫』との合流を目指して、またも宛てなく歩き出すのだった。


ドラえもんは、野比のび太が殺し合いに巻き込まれた事に大きな心配を抱いていた。
骨川スネ夫も危うい面はあるが、何しろ『あののび太』だ。幾ら多くの冒険をしてきたとはいえ、殺し合いのストレスで心が壊れてしまうかもしれない。
のび太の優しさを理解しているからこそ、ドラえもんはただひたすらに心配だった。
同時に覚悟しなければならないことも、ドラえもんは感じている。
万一、野比のび太に万一のことがあったなら。

――――僕が、のび太くんを生き返らせなきゃいけない。

それは即ち殺し合いに乗ることになる。
だが、彼は子守りロボットの上に、のび太の親友なのだ。彼を生き返らせ、幸せにできるならドラえもんは修羅道を駆け抜ける覚悟があった。

「(必ず…帰してあげるからね、のび太くん)」

【深夜/E-1】
【伊藤カイジ@カイジシリーズ】
[状態]健康
[所持品]グロック19@現実、トランシーバー@現実
[思考・行動]
0:殺し合いはしない。
1:仲間を集める。
※破戒録編終了後からの参加です
※帝愛グループが黒幕だと思っています

【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]健康
[所持品]不明支給品2
[思考・行動]
0:野比のび太を守る。
1:まずは対主催に回り、もしのび太に何かあったら殺し合いも辞さない。
※四次元ポケットは没収されました
※帝愛グループの情報を得ました

消える飛行機雲、追いかけて追いかけて。 投下順 この世全ての悪
GAME START 伊藤カイジ [[]]
GAME START ドラえもん [[]]

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最終更新:2011年09月04日 00:24
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