武藤カズキ。
心臓に異物を取りこまれた者。
俗に言う、英雄と呼べるその価値観。
巷に言う、偽善者と呼べるその行動。
だから、勿論のことこの
殺し合いに関しても許せるはずがなかった。
走る。
闇の道を。
暗き道を。
走る。
走り。
そしてどこかに辿りついた。
☆
彼女、
長門有希は今のこの現実に困惑するばかりであった。
「………………なぜ」
彼女は、簡単に言うと。
比較的伝わりやすく説明すると、宇宙人である。
伝わらないを覚悟して言うのであれば、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス。
さて、画面の前の皆さまの表情が固まったところで話を前に進めよう。
「再び情報統合思念体にコンタクト開始」
先ほどからやっているのは、彼女らを統べるモノにコンタクトを行っていた。
彼女は、この情報統合思念体の奴隷ともいいかえればできる存在だ。
しかし言い変えたらの話であり、勿論奴隷では無いのだが。
「…………なぜ」
そんな彼女が先ほどから浮かべる疑問。
その内容とは、一つの返答。
《殺し合いを止める力を長門有希には与えない》。
という内容を主とする返答に、疑問を純粋に抱いた。
何で、殺し合いを止めてはいけないのだろう。
そんな疑問が渦巻く。
渦巻いて、消えない。
これも、涼宮ハルヒの企みだというのだろうか。
だとしたら、情報統合思念体が動かないのも頷けるだろう。
だとしたら、この変わらない現実についても納得できるだろう。
だとしたら、長門は、涼宮ハルヒという人間に、失望しか覚えないだろう。
「……………なぜ」
三度、同じ呟きを漏らす。
昨日のSOS団の活動は、極々自然なものだった。
涼宮ハルヒという人物単体にしても。
彼の良き理解人(ただしそれは一方的なものだが)
古泉一樹に関しても。
通称
キョンに関しても、慌ただしい様子も見せず、何事もなく終わった。
ただただ平凡で。
わけなく平穏で。
いわゆる平和で。
なかなか平常で。
こんなことが起こりゆる可能性なんて一%もなかったというのに。
何で、この可能性は現実となってしまったのか。
分からない。
知れえない。
分かるはずもない。
知れるはずもない。
覚えもない。
忘れもない。
どこで間違えたのか。
どこで間違うことができたのか。
「…………私は、どこでミスをした?」
彼女は、ミスをしていない。
ただ、一つのイレギュラー。
一つの奇禍が周りを掻き廻しただけだ。
「………これがもし涼宮ハルヒの能力の一環だとしたら」
一環だとしたら。
「私は彼女を勘違いしていたのかもしれない」
勘違い。
それは―――――。
「彼女は女神などではやはり無かった」
女神。
誰が彼女をそう称したのか。
「彼女は、悪魔」
―――――――――悪魔だ。
そう、結論付けて、物語はまた先に進む。
否応なしに。
もしくは待ち焦がれて。
物語は進む。
☆☆
彼、武藤カズキという人間は、意外と簡単で。
偽善者。
蝶野攻爵、いわつるパピヨンの唱えるとおりの人格で成り立つ。
誰かの為に自分を投げ出す。
裏を返せば、誰かがいなければ力は半減。
もっといえば判断を他人に任せているとも云えなくもないだろう。
さて、そんな語り口から始めたところで物語に視点を戻そう。
今、彼は住宅街にいる。
というより、いた。という言い方の方が的確なのだが。
そして、今。目を覚ます。
光景は、やはり住宅街。―――――勿論見知らぬ住宅街。
「………あれ? ……………やっぱり現実? けど何で地球にいるんだ?」
間抜けなことを言ってるが、カズキは錬金戦団。
流血沙汰は耐性はある。
―――人が死ぬのは悲しいけれど。
「―――――許せない」
闘志が燃える。
主催を潰すという決意。
闘志と決意が融合する時、普通の場合は、有力な対主催が生まれる。
「…………よっぽど大丈夫だと思うけど斗貴子さんや蝶野は無事かなぁ」
有力の対主催。
彼はそれに部類的には入る。
「…………ま、一応支給品を確認しようかな」
そう、少なくともこの時まではそうだったのだ。
燃える対主催。
この時ばかりは、そうだった。
「一つ目。ってオレのこれか」
呼ばれて飛び出ず彼の核鉄。
というか彼の心臓代わりの核鉄だ。
内蔵されるのは、サンライトハート(改)。
突撃槍を模した武装錬金だ。
それは、彼にとって当たり前のことなので反応なぞせず、
次の支給品を探し出すため、ディパックを漁り始める。
「二つ目は……っと。ジャスタウェイ?……………何だろう―――――――――って爆弾!?」
呼ばれず飛び出てジャスタウェイ。
説明書を読むごとに分かる驚愕の事実。
爆弾であることに無論というより順当にリアクション取り、
「…………まぁ、使わないよな」
ディパックに仕舞う。
続けさまに三個目の支給品があるか確認する。
ここから、問題であった。
「お、あったあった」
手にした物は、何やら冷たい。
そして六角形。
知っている。
武藤カズキはこの物体が何かを知っている。
「――――――待てよ、じゃあッ………!」
ふと、カズキは頭の中で、一つの可能性を見出す。
それは、悪い意味で、可能性を見つけ出した。
そして、慌てながらにも、しっかりと。
ディパックから、それを取り出した。
「―――――――――こ、これは」
出てきた物とは、無論。核鉄。
シリアルナンバー、XLIV (44)。
それの所有者は―――――。
「斗貴子さんの―――――――核鉄?」
津村斗貴子の、核鉄。
間違いない。それは、津村斗貴子の核鉄だ。
そして、ここから武藤カズキの自爆劇が始まる。
勘違いでもない、ただの自爆。
誰にも干渉されず。
自発的に、間違った方へと歩みを進める。
正す者もいない。
直す者もいない。
壊す者もいない。
崩す者もいない。
ただ、一人でに道を歩く。
誰の為かと言われたら、自分自身の為に。
「じゃ、じゃあ。斗貴子さんは?」
「何も武器を貰っていない可能性だってあるじゃないか!」
「いくら身体能力が高いからって………」
「生き残れる可能性なんて、ほぼ無いじゃないか!?」
「…………ダメだ」
「そんなのダメだ!」
「オレは確かに突き放したけど、だけどッ!」
「ふざけるなッ!」
「斗貴子さんが………死ぬなんて」
「嫌だ」
「嫌だ」
「嫌だ」
「そんなの―――――嫌だッ!」
「………でもどうしたら」
…………
《善でも悪でも最後まで貫き通せた信念に偽りなどは何一つない》
…………
「オレの信念…………」
「守るんだ。」
「斗貴子さんを。」
「守らなきゃ。」
「今度こそ………泣かせない。」
「斗貴子さんを悲しませない。」
「守るんだッ! 斗貴子さんを!」
気付かない。
彼は気付かない。
彼が人殺しの道に走ることが、彼女を悲しませることに。
彼が彼女の為に人を殺すのは、彼女を泣かせることに。
気付かない。
気付けない。
気付こうとしない。
「―――――――――今度こそッ」
今度こそ、正真正銘彼女の心を砕けさせる。
☆☆☆
目も闇になれたころ。
カズキが辿りついた先。
そこには、いや、辿りつくべき場所の名は人。
一人の少女。
長門有希だ。
出会いのきっかけは特にない。
走って、もしくは歩いていたら見つけただけだ。
「キミは………」
「……………長門有希」
「そう、オレは武藤カズキだ」
そうして二人は対峙した。
少なからず、片方は、殺意を抱いて。
「うん、長門さんっていったっけ」
「……………何?」
殺意を解放する時。
それは、出会いから、出遭いに変わる。
それは、只の交流から、只の戦闘に変わる。
「悪いんだけどさ―――――――死んでくれ」
「……………」
冷たい瞳に凍える口調。
普段とは、余りにもかけ離れたカズキは高らかに、叫ぶ。
「武装錬金!」
手に構成される武器。
肥大化するその金属は、彼専用武器、サンライトハート(改)へと変わる。
小型な槍。
片手でも存分に扱えるほど軽いその槍。
「……………情報操作能力ではない………」
「そんなの知るかぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!」
初撃を与えるのはカズキ。
いや、この場合は繰り出したという方が適切であろう。
「……………甘い」
美しき軌跡を描く槍先は、的確に有希の心臓を狙っている。
しかし、それはあまりにも簡単に防がれた。
「―――――――――何っ!」
「…………この程度の情報操作を行うのは可能」
情報操作。
制限下に置かれたとはいえ、使えるには限りない。
それは、カズキのサンライトハート(改)を防ぐのだって吝かではない。
「…………パーソナルネーム武藤カズキの存在を害として削除を申請する」
「………何それ?」
「…………申請失敗。流石に無理があった」
当たり前だ。
それが出来たら誰も苦労していない。
ちなみにそれを聞いてカズキはというと。
「……………???」
戸惑ってばかりいる。
しかしそんなことは彼女にとってお構いなし。
最後にこんな一言を言って会話は一旦幕を閉じる。
「ユニーク」
「面白くないッ!」
――――ちなみにこの間も剣劇、もしくは槍劇は続いている。
上から振りかざせば、腕を腕に上げて防御し。
突きを繰り出したら、両手で受け止める様に防ぐ。
そんなことの繰り返しだ。
その一方で、両者にはとある疑念がある。
視点は違えど、ほぼ同じ疑念。
――――それは。
今相手しているのは何者なのだろう。という疑念だ。
カズキの場合。
(………この子、一体何なんだよ。
何の武装錬金だ? 何を装備している? ていうかいつの間に武装していたんだ?
………何だ、この子。分からない。――――でも、だからこそ。斗貴子さんと出遭わす前に―――――――殺さなきゃいけないんだ!)
有希の場合。
(………。対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスではない。
朝比奈みくるのような人種でもない。
………古泉一樹ののような人種でもない。かといって、彼の様な人種では無い。………私の記憶(データ)には無い?)
基本饒舌なカズキは喋らず真剣に悩み。
基本無口な有希は心の中で只管に悩む。
それでも、火花は散る。
時間は流れた。
☆☆☆☆
30分ほど経っただろうか。
徐々にカズキの顔には疲労の顔が見え始めた。
有希の方は、文字どおりに顔色一つ変えていない。
これが二人の違い。
人外と、化物の違い。
「――――――ハァ、ハァ」
息が自然と荒くなる。
それでも、攻撃の手を狭めることはない。
只管に、突きと斬るという動作を有希に与える。
一撃一撃は、軽い。
それ故に、まだ振るえる。
これが仮に、サンライトハートならば難しかっただろう。
それほどまでの苦行を行っている。
彼は攻撃の手を緩めてはいけない。
一旦、相手にペースをもっていかれたならば、取り返すのは難しいだろう。
「……………これ以上は無駄。おとなしく降参するべき」
「――――――――――――――――それでも、まだ、諦められないんだッ!」
攻撃の手は、より一層強まった。
その為、有希の方にも対処をするほか方法が無くなっていた。
早く、彼、通称キョンと合流しなくてはいけなかった。
早く、彼女、涼宮ハルヒの凶行を止めなければいけなかった。
既に、タイムミリっトはない。
本来ならば、説得して情報も欲しかったところだが、それも難しくなった今。
容赦をする場合では無くなった。
情けを掛ける必要はない。
そう、彼女は考えた。
「………………」
構成される、一本のナイフ。
かつて、朝倉涼子が通称キョンに行ったように。
彼女も、行う。
ただ、本気を出したのは、彼女だけではなかった。
武藤カズキとて、何もしないで敗退することはなかった。
「………………負けられないんだ、斗貴子さんを救わなきゃ――――――――!」
それまで、彼の身体を表すならば、身長170cm、体重59kg。
少し尖った黒い髪が全面的に刺し、真っ黒な学ランは肌色を保つ肌を守りつつ、少々皺が残っている。
しかし、一変。
彼の髪の色が。
彼の肌の色が。
彼の性質が。
変わる。
黒色から、蛍火色へ。
肌色から、赤褐色へ。
人外から、化物へ。
努々猛る戦闘本能を曝け出して。
「ゴメン、もうオレは手段を選んではいけないみたいだ」
ヴィクター化。
それが彼にとっての、禁じ手だ。
そして両者は激突する。
☆☆☆☆☆
今回、初めに攻撃を仕掛けたのは長門有希の方からだ。
綺麗な弧を描きながら、ナイフを振りかざす。
勿論のこと、それ受ける義理の無いカズキはバックステップで避ける。
ただし、有希の攻撃の手は緩まない。
今度は、下から振り上げる。それも体を左にずらし避ける。
ならば、横からの一文字、と言わんばかりに、横一直線に筋を辿る。
それは、一撃目と同じく後ろに避けて、安全を確保する。
そして、そこからはカズキに分が出て始めた。
「ウォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
突撃槍。
その名に廃れず、強烈なる突きが繰り出す。
「……………この程度なら」
しかし、軽く往なされてしまう。
それでもカズキは再び突撃を始める。
が、案の定防がれて、歪な金属音が辺りを響かす。
そんなことを数回繰り返している内に、有希は自身の体の異変にようやく気付いた。
「…………あなた、私に何をしたの?」
「何もしていない。息をしているだけだ」
彼女の異変。
それは、疲れていることだ。
勿論、情報統合思念体からの力を十二分使えていない彼女なら、不思議ではない。
しかし、それならばとっくの前に疲れているはず。
事実、先ほどまで何不自由なく使えた改変を今となって使えないのは、あまりにも不自然だ。
だから、彼の変身が、何かの誤作動を起こしたとみて問題ない。
しかし、彼も中々おかしな返答を返す。
息をしている。
それだけだという。
「…………なら、いい」
ただ、そう返す以外に選択肢がないのが異様に悔やまれたが。
悔んだって仕方のないことは分かっている。
だからこそ、止まりかけていた猛攻を再び始める。
しかし殺すことはしない。
―――――――それは、誰の得にもならないから。
通称キョンを、悲しませるだけだから。
四肢を傷つける程度の猛攻は、今のカズキにとって何ら障害にはなりえない。
何せ、そんな程度の傷ならば、直ぐに回復してしまうからだ。
「オオオオオオオオオオォォォォ!!」
咆哮は、力に還元され、それなりに重い一撃となす。
ただ、それも情報操作により改変された長門には通じなかった。
シルバースキンより堅い守りに苦戦を強いられているかというと、やはりそうではない。
もう、カズキには、勝利が微かに見え始めていた。
剥がれていくのだ。
その守りも。
彼女の体には、切り傷が数筋見えた。
今の彼女には、それを直すという暇さえ与えられない。体力さえも与えない
ただ、着実に。
追い詰めてられたいた。
「……………くっ」
そして、時は満ちた。
「……………はぁはぁ」
完全に、武装が解けた。
もはや、情報統合思念体との連絡もままならない。
有希の視界には、はっきりとは何も映らず。
ぼやける。
不鮮明。不明瞭。不適格。不満足。
頭の中も、疲労のあまり、ごちゃごちゃとなる。
そんな有希の様子を見て、ただ一言。
「………ゴメン、本当に、―――――――――ゴメン」
そして、この物語も、終わりを迎える。
それは、誰かの死を意味していた。
「…………ごめんなさい」
誰に向けた言葉だったのか、これが、有希の最後の言葉となる。
ふらふらと立ちあがっている、有希の姿を見て、
ようやくカズキもヴィクター化を解いた。というより解かざる負えなかった。
一応これでも、バトルロワイアル。
なんの制限なしでは不平等だろう。
彼の場合は時間制限と、エネルギードレインの範囲の縮小化が最もだろう。
そして、それは彼女も同じだった。
彼女に制限が、やはり負けることはなかっただろう。
情報操作能力がまともに使えたのであれば、負けることはなかった。
だけど、彼女はこうして負けてしまった。
さて、終わりの時間だ。
「貫けッ! オレの武装錬金ッ!」
涙ながらに発した声の後、
その場には、鉄の臭いが飛び散っていた。
長門有希の腹に、大きすぎる穴が開いた。
【長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱:OUT】
[備考]支給品は武藤カズキにより持ち去られていきました
☆☆☆☆☆☆
「―――――――ゴメン」
もう何度目になるだろうか。
同じ言葉を呪文のように繰り返す。
そんな彼はというと、服に付いた血を少々乾かす様にしながら、
物陰、まぁ言っても今は深夜。影などないのだが。
壁に寄り添うようにして疲れを取っている。
勿論死体からは少しばかり離れてだ。
「けど、斗貴子さんの為なんだ」
戯言だ。
そんなこと、誰も望んでいないのに。
「――――ゴメン、ゴメン」
彼の懺悔はまだまだ続く。
【一日目/深夜/G-5 住宅街】
【武藤カズキ@武装錬金】
[状態]疲労(中)
[装備]サンライトハート(改)@武装錬金
[道具]KS×2、RS(1~3)、ジャスタウェイ@銀魂、バルキリースカート@武装錬金
[思考]
基本:斗貴子さんを救う
1:少し休憩
2:皆とは会いたくない
[備考]
※月に向かった直後からの参戦です
最終更新:2012年01月10日 16:42