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はろー、ぐっばい

A-6発電所エリア。
誰も居ない筈のこの島の電力生成を担う場所に、一人の女生徒が居た。

反口操。
帰宅部員にして肥満体型、だが頭はかなりキレる。
そんな彼女も、今は殺し合いの運命に怒りを燃やしていた。

「……黒崎刑梧……一体何様のつもりよ!?」

操がそのお世辞にも美しいとは言えない顔と体型なのに虐めや嫌がらせを受けない理由は、単純に性格が良かったからだ。
人の気持ちをよく考えて行動しているだけで、操は人気者になっていた。
操は殺し合いという、人の尊厳を踏みにじる行為に憤慨している。
どうせ後数時間もすれば警察が来て、黒崎を逮捕してくれるだろう。

――――が。
反口操はその考えを早々に捨てるべきだったのだ。
黒崎刑梧自体が世界の有力者たちに対するエージェント―――――即ち、警察すらも無力化してしまうだけのコネクションを保有している。幾ら待とうと助けは来ない。

そしてもう一つ。
操は人間という生き物を色眼鏡で見すぎている。
彼女が知らなくとも、殺し合いを『良し』とする輩は存在するのだ。
俗に言う『異常者』に分類される者も、操の周りには何人も居たのに、反口操はそれに気付くことが出来なかった。

がさっ、という音がした。
鼠などの小動物という可能性もあったが―――何やかんやで操も不安だったのかもしれない。彼女は喜々として音の方向を向く。

銀色の髪の毛を肩口まで伸ばし、小柄な体駆に可愛らしい顔つき。
生徒会書記・柄部霊歌。
珍しい名前とその温厚な性格から人気も高い、操とも仲の良い少女。
争い事とは無縁の性格は、ある意味殺し合いにおいて一番信頼できる相手ともいえた。

「れ、霊歌ちゃん!!」
「………」

こちらに駆け寄ってくる霊歌の姿に、操は安堵し、そして――――


「Hello」


一瞬で、最大の恐怖へと変わる。
柄部霊歌の袖口から、脇差のような刃物が現れ、霊歌の手に握られたのだ。改めて霊歌を見れば、その目には恐怖など微塵も無い。有るのは――――
恍惚だけだった。


荒い息を吐きながら、操は走る。
幸いここは発電所という、有る程度の大きさを持つ施設である。
逃げたり、隠れたりするには絶好の場所といえるだろう。

「はっ……はっ…霊歌ちゃん……、何で…」

隠れたのは一階の事務室だ。
窓と扉の鍵を厳重に施錠し、乱れた呼吸を整える。
霊歌が諦めるまでここに隠っているしかないと結論を出す。


がちゃっ、がちゃっ、がちゃっ、がちゃっ、がちゃっ。

ひっ、と短い悲鳴が漏れる。
しかし、その音はある程度続いた後でぴたりと止む。
が、足音が去る気配は無い。

きんっ、きんっ、きんっ、きんっ

何か、金属と金属が猛烈にぶつかり合う音がしている。
相変わらずその音は部屋の扉の前から響き続け、今度は止まる気配が無い。

がぎんっ

鈍い、音。
それとほぼ同時に、操は気付く。否、『気付いてしまう』―――。
鍵の位置に、乱雑な穴が開いていることに。


「え」
「はろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろー
はろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろー
はろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろー
はろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろー!!」

何度も何度も何度も、呪詛のように言葉が紡がれる。
すべて聞き終わる前に、開かれたドアの向こうの柄部霊歌が、装飾された短刀で操の胸元を刺し貫いていた。
残されたのは、たった一人だけ。


柄部霊歌。彼女は壊れた少女である。
諸悪の根元は、最悪の屑・沖崎翔。
簡単に纏めるなら、沖崎が起こした―――世間では快楽殺人者の仕業と称されている『連続通り魔事件』にて、霊歌は最愛の兄・柄部刻を目の前で殺害されている。
元々死ぬのは霊歌の筈だった。それを、刻がかばって、立場は逆転したのだ。

犯人の顔は確かに見た。
間違いなく、沖崎翔その人であった。
が。よくある話、沖崎の親は大手IT企業の社長。警察への圧力は簡単に掛かった。更に、相手の親は息子に口を挟めず仕舞いだ。

絶望の果て。
柄部霊歌は決意を固める。


自らが、『連続通り魔』となることを。


殺人の時には『ハロー』と口にすれば、心を殺すことが出来た。
服の下に仕込んだ派手な見た目の西洋短刀。
言葉を紡ぎ、斬る、斬る、斬る、斬る。
目撃者は一人も逃がさずに、家の中までも押し入り、斬る。
何時しか世間は、『辻斬りハロー』と呼ぶようになっていった。

霊歌はただ、殺し続ける。
殺し合いの場でも、普段と変わらずに殺し続ける。
沖崎翔も、全て平等に斬り伏せる。

「hello、ハロー、はろー」

声は、紡がれる。

【反口操】  死亡
【残り36/38人】

【深夜/A-6発電所】
【柄部霊歌】
[状態]健康、精神汚染
[所持品]辻斬りの刀
[思考・行動]
0:皆平等に斬り伏せる。


【反口操(そりぐち・みさお)】
帰宅部で、肥満体型かつ不細工。
しかし、その性格からそこまで嫌われていない。

【柄部霊歌(つかべ・れいか)】
生徒会書記。小柄な体駆に肩まで伸ばした銀髪が印象的。
しかしその正体は世間を騒がせる『辻斬りハロー』である

破綻-はたん- 投下順 青春と爆弾と異質な愛
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最終更新:2011年09月25日 23:39
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