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この世全ての悪

D-6エリアは軍事施設だ。
当然、便利な銃器も常備されているため、最初にここを目指す者は多いだろう。
竜卒公姫(ドラキュリア)・ヒルダも最初にD-6エリアを訪れた。
しかし、彼女がD-6を訪れた理由は何だったのだろうか?
銃器?否。仲間探し?否。逃走の為?これもまた否。
ヒルダの狙いは、『様々な理由でここを訪れる者の殺害』―――殺し合う為だ。

竜卒公(ドラキュラ)・ブラドの娘。それがヒルダの正体で、例に漏れず彼女もまた吸血鬼。更に超能力を兼ね備えた『怪物』の名にふさわしい女性であった。
その能力は雷。
空の雲からの落雷に自分からの放電など、非常に汎用性の高い能力である。
が、彼女たち吸血鬼の恐ろしい部分はそこではない。
吸血鬼特有の臓器『魔臓』―――。体中に四つ存在するそれらを、『全て同時に』破壊しなければ、吸血鬼を倒すことはできない。更にヒルダは、独自に手術を行って四つの魔臓の位置を体内にランダム配置している。
難攻不落。破壊の方法に活路を見出そうが、ヒルダの能力を越えるのがまず難しい。
彼女が殺し合いに乗っている。
彼女を知る者なら絶望してもおかしくない圧倒的な不安要素。

ヒルダは微笑む。

「……楽しみよねぇ。どんな風に足掻いてくれるのかしらぁん」

それは恍惚の笑み。声色には白々しいまでのサディズムが見え隠れしている。
ヒルダはその恵まれた生まれからか、その若さに似合わないサディストである。
奴隷や使用人がミスをすれば、見るのも辛いほどの責め苦を与えて一人ごちる。
相手に反抗の気力さえ与えない、与えるのは圧倒的な恐怖のみ。
相手の心をとことんまでへし折り、人間としての尊厳までも貶める―――恍惚。
ヒルダが恐れられる訳だ。精神従属状態に半強制的に追い込まれるのだから、相手にとってはただ一方的な暴力でしかない。

だが。実はヒルダにも一つ、弱点が存在するのだ。
戦闘においては致命的な損害を出す可能性さえある、それこそ魔臓以上の弱点が。
強者の宿命か。力を持つ者にとってのさだめなのか。

一番致命的なのは、それに彼女自身が気付いていないことかもしれない。



◆ymCx/l3enu。本来『殺し合いの外側』の人間だが、今の彼は一参加者であった。

「バトルロワイアルか。……まさか参加する日が来るとは思わなかったな」

溜め息混じりで、呆れたようにそう誰にともなく呟いた。
荒神健児。彼は『殺し合いに参加する』日が来るとは思っていなかったと言った。
間違いではない。荒神健児は殺し合いに参加したことなど一度も無い。

――――あくまで、『参加したことは』ないというだけの話だが。

荒神健児は、殺し合いの外側―――殺し合いの『主催者』である。
つい最近では『俺得バトルロワイアル5th』という殺し合いを主催し、彼に牙を剥いた優勝者のテトを殺害した。気が付けば、彼は参加者にされていた。
彼にとっての異常はそれだけではない。
彼が持っていた『能力』が剥奪され、代わりに別な能力が与えられていたのである。
慣れないものではあったが、案外使ってみると使い心地のいいものだ。
荒神は特に不満な訳ではなかった。

「―――――優勝してみるか。夢物語じゃ無さそうだしな」

彼に自身を与えたほどの能力。その破壊力は素晴らしいと言わざるを得なかった。
その威力の大きさを、無惨にも破壊された巨大なシェルターが物語っていた。
荒神健児が最初に視界に捉えた人物は、果たして運が良かったのか悪かったのか。

竜卒公姫・ヒルダ。

最悪の吸血鬼と最悪の元・主催者が交差したとき、最後まで立つのは一体どちらか。


―――――馬鹿な奴。
ヒルダは、嘲るように身動き一つしない荒神健児の頭を軽くつま先で小突く。
恍惚を覚える間もない。この男はあまりにも弱すぎた。

――――――数分前

最初に仕掛けたのは荒神の方だった。施設内で入手した銃、ワルサーWA2000でヒルダの頭を撃ち抜く狙撃を行い、殺し合いの幕がゆっくりと開けた。
頭を撃ち抜く弾丸。しかし、魔臓による再生能力に対しては無力な鉄くずでしかない。
ヒルダは反撃の一発―――雷を指先からそれこそ弾丸のような形にして放ち応戦する。

「がぁあっ!?」

痺れと熱さに悶える荒神。実際、少し鍛えたなら耐えられる威力だったが、荒神は致命傷を負ったかのように悶え苦しみ続ける。完全な詰み(チェックメイト)であった。
最初の被害者である荒神を痛めつけるために近付き、右の手を真上に掲げる。
荒神は情けなく叫ぶ。


刹那、ヒルダの手の真上から雷が放たれ、荒神健児を撃ち抜いた。
荒神は倒れ、僅かに痙攣した後ピクリとも動かなくなった。
拍子抜けすぎる幕切れに、ヒルダは恍惚に至ることさえ無く。殺し合いは終わった。

―――――現在

「……拍子抜けだわ」

不満そうに眉を寄せ、ヒルダは最後に一際強く荒神の頭を踏みつける。
何の楽しさもないことにやはり不満気ながらも、ヒルダは荒神に背を向け―――、

衝撃が、ヒルダの肉体を跳ね飛ばした。

地面と濃密なキスを交わす羽目になるヒルダは、怒りより先に何が起きたのか理解できなかった。間違いなく。荒神健児は死亡した。殺した。ヒルダの雷に打たれて死んだ。
なら、片腕に拳を作って前に突き出しているあの男は、荒神以外の誰なのだろうか?

「鳩が豆鉄砲喰らったみてえな顔しやがって。こいつが俺の能力だよ」

荒神健児は不敵な笑みを浮かべながら、地面に這いつくばるヒルダを見下ろす。
しかし、竜卒公姫のプライドは高い。
怒りに顔を歪ませながら立ち上がり、肉体の周りに雷がまとわりつき始める。

「いいわよ―――――、殺してあげるわ」

バリバリバリバリバリィッ!!という何かを引き裂くような音。
次の瞬間には、ヒルダの周りを雷の球体が幾つも浮遊していた。
今度は一切の加減がない、本気で『殺し』を行うための雷。

荒神は一歩も動かずに、ただ拳を作ってみせるだけ。その余裕がヒルダに油を注ぐ。
球体それぞれが雷の槍の形状に変化し、バラバラの速度で荒神に向かっていく。
荒神はそれに向けて拳を引き、真っ直ぐにそれを押し出した。

雷の槍が押し戻され、少しずつではあるがその大きさが小さくなっていく。
まるで、拳のエネルギーの前に雷が少しずつ消されているかのように。

「――――な、っ――!?」
「言っとくが、勘違いするなよ。俺は雷を『消す』なんてことはしてないんだ」

荒神が右足で地面を蹴り、ヒルダの元に移動する。その速度はまさしく異常な速度。自動車並の、人間の限界速を優に超える超人的な速度による高速移動だった。
拳をゆっくりと引き、ヒルダを嘲るように言い放つ。



「受けて、体内で殺してるだけだよ」




ヒルダはとっさに防御として雷を使う。


雷を盾のように貼り、触れた瞬間に相手を感電させて殺す凶器の盾。
が。荒神は雷を体内で殺していると言った。即ち、この盾など紙程度でしかないのだ。
それにヒルダが気付くより先に、自慢の雷はあっさりと突き破られていた。
勢いの残った拳が、ヒルダの右腕に叩き込まれる。

「がぁぁあああああああっ!?」

妙な方向に腕が折れ曲がり、醜い悲鳴が漏れる。
ほぼ本能的に叫んだが、魔臓の再生能力は健在だ。腕など数分あれば治るだろう。

「死ね!この――――愚民風情が―――!!」

一際大きな落雷。ヒルダも疲労を強いられる威力だが、荒神はそれを全身で受ける。

「さすがに痺れるな。だが、お前じゃ俺には絶対勝てない。『絶対に』な」

次は足が振るわれ、ヒルダの脇腹から嫌な音がする。
次に拳がヒルダの顔面に叩き込まれ、その華奢な肉体を再び跳ね飛ばした。
立ち上がろうとするヒルダ。良いね、と小声で言い、荒神は再び拳を握る。

しばらくは、肉を拳が打つ音と、短い悲鳴や叫びだけが続いた。


「……すげえな。こいつ不死身かよ」

ヒルダの肉体はぼろぼろだった。腕や足は全てあらぬ方向に曲がり、顔は幾度もの殴打により腫れ、歯が後何本残っているのかさえ分からない有り様だった。
しかし、呼吸は止まらない。
ひとえに『魔臓』の影響が大きいからだ。きっとこの傷も、あと一時間もすれば完治してしまうかもしれない。吸血鬼の性質を知らない荒神には彼女は殺せないだろう。

ここで一つ解説しなければならない。
荒神健児は能力『悪星(イビルスターダスト)』の試し撃ちをするために、一度拳銃自殺をしている。彼の能力の発動条件は『心臓の停止』。つまり、死が引き金となる。
性質の悪いことに、彼を殺すには『悪星』使用時に殺害しなければならない。
『悪星』。身体能力の異常なまでの増強と、熱、電気、水、寒さへの異常な耐性。
一度オフにすれば30分の能力発動不可時間が発生するのが唯一の弱点か。

荒神はヒルダの体を適当に蹴り、一言だけ言い放った。

「お前の弱点は慢心だよ、雑魚が」


【深夜/D-6】
【◆ymCx/l3enu(荒神健児)@非リレー書き手】
[状態]健康、『悪星』発動
[所持品]ワルサーWA2000@現実、不明支給品1
[思考・行動]
0:殺し合いに乗る。
1:ヒルダは放置。反撃してきたなら再び潰す。
2:主催者もできれば殺したい。

【悪星(イビルスターダスト)】
自分の心臓の停止によって発動することができる。
熱、電気、水、寒さに対して異常な耐性がつき、異常な身体能力が手に入る。
制限時間は無いが、一度オフにすると30分オンにできない。
ちなみに、肉体の耐久は普通なので頭を撃ったら死ぬ。避けられるかもしれないが

【ヒルダ@緋弾のアリア】
[状態]気絶、全身がぼろぼろ(再生中)
[所持品]不明支給品2
[思考・行動]
0:殺し合いに乗る。
1:……………。
※魔臓による再生が遅くなっています
※少なくとも、キンジ達に倒される前からの参加です

幸運もしくは不運 投下順 未来少女
GAME START ◆ymCx/l3enu(荒神健児) [[]]
GAME START ヒルダ [[]]

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最終更新:2011年09月04日 00:27
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